生活保護は誰のため?発達障害の子を育てるシングルマザーの苦悩<コロナ貧困2>

女子SPA!

新型コロナは多くの失業者を出すなど、“貧困パンデミック”とでも言うべき状況が生まれている。なかでも、生活苦におちいる女性が急増している。そんなニッポンの貧困のリアルを総力取材した!

◆子供の発達障害で働けない…孤立するシングルマザー

不倫相手との子供を身ごもり未婚の母となった大橋早苗さん(仮名・36歳)。3年半ぶりの取材当日、大橋さんに手を引かれてやってきた女の子の首には、ヘルプマークがかけられていた。

「出産後、なんとか格安の託児所を見つけて派遣事務をしていました。でも2年前、娘の発達障害が発覚したんです。娘は、じっとしていられなくて急に飛び出したりするので、片時も目が離せません。障害を理由に託児所や保育園も断られ、しかたなく離職しました。今は幼稚園に通っていますが、送り迎えや療育、養護学校や病院など、付き添いも多くて、働く時間がまったく捻出できないんです」

一時は生活保護を考え、福祉事務所にも出向いたのだが……。

「似た境遇の母子家庭が暮らす母子寮に入れ、と言われたんです。それに、生活保護費から幼稚園代は出ないので、幼稚園は通わせられないとも。また犬を飼っているのですが、寮はペット不可。犬は私にとって大事な家族、里親に出すなんて考えられません」

(これは福祉事務所の対応がおかしい点もあり、行政書士のコメントを後述する)

◆両親は他界し、唯一の肉親の弟とも折り合いが悪い

役所への不信感は募るばかり。

「自分が好きで未婚の母になったので、国にはお世話になりたくないという意地もあります」

つい頑なになるものの、生活の困窮は明らかだ。

「現在は貯金を取り崩していますが、年内には底を突きそうです。両親は他界し、唯一の肉親の弟とも折り合いが悪くて頼れない。せめて2~3時間だけでも働ける場所があれば助かるんですが……」

◆「冷凍うどんばかり食べていたら1か月で12㎏も増えて…」

現在は人付き合いもほとんどなく、外出や外食とも無縁だ。

「引きこもりなのでコロナ禍も生活の変化はありませんが、冷凍うどんばかり食べていたら1か月で12㎏も増えてしまいました……」

最近は睡眠障害にも悩まされ、まさに八方塞がりの大橋さん。東京の片隅で生きる母娘に「再分配」はあるのだろうか。

◆行政書士・三木ひとみ氏の助言

以下、行政書士・三木ひとみ氏から助言をいただいた。

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賃貸物件に住んでいるのに、なぜ大橋さんが母子寮を勧められたのか、正直理解に苦しみます。生活保護を受けた場合、大橋さんの場合なら住宅扶助で6万4000円、生活保護決定後に引っ越し代も申請でき、要件を満たせば礼金敷金火災保険料や引越業者への費用も全額支給されます。

もしも、生活保護を受けつつも「どうしても今の物件から引越したくない」という場合は、節約をして生活費を家賃に回すことはできます。たとえば今、家賃7万円の部屋に住んでいるならば、差額の6千円を生活保護費から出す、ということになりますね。現在の法令上、生活保護費の使途は基本的に個人の自由です。

◆行政の対応は地域によって異なるのが現状

そして生活保護を受けていても、ペット飼育や幼稚園の登園は可能です。

まずペット飼育について。ペットにかかる費用は、すべて通常の生活保護費の範囲内で支払わなければなりません。食費やペット病院代、ワクチン接種費用もかかります。しかし、生活保護法にはペットに関する規約もありませんし、ペット飼育を最初からあきらめることはありません。

また幼稚園も同様です。確かに幼稚園は義務教育でないため、月謝は基本的に支給されません。とはいえ、地域や個々の状況により保育所基準での支給がされることもあります。機械的な判断ではなく、個別の事情も考慮してもらえます。また、生活扶助費を切り詰めて捻出する家庭や、減免等をしている園もあります。

生活保護に関する法律(生活保護法)は、全国どこであっても同じものが適用されますが、行政の対応は地域によって異なるのが現状です。もしもお住まいの自治体に相談してもスムーズに進まない場合は、都道府県の生活保護課に相談してみてください。大橋さんの場合なら、都の生活保護課に連絡すればスムーズにいくと思われます。

◆生活保護を利用しながら生活を立て直すことができる

また大橋さんは、「貯金を切り崩している」と述べていることから、現在もある程度の預貯金があることが伺えます。生活保護を申請する際には、目安として医療扶助と介護扶助を除く最低生活費の半分以上の資産があると、その分が初回保護費より減額されます。自由に使えるお金があるなら、まずそれを生活費に回しなさい、という考えですね。

しかし「申請前」に自分の貯金をどう使うかは当然本人の自由です。申請時点で資産、収入がなければ、過去にどう使ったかは基本的に問われません。保護を受ける前に借金を返済してもいいですし、家具や家電を一式揃えたり、子どもの学費の前払いに充てる、という手もあります。

ちなみに私もシングルマザーで、かつては子どもと二人で生活困窮しながら、家賃9万円のアパートでギリギリ水商売をしていた時期がありました。そのときの生活を思い浮かべると「あのとき保護を受けていたら、経済的、時間的、精神的な余裕があったはず」と今なら思います。

女性の場合、生活保護を受けずとも、水商売などのナイトワークや性風俗業がセーフティーネットとなることもあります。しかし子どもを預けながら夜働くとしたら、ベビーシッター代や託児所代もかさみます。何より日々の家賃を支払わないと、というプレッシャーにも追われる。困窮する母子家庭の方には、生活保護という制度を利用しながら生活を立て直すことができる、その選択肢があることも知ってほしいですね。

【行政書士・三木ひとみ氏】

行政書士法人「ひとみ綜合法務事務所」所属。リクルート勤務を経て’15年に行政書士に。これまで1万人以上の生活保護申請業務を行ってきた専門家だ

<取材・文/週刊SPA!編集部>

当記事は女子SPA!の提供記事です。

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