北村想が劇作・演出・出演の三役をこなす、春秋2バージョンの二人芝居、『戯曲・アリス人形館』~秋の夜編~が開幕

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劇作家の北村想が劇作と演出を手掛け、自ら出演もする二人芝居『戯曲・アリス人形館』。北村と、その意欲的新作を発表する劇団〈avecビーズ〉との共同企画であるこの作品は、今年5月に俳優の二宮信也を相手役として第1弾《春の夜 ~First evening~》を名古屋の小劇場「円頓寺Les Piliers」で上演。その第2弾である《秋の夜 ~Second evening~》が、今回は女優の荘加真美を相手役に迎えて10月26日(火)から開幕する。

今作も「円頓寺Les Piliers」にて10月31日(日)まで連日上演予定だが、感染症対策により席数を通常の25席から半減。そのため劇場観劇は既に全席完売しているが、楽日の31日(日)に生配信が予定されており、ツイキャスで鑑賞することができる(ツイキャスチケット購入者は11月14日までアーカイブ視聴可)。

舞台は前作と同じく、既に廃業したらしき喫茶店「アリス人形館」。しかし今なお明かりの灯る店内では、店主であろう初老の男(北村)がカウンターの端で何やら書き物をしている。そこへ、この店主が行うカード占いが「よく当たる」という噂を聞きつけた女性記者(荘加)が訪れるところから、物語は始まる…。

稽古風景より
稽古風景より

前作《春の夜 ~First evening~》の稽古中、台本通りの言葉を発することに苦心した北村は、“セリフを覚える”という作業をやめ、台本を手元に置いたまま上演するという大胆な手段に切り替える。物語の大まかな流れはそのままに、エピソードを語る部分では毎回その日に思いついた話を入れ込むという、本人曰く「頭の中でホンを書きながら進めていくんです。芝居の途中でトークイベントが入っちゃってる感じ(笑)」の独自スタイルで上演。毎回、北村の口からどんな話題が飛び出るのかわからないスリリングな舞台を、相手役の二宮信也は北村の信頼に応えて臨機応変に対応、全6ステージを見事に乗り切った。

そして今回、“セリフを覚える”ことは最初から全く考えずに臨んだという北村は、「机に原稿(台本)とパソコンを置いて、二重に見て仕事(書き物)をしながら話すという感じです。前は原稿だけだったんだけど、パソコンを置くことでだいぶデコラティブに変えました(笑)」と。

二宮同様に巧者だが役者としてのタイプは全く異なる今回の相手役・荘加真美については、「ニノ(二宮)の場合は、(舞台上の会話で)わからなかったことがあると家に帰ってから資料調べて勉強してくるというタイプだったけど、荘加は油断があったら打ち込んでくる、っていうタイプだから、油断もスキもありゃしない(笑)。もちろん無意識だろうけど、人を油断させるのが上手いんだよね。俺が喋ったことを聞き返しての打ち込みが凄いから、こっちが受太刀ばっかりになっちゃう。だからあんまり油断しないように、前回よりも緊張感がすごくあります(笑)」と。
稽古風景より
稽古風景より

荘加からどんな返しが来るかわからない、ということは、前作とは両者の立場が逆転!?「何が出てくるかわからないから、とにかく稽古の時に(荘加の返答のバリエーションを)バーっと出しておいて。上演時間のタイムキーパーも俺がやってるから、ここは長く話しちゃいけないとか、その受け応えは長くなるとか判断して、長くなりそうなところは切らなきゃいけない。原稿見なきゃいけないわ、時計見なきゃいけないわで、こっちは話を散らばらさないようにどうまとめるか、演出とタイムキーパーを兼用してるんだから大変だよ(笑)」

さらに今回は、ラストで北村が実際にタロットカード占いをするシーンも組み込まれているという、一回性の要素がより強い作品になっている。自前のカードを用いて行う占いは独学で習得したもので、過去に占った人のエピソードを聞いても、取材時に実践していただいた結果を見ても、的中率はかなりのもの。あまりに当たるので相談者が相次ぐも、「こっちは遊び半分でやってるけど、相手は真剣。人の人生を左右しちゃいけないと思ったの」と、実生活では他者を占うのはやめてしまったとか。しかし劇中では、荘加が投げかける毎回異なる質問に対して実際に占って回答するため、どんな結果が述べられるのか、このシーンも大きな見どころだ。

一方、相手役を務める荘加真美は、以前も〈avecビーズ〉の作品『もろびとこぞりて Ver.4.0』(2020年上演)に客演しているため北村演出は経験済みだが、北村との二人芝居は今回が初。出演への意気込みなどを尋ねると、「本当にお伝えできることはただ一つで、いいか悪いかはさっぱりわかりませんけど、毎日稽古がすごく楽しくて、ずっと想さんと喋っているだけ。あとは何もないです(笑)」と、かなり楽しんで役に挑んでいる様子。
稽古風景より
稽古風景より

舞台上での荘加とのやりとりについて、“油断大敵”という北村の感想を伝えると、「なんやかんや言ってもちゃんと繋げてもらえるから、安心感を持って、ただ投げてます(笑)。『もろびとこぞりて Ver.4.0』の時は台本を一字一句変えてはいけないと思っていたし、本当はそうだと思うんですよ。“てにをは”一つとっても敢えて面白くしてあるし。だから当時はそれにこだわって、テンポとかも想さんがつけてくださるものを大事にしてやっていたんですけど、今回は全く無視してます(笑)。1回目の稽古の時から自分の居方が何も変わっていなくて、完成に向かっているとかそういうことはないかもしれないと考えたり、本番もそれでいいのか?って言われると不安で本当に申し訳ないんですけど、とりあえず私はずっと同じテンションで楽しいぞ!っていう(笑)」とのこと。

また、今作の舞台は「画廊喫茶」の設定で、舞台正面の壁には一枚の大きな絵画が飾られている。この絵は、〈avecビーズ〉の代表を務める女優の金原祐三子の父であり、洋画家として活躍した金原テル也画伯による作品で、つば広の黒い帽子と瞳が印象的なこの人物画が、作品世界に彩りを添えている。その作品世界を実に伸び伸びと謳歌する荘加と、受け応えや時間調整に骨を折りつつも楽しげな北村による、ユーモアと見応えにあふれた稀有な二人芝居を、ぜひお見逃しなく。
『戯曲・アリス人形館』チラシ面
『戯曲・アリス人形館』チラシ面

取材・文=望月勝美

当記事はSPICEの提供記事です。

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