すべては語り合うことから始まる。気候変動について語り合ってみない?

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グレタ・トゥーンベリのようなプラットフォームを持たなくても、影響を与えられます
Photo: Maja Hitij (Getty Images)

気候変動に危機感を抱いて調べたり考えたりすることはあっても、この件について他者と語り合う機会はそう多くないかもしれません。しかし、自然保護団体ザ・ネイチャー・コンサーバンシーの主任研究員Katharine Hayhoe(キャサリン・ヘイホー)は新著『Saving Us(未邦訳)』の中で、語り合うというシンプルな行動が気候変動問題に大きな恩恵をもたらすと説明しています。以下、該当部分の抜粋をお届けします。


気候変動のソリューションは複雑で多角的なものです。気候変動が私たちの世界、アイデンティティ、そして生活のあり方に突きつける難題への対応であればなおさらのこと。それらを解き明かし始めるのでさえ、書籍丸1冊分が必要でした。しかし、最初の極めて重要な前進の一歩は簡単なことです。あなたや私、この本を読んでいる、あるいは聴いているひとりひとりにとって、誰にもできる簡単なことがひとつあります。

それは語り合うこと。

1年ほど前、私は語り合うことが持つ影響力の大きさに気付かされました。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスでの講演を終えて地下にある講堂の通路に向かっていたところ、Glynという名の高齢の男性が近づいてきたのです。彼はロンドン自治区のワンズワースに住んでいて、私の講演を聞くために電車に乗ってきたと言いました。私のTED Talk『The Most Important Thing You Can Do to Fight Climate Change Is Talk About It(邦題:気候変動に対してあなたができるいちばん大事なこと)』を見て、住んでいる自治区の人々と気候変動について会話をしようと思い立ったのです。

私は驚きました。自分の行動が(たったひとりに対してだとしても)変化をもたらしたと聞くからこそ、この仕事をしているんです。時には落胆することもありますが、彼からの言葉には彼が思うより大事なものでした。しかし、Glynさんの話には続きがありました。

「こういった会話に加わった人たち全員の記録を付け始めた」と、彼は言ったのです。「リストを見たいですか?」と聞かれ、驚きながらも「もちろん」と答えました。そのような言葉を聞いたのは初めてです。

彼は革製のカバンに手を伸ばし、紙の束を引っ張り出しました。

記名は70か80名ほどだろうと思っていました。しかし、彼のリストには1万以上の名前が記録されていました。今や1万2000名以上です(これを執筆する前に彼に確認しました)。ひとえにひとりの男性が、気候変動が私たちにとって重大である理由を話す大切さと、私たちにできることについての1本のTED Talkを見たから、英国のある自治区の中で1万2000もの気候変動についての会話が生まれたのです。

しかも、それだけではありません。彼の自治区は気候非常事態の宣言を議決したばかりだと言っていました。彼らが語り合ったおかげです。それから2年たった今では、化石燃料から脱却し、再生可能エネルギーに投資し、新型コロナの直前には新たな環境&サステナビリティ戦略に2000万ポンド(約31億5800万円)を費やすと発表しています。

語り合わないとどうなるのか?


あなたにもGlynさんと同じことができます。自分の声を使って、今ここで、気候変動があなたにとって重要である理由を話すことです。あなたがしていること、他の人がしていること、彼らにできることをシェアするために自分の声を使うのです。あなたの家族、学校、所属団体、職場や教会、市や町、国や州といったあらゆる階級での変化を提唱するためにその声を使ってください。あなたの学校、事業、町、そして国が行える決定に票を投じ、知らせるために声を使ってください。あなたが属するすべてのコミュニティで、気候変動とあなたが共有する価値観と関心事をシェアしましょう。
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Katharine Hayhoe著『Saving Us』
Image: One Signal / Atria Books

語り合うというのは、あまりに簡単すぎると言っていいほど簡単なことですが、実は私たちのほとんどが行えていないことです。気候変動について危機感を持っていて懸念している人も、この話題については黙り込んでしまうとコミュニケーション学の研究者Nathan Geiger氏は言います。彼らは率直に話したいし、大事なことだと分かっていますが、言い出せないのです。

Nathanは環境エデュケーターたちを研究することにしました。彼らはコミュニケーション学の訓練を受け、一般市民の前で話すのが仕事の人たちです。そんな人たちでさえ、気候変動について話すのには躊躇しがちだと同氏は気付きました。そして話さないことが、彼らに深刻な影響を及ぼすと分かったのです。同氏は「彼らが懸念を示す話題について議論して他者とつながることができない結果として」、その多くが「重い精神的苦痛」を味わうと述べていると綴っています。

それと比べて私たちはどうなのか? Yale Climate Communication Programからの投票データによれば、全米各地の人々が「地球温暖化について、少なくとも折に触れて議論しますか?」と問われた際の回答は、ほとんどが「いいえ」。たまにでさえ議論する人々は、たった35%でした

何を語り合えばいいのか? 私たちが関心を持つ物事です。私たちの発言はいわば自分たちの頭の中を見せるテレビ画面。考えていることを他者に示し、同様に彼らの気持ちと考え方を自分たちにつなげてくれます。ですから私たちが気候変動について話さないのに、周りにいる人々が私たちの関心事だと知ったり、彼ら自身が関心を持ち始めたりできるでしょうか? そして関心を持たないのなら、どうして行動できるでしょうか?

壊れたレコードのように聞こえることを恐れないで。私たちは繰り返し何度も聞くことから物事を学びます。健康とコミュニケーションを研究するEd Maibach氏がこの20年間言い続けてきたように、「最も効果的なコミュニケーション戦略は、信頼されている多くのメッセンジャーからの、何度も繰り返される、シンプルなメッセージに基づく」のです。言い換えれば、何かを言うのが8度目になって、やっと人々が注意を払い始めるようになるということ。人々はどんなことに最も注意を払うのか? 一般的に、私たちは大量のデータや事実よりも個人的な話と経験を好む傾向にあります。実際、話を聞くと、脳波が話者のそれとシンクロし始めると神経科学者は発見しています。そして感情が続いていく。そうやって変化が起きるのです。

※Simon & Schuster, Inc.(サイモン&シュスター)の一部門、One Signal/Atria Books出版のKatharine Hayhoe著『Saving Us』からの抜粋です。

当記事はギズモード・ジャパンの提供記事です。

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