岸田首相が見直しを検討している「金融所得課税」ってなに?


岸田新内閣が発足し、10月4日の記者会見で、金融所得課税の見直しを検討する意向を示しました。そこで、「金融所得課税ってなに?」と疑問に思った人は多いはず。金融所得課税とは何か、なぜ見直しが必要なのかをわかりやすく解説します。

金融所得課税とは

金融所得課税とは、預金、株式、投資信託などの金融商品で得た所得(配当金、利子、株式譲渡益など)に対して税金を課すことをいいます。現在、金融所得に対する税率は一律20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)となっています。数百円の利益であろうと、数億円の利益であろうと税率は変わりません。

そして、金融商品で得られた所得は原則として、他の所得とは切り離して課税される「申告分離課税」となっています(例外として、利子所得は源泉分離課税、一定の配当所得は総合課税も選択できます)。

申告分離課税は他の所得と合算されることがないので、どんなに高額所得者であろうと、かかる税金は20.315%で済んでしまいます。
○累進課税との違い

一方、給与所得や事業所得などは、所得が多くなればそれに伴って税率も上がっていく「累進課税」となっています。現在の税率は、課税所得が195万円未満は5%、195万円~330万円未満は10%と段階的に増えていき、最高税率は4,000万円以上で45%となります(住民税を含めると55%)。

これによって、所得が少ない人は税金の負担を軽くし、所得が多い人からは多くの税金を徴収する仕組みができ、公平性を保つことができています。
○お金持ちほど株式投資をしている

金融商品で得た所得は税率が一律であることは前述しましたが、ここで考えたいのは、お金持ちほど多くの金融商品を持っているということです。

日本証券業協会が行った「平成30年度 証券投資に関する全国調査」によると、世帯年収が400~500万円未満では、金融商品の保有額の平均は508.3万円であるのに対して、世帯年収2,000万円以上では、1831.3万円となっています。また、金融商品の内訳を見てみると、年収500万円以上から「株式」、「投資信託」の保有率が高くなっていく傾向があり、「株式」の保有率は年収400~500万円未満が10.9%であるのに対して、年収2,000万円以上では43.4%となっています。

お金持ちほど税率が一律の金融所得が増えていくので、所得を合計すると、一定の所得を超えたところで税負担率が下がっていく現象が見られます。これを俗に「1億円の壁」といいます。
1億円の壁とは

図は申告納税者の所得税負担率をグラフ化したものです。

合計所得1億円のところが山の頂点となっており、それ以上は増えていくに従って負担率が下がっていくのがわかります。1億円までは累進課税によって税額が増え続けていますが、1億円を超えると合計所得に対する金融所得の比率が高くなっていくので、一律20.315%の税率によって、合計所得に対する税額が下がっていくのです。

1億円の壁を超えると所得が増えれば増えるほど、税負担が軽くなっていくので、格差が広がります。そこを是正するために、金融所得課税の見直しが必要というわけです。
金融所得課税の見直しについて

岸田首相は、金融所得課税の見直しについて言及しましたが、具体的な方向性はまだ明らかにしていません。

金融所得課税を強化する方法として、まず考えられるのが税率を一律で上げる方法があります。前出のグラフが示すように、平成25年の税率引き上げ前と比べて税率を上げると所得税の負担率が上がり、また1億円の壁を超えたあとの負担率の下げ幅が緩やかになります。これによって税収が増えることになります。しかし、税率を上げると、高所得者ではない一般投資家にとっては重い税負担となり、投資に消極的になることが懸念されます。
これまで政府はNISAやiDeCoなどの非課税制度を使って、「貯蓄から投資へ」と投資の促進に力を注いできました。金融所得課税の見直しによって税率を上げてしまうと、この流れに逆行することになります。仮に一律に税率を上げるならば、NISAなどの非課税枠の拡大とセットで行う必要があると考えます。

金融所得課税の見直しの方法は、他にも、総合課税に含める、利益に応じて税率を変えるなど、いろいろ考えられます。金融所得課税の見直しが格差を縮小し、所得の再分配へとつながることを期待しつつ、今後の動向に注目したいと思います。

○著者プロフィール: 石倉 博子

ファイナンシャルプランナー(1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP認定者)。"お金について無知であることはリスクとなる"という私自身の経験と信念から、子育て期間中にFP資格を取得。実生活における"お金の教養"の重要性を感じ、生活者目線で、分かりやすく伝えることを目的として記事を執筆中。ブログ「ファイナンシャルプランナーみかりこのお金の勉強をするブログ」も運営中!

当記事はマイナビニュースの提供記事です。

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