山口組トップも登場。作家・生島マリカが咲かせた『修羅の花』の衝撃内容

日刊SPA!

 宝石商を営む裕福な家庭に生まれながら、最終学歴は小学校卒。父の再婚を機に中学一年生の夏休みに家を追い出されて単身ストリート・チルドレンとして路上で暮らすようなり、13歳から夜の街を徘徊して糊口を凌ぐ。持ち前の美貌と豪放磊落なキャラクターから、様々な昭和の傑物達からの寵愛を受けるという、数奇な人生を歩んだ人物がいる。作家の生島マリカ氏だ。

現在は僧侶となった彼女が2作目の自叙伝となる『修羅の花』(彩図社)を書き下ろした。著書には山口組のトップ(当時)との関係や、伝説の大物経済ヤクザの長男との尋常でない結婚生活が赤裸々に描かれている。そんな異色の経歴を持つ生島氏が語る、現代を生きるために必要な人生訓とは?

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◆二人とも「優しくて気前のいい楽しいおじさん」だった

――ホステス時代に五代目山口組組長・渡辺芳則氏と三代目山健組組長・桑田兼吉氏から同時に求愛された。そんな女性はなかなかいないと思うのですが、本作『修羅の花』はこのような衝撃的なエピソードで幕を開けます。お二方の印象はどのようなものでしたか?

「ヤクザの大親分という先入観を排せば、お二人とも『優しくて気前のいい楽しいおじさん』でした。でも、性格は正反対。

渡辺さんは強面とは裏腹に慎重で軽妙洒脱な方でした。ある時、『お金やるわ』と言われてドキドキしながらお財布を渡すと、チャリンと5円玉を入れられたことがありました。20代の私は何のことかサッパリ解せずに、思わず『ケチやなあ』とぼやくのですが、そんな不躾な発言にも『ははは』と悪戯っ子のように笑うお茶目な方でした。

対して桑田さんは豪快そのもの。北海道の高級な海の幸をこれでもか、と惜しげもなく届けてくれたり、ポンと紙袋で2000万円もプレゼントしてくれたり。お礼を申し上げると、『ギャングしてきた金やから、気にせんでいいんやで』なんて言い回しをされるのです。冗談なのでしょうが、あながち嘘でもなさそうな話なので、うまく笑えなかった思い出があります(笑)」

◆伝説の経済ヤクザの長男に垣間見た様々な苦悩

――170センチを超える高身長にその美貌。やはりマリカさんにはそれだけの大物を引き寄せる魅力があったんだと思います。

「いえいえ、私の容姿は大したものではありません。傑物たちを集めたのは当時のお店の魅力でありオーナーママたちの器量の大きさです。今でも大阪の北新地で営業を続けている名門クラブで、神戸のお二人以外にも元中野会会長の中野太郎さんや、奈良の倉本会長と酒宴にご一緒させていただいたことがあります。中野さんは高身長で手足が長く格好が良かった記憶があります。倉本さんはいらっしゃるのもお一人、帰られるのもお一人で、お付きをつけず常に一匹狼で行動される珍しい方でした」

――その後、26歳の時に「日本一の経済ヤクザ」として名高い生島久次氏のご子息と結婚されるという、これまた他に類を見ない経験をされています。一体どのような方だったのでしょうか?

「生島久治さんというのは、私の夫だった方の実父にあたりますが、ヤクザにお金を貸し付けるほどの資金力があり、野球賭博のシステムを考え出したのも久治氏と聞いています。そんな偉大な父のもとに長男として生まれてきた元夫のプレッシャーとは、たとえ私でも推し量ることはできません。幼き時分より世間と断絶された生活を余儀なくされ、登下校を公安に尾行されて育ち、21歳で初めての新婚家庭を盗聴される生活です。それが彼を大きく歪めてしまった一因ではあるでしょう。ただそこに生まれてしまったばかりに、次々とこの世の地獄を経験するわけですが、彼はこう言っていました。うちに金がありすぎるんや、金がありすぎるからあかんねやと。

彼はとにかく父の生島久治が暗殺され、26歳で莫大な資産を受け継いだわけですが、横で見ていると、お金を持っているのを恐れるかのような素振りでした。博打、買い物、お金を使うことに関して中途半端なことは一切しなかったですね。博打は一晩で3000万円も溶かして帰ってきた時はさすがの私も叱りましたが、義父の久治が残した横浜山手にあるマンションの床にはエルメスの絨毯を敷き詰めてあり、本人が設計を手がけ改築費に5000万円をかけて道楽したこともありました。28歳でですよ。年に一度行くかどうかの誰も住んでいない部屋に。

それと、彼は身長が188センチありましたので、海外へもよく買い物に行きました。ニューヨーク五番街のGUCCIでは、彼と私が訪れると店長が、『今日はこれ以上売る物がありません』と他の客を締め出して、閉店してしまったことさえありました。生島はまるで強迫観念に駆られるかのごとく積極的にお金を使い、常軌を逸した買い物の仕方をしていました。でも、彼はそうすることでしか世間とのかかわりを感じられず、生きている実感すら得られなかったのかなと思うのです。私は自分と同じか、それ以上に、これほど運命に翻弄された同年代に出会ったことは、彼ともう一人しか知りません。もう、一生こんな男たちと出会うことはないでしょうね」

◆「金で動かないから怖い」山健組トップが漏らした本音

――確かに、『修羅の花』本編を読んでも、あり余るお金があるのに全然幸せそうに感じられませんでした。

「生活のためにお金は必要です。でも、お金があればあるほど幸せになれるかと言われれば、そうではありません。いろいろな経験から、お金の量と幸せの量は必ずしも比例するものではないということを学びました。先ほど渡辺さんと桑田さんのお話をしましたが、当時はシングルマザーで、一人で赤ちゃんを育てるのに疲弊していたこともあって『あれこれよくしてくれ大切にもしてくれるし、経済的に頼れる桑田さんとなら……』と考えたこともありました。でも今なら、一緒に花を愛でてドライブを楽しみ、身を挺してわたしを守ってくれ、ニコッとはにかんで財布に5円玉を忍ばしてくれる渡辺さんのような男性との方が幸せになれるんだろうなと思います。

これは決して桑田さんを貶めているわけではありません。昭和には社会全体に存在していた任侠的なマインドが、少しずつ世の中から失われつつあり、お金ですべてが解決される時代となってしまっていたということです。生島が苦しんでいたのも、その副作用だったのでしょう。

ある時、桑田さんは言いました。『明日から九州と沖縄の組関係者と会いに出張や。あいつら金では動かへんから大変やねん』。その口ぶりから桑田さんは分かっていたと思うんです。かつての自分たちのように、お金ではなく侠客心で動く人間の強さを。でも、桑田さんのような方も時代の流れには逆らえなかったんです」

◆昭和の男の生き様に引かれる理由

――ヤクザの世界だけでなく、現代社会でもお金さえあれば解決できてしまうことが増えているように感じます。マリカさんの思う幸せとはなんでしょうか?

「前作『不死身の花』を出したのが約6年前になりますが、その直後に8000億円の資産がある夫と別れました。また自由でお金のない生活に戻りつつありますが、『以前マリカさんにはお世話になったし、ご飯くらい奢るから顔を見せてよ。話を聞きたい』と言ってくれる若い友人も少しはいますし、何かしたいなと思い立って相談した時には力を貸してくれる仲間がいたりね。以前のようにファーストクラスで各国の一流ホテルを住まいに世界中を渡り歩く優雅な生活は手放しましたが、今は今で労わり合い、慈しみ合う友達がいる幸せがあります。

わたしには家族がいませんが、いた時も、このような充実感を得たことがあまりありませんでした。お互い心から心配し合い慈しみ合う友人や仲間がいる充足感、誰かから大切に思われているという安心感があるのが本当の幸せで豊かな人生なんだと思います。もちろんお金は大切だし、たくさん稼ぐこともとても立派なこと。だけど、お金に使われてはいけない。お金に振り回されて、お金に取り憑かれてしまったらお金の奴隷になってしまう。お金に支配される人生が幸せとは思わない。真の幸福を願うなら、決してお金に負けてはいけないとも思うのです。

人間関係も遊びも、お金に頼るだけの人生なんて正直ダサいです。戦後の動乱期は腹に出刃包丁を隠し持ち、義理と人情に命を懸けて生き抜いた昭和の男の生き様はやっぱり強く美しい。わたしから言わせれば、今は男がいない時代なのです。男がいない拝金主義の世界では、義理も情もなく、自分さえ良ければいいという利己主義のもとに、弱いものは捨て置かれる世界が蔓延ります。それでは人間社会は良くならないんですよ。世の男が金に動かされていては侠気を失いかねません。ちょうどいま世界は大きく変化しようとしています。世の中が今より良くなるには、再び男に任侠心を取り戻してもらわねばなりません。男には心にナイフと、そしてポケットには花束を忍ばせて欲しい気持ちです。

お金は使えばなくなりますが、人の気持ちや情はなくなりません。互いを大切に思う結びつきは、お金より確実に頼りになるとも言えるのです。お金が解決してくれることも当たり前に沢山ありますが、人の心はお金だけでは満たされないものなのです。どんな極悪人でも、金持ちでも、貧乏人でも、誰かと厚い友誼や哀を交わすことができて初めてほんとうの幸福感が生まれます。『人は愛するに足り、真心は信じるに足る』これまでの自分自身の経験や、傑物たち、そうでない方々とも身近に交友してきたわたしなりの結論なのです」

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90分に渡り、インタビューに答えてくれた生島マリカ氏。彼女が熱弁する「昭和の価値観」こそ、令和となった今こそ見返すべき本質なのかもしれない。『修羅の花』には本稿で紹介しきれないほどの濃密なエピソードが詰まっている。

カネ、カネ、カネととかく振り回されがちな今こそ、意地や義理、メンツ、なにより人間関係を重視する世界に思いを馳せることこそ、幸福への近道なのかもしれない。

取材・文/桜井カズキ 撮影/中里吉秀

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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