[Alexandros]川上洋平、各国の映画祭で多数の賞を受賞したアナーキック・ラブストーリー『ディナー・イン・アメリカ』について語る【映画連載:ポップコーン、バター多めで PART2】

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大の映画好きとして知られる[Alexandros]のボーカル&ギター川上洋平の映画連載「ポップコーン、バター多めで PART2」。今回は、各国の映画祭で多数の賞を受賞。パンクロックを拠りどころとする孤独な少女が覆面バンドの推しメンを家に匿うことから始まるラブストーリー『ディナー・イン・アメリカ』について語ります。

『ディナー・イン・アメリカ』
『ディナー・イン・アメリカ』

おもしろかったですね! いわゆる学校でいうとちょっとイケてない部類に入る女の子・パティの目の前に好きなバンドマンが現われて、そこからラブストーリーが始まるという話で。でもそのバンドマンのサイモンは、覆面をつけたジョンQとして活動しているので、パティはそれが自分が好きな相手だとはわからない。何となくのあらすじを知った時から、「絶対おもしろいよな」って思いました。プロデュースがベン・スティラーで。ベン・スティラーが関わってる映画って、例えば『LIFE!』は割と壮大なんだけど主人公がイケてなくて。あと『47歳 人生のステータス』も『ミート・ザ・ペアレンツ』も『ナイト ミュージアム』もどれも主人公が情けない。そういう作品が得意なイメージがありますよね。『ディナー・イン・アメリカ』も、パティは過保護な両親のせいで好きなパンクバンドのライブに行くことも許してもらえないような状況にいる。そこから自分の殻を破って成長していくわけだけど、オタクが大逆転するみたいな話って、例えば『ナポレオン・ダイナマイト』があったり。あと主人公の女の子がメガネのオタクっぽいところは『ゴーストワールド』を彷彿とさせます。
『ディナー・イン・アメリカ』より
『ディナー・イン・アメリカ』より

■二重のサプライズがあるのがまた良い


ジョンQはライブの時もいつも覆面をかぶってて。だから、素顔も素性も知らないんだけどパティは恋焦がれてる。そのサイモン(ジョンQ)が巻き込まれたような感じで警察から追われてて、それでたまたまパティに出会って匿ってもらうことになると。例えば、もし僕が何かしでかして、警察から逃げてる時にたまたま飛び込んでいった家に住んでるのが僕のファンで、「洋平さん、ここにいていいですよ!」っていう流れになったらおもしろいなって思いました(笑)。この映画は、どっちかと言うとパティの目線で観る人が多いと思うんですけど、僕は同じバンドマンということもあって、そうやってサイモンの目線で観ちゃいましたね。でもこんなこと起こらないと思うけど(笑)。
さらに言うと、サイモンが実はジョンQだったっていうのはパティにとってのサプライズだったけど、実はパティがジョンQに送り続けていたファンレターに書いていた愛の詩がすごく良くて、そこにサイモンはすごく感銘を受けているんですよね。だから、サイモンにとっても、まさかパティがそのファンレターを送っていた相手だったとはっていう二重のサプライズがあるのがまた良いですよね。

『ディナー・イン・アメリカ』より
『ディナー・イン・アメリカ』より

■バンドをやるようになった背景が垣間見えたのも良かった


僕が好きなのは、パティとサイモンがパティの家族と夕食を食べてるシーンで。サイモンはパティの家族に「両親が宣教師で、教会に住んでて」っていう嘘をつくんだけど、それを両親はすっかり信じてる。でも、弟だけはどこかで疑ってて、サイモンが「この料理美味いな」って言ったら、「冷凍食品だ」って突き放すんだけど、サイモンが「両親の仕事の関係で3年間タンザニアでウガリを食べてたからこの料理に感動する」って返してて。そのやりとりとか結構笑えましたね(笑)。
サイモンはいかにも強そうなパンクスっぽい風貌なんだけど、腕っぷしが弱いのもなんか良かったです。実は家の地下にスタジオがあるようなボンボンの家の息子で、意外とそういう家庭の子が、親に対する反骨心だったり、鳥かごの中に閉じ込められているような状況をはねのけるためにパンクバンドを始めたりする。サイモンがバンドをやるようになった背景が垣間見えたのも良かったですね。
あと、ちょっと小ネタなんですけど、序盤でサイモンが研究所のバイトか何かで一緒だった女の子に誘われて家に行って、そこでその子のお母さんがサイモンを誘惑するんですよね。「このお母さん、どっかで見たことあるな」って思ったら、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のマーティのお母さん役のリー・トンプソンで。テンションあがりましたね。ちなみにお父さんの方は、『ハンニバル』で自分の脳みそを食べさせられるレイ・リオッタに似てるなと思いました(笑)。

『ディナー・イン・アメリカ』より
『ディナー・イン・アメリカ』より

■『ナポレオン・ダイナマイト』が好きな人は『ディナー・イン・アメリカ』も楽しめるんじゃないかな


パティがいじめられてて、そのいじめられてる相手にサイモンがメンチきったら簡単にやられて、その後復讐する感じも『ナポレオン・ダイナマイト』に近い感じがしましたね。でも『ナポレオン・ダイナマイト』は『ディナー・イン・アメリカ』と違って、痛快でもないし、復讐するとか成長物語でもなくすごく淡々としてる。オムニバスが映画化されたみたいな感じの雰囲気かもしれない。淡々具合だけで言うと『かもめ食堂』ぐらいオフビートな感じ(笑)。最後に少し盛り上がって、「ここで?」みたいなところでジャミロクワイの「キャンド・ヒート」がかかったりして。でも、『ディナー・イン・アメリカ』が好きだったら『ナポレオン・ダイナマイト』も好きで、『ナポレオン・ダイナマイト』が良いなって思ったら若干テイストが違って新しい『ディナー・イン・アメリカ』も楽しめる人が多いんじゃないですかね。
『ディナー・イン・アメリカ』より
『ディナー・イン・アメリカ』より

■実はいろんな人が共感できるようなところもいっぱいある


いろんな要素が含まれてる映画ですよね。ちょっとイケてないボニー&クライドっていうか、裕福な実家から家出してるパンク少年とちょっとイケてない女の子が織りなす愛の逃亡劇って感じのラブストーリーでもあるし、反骨心やパンクもキーワードになっているし、青春物語でもあるし、家族の話でもあるし。あとオタクが成長していく話でもある。サイモンのライブを観終わった後に、パティが女の子ふたりに「バンドやんない?」って誘われるのはちょっと『ボヘミアン・ラプソディ』を思い出しました(笑)。
終始、ニヤニヤしちゃう感じで単純に楽しめましたね。実はいろんな人が共感できるようなところもいっぱいあると思うので、こういう映画がもっと日本でも公開されると良いなと思ってます。



取材・文=小松香里

※本連載や取り上げている作品についての感想等を是非spice_info@eplus.co.jp へお送りください。川上洋平さん共々お待ちしています!

当記事はSPICEの提供記事です。

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