「犬だからこそ真理を語れることもある」オダギリジョー『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』インタビュー

NeoL



幽玄な光景の中で人間の本質や変化について深く描いた『ある船頭の話』でヴェネツィア国際映画祭でも高く評価されるなど、監督としても国際的に注目を集めるオダギリジョー。その彼が脚本・演出を手がけるオリジナル連続ドラマ『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』がNHK総合にて9月17日よりスタートした(全3回)。鑑識課警察犬係に所属する警察官/ハンドラーである青葉一平とその相棒である警察犬・オリバーが事件に挑む本作で、オダギリはユーモアやサスペンス的な要素を用いドラマとしてのエンタテイメント性を保ちつつ、人間や社会への鋭い視点を映し出している。主演を務める池松壮亮に加え、永瀬正敏や麻生久美子、本田翼、永山瑛太、さらに松重豊、柄本明、橋爪功、佐藤浩市、細野晴臣などオダギリが絶大な信頼を置く名優たちが盤石の布陣をしいた本作について、着想から込めた想いまでを聞いた。

――本作の着想のきっかけはどのようなところから?

オダギリ「俳優というのは役をいただく職業なので、本当に自分がやりたい役を実現するには、自分でその場をつくるしかないんです。今回のオリバーという、着ぐるみの警察犬というのも、以前からやりたいと思っていた設定のひとつでした。今回、いくつかあるアイデアの中でこの作品が一番テレビ向きだと思ったので、警察犬に関する取材を重ね脚本を書き始めました。着ぐるみというものはコントで使われてきたツールなので、ひと目でコントだと思われやすいですよね。それをコントにさせない難しさがきっとあるはずだから、そこに挑戦したかったんです。一歩間違えたら無茶苦茶になるけれど、うまくやると格好いいんじゃないかという挑戦のようなものでもありました」

――そのギリギリのバランスを保つためにサスペンスという構成も考えられた?

オダギリ「そうですね。連続ドラマとして3週間引っ張ること考えると、笑いだけでははやく続きが観たいとはなりにくい。だから事件の謎を追う縦軸も1本ないといけないし、様々な要素を引っ掛かりにしないとなとは思っていました。やっぱり警察モノはいろんな事件が起きるので、連続ものにしやすいんですよ。だけど1クールに2、3個は必ず警察モノがあるわけで、他に負けないための個性として動物の目線を入れることを考えました。さらに警察犬って絶対的に優秀だけど、実は犬同士だからわかるダメなところとかもあるんだろうなと想像したり、そうやってオリバーという役に関しても膨らませていったんです」

――なるほど。『ある船頭の話』もある種サスペンス的な要素があるので、元々お好きなのかと思っていました。

オダギリ「あ、でもデヴィッド・リンチの影響をかなり受けた世代なんですよ。だから今回の脚本を書いてる時もそういうものが無意識のうちに出てきてるのかもしれないですね。冒頭の少女が出てくるところは『ツイン・ピークス』へのオマージュですしね(笑)。だから無意識の部分もあれば意識的な部分というか、好きな作品に対する強い想いも入っています」



――『ザ・ビッグシェイヴ』然り、わかる人にはわかるという。先ほどおっしゃられたコントにはならないバランスの笑いというのは“ユーモア”への挑戦だとも思います。私は笑いを起こすことは泣かせるより難しいと思っているのですが、ユーモアはオダギリさんの中でどのような位置付けにありますか。

オダギリ「位置づけは高いところにありますね。おっしゃられる通り、笑わせるというのはすごく難しい。演じる側としても1ミリずれると笑えなくなったりしますし、つくる側としてもそういうシビアな緊張感は常に持っています。最近はテレビのコンテンツでも今まで以上にわかりやすいものが求められていますよね。でも僕はそんなつくり方があまり好きじゃないんです。自分がつくるものはユーモアはあれど媚びた笑いにしたくないというか。だから音楽に関しても、あえてEGO-WRAPPIN’さんに頼んだりしていて。わかりやすく笑える音楽を付けるよりも、カルチャーとして魅力的な作品にしたい。何十年経って観ても格好よさが残るような作品にしたいという思いは常にありますね」

――たしかにEGO-WRAPPIN’のオープニング、エンディング曲は物語に共鳴して感情を増幅させるものでしたし、要所要所に差し込まれる森雅樹さん(EGO-WRAPPIN’)の音楽も本当に素晴らしかったです。

オダギリ「音楽をつくったらそれで終わり、ということではなく、森さんとはつくってくれた楽曲をどこのシーンにどういう風な使い方しようという話し合いを、最後までこだわりながら挑めたんです。本気でこの作品に向かってくれたし、ミックスの一番最後まで立ち会ってくれて、一緒にこの作品の世界観をつくってくれました」



――衣装やインテリアも細部まで世界観がつくられていました。コスチューム石橋瑞枝さん、スタイリスト馬場恭子さんらとはどのような話を?

オダギリ「スタイリストさんにはキャラクターに合った衣装選びがうまい人と、そのキャラクターに合わせてつくれる人と2種類いるんですが、僕はやっぱりつくれる人を求めてしまうんです。『ある船頭の話』のときもそういう理由で(ワダ)エミさんにお願いしましたし、今回もつくれて、かつ選べるスタッフにお願いすることは最初から決めていました。石橋さんは初めてお仕事する方だったんですが、僕の全身を採寸して、オリバーの着ぐるみをデザインしてくれました。何度も打ち合わせやチェックを重ねて、毛並みや色の配置など細かく丁寧につくってくれました。馬場さんとはもう20年以上の仲なんですが、彼女の服の選び方も信用しているし、何より人柄が好きで。馬場さんがいたらみんな楽しい気持ちになれるので、僕にとっては安定剤のような存在なんです(笑)」

――音楽、美術はもちろん、カメラワークにおいてもスプリット・スクリーンを用いられていたり、彩度を抑え気味で陰影が強めの質感であったりとこだわりが感じられました。

オダギリ「本当は今作もクリストファー・ドイルが撮影監督をやると言ってくれていたんですよ。でもコロナで入国が厳しく、駄目になってしまって。この脚本が大好きで、テンション高く準備をしてくれいたんですが、諦めざるを得ない状況になりました。そんな時、幸運にも池田(直矢)さんという、いま日本映画で大注目の撮影監督が入ってくれることになりました。テレビドラマではあるけれど映画のスタッフに集まってもらった結果、スクリーン映えするものにできたのではないかと思います。実際に少人数で試写室の大きなスクリーンで観たんですが、やっぱり大きいスクリーンで観るのがベストでした。家庭によってテレビの大きさはそれぞれあると思いますが、できるだけ大きな画面で、音の良い環境で観ていただきたいなとは思います。言い方はちょっと乱暴になってしまいますけど、テレビだからと妥協したり、甘いつくり方をしているわけではなく、細部までこだわってつくっているので、観る方にも本気で受け取ってほしいなと思うんです」



――キャストに関しても聞かせてください。主演の池松さんの演技は自然でいながら彼でなくては表現できない雰囲気を醸されていて素晴らしかったです。声のトーンひとつとっても他にない。監督、演出家として池松さんの演技をどうご覧になりましたか。

オダギリ「余計な説明をする必要もないし、ちゃんと脚本を読みこんで僕がやろうとしてることを理解して現場に来てくれていました。100%任せられる信頼関係はありますね。今回の俳優さんはみんなそういう方ばかりなんです。俳優としての魅力がすごくあって、かつ能力が高い方たちに集まっていただきました。自分にとっての日本代表選手団ですね」

――そこにいるだけで、その人自身から発せられている音楽が聴こえるような方ばかりですね。

オダギリ「なかなか挑戦的な台本ではあるんですけど、みんながそれを面白がって集まってきてくれていました。今までにない作品をつくってほしいという期待もひしひしと感じるし、その期待に応えなければというプレッシャーもありましたけど、そういったプレッシャーが背中を押してくれたのも確かでした。同じ俳優としても、正直つまらない脚本や焼き直しのような作品などテンションが上がらない仕事のオファーも多くあることをわかっている。だからこそ今回のような、常識外れではあるけどチャレンジングな企画を楽しんでくれ、心から応援してくれている姿を見ると、この挑戦には意味があるんだなと嬉しい気持ちになりましたね」

――その個性の中核を成すオリバーですが、人からすると理解できない行動をしたとしても、動物からしたらそれが普通であるというような、既成概念に捉われない視点で物事を見ていて、その視点もまた物語の厚さになっています。

オダギリ「そうなんですよね。動物だからこそ人間に対して突っ込めることがあるだろうし、人間が人間のことを批判するよりも、犬だからこそ真理を語れることもありますからね」



photography Yudai Kusano(IG)hair&make-up Yuki Shiratoristyle Tetsuya Nishimuratext & edit Ryoko Kuwaharam(T / IG)









ドラマ10「オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ」https://www.nhk.jp/p/ts/ZPZJP2WJ9R/https://www.instagram.com/nhk_oliver/
鑑識課警察犬係に所属する警察官で、この物語の主人公である青葉一平(池松壮亮)と、彼の相棒である警察犬オリバーが次々と発生する不可解な事件に挑んでいくのだが、様々な思惑が入り乱れ・・・。

【放送予定】
2021年9月24日<第2回>、10月1日<第3回> 総合 金曜 よる10時~10時45分
【脚本・演出・出演】 
オダギリジョー
【主演】
池松壮亮
【出演】
池松壮亮、永瀬正敏、麻生久美子、本田翼、岡山天音、玉城ティナ、くっきー!(野性爆弾)/永山瑛太/染谷将太、仲野太賀、佐久間由衣、坂井真紀、葛山信吾、火野正平、村上淳、嶋田久作、甲本雅裕、鈴木慶一/國村隼/細野晴臣、香椎由宇、渋川清彦、我修院達也、宇野祥平/松重豊、柄本明、橋爪功、佐藤浩市 ほか
※葛山信吾さんの「葛」の下の「人」は正式には「ヒ」です
【制作統括】
柴田直之(NHK編成局コンテンツ開発センター)
坂部康二(NHKエンタープライズ)
山本喜彦(MMJ)

当記事はNeoLの提供記事です。

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