人はなぜ猫に魅了される?イエネコの行動を「かわいい」と感じる心理を専門家が分析

Kindai Picks

突然ですが、猫って、かわいいですよね。

ペット業界でも急激な盛り上がりを見せている猫人気、その勢いはペットの代表格=犬という固定概念を打ち破りそうなほどです。ゴロンするだけで萌え、軟体動物のようなニュルンとした所作に萌え、「もしや中に人間が!?」と思わせられるような驚きの行動にも萌え……ああ、猫ってなんでこんなにかわいいんでしょうか!?

今回はその秘密を探るべく、猫への“偏愛”を発信するオンラインショップ「Cat's ISSUE」ディレクターの太田メグさんが語る、愛猫「コムタン」の萌えポイントを元に、アニマルセラピーの研究者である近畿大学 総合社会学部の漆原宏次先生が、科学的に解説します。

理屈はいらない!国も揺るがす“かわいい”の結晶体

みなさん、猫はお好きですか?
もふもふのルックスはもちろんのこと、時折見せるツンデレな仕草や、計算などまったくしていないあるがままの姿も、人間を魅了する猫の魅力ですよね。

たとえば、「ただ必死におもちゃで遊んでいるだけなのにかわいい」とか。



「ただ、だれているだけなのにかわいい」とか。





と思ったら「急に誘ってきてかわいい」とか。



どうです? 猫好きな方はもちろん、猫派じゃないあなたも少しばかり萌えのメーターに針が振れてしまったはず。身近なところでは、「頑固で、動物に見向きもしなかったお父さんが、縁あって迎え入れた猫にデレデレ」といったエピソードもSNSなどでよく見かけます。



また、猫が人間をも制する力をよくあらわした、こんな歴史的なエピソードも。

時は紀元前525年、大国エジプトと戦争をしていたペルシアは、盾に猫をくくりつけて攻め入ったところ、エジプトの兵士たちが手も足も出せなかったという、ありえないシチュエーションで勝利を収めたんだとか。エジプトが猫を神聖視していた国柄もありますが、もはや生物界のヒエラルキーをも覆す猫たちに、私たち人間は抗えない宿命なのかもしれません。



これほどまでに人間を魅了する猫のかわいさって、一体なんなのでしょうか。
考え出したら無限のループに陥って夜も眠れなくなってしまいそうなので、ここからは、アニマルセラピーの研究者である、総合社会学部の漆原宏次先生と、アイドル猫「コムタン」の飼い主である太田メグさんにご登場いただき、その謎を紐解いていきたいと思います。


漆原 宏次(うるしはら こうじ)

総合社会学部 総合社会学科 心理系専攻 教授。学習心理学、アニマルセラピーを専門とし、ヒトや動物の行動のメカニズムについて研究している。


太田 メグ(おおた めぐ)

猫好きクリエイターとともに、猫への「偏愛」を発信するオンラインショップ「Cat’s ISSUE」 ディレクター。愛猫コムタンとの暮らしをInstagramで垣間見ることができる。


“かわいい”の裏に潜む観察力。人間の感情を読み取って行動を変える猫



太田メグさんInstagramより

――さっそくですが太田さん、日頃のコムタンの行動や猫のどのような仕草がかわいいと思われますか?


太田メグ


まさに今、コムタンに「取材するからこっちおいで~」と言ったら本当に近づいてきて隣にいるんですけど、こういうの本当に珍しくて。普段は呼んでも来てくれないのに、気まぐれに来るのがたまらない。もうこれは、猫好きの宿命(さが)なんでしょうね。予期してない人生を歩みたいじゃないけど、予期してないところの喜びを感じるという(笑)。




――太田さんの話にあるような、猫の気まぐれなイメージはどのようにしてできあがったものなのでしょうか。


漆原先生


確かに、もう一つの身近な動物である犬と比較すると、猫には気まぐれなイメージがありますよね。これは、これらの動物が家畜化されてきたプロセスと関係があるかもしれません。たとえば犬は、人間が長い年月をかけて、狩猟に使える従順な子たちを残してきたことで、今の姿があります。猫の場合は、中東に暮らしていたリビアヤマネコがそのルーツと言われており、彼らが家畜化されて飼い猫になったという説があります。ただ、家畜化の歴史は犬よりも新しくて。人間が農耕を始めた頃から、蓄えていた穀物を狙うネズミ、虫などが現れ始めますが、それらを狩るために猫たちが倉庫に出入りするようになったのが、人間と猫の関わりの始まりと言われています。つまり、彼らは生きるために必要な食料を自分で狩っていたので、ある意味人間とは協力関係にあったし、飼われることがそんなに大事ではなかったようなのです。その違いが、気まぐれなイメージに繋がっているように思います。




太田メグ


私、犬も大好きなんですけど、彼らって本当に従順で、「人間に何かしてもらうのが喜びです!」という顔をされると本当に申し訳なくて……。そう考えると猫はさすらい人というか、「我関せず」みたいな生き方が、私の性格には合っているのかなと思います。




漆原先生


そういう意味では、太田さんは犬よりも猫の性格に近いのかもしれませんね。



太田メグさんInstagramより

――コムタンの行動の中で、人間を彷彿させるようなものってありますか?


太田メグ


息子が泣いていると、コムタンが慰めてくれることがあるんです。以前、息子がゲームで失敗したところを夫がからかったら、息子が悔しがってマックス状態で泣いてしまって。そしたら、コムタンがものすごく心配した顔をして、目の前に座ってしっぽをパタパタやってあげてたんです。その一連の行動が、明らかに慰めにいっているようで。



――先生、これ、コムタンはどういう心境だったんでしょう?


漆原先生


猫も、人間の感情や状態を手掛かりにして行動を変えることがあるようです。たとえば、うつ状態の人に対して交流の意思や反応を示すという研究結果も出ています。コムタンの場合も、息子さんが示した通常とは異なる感情や表情に反応して、通常とは違う行動をとったということですけど、それが、まるで息子さんが悲しんでいるのを理解して慰めているように見えるのが非常に興味深いですね。猫は、母親同士、共同で保育を行うなど、意外とサポーティブなところもあります。そういうことを念頭に置くと、コムタンのこの行動は、もしかすると一緒に息子さんのお世話をしようとしている感覚からきているのかもしれませんね。




太田メグ


息子が赤ちゃんの頃はコムタンも多少警戒していたんですけど、どんどん慣れきってしまって。今では隣で息子がぴょんぴょん飛び跳ねていても、逃げずにぐっすり寝ています(笑)。



太田メグさんInstagramより

――コムタンと息子さんのエピソードから、猫が人間の感情を読み取れることがわかりました。笑ったり泣いたりしている表情もちゃんと伝わっているんですね。


漆原先生


猫は、たとえば一緒に暮らしている人間を判別するだけでも、見た目、声、におい、行動など、様々な情報を複雑に結び付けて利用しているようです。ですから、顔も重要な手掛かりですね。




太田メグ


顔といえば、コムタンは最近、私が寝ていると甘えたいモードになって、肉球で顔を押してくるようになりました。首から始まって顔の中心に寄り、最後は唇をなめるという。それが最近の萌えポイントですね。もう14歳のシニア猫ですけど、年をとってからやるようになりました。



太田メグさんInstagramより


漆原先生


動物やペットが顔をなめる行動には、親愛の情を示す意味合いもありますが、なめたことで飼い主さんがどう反応するかに注目しているということも考えられます。後者の場合には、反応するともっとやるし、動じなければやらなくなります。




太田メグ


あ~、たしかに。ザラザラの舌で唇なめられると結構痛くて、それで絶対に起きると思われてそうですね。あと、ちょっと心配なのが、顔にクリームなどを塗っているときでもなめようとすることがあって。化粧品などに使われている成分って、猫にとって害があるものが多いような気がするのですが、どうなんでしょうか? 害がある場合、どの程度影響があるかも心配です。




漆原先生


人間が塗って大丈夫なものなら、猫がほんの少しなめても健康を害するようなことはないとは思いますが、念のため成分の確認などをした方が良いでしょう。彼らは匂いや苦みが強いものを面白がってなめることもありますので、無香料・無添加のものに変えるなどの対策も、良いかもしれません。



太田メグさんInstagramより

癒やされるだけじゃない!アニマルセラピーがもたらす驚きの効果



太田メグさんInstagramより

――先生は大学で動物が人を癒やすアニマルセラピーの研究をされていますが、具体的にどのようなことを行われているんですか?


漆原先生


大学での研究を始める前の話なんですが、僕は最初、ボランティア団体に所属していて。うちの家で飼っている犬と一緒に施設を訪問し、利用者さんに犬とふれあっていただく活動をしていました。そして、このふれあいが生むいろいろな効果がどういうものかを研究したくなって、大学での研究を開始しました。
大学では、「犬とふれあう前後で人間にどのような変化が生じるのか」、「それらは単なる休憩とどのように異なるのか」などを、主に大学生を対象に、実験を行って調べています。また、過去には学生と一緒に「ドルフィンスイム」というイルカと一緒に泳ぐプログラムに参加して、どういう効果があるのかを調べたこともありますね。
僕の研究のような短時間の訪問型のセラピー以外にも、様々なアニマルセラピー活動が海外のものも含め行われていて、病院や施設で実際に犬などのペットを飼う飼育型セラピーや、ユニークなものでは、刑務所で受刑者に犬の訓練や飼育をしてもらうプログラムなどもあります。





太田メグ


そういえば以前、家族で沖縄の水族館に行った時、見たかったイルカのショーに間に合わなくて。「残念だったね」ってプールを眺めてたら、1匹のイルカが、ガラス越しに息子がいるのを確認して、目の前まで来て、何度も水面から体を出したり、「遊ぼうよ!」と誘っているかのように、最後には大きなジャンプをしてくれて。まるで、ショーを見れなかった私たちに、見せてくれたかのような……まあ、それは考えすぎかもしれないけど、でもこれもやっぱり、猫や犬が遊んでほしいときみたいな感じで、コミュニケーションを取りに来ているのかな、って。




漆原先生


おそらくそうだと思います。我々が研究の一環でドルフィンスイムに参加した際にも、最初はイルカが遠巻きに泳いでいるんですけど、慣れてきたら背中をつついてきたり、最後にはヒレをつかめるくらいに近くまで寄ってきたりと、本当に犬や猫、もっと言えば人間に近いコミュニケーションができました。このようなコミュニケーションやインタラクティブが、アニマルセラピーにとってどのように重要な働きをしているのかについては、今後、ペットだけでなく、ロボットやヴァーチャルペットなども利用した実験を行って、調べていこうと考えています。


――普段は人間が猫や動物たちに癒やされていますが、逆に人間側が猫を癒やしてあげる際は、どのようにケアすれば良いでしょうか。


太田メグさんInstagramより


漆原先生


うちの犬も最近、おばあちゃんになってきたので、そこは大きな課題ですね。やはり基本的には関わる時間を増やし、コミュニケーションを取ることでしょう。
猫でも犬でも、本来は人間とそんなに目を合わさない生き物だけど、一緒に生活をしていればよく合いますよね。ペットの犬は飼い主と目を合わせることで、オキシトシンというホルモンが分泌されて、「癒されて」いるようなんですね。このホルモンは飼い主がペットの犬を見たときにも出ますので、飼い主とペットの間に相互作用が生まれているようです。同じようなことが猫と飼い主の間にも起こっていることは、可能性としては十分考えられると思います。



太田メグさんInstagramより

――これは、外猫との大きな違いですね。外猫は警戒しているとき以外は、あまり人間と目を合わさない気がします。


太田メグ


コムタンも最近、人間とのアイコンタクトがどんどん増えてきて、通じている感じがあるというか。ますます人間っぽくなってきた気がします(笑)。



言葉を使わずに心を通わす力。幼い頃から猫と暮らす効果とは


太田メグ


猫と人間の関係というところで言うと、私、「猫ネイティブ」というものに憧れを持っているんですけど。




漆原先生


どういうことですか?




太田メグ


自我が芽生える前から、家の中に猫がいる状態で育った人のことを私が勝手に「猫ネイティブ」と呼んでいて(笑)。猫ネイティブの人たちって、猫のいる空間にすごく自然に入っていけるんですよね。友人の坂本美雨ちゃんも、彼女が生まれた時からずっと猫を飼っている家庭で育った猫ネイティブ。彼女は猫が好きすぎて愛猫のサバ美ちゃんと結婚式を挙げたほどなんですけど、話していても「もう猫と人間の違いがわからない……」なんてすごいことを言ったりして、びっくりしたこともあります(笑)。私は大人になってから猫と出会ったから、その感覚がわからなかったけど、もし自分に子どもが生まれて、そういう状況で育ったらどうなるのかなとは、常々思っていました。



太田メグさんInstagramより

――そういう意味では、息子さんは、まさに猫ネイティブということですね。


太田メグ


息子は、おそらく物心付く前から、コムタンと言葉がない世界で対話していたと思うんです。だけど、早くから保育園に入っていたこともあって、対話できるくらいに言葉を覚えた頃、ある日、家に帰ってきて「どうしてコムタンはお口があるのにしゃべらないの?」と私に聞いてきたんです。すごく驚いて、「え、にゃーって言うじゃん」と返したら、それは言葉じゃないって。他にも「コムタンにはしっぽがあるのに、僕にはどうしてないの?」というのも聞かれて。私たちからすると普通なことも、猫ネイティブな息子には不思議に感じるんだなということが、本当に興味深いです。



太田メグさんInstagramより

――太田さんの息子さんのように、幼い頃から動物と接するメリットは、どのようなところにありますか?


漆原先生


小学校の時に、飼育小屋でうさぎやニワトリのお世話をすることがあったと思うんですけど、日本ではこのような学校での動物飼育、いわゆる「動物介在教育」が明治時代から導入されていて。学校で日常的に動物と接することによる、教育への良い影響を期待されてきたわけですが、実際に様々な良い効果があることを示唆する研究も発表されています。
コムタンと息子さんがされていたような言葉を介さないコミュニケーションは、動物と暮らす上でとても重要なことです。犬に、人間の言葉で「吠えちゃだめ!」と言っても通じません。幼い頃から言葉の通じない動物と一緒にいて、彼らとの間のコミュニケーションを工夫し身につけることで、サインやジェスチャー、表情や声色など、言葉以外の方法で相手に気持ちを伝える力を自然と習得しているかもしれません。このような経験を通じて、きっと息子さんのコミュニケーションはとても豊かなものになると思いますよ。



太田メグさんInstagramより


太田メグ


よくよく考えるとコムタン、息子に対してはほとんど鳴かないんですよね。どうやって接するかといえば、すり寄って頭をグリグリこすりつけたり、ものすごい圧で膝に乗ったり(笑)。私たちならそれでテンション上がるけど、猫ネイティブな息子は塩対応で、「あぁ、いるね」という感じ(笑)。息子のように、動物と心を通わせることを当たり前だと感じるのって、本当に素敵だなと思っていて。



太田メグさんInstagramより


漆原先生


人間同士の対話でも、感情が高ぶったりすると言葉では伝わらないこともあります。そうなるとお互いにとって、相当なストレスになりますし、場合によっては関係が悪化するきっかけになることもあります。なので、「言葉以外の方法でどう気持ちを伝えるか」ということに日常的に向き合うのは、すごく大事です。




太田メグ


そうですよね! 息子がこの先、自分とは違う言葉を使う人や、言葉を話せない人に対しても、意思疎通の工夫をする人に成長してくれたら良いな、って思っていて。そうなる理由のひとつに、「猫と暮らしていたから」があったら素敵ですよね。



太田メグさんInstagramより

――猫と人間の関係を遡ると、古くは古代エジプトの時代から、神聖視されていたり人間とともに暮らしていたと言われています。長い歴史の中で猫たちのツンデレや気まぐれに萌えてきた人間は、今後も翻弄されそうですね。


漆原先生


人間と猫や犬との関係は、時代とともにますます深くなっていますし、強い絆もできていると思います。最近ではペット=愛玩動物ではなく、人間以外の伴侶として人生をともにする「コンパニオンアニマル」という考え方が浸透しており、特に猫は、そういう役割が強いと思います。長寿な子が増えてきているとはいえ、やはり人間よりは短い命ですし、最後まで付き添って、そばにいてあげることが大事だと思います。今回、僕としては、太田さんのお話の中で「猫ネイティブ」という言葉を知ることができて、とても新鮮でした。




太田メグ


ありがとうございます(笑)。私も猫に魅了されすぎた人間として、今後も「癒やしていただいています」の精神でコムタンにお仕えしていこうと思います(笑)。




“かわいい”だけじゃない、しっかり通じ合っているんです

「猫はなぜかわいいのか?」という疑問に始まり、アニマルセラピーや教育、歴史にまで話が及び、結果的にかわいさだけでなく、猫と人間の間にある深い絆をしっかり学ぶことができました。人間が一方的にデレデレになっているものと思っていたら、猫たちも人間といることで癒やされていたなんて、こんなに嬉しいことはないですよね。

猫は人間のことを「狩りもできない、だめな大きな猫」と思っているという説もありますが……いやはや、それでも良いんです。彼らが人間といることに何かしら意味を感じてくれているなら、もうそれだけで充分。

おうちで猫と暮らしているみなさんも、改めて彼らの表情や仕草を観察しながら、「どんなことを考えているのかな」と想像をめぐらせれば、より素敵な猫ライフを送ることができるのではないでしょうか。


太田メグさんInstagramより

取材・文:タカ・タカアキ
企画・編集:人間編集部

当記事はKindai Picksの提供記事です。

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