ハンドボール選手・宮﨑大輔。40歳現役を支える“速読脳トレ”とは

日刊SPA!

◆今年6月、選手兼監督に就任した現在の宮﨑選手

圧倒的な身体能力でハンドボール界のエースとして活躍し、ハンドボールの認知度アップにも大きく貢献してきた宮﨑大輔選手(40歳)。日本リーグでは最優秀殊勲賞や最優秀選手賞、新人王など数々のタイトルを獲得し、一時期は世界最高峰であるスペイン1部リーグでも活動するなど、経歴も実に華々しい。

しかし、そんな宮﨑選手にとって2020年は不運続きの年だった。右肩の手術、暴行容疑による逮捕(のちに被害届も出ない事件であったと判明し、不起訴)、新型コロナ感染と、次々と試練に見舞われてしまったのだ。おかげで引退も危ぶまれていたが、2021年6月に新しい動きが。プロバスケットボールBリーグのアースフレンズ東京Zが新設するハンドボールチームの、選手兼監督に就任したのだ。

このニュースで注目すべきは、宮﨑選手が初の監督業に挑戦するということだけでなく、今後も選手を続けていくということ。なぜ宮﨑選手は、40歳を超え、けがというハンデを抱えてもなお、現役を続行する実力とエネルギーを持ち続けることができるのだろうか。その理由のひとつに、2018年から実践している“速読脳トレ”があるという。

スポーツのパフォーマンスに影響を及ぼす“速読脳トレ”とは一体どんなもので、どのような効果を得られるのか? 宮﨑選手に聞いてみた。

◆「何かを大きく変えなければ」とたどり着いた“速読脳トレ”

宮﨑選手が“速読脳トレ”のトレーニングを開始したのは37歳のとき。長らく離れていた全日本のメンバーに再び入るため、試行錯誤していた時期だという。

「当時は本当に焦っていました。年齢的に選手としてのピークは過ぎているし、なにかを大きく変えなければ現役を続けるのは厳しいと身を持って感じてたので。だから筋トレを強化したりトレーナーに動きを指導してもらったりあれこれ試したんですけど、やはり歳も歳だし、思うように変わらないんですよ。そんななかで、ふと、7~8年前にテレビ番組の企画で体験した速読脳トレのことを思い出したんです」

一度きりの体験だったものの、「速読脳トレは明らかに何かを変えてくれた」というイメージが残っていたという宮﨑選手。そこで、テレビ番組内で速読脳トレを指導してくれた速読脳トレコンサルタントの呉真由美氏を探し出し、すぐに指導を依頼したのだとか。

「僕の気持ちを伝えたら、呉先生は快く指導を引き受けてくれました。そのときに速読脳トレのメソッドを改めてうかがい、僕も改めて納得して、トレーニングを開始したんです」

◆「視力が落ちた」「反応が遅くなった」などの悩みが払拭されていった

速読トレーニング=“本を早く読むテクニックを身につけるために行うもの”と思われがちだが、呉氏が確立した速読脳トレのメソッドはそうではない。速読の手法を用いて脳を活性化させ、脳が本来持っている力を十分に発揮できる状態にするためのメソッドなのだとか。

トレーニングの内容はいたって簡単で、基本は目の筋肉をストレッチして視野を広げる訓練をしてから、「大量の文字を読まずに早く見る」ことを繰り返すだけ。「大量の文字を読まずに早く見る」=脳に大量の情報を早く送り込むことで脳が活性化され、どんどん処理能力が高まっていくという。

定期的にトレーニングを行い脳の処理能力が上がると、たとえば思考スピードや判断力が高まるなどの変化が現れる。すると、スポーツにおいては、「視界に入ったものの動きにいち早く気づくようになる」「状況を素早く的確に把握し、どう動くべきかを瞬時に判断できるようになる」といったメリットが生まれ、自然とパフォーマンスが向上していくのだ。

「僕の場合、年齢を重ねるにつれて、『動体視力が落ちた』『反応が遅くなった』というパフォーマンスの低下に悩んでいました。試合中だと、『以前だったらフェイントでかわせていたのに捕まえられてしまった』というふうに。でも、トレーニングを始めたら、自分がイメージしているように動けるようになってきて、年齢によるどうしようもなかった悩みがどんどん払拭されていったんです。驚くほど手ごたえを感じましたね」

◆パスをもらう前から「その先の動き」を決められるように

速読脳トレにより実感した変化はそれだけではない。悩みが改善し不安要素がなくなると、これまでは意識できなかったことに意識が向くようになり、プレー中に入ってくる情報量が格段に増えてきたのだとか。

「情報量が増えると、いま現在のプレーだけでなく、その先のプレーのことまで考えられるようになります。たとえば、パスをもらう前の段階で、すでに周りの状況を把握できているので、次の動きに素早く移るための準備ができるんですよ。周囲からは『ノールックでパスした! なんで?』と思われるようなプレーをしたときも、自分としては、パスをもらった瞬間に準備をしていた次のパスを出しただけなんです。これは全日本で活躍していた全盛期の頃にもできなかったこと。スポーツにおける脳の力の重要性を知っているか知らないかでは大違いだなと思いますね」

できるプレーが増えたことで、練習にも変化が。

「情報量が増え状況を的確に把握できるようになると、『もっとこうしよう』というアイデアが生まれますし、自分に足りない部分も明確に見えてくるようになりました。たとえば、ユニフォームの色で敵と味方の動きを瞬時に捉えられるようになっているのに、それでもミスをしたとしたら、それは技術不足のせい。視覚的情報が増えたことで、『どのようなパスやシュートがより効果的か?』という課題は見える。そうなれば、あとはパスやシュートの精度をあげていけばいいわけなので、練習のプランを立てやすくなりました」

こうした成果もあってか、2019年には6年ぶりに世界選手権の日本代表メンバーに選出。試合ではベテランとしての存在感を見せつけた。

◆負傷中の肩にも変化が現れる脳のパワーに驚き

その後、日本リーグの強豪・大崎電気を退団し、母校である日本体育大学に再入学して技術や指導方法を学びながら五輪出場を目指していた宮﨑選手だが、先述のとおり2020年に痛めていた右肩を手術することに。いざ手術をしてみると想像以上に状態は悪く、全治は1年~1年半。長いリハビリに生活に苦しむこととなったが、そんななかでも速読脳トレの効果には助けられたという。

「呉先生とのトレーニング後は、不思議なことに固まっていた肩がいつもより動くようになるんです。脳が活性化してブレーキが外れるんでしょうね。機能面での問題だけではなく、『痛い、動かない』と脳で制御している部分も大きいんだなぁと実感しました」

さらに、速読脳トレにより頭も体もスイッチが入りやすくなったとか。

「アスリートは一日休むと翌日にオフからオンまで持って行くのが大変なのですが、休日中のどこかにちょっと速読脳トレを入れるだけで、翌日スムーズに動けるんです。落ち込んでなにもやりたくない時期があったのですが、そんなときでもトレーニングをすると頭がすっきりして生活の乱れをすぐに立て直せました」

◆いずれはチーム全員で速読脳トレに取り組みたい

事件が世間に与えた誤解は大きく、大学卒業後の就職先探しにも苦労したが、今年6月に縁あって新しいハンドボールチームの選手兼監督に就任。現在はチームの体制を整えつつ日々リハビリに励んでいるそうで、チームとしては来年度からの日本リーグ参入、選手としては来年度からの復帰がひとまずの目標だという。

「復帰に不安がないのは、速読脳トレの力が大きいですね。正直、ほかのアスリートには教えたくないくらいのメリットを得ています。チームが軌道にのったら、ぜひ呉先生にチームコーチになってもらい、チーム全員でトレーニングに取り組みたいですね」

40代という年齢をものともせず、成長と挑戦を続ける宮﨑選手。常に新しいものを取り入れて殻を破ろうとする姿勢が、スポーツマンとしてあり続ける彼を支えているのだろう。

〈取材・文/持丸千乃〉

【宮崎大輔】

日本体育大学在学中、スペインへ留学。帰国後、大崎電気に入社、ハンドボール日本代表としてオリンピック選、世界選手権などに出場。2009年には日本人男子初となるアルコベンダス(スペイン1部リーグ)へ移籍。帰国後大崎電気でプレー。 2017年日本リーグフィールドゴール歴代1位(915得点)に到達。2019年3月に大崎電気を退団。4月より日本体育大学に再入学し2021年3月に卒業。

6月プロバスケットボールBリーグのアースフレンズ東京Zが新設するハンドボールチームの、選手兼監督に就任した。1981年6月6日生まれ、大分県出身

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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