『ガンダムUC』~『閃光のハサウェイ』が切り開く宇宙世紀の転換点

宇宙世紀(U.C.)を背景としたガンダムシリーズの魅力を紹介する連載企画もついに最終回。今回は、宇宙世紀を舞台とした作品の新しい可能性を示すきっかけとなった『機動戦士ガンダムUC』『機動戦士ガンダムNT』、そして現在公開中の『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』への繋がりを追っていこう。
OVA『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』が、『機動戦士ガンダム』~『機動戦士Zガンダム』の間の歴史を繋いだように、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』から『機動戦士ガンダムF91』までの間にはまだ語られていない宇宙世紀の「隙間」が存在している。

『機動戦士ガンダムUC』から始まった、宇宙世紀0090年代後半を描く物語は、新しい時代のガンダム作品のさらなる可能性を広げることに繋がっていった。これまで触れられてこなかった宇宙世紀0090年代後半のガンダム作品のミッシングリンクを埋めたのは、『亡国のイージス』『終戦のローレライ』などのベストセラーを手掛けた作家・福井晴敏。2010年にOVAで映像化された『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』は、2006年から『月刊ガンダムエース』誌上にて連載された福井の小説を映像化している。

本作の時代設定は、『逆襲のシャア』から3年後の宇宙世紀0096年。財団法人〈ビスト財団〉がネオ・ジオン残党軍『袖付き』に重要機密『ラプラスの箱』を譲渡しようとする取引に、地球連邦軍が介入。『ラプラスの箱』を開ける鍵となるモビルスーツ〈ユニコーンガンダム〉のパイロットとなったバナージ・リンクス、そしてザビ家の忘れ形見であるミネバ・ラオ・ザビは、宇宙世紀の起点に触れる大きな戦いに巻き込まれていく。
▲『ガンダムUC』より、ユニコーンガンダムを託されたバナージ。

『ガンダムUC』は、νガンダムやサザビーの発展形となる〈サイコフレーム〉を搭載したユニコーンガンダムがニュータイプ能力を抹殺する機能を持っていたり、『ラプラスの箱』が抱える秘密など、「ニュータイプの存在と意味」が重要なテーマとして扱われた。さらに『逆襲のシャア』で発端だけ描かれたモビルスーツ技術の変化、終焉へと向かうジオンの存在にも焦点が当てられ、『ガンガムF91』へと繋がる時代の流れを描こうとした作品になっている。

よりニュータイプに焦点を当てた、『UC』の続編的作品が『機動戦士ガンダムNT(ナラティブ)』。『UC』と同じく福井晴敏の小説をベースにアニメ化、2018年に劇場公開された。物語の舞台は『UC』で描かれた「ラプラス事変」から1年後となる宇宙世紀0097年。暴走事故を起こし行方不明になっていたはずのユニコーンガンダム3号機 フェネクスが地球圏で目撃されるようになり、地球連邦軍の特務部隊と大企業・ルオ商会の増援部隊による捕獲作戦「不死鳥狩り」が決行されるも、ジオン共和国軍がこれに密かに介入してくる。
▲『ガンダムNT』より、サイコフレームを外装したナラティブガンダムC装備。

「不死鳥狩り」に投入されたナラティブガンダムのパイロット、ヨナとルオ商会会長の娘(養女)ミシェル、そしてフェネクスのパイロット、リタという幼なじみ3人のドラマを絡めながら、新たなるニュータイプのドラマが描かれていく。
本作では霊体化などのオカルト的な描写も加わるなど、人類の進化の形であるニュータイプの概念を再定義する試みがなされている。その一方、共和国となったジオン軍が登場するなど、時世やミリタリーバランスの変化が描かれているのも注目ポイントだ。ミネバやバナージが再登場しているところから、本作も『UC』から続く世界観を拡大させる大きなプロローグと捉えることもできるだろう。

(C)創通・サンライズ

『NT』以後の宇宙世紀を描くガンダム作品最新作が『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』。小説『閃光のハサウェイ』は、1989年に富野由悠季監督自らが『逆襲のシャア』脚本第1稿を基に執筆した小説『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』の続編だが、映画として制作された本作は『逆襲のシャア』に連なる物語となった模様だ。

『逆襲のシャア』で描かれた〈シャアの反乱〉から12年後となる宇宙世紀0105年。ジオンからの軍事的な脅威は収束したものの、特権階級による支配を強めた地球連邦政府の腐敗はさらに深まっていた。加速する地球の環境汚染に加え、居住許可を持たない人間を捕まえて強制的に宇宙へと連行する「人狩り」を行う地球連邦政府に対する反感が高まる中、反地球連邦政府運動マフティーが政府高官暗殺という形での抵抗を開始する。そのリーダーは、マフティー・ナビーユ・エリンを名乗るブライト・ノアの息子ハサウェイだった。地球に向かうシャトルの中で、ハサウェイは不思議な魅力を持つ少女ギギ、そしてマフティー掃討を指揮する新任司令・連邦軍のケネス大佐と出会い、ドラマは大きく動き始める――。
▲『閃光のハサウェイ』よりΞガンダム。

本作の最大ポイントは、主人公の敵対する相手が地球連邦政府であることだ。これまでの作品とは違って、『閃光のハサウェイ』では長きにわたり継続してきた地球連邦政府のシステムが「変えなければならない悪」として語られている。ジオン公国が唱えた自治独立の考えは、地球連邦政府にとっては都合が悪いものだったが、本当の意味での「悪」では無かった。『閃光のハサウェイ』は、新たに宇宙世紀を背景とした「善と悪」に迫る物語が繰り広げられることになるのだろう。マフティーの活動拠点が一年戦争で地表に降り注いだコロニーの破片の下にあること、地球連邦政府に反抗する人々が集まるオエンベリが破片で大きな被害を被ったオーストラリアの都市であることなど、一年戦争がもはや過ぎ去った「歴史」になってしまっているように描写されていることも興味深い。
▲地球連邦とマフティーの戦いが描かれる『閃光のハサウェイ』。積み重ねられた歴史は、ハサウェイの人生にも大きな影を落としていく。

ジオンの影響下にある時代が終わりを告げた宇宙世紀0090年代後半は劇中ドラマにおいて、またガンダムシリーズとしての「転換点」であり、だからこそそこに新たな可能性が求められたのだろう。『ガンダムUC』の次なる展開、『閃光のハサウェイ』第2部、第3部が続くことで、宇宙世紀0100年前後の物語は今後さらに厚みを増していくことになるだろう。
劇中の長い歴史を俯瞰して、ひとつの大河ドラマとして、改めてガンダム作品を楽しんでみてはいかがだろうか。各作品のドラマにさらなる深みが増していくはずだ。

>>>『ガンダムUC』『ガンダムNT』『閃光のハサウェイ』場面カットを見る(写真35点)

(C)創通・サンライズ

当記事はアニメージュプラスの提供記事です。

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