夏ドラマ、業界人の本当の評価。今からでも観たいのは「深夜帯の不倫モノ」

日刊SPA!

 各局で放送中の夏ドラマの佳境を迎えている。放送前は、もはや安定の日曜劇場『TOKYO MER ~走る緊急救命室~』(TBS系、日曜午後9時~)や月9ドラマ『ナイト・ドクター』(フジテレビ系、月曜午後9時~)といった救急医療モノや小芝風花と中島健人(Sexy Zone)によるラブコメディ『彼女はキレイだった』(フジテレビ系、火曜午後9時~)、秋元康プロデュースによる考察系サスペンス『漂着者』(テレビ朝日系、金曜午後11時15分~)などが目玉とされてきた。

しかし、東京五輪の中継などと重なったこともあり、国民を巻き込むようなヒット作は生まれずやや低調な印象。そんな夏ドラマを業界人たちはどう見ているのか? 残すところわずかとなった話題作からこれから盛り上がりを見せそうな深夜ドラマまで、今からでもぜひ観たほうがよい作品や気になる俳優について忖度抜きで語ってもらった。

◆期待外れだった火曜10時枠『プロミス・シンデレラ』

まずは制作会社でテレビドラマを手掛けている40代のプロデューサー・A氏に話を聞いた。

「全体的に期待外れの作品が多い印象。近年ヒット作の多い火曜10時枠の『プロミス・シンデレラ』(TBS系、火曜午後10時~)は、演技派の二階堂ふみさんが演技力や表現力をうまく発揮しきれていないし、『ボクの殺意が恋をした』(日本テレビ系、日曜午後10時30分~)は、殺し屋が恋をしてしまうという斬新な設定に注目していましたが、設定止まり。コミカルにするならばとことんそっちの路線にいったほうがよかった気もします」

“設定負け”した惜しい作品ということか……。

◆意外な展開をみせる不倫ドラマ

A氏が個人的に注目しているのはテレ東の深夜ドラマ。不倫を描いた『ただ離婚してないだけ』(テレビ東京系、水曜深夜0時~)と『うきわ ―友達以上、不倫未満―』(テレビ東京系、月曜午後11時6分~)の2作だという。

「不倫ドラマの『ただ離婚してないだけ』(テレビ東京系、水曜深夜0時~)と『うきわ ―友達以上、不倫未満―』(テレビ東京系、月曜午後11時6分~)は面白いですね。

『ただ離婚してないだけ』は、北山宏光さん(Kis-My-Ft2)と中村ゆりさん演じる冷めきった夫婦が、不倫をきっかけに“ある事件”を起こしてしまい、さらなる泥沼に落ちていくといったストーリーで、いわゆる“不倫モノ”の域を超えたサスペンスになっていて、次の展開が気になってしまう。原作はもちろんですが脚本も素晴らしいなと感心しました。北山さんの冷徹なキャラクター作りや作品全体の演出も素晴らしく、ドラマとしても良作です」

◆ほのぼの仕立ての不倫ドラマ

A氏がオススメするもう一方の不倫ドラマである『うきわ』は、ほのぼの仕立てが面白いという。

『うきわ ―友達以上、不倫未満―』も不倫モノですが、こちらはなぜかほのぼのとした気持ちで視聴できる一作。社宅で暮らす門脇麦さん演じる麻衣子と森山直太朗さん演じる二葉がそれぞれ不倫された者同士で交流を深めていく話ですが、2人の距離の縮め方がピュアで切実なんですよね。不倫という行為自体はよろしくないものかもしれませんが、感情移入してしまう作品です」

森山直太朗は連続テレビ小説『エール』(NHK)でも味のある演技をして好評だった。今後俳優としてのオファーが増えるのではないかとA氏は見ている。

◆安心感を持って見られる交番女子ドラマ

また、ドラマや配信向けドラマを担当するキー局の女性プロデューサー・B氏に女性目線での意見を聞いてみた。

「楽しく見ているのは、戸田恵梨香さんと永野芽郁さんが交番を舞台にバディを組む『ハコヅメ ~たたかう!交番女子~』(日本テレビ系、水曜午後10時~)ですね。原作コミックが交番に勤務する女性たちの日常を描くほのぼのとした作品なのですが、そのエッセンスをしっかりと残しつつ、毎回起きる事件をドラマチックに解決していく1話完結モノとしてもちゃんと成立している。

水曜の夜に安心感を持って見られるドラマですね。脚本を担当している根本ノンジさんは『監察医朝顔』(フジテレビ系)でもシリアスなシーンとコミカルな要素をうまく織り交ぜたドラマを作っており、ここ最近では最も注目している作家です」

◆オリジナルで見たかった一作

また、B氏は日本版ドラマの評価が低かった“あのドラマ”も推す。

「業界的には、韓国版のほうがよかった……という声が多い『彼女はキレイだった』(フジテレビ系、火曜午後9時~)も個人的には好きです。小芝風花さんの多彩な表現力や中島健人さんのカッコよさと不器用なところはうまく引き出されているだけに、リメイクではなくオリジナルのラブコメディで勝負していればもっと盛り上がりを見せたのかなと思っています」

世間一般の評価と業界での評価は、意外と違うものなのである。

◆ブレーク必至の伊藤万理華と小西桜子

演技で光るモノを見せてくれたのは『お耳に合いましたら。』(テレビ東京系、木曜深夜0時30分~)で主演を務める伊藤万理華さん。チェーン店が好きな風変わりなOLを等身大に演じており、元アイドルだったとは思えないほどの実力派だなと。もう一人は『うきわ』でおせっかいな女子社員を演じている小西桜子さん。今のところ出番は多くないですが、十分すぎるほど存在感を発揮していますね」

◆『漂着者』は考察モノとして成立するか?

また、B氏から気になる作品がもう一作。

「斎藤工演じる謎の男・ヘミングウェイの正体を突き止めていく『漂着者』(テレビ朝日系、金曜午後11時15分~)も気になるドラマではあります。今のところすべて回収できるのかといった不安が残るくらい謎が多いので、最終話までの間にどれくらい回収しきれるのか。SNSでは考察も盛り上がっているだけに、考察ファンをがっかりさせないラストになればよいのですが……」

◆ネットドラマだからこそできたスリリングな面白さ

続いて、脚本家にもおススメ作品を聞いた。映画やドラマを手掛ける男性脚本家のC氏が選ぶ夏ドラマとは……。

「すでに終了しましたが『酒癖50』(ABEMA SPECIAL)は久々に面白いなと思えるドラマでした。さまざまな事情を抱える酒癖の悪い人たちの混乱や葛藤を描いた作品だったのですが、ブッ飛んでいるようですごくリアルに作られていて、考えさせられるドラマでした。

そもそも小出恵介さんを主演に抜擢すること自体が地上波ではなかなか難しいでしょうし、ネットドラマだからこそ作ることができた重厚なドラマになっていました。不良映画で名を馳せる若手の小林勇貴監督の演出や撮影も引き込まれました」

これまでの地上波ドラマにはない配役、そして企画力。ネットドラマの可能性は大きく、地上波のドラマを越えるアッと驚く名作が生まれてきても、もう、不思議ではないのだ。

◆シリーズ最高傑作の『緊急取調室』

C氏は天海祐希が主演を務める『緊急取調室』も高く評価する。

「『緊急取調室』(テレビ朝日系・木曜午後9時~)は、かなり攻めているなと思いました。特に1話と2話の桃井かおりさん演じる元活動家の女性がハイジャックを決行しようとする回は、シリーズの中でも傑作に入るほどの緊迫感がありました。今後の回も注目していますね!」

テロリストを演じた桃井かおりの怪演も光ったが、その桃井かおりに立ち向かった天海祐希の演技も鬼気迫るものがあり、見応えは十分だった。

ここまで、業界人たちが勧める夏クールドラマや注目俳優を紹介してきた。全国的に再び新型コロナウイルスが猛威をふるい自宅で過ごすことが増えた今こそ、佳境に迫った夏ドラマを観ながらのんびりと過ごす晩夏もよいはずだ。

ライター/木田トウセイ

【木田トウセイ】

テレビドラマとお笑い、野球をこよなく愛するアラサーライター。

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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