タリバン幹部は本当のことを言っているのか?会見の表情を分析

日刊SPA!

◆「タリバンのルール」という言葉に込められた心情

こんにちは。微表情研究家の清水建二です。8月17日、アフガニスタンの首都カブールにて、権力を掌握したイスラム主義組織タリバンによって初の記者会見が開かれ、タリバンに敵対していた集団への恩赦、統治体制、過激派対策、女性の権利、経済、表現の自由・報道に対する姿勢が語られました。

中でも、アフガニスタンが再びテロの温床になるのではないか、女性の権利がはく奪されるのではないか、という懸念が高まっています。

会見で報道担当のザビフラ・ムジャヒド幹部は、「アフガニスタンの国土を他者の攻撃に使うことは許さない…略…(国際社会が)我々のルールを尊重する限り」「女性の権利を認める…略…女性たちがシャリア(イスラム法)に則り生活を続けるならば」と説明しました。しかし、「我々のルール」や「シャリア」の具体的な内容については言及しません。

そこで、ザビフラ・ムジャヒド幹部の表情に注目し、これら条件に込められた心情を推測したいと思います。分析に使用した動画は、以下になります。

<「アフガニスタンの国土を他者の攻撃に使わせない」 タリバン幹部が会見 2021年8月21日アクセス>

ムジャヒド幹部は、アフガニスタンを他者の攻撃に使わせない、と発言をします。

この発言後(0:37及び0:39)、上唇が引き上げられる嫌悪表情及び眉の内側が引き上げられる、眉が引き寄せられる苦悩表情を生じさせます。これらの表情を生じさせ、国際社会の協力と宗教上のルールの尊重を求めます。

◆本当に女性解放をする気はあるのか

これらの表情から、イスラム武装勢力含む友好関係を結んできた諸組織が納得するような形での、宗教上のルールを国際社会が尊重することの難しさ、尊重を求めることの困難さを予期している心情が推測されます。しかし、表情から怒りや敵意は読みとれません。

そして、女性の権利について言及する場面において、女性の重要性に言及し、女性の勤労・教育を認める発言をします。続けて、女性たちがシャリアに則っている限り女性を取り締まらない、と国際社会の懸念を払しょくしようとします。これらの発言をしている文脈の中で苦悩表情が観られます(2:36)。また、何度か上唇が引き上げられ、嫌悪に見える表情が観られます。

苦悩に関しては、前政権が定着させた女性の価値観とタリバンの考える女性の価値観をどうすり合わせるか、20年前の状態に戻すには国際社会の目が厳しい、こうした困難を予期しているゆえではないかと推測されます。

◆タリバン内部が一枚岩的ではないことを示唆か?

嫌悪に見える表情に関しては、ムジャヒド幹部の話すパシュトゥー語の発話の影響を無視できず、嫌悪表情を積極的に特定できません。嫌悪が含まれている可能性にとどまります。

一方、ムジャヒド幹部の横に座る英語通訳の顔に上唇が引き上げられる嫌悪表情が確認できます。次の動画の1:26、1:29及び1:33の場面です。

<Taliban Hails ‘Emancipation’ Of Afghanistan In First Kabul News Conference 2021年8月21日アクセス>

ムジャヒド幹部及び通訳の両者が女性の権利に対し、嫌悪を抱いているならば、これまで通りの女性の権利が実現されることは難しいでしょう。

ムジャヒド幹部に嫌悪はなく、通訳のみに嫌悪があるとするならば、タリバン内部で女性の権利に対する感情の向け方が様々にあり、意見の統一がなされていない、そんな状態を推測することが出来ます。

◆タリバン内部の統制ができていないことが見受けられる

この通訳がどなたかわかりませんが、初のタリバンの会見にて通訳を務めるくらいの人物です。タリバンの思想やムジャヒド幹部の伝えたいことをよく理解し、正確に伝達するのにふさわしい人物だと予想します。こうした間柄においてさえ感情のもつれがあるとするならば、広くタリバン内部でも考え方に相違があると思われます。

実際、タリバンは首都カブールを制圧した直後、タリバンの幹部がある女性キャスターと現地の番組に出演し、融和的な態度を示していました。しかし、本会見後、アフガニスタン国営放送の女性キャスターが出社を拒否されたという報道がなされています。

予想外に早く権力を掌握したことで、タリバン内部の統制が間に合っていないのでしょうか。今後の動向に注視です。

【清水建二】

株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役、防衛省研修講師。特定非営利活動法人日本交渉協会特別顧問。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動、犯罪捜査協力等を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組(「チコちゃんに叱られる」「偉人たちの健康診断」など)で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16・19」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』イースト・プレス、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』フォレスト出版などがある。メールマガジンにて「清水建二のウソと心理の見抜き方」連載中。

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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