内藤泰弘が絶賛『ザ・スーサイド・スクワッド』は【生涯愛せる1作】だ!

現在大ヒット公開中の『ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結』は、ハーレイ・クインほかDCコミックスの悪党たちが10年の減刑を賭けて危険なミッションに挑むアクション超大作だ。脚本・監督を務めたのは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』を手がけたジェームズ・ガン。一筋縄ではいかないキャラクター設定とハイパーなアクション、手加減ゼロのゴア描写がフルミックスされたテイストはまさに唯一無比の魅力を放つ1作に仕上がっている。

ギリギリで本作の試写に駆け付けた漫画家・内藤泰弘とレスキューライター・伴ジャクソン――大学の同級生である二人が放心状態のままダベり倒す、お茶飲み映画談義がスタート。まずはこの話題から――。

――『ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結(TSS)』を観て、自分としてはあまり馴染みがないキャラクターが多いなと思ったんだけど、内藤君は知ってました?

内藤 や、僕もそこまで詳しくなくて。今回観る前に少し調べて来たけれど「こんなマイナーなキャラを引っ張ってくるんだ!」って驚いた。ジェームズ・ガンって『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(GOG)』(2014年)で、そんなに知名度のなかったキャラクターたちを、あの1作で世界中の人気者にするという、すごいミラクルを起こしてるわけじゃないですか。今回『TSS』を観て「この人、『GOG』で成し遂げたことを何回もできるんだ」って本当にビックリして。もう、(登場キャラを)何人好きにさせる気だよ!っていう。

――『特攻大作戦』(1967年)を下敷きにしたというストーリーは、構成的にはトリッキーなところも多いけど、全体にシンプルな印象だったなあ。

内藤 あの個性的なキャラ群の交通整理だけであっという間に時間を食っちゃうから、シンプルなストーリーじゃないと無理でしょうね。だって、出たかどうか印象のない登場人物が一人もいないんだもの。その上で、〝いたかどうかがよくわからない人がいる〟っていうネタがあるというね(笑)。

――キャラに関しての印象はどう?

内藤 これを観るにあたって未見だった『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』(2020年)をおさらいしたんだよ。女の子たちが男どもをギャフンと言わせる作品としてはとても楽しめたけれど、ハーレイのキャラ解釈に関しては個人的には相容れなかったんすよ。『スーサイド・スクワッド(SS)』(2014年)でのハーレイ・クインのカリスマ性が衝撃的だったから、スピンオフも期待していたんだけど……。
▲クレイジーな魅力を放つハーレイ・クイン(マーゴット・ロビー)。

――ハマらなかった?

内藤 メチャメチャ読めない性格の持ち主で、なおかつとんでもなく崇高でキュートな存在でしょう、描くのが異様に難しいキャラクターなんだと思う。でも、今回は「百億万点です!」と思った。絶妙なラインを猛スピードでと言うか、ことごとく自分の憧れたハーレイ像の芯を喰っていて、それでいてそのキャラがチームの一員でしかない、というバランスの凄さ。観終えた後で「結局全部ハーレイに持ってかれちゃったね……」にならないところが素晴らしい。ハーレイだけでもヒロイン枠が余裕で埋まるのに、もう一人魅力的なヒロインを連れてきているし。

――ラットキャッチャー2だね。

内藤 もう大好き、可愛い(絶叫)!

――ちなみに、今回のイチ推しキャラは?

内藤 ……え? 誰か一人に絞ること、できるの?

――いや、僕は箱推しで(笑)。

内藤 箱ですよ、当然! 
▲登場キャラ、全箱推しでお願い致します!

――確かに、全員見どころあるからね。

内藤 最後には怪獣のスターロにまで感情移入しちゃったから(笑)。ネズミの使い方も本当に良かった。南国の舞台設定も、そこにしっかりリンクしていて、クライマックスは割とみっともないくらい涙が出た。あと、乾杯のシーンがあるじゃないすか。

――ああ、メンバーたちがクラブに潜入している場面。

内藤 あれって前の『SS』にも同じようなシーンがあったんだけど、唐突に出てきて「みんないい奴じゃん!」みたいなしんみりする描き方だったんすよね。でも今回はチームアップするというか、メンバーをさらに好きにさせる場面になっていて。多分ジェームズ・ガンは「あれをやるんだったら、こう見せなきゃだろ!」っていうのがあったんじゃないかな~。

――あそこで結構メンバー同士は打ち解けているように見えて、ミッションさえなければ彼らはもっと近しい関係を築けたかもしれない、という切なさを感じさせる場面にもなっているんだよね。

内藤 うん、すごく良いシーンです。

(C) 2021 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics

内藤 それにしても信じられないのがこの作品、ドチャクソにイレギュラーな形で出来た訳じゃないすか。

――そうそう。ジェームズ・ガンは『GOG Vol.3』監督解雇騒動を経て、電撃的なDC作品参加となって。
▲ブラッドスポート(イドリス・エルバ:左)を演出中のジェームズ・ガン監督。

内藤 こんなボンクラに優しい奇跡みたいなタナボタってあるんだねえ。まさに人間万事塞翁が馬というか。いや、本当にジェームズ・ガン尊敬しますよ。映画関係者じゃなくてよかったとすら思う。もしこれを漫画でやられてたら俺、筆を折るかも知れない。「もう俺が頑張って描かなくていいじゃん。みんなこっち観てろよ‼」って(笑)。

――いやいや、こちらはR15+指定だから内藤君のマンガみたいにはいかないってば。

内藤 指定されるだけのことはやってるか~。

――うん、相当な感じだった(笑)。

内藤 アヴァンからスーサイド感満点だからね。悪いことしてるから酷い死に方をしている人もいれば、悪いことをしてないのに酷い死に方している人もいるという。まあ、死は平等に訪れるっていう、ある意味良い話ですよ(笑)。
▲容赦なく危険地帯へと送り込まれる悪党ご一行。

――音楽に関してはどう?

内藤 ジェームズ・ガンの音楽の使い方って、ドラマと楽曲が完全に絡み合って存在しているじゃないすか。ハリウッドの強みって、一度当たったものをシステム化するところだと思っているんだけれど、あの音楽リンクの才能がどこまで分解分析されているのかが気になる……。

――そこは共有できないと思う。むしろ模倣することでダサくなる予感が……。

内藤 そっか、それはありそう。

――ジェームズ・ガンは、絶対使用楽曲を聴きながらシナリオ書いてると思うな。

内藤 うん、マイサントラ作ってね。また選ぶ曲がドンピシャじゃなくて微妙にずらしてくるところが憎い。何だあのセンス。

――既存曲をサントラにする、といえばクエンティン・タランティーノだけど、その辺りのセンスは似てると思います?

内藤 個人的な印象では、ジェームズ・ガンのグルーヴはMVっぽい作り。タランティーノはもっと劇伴扱いになっている気が。編集のドライブ感などは、マシュー・ヴォーンとかエドガー・ライトと共通するところがあると思う。あの辺り何か繋がりあるのかなあ。同時多発かなあ。いやー、しかしまた1本、生涯好きでいられる作品ができましたよ。

――絶対に好きだと思って、今回の取材企画となったわけですよ。

内藤 マジありがとう! もし僕がこの映画の感想訊かれて嫌いだって答えたとしたら、その時は多分後頭部にコード刺さってて何かに操られてますわ(笑)。オフビートなやり取りと露悪的なゴア描写、そして急に出てくる隠せない優しさ……本当に自分が好きなものしか入ってない。はみ出し者が世界を救うっていうのは『GOG』と同じなんだけど、今回はさらにバチッとハマってしまった感ある。ジェームズ・ガン作品史上レコード更新したかも。

――では改めて、内藤君にとって『TSS』はどんな作品になりましたか。

内藤 この映画を擬人化したら、めちゃめちゃ下品でバカな話しかしないんだけど、ここぞの時は優しくて義を貫いてくる本当に良い奴という感じ。そういう友達なんてみんな大好きに決まってるじゃないすか。だからみんなも観よう! 俺今、試写の直後だけど、すでにもうまたあの映画に会いに行きたいんだよ!
▲よし、また観に行くか!

内藤泰弘(ないとう・やすひろ)
漫画家。代表作に『トライガン・マキシマム』『血界戦線』など。現在『ジャンプSQ.RISE』にて『血界戦線 Back 2 Back』を連載中。

>>>『ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結』場面カットを見る(写真10点)

(C) 2021 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics

当記事はアニメージュプラスの提供記事です。

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