ヒカキンの総額1億円腕時計の残価率を算出。全面ダイヤの4000万円ノーチラスetc.

日刊SPA!

―[腕時計投資家・斉藤由貴生]―

◆合計査定額8539万円は安い? 高い?

腕時計投資家の斉藤由貴生です。

大人気ユーチューバーのヒカキンさんが、先日「1億円以上の買い物をする」という動画を公開しました。

その動画では、本来「今持っている腕時計を査定したらいくらになるか」ということがメインだったはずらしいのですが、査定した後に結局1億円以上の買い物をしてしまい、そちらが本編となってしまっている様子です。

今回1億円以上の買い物をしたヒカキンさんですが、実はこれまでに購入した腕時計の総額をみても1億円近いといえます。なお、動画では、ヒカキンさんが今持っている腕時計全部の合計査定額が8539万円とのことでしたが、この数字を見た私は「良い買い物」と思ったのです。

なぜなら、この8539万円という買取額、購入額に対して、かなり良い残価率となっているからです。

ヒカキンさんは、動画内で各腕時計の購入額に触れていましたが、詳細な数字を覚えているモノもあれば、ざっくりとした購入額を説明している場面もありました。ざっくりとした購入額のモノは、私が「いくらぐらいで買っただろう」という推測のもと、彼の今までの購入額を算出。すると、9609万3000円という数値がはじき出されたのです。

今回の査定額である8539万円を推定購入額の9609.3万円で割ると、その答えは、88%となります。

つまり、ヒカキンさんは、これまで1億円近いお金を出して腕時計を買ったものの、その88%が残価として残っている状態。実際、動画内ですべて売るという決断をしたならば、その場で8539万円という現金にできたわけです。もしも、これが腕時計以外だったならば、このような結果とはならないでしょう。

ということで、今回は、ヒカキンさんがこれまで購入した高級腕時計を残価率を中心に解説してみたいと思います。

◆ロレックス デイトナ 116520 黒文字盤

購入額:150万円⇒査定額:243万円 残価率:162%

ヒカキンさんは、それ以前にも腕時計を購入したことがあるようですが、高級ブランドに分類される腕時計として、初めて買ったのがこのデイトナ116520とのこと。

この腕時計の購入額だけ、はっきり「150万円で購入」と詳細な数値を覚えていたようですが、購入した時期は、2013年か2014年とのことでした。

ステンレスのデイトナは、「腕時計の王様」といわれ、20年ぐらい前からいつの時代でも人気No1という存在で、定価では購入できないような人気商品です。ヒカキンさんが購入した当時、この116520は現行モデルだったわけで、まさに当時の人気No1。初めての高級腕時計として、この選択をするというのは、まさに「成功した人の夢の実現」。夢がある買い方だと思います。

なお、ヒカキンさん自身も動画内で言及していましたが、2013年頃において、このデイトナは、最安値で買おうと思ったら120万円台だったとのこと。ちなみに、2010年代における116520の定価は124万2000円とされているため、プレミアム価格で買ったということになります。

しかし、そんなヒカキンさんのデイトナ116520黒文字盤の査定額は、今ではなんと243万円。ですから、残価率は162%ということになります。

◆ロレックス スカイドゥエラー 326939 白文字盤

推定購入額:425万円(筆者調べ) 査定額:343万円 残価率:81%

ヒカキンさんがデイトナ116520の次に買ったのが、このスカイドゥエラーとのこと。デイトナ116520は、一般人でもギリギリ購入可能な「憧れモデル」であるのに対し、このスカイドゥエラーは、雲の上に行ってしまったという感覚。まさに、ユーチューバーとしての成功の証という感じです。

ただ、このスカイドゥエラー、デイトナ116520とは異なり、残価率は100%以下。つまり、デイトナが「値上がり」したのに対し、このスカイドゥエラーの査定額は、購入額を下回っています。

なぜ、購入額を下回ったのかというと、理由は2つ。1つ目は、スカイドゥエラーのホワイトゴールド(WG)モデルの人気が、今そこまで高くないこと。ステンレスの青文字盤はとても人気が高い状態ですが、WGはそれほど高くないわけです。そして、2つ目が新品購入だったことでしょう。この326939の現在中古相場は460万円台といったところですが、ヒカキンさんが購入したと思われる5年ほど前といった時代では中古が350万円以下で売られていたといえます。ちなみに、2019年9月には、中古を約339万円で狙うことができました。もしも、そういった値段で購入していたならば、残価率が100%以上になったわけです。

ただ、ヒカキンさんは動画内でも述べているように「売る気はない」とのこと。売ることを意識せずとも、残価率が81%残るというのは凄いという考え方もできると思います。

◆ロレックス デイトナ 116506A

推定購入額:780万円(筆者調べ) 査定額:1153万円 残価率:148%

ヒカキンさんがこの116506Aを購入された時期は700万円台だったとのことですから、おそらく2015年か2016年頃に買ったと思われます。当時の感覚で「700万円台の腕時計を買う」という行為は、一般的な腕時計ファンの感覚をもってしても「一般的ではない」といえたでしょう。

今でこそ、人気モデルが1000万円台といった価格帯でも、数カ月後にはそれよりも高くなるという現象がありますが、2015年頃においては、そのようなことに該当する腕時計は、せいぜい300万円台が限界といった感覚だったわけです。

実際、この116506Aも、当時は入手困難という感覚はなく、私も正規店で実際に販売されている様子をみたほど。ですから、700万円台のデイトナは、5年ぐらい前の段階だとステンレスとは違って「値上がりするようなモノではない」と思われていたといえます。

しかし、その後、高級腕時計の世界では、いわゆる人気モデルの価格帯が、500万円台⇒600万円台⇒700万円台というように変化。そして、今では1000万円以上という価格帯が当たり前となっています。

そういった変化にまさしく適合したのが、このデイトナ116506Aだといえ、現在相場は1600万円台~といった状態。ヒカキンさんの個体の査定額は、1153万円とのことでしたが、それでも購入額を大幅に上回っています。

ヒカキンさんがこの高いデイトナを持っているということは、すでに2016年頃の段階で、腕時計ファンの間ではある程度の話題となっていたと思います。しかし、その頃の動画スタンスでは、こういった高価格帯アイテムのレビューをするということはなく、このデイトナの話題を出すということもありませんでした。

ユーチューバーという職業が世の中に知られたのは、2013年のCMが話題になった頃からだと思いますが、実際に「儲かる職業」と認識されたのが2015年、2016年頃だといえます。ですから、そういった時期に、ヒカキンさんがこのデイトナ116506Aという高いモデル身につけていたというのは、時代の流れを象徴していたと感じました。

◆オーデマピゲ ロイヤルオーク 26510OR.OO.1220OR.01

推定購入額:1890万円(当時の定価) 査定額:1400万円 残価率:74%

このロイヤルオークが、購入する様子を動画で公開した第1弾だといえます。

ここから、ヒカキンさんの腕時計選択は、クセがすごモノとなっていったような傾向が見られます。先日お伝えした、スギちゃんのデイトナもそうですが、クセがすごい腕時計は、値上がり難易度が高いわけです。

そして、そういったクセがすごい腕時計を新品で買ったならば、より一層値上がり難易度は高いといえます。しかし、それでも残価が74%も残っているというのは、やはりロイヤルオーク人気が高いのだといえるでしょう。

◆パテックフィリップ グランドコンプリケーション 5270/1R-001

推定購入額:2445万3000円(定価) 査定額:1400万円 残価率:57%

動画内で、唯一ヒカキンさんが「もうちょっといってほしかった」という感想だったこの腕時計。実際、残価率は57%と、ヒカキンさんがこれまでに購入した腕時計の中で最も低い数値となっています。

査定額が低い理由は、こういった複雑時計への需要が現在それほど高くないからでしょう。ただ、これがクルマだったならば、2400万円の残価率が57%というのは優秀だといえます。

実際、私がかつて乗っていたロールスロイスは、新車価格が3000万円以上でしたが、私の購入額は50万円。つまり、その時点での残価率は2%。このパテックフィリップは、ヒカキンさんのコレクションの中で、最も残価率が低い腕時計でありますが、それでも57%という数字が残っているわけです。腕時計としては低い印象の残価率ですが、腕時計以外のアイテムと比べるとそこそこ優秀という側面があるかと思います。

◆パテックフィリップ ノーチラス 5719/10G-001

推定購入額:4000万円(動画内で言及) 査定額:4000万円 残価率:100%

パテックフィリップノーチラスといえば、いまや高校生にも認知されているぐらい有名な高級腕時計。多くの人が憧れているのは、ダイヤなどが無いシンプルな3針青文字盤でありますが、ヒカキンさんが所有しているのは、全面ダイヤのクセがすごいモデルです。

動画内で、ヒカキンさん自身も言及されていましたが、こういったダイヤモデルの人気度はそこまで高くありません。しかし、そういったハンディがありながらも、残価率100%となったというのは、ノーチラス人気の凄さを象徴しているともいえます。

◆残価率88%という優秀な数字に

さて、冒頭でもお伝えしたように、これらヒカキンさんの腕時計全てを合計した場合の残価率は88%となります。

デイトナ116520のように、残価率が162%となっているものもあれば、パテックフィリップのグランドコンプリケーションのように、残価率57%という値下がり腕時計も存在。それでも、全体の残価率が88%となっているのは、ヒカキンさんの腕時計選択が良かったということになると思います。

実際、癖がすごい腕時計、なおかつ新品購入というハンディがある状態で、これだけの残価率を叩き出したのは、なかなか凄いといえます。例えば、『癖がすごい✕中古』であるとか、『そこそこ人気✕新品』ならば、高い残価率を狙えることでしょう。しかし、『癖がすごい✕新品』という状態では、残価率が下がっても不思議ではない条件だといえます。それを前提とした場合、この残価率88%という数値は、優秀だといえるのです。

それと同時に、1億円近い買い物をして、残価率が88%も残っているというのは、やはり腕時計は凄い、その一言に尽きると思います。

文/斉藤由貴生

―[腕時計投資家・斉藤由貴生]―

【斉藤由貴生】

1986年生まれ。日本初の腕時計投資家として、「腕時計投資新聞」で執筆。母方の祖父はチャコット創業者、父は医者という裕福な家庭に生まれるが幼少期に両親が離婚。中学1年生の頃より、企業のホームページ作成業務を個人で請負い収入を得る。それを元手に高級腕時計を購入。その頃、買った値段より高く売る腕時計投資を考案し、時計の売買で資金を増やしていく。高校卒業後は就職、5年間の社会人経験を経てから筑波大学情報学群情報メディア創成学類に入学。お金を使わず贅沢する「ドケチ快適」のプロ。腕時計は買った値段より高く売却、ロールスロイスは実質10万円で購入。著書に『腕時計投資のすすめ』(イカロス出版)と『もう新品は買うな!』がある

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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