【Editor's Talk Session】今月のテーマ:大きな目標を掲げたふたりのシンガーソングライターの決断

OKMusic

音楽に関するさまざなテーマを掲げて、編集部員がトークセッションを繰り広げる本企画。第21回目のゲストは、フリーで活動するシンガーソングライターの下舘夏希とYukka。活動歴も拠点も異なるふたりだが、数カ月後にワンマンライヴを控えている。コロナ禍で予定していた路上ライヴを中止し、他のアプローチを選択した下舘と、今年から関東での路上ライヴも始めたYukka、それぞれの決断と葛藤を語ってもらった。

【座談会参加者】

\n■下舘夏希
2015年よりシンガーソングライターとして本格始動。21年1月に『ダテシモの挑戦』と銘打ち、渋谷CLUB QUATTROでのワンマン公演の開催とCD累計1,500枚完売を目標とした企画を始動。

\n■Yukka
2020年より活動開始した、関西在住のシンガーソングライター。21年にワンマンライヴ3公演を企画し、関東にも毎月遠征しながらライヴハウスや路上ライヴで精力的に 活動している。

\n■石田博嗣
大阪での音楽雑誌等の編集者を経て、music UP's&OKMusicに関わるように。編集長だったり、ライターだったり、営業だったり、猫好きだったり…いろいろ。

\n■千々和香苗
学生の頃からライヴハウスで自主企画を行ない、実費でフリーマガジンを制作するなど手探りに活動し、現在はmusic UP's&OKMusicにて奮闘中。

\n■岩田知大
音楽雑誌の編集、アニソンイベントの制作、アイドルの運営補佐、転職サイトの制作を経て、music UP's&OKMusicの編集者へ。元バンドマンでアニメ好きの大阪人。

■7年半を使って売れていないなら、 想像を越えることをしなきゃいけない

千々和
「コロナ禍となって、どのアーティストも思うように音楽活動ができない状況の中、ワンマンライヴの実現に向けて活動をしているシンガーソングライターのおふたりに参加していただきました。下舘夏希さんは2022年1月26日(水)に自身最大規模の渋谷CLUB QUATTROにて、Yukkaさんは2021年10月23日(土)に新横浜LiTにて関東で初めてのワンマンを予定していますが、まずはコロナ禍以前と今とでは活動にどんな変化がありますか?」

下舘
「もともとは芸能関係の事務所に所属していたので、シンガーソングライターと並行してタレント活動もしていました。少しだけですが、テレビやラジオへ出演させてもらったり、主催ライヴやワンマンライヴを行なっていて、対バンなどのブッキングイベントも1カ月に10本ほど出演していたんです。でも、コロナ禍に入ってから自分の中で考えることがあり、7年半お世話になった事務所を退所して、フリーの道を選びました。」

千々和
「退所理由は何だったのでしょうか?」

下舘
「2019年の時点で渋谷CLUB QUATTROでバンドを率いたワンマンライヴを計画をしていたのですが、コロナ禍になって会場が時短になったり、メンバーのスケジュール調整も難しくなったりと、いろいろリスクが高くなってしまったので、それは弾き語りでやることに切り替えたんですね。そんなワンマンの準備と併せて、『CD 1,500枚完売チャレンジ企画』も実施していて、路上ライヴをやろうと思っていたのですが、路上ライヴは事故に巻き込まれる可能性があるから危険ということで事務所的にNGで…でも、1,500枚も売るには路上ライヴができないとキツいじゃないですか。そういったことを踏まえて、自分の目標を叶えるために事務所を円満退所し、2021年に入ってから約7年振りに路上ライヴも再開しました。」

千々和
「渋谷CLUB QUATTRO公演をやろうと決めた理由は?」

下舘
「大きい事務所に7年半いたけど、それでも売れていなかったんです。オーディションを受けさせてもらえたり、いいお仕事をいただけても結局は実力不足だったので、“このまま同じことをしていてもダメだ”と思って決めました。ぶっ飛んでいることをしないと、人の心は動かせないなと。」

石田
「フットワーク軽く動くには、やはりフリーじゃないとね。それに目標を持って動いていたら、自分の意識も高まるし。」

下舘
「はい。今の自分の動員数で考えると200~300のキャパを目指すのが通常なんですけど、普通のことをしていてもダメだし、もう段階を踏んでる場合じゃなくて。7年半を使って売れてないんだったら、みんなの想像を越えることをしなきゃいけないと思ったんです。」

石田
「それで事務所を辞めて、いざ路上に出て頑張るぞ!というところで緊急事態宣言が発令されたんよね。」

下舘
「そうなんです…。マスクをしていても感染するリスクがあるので、その責任を考えて私は路上ライヴを中止しているんですけど、Yukkaさんは今も路上ライヴを精力的にされているじゃないですか。だから、今回の座談会は難しい組み合わせだなと思ったんです。私の意見が100パーセント正しいということはないし、100人いたら100人の正しさが絶対にあると思うんですよね。」

■目標があるからこそ 判断が難しい

千々和
「今はアーティスト活動だけじゃなく、日常生活の中でさえも自分の立場を踏まえていろいろ決断しないといけないじゃないですか。だから、緊急事態宣言中は路上ライヴをやめている下舘さんも、勇気を出して路上ライヴをしているYukkaさんも、その決断は間違っていないと思っています。少し話を戻しまして、Yukkaさんはコロナ禍前後で活動に変化はありましたか?」

Yukka
「結論的に言うとあまり変わっていないです。関西在住なんですけど、住んでいるところがすごく田舎で。大阪に出るまでにも2時間はかかるし、人に音楽を聴いてもらえる場所に行くまでに時間とお金とかがすごくかかるから、コロナ禍に入る前から自分の活動に関しては試行錯誤してきたんです。動画制作は得意なほうだったので、昨年はYouTubeにより力を入れていました。まず、検索に引っかかかるために“洋楽を日本語で歌ってみた”というのをやって、チャンネルの登録者数も増えたんですけど、そこから自分のオリジナル曲の動画を観てもらうのは難しくて。カバー動画を観てくれる人たちはその曲に興味があるだけで、Yukkaの音楽に興味があるわけではなかったんですよね。やっぱり自分の歌を聴いてもらうにはライヴしかなくて、ライヴハウスでもやっているけど、より多くの人に聴いてもらうために路上に出ています。」

千々和
「そのタイミングで関東にも遠征するようになり、今年の初めにワンマンまで決めたんですね。」

Yukka
「はい。やるからには目標を持ちたかったので、今年はワンマンライヴを3公演やると決めたんです。ひとつ目は Yukkaとしての初めてのワンマンだったんですけど、5月に予定していたのが延期になって7月となり、ふたつ目は8月25日(水)に梅田ALWAYSで予定していて、3つ目は横浜でやるぞ!と決めて。その3公演のワンマンに向けて、CDも作りましたし、今年から2日に一回は路上ライヴをやっています。」

千々和
「状況的に不安もあると思いますが…。」

Yukka
「でも、状況が変わるまで待っている時間がもったいないし、止まってても何も始まらないし。路上ライヴもソーシャルディスタンスを保ってちゃんと距離を取ったり、話す時にはマスクをするようにして細心の注意を払っています。」

千々和
「下舘さんも路上ライヴをやりたい気持ちは強いですよね。」

下舘
「めちゃめちゃやりたいです! でも、東京は新型コロナウイルス感染者が1日5,000人を超えていて(8月6日取材実施時点)、その中で路上ライヴをやるとなると“自分は責任が負えるのかな?”と。ライヴハウスだったらソーシャルディスタンスを保つためにフロアーにお客さんの立ち位置が書かれていたり、入場時に住所や名前を書いてもらって、万が一クラスターが発生しても連絡できる手段がありますよね。考えすぎかもしれないけど、もし自分が新型コロナウイルスに感染していたらと考えた時に、路上ライヴはそういった対策ができないからリスクが高いと思ったんです。もし事務所に入っていた時のマネージャーさんが今の私に言葉をかけるとしたら、“こんな状況下で、なぜ路上をやるんだ!”と言うのも分かっていて。私もYukkaちゃんも目標があって動いているから、この話は難しいですよね…。」

■自分の生きてる意味や 存在を証明をするために歌っている

千々和
「先日、Yukkaさんの路上ライヴを拝見しましたが、お客さんとの距離は2メートル以上離れていて、その場で飲食をしている人もいませんでした。でも、それって当日歌い始めないとどんな様子になるか分からないですよね。」

Yukka
「はい。でも、私にとって歌うことは遊びに行く感覚じゃなくて、コロナ禍でも会社に行って頑張って働いているのと一緒なんです。自分の生きてる意味や、存在を証明をするために歌っているんですよね。Yukkaという名前を掲げて立ってるだけじゃダメなので、そこで歌って初めて自分がYukkaであると言えるんです。だから、これからも歌い続けていきたいと思うし…私はそれを人生の目標としてやっているので、コロナ禍で左右されることではないと思っています。」

下舘
「その気持ちもすごく分かる! でも、私はお客さんがどこまで配慮して聴いてくれるのかっていう不安が大きくて。緊急事態宣言が出る前に路上ライヴをやった時、お酒を飲みながら観てる人がいたんですよ。そうすると離れたところから見ると、自分も路上飲みに加担しているみたいに映っちゃうんですよね。煙草のポイ捨てを見た時には“捨てるなよ!”と言ったりしたんだけど、目の前で路上飲みをしていてもライヴを観てくれているのはありがたいことだから言えなくて…。でも、第三者から見たら私も路上飲みをしている一員だし、悪意のある人がその光景をSNSで拡散することだってあり得るとか考えてしまうんですよね。」

岩田
「SNSだと投稿者に悪気がない場合でも違ったかたちで広まってしまう可能性はありますよね。その反響によってはアーティストのブランドに影響が出る場合もありますし。」

Yukka
「悪意を持って言う人は言うし、応援してくれる人は応援してくれるし…と、私は考えるしかないと思ってます。もし聴いてくれている人がお酒を飲んでいたとしても、黙って聴いていたとしても、それはその人たちのことやからって。文句を言われてもその人が悪いとも思わへんし、みんなそれぞれの考えがあるから、その中のひとつの考えとして、私は自分がやると決めたことをやっているという感覚かな?」

下舘
「路上ライヴはもともと使用許可を取っていない場合が多いから、ネガティブなことを言われることもあったし、それがコロナ禍でより神経質になったというか。私は少しでも足を止めてくれたら“TwitterやInstagramのアカウント教えて”とか言ってフォローしたりするし、他人じゃなくて一歩距離を縮めた関係になりたいと思っているんですよ。」

岩田
「その場で距離を縮めて、より深い関係性を作れるのが路上ライヴの醍醐味ですしね。」

下舘
「はい。路上ライヴで出会った十代のファンの子がいるんですけど、その子たちは私が毎日曲を作ってSNSにアップしている企画を全部観てくれているんです。路上ライヴで出会った人って、私の中ではちょっと特別な存在になるんですよ。だからこそ、その人たちのことを思うと、コロナ禍での路上ライヴはより慎重に考えてしまうんですよ。でも、ワンマンの動員数は500人だし、毎日路上ライヴをやらないとチケットもCDも売れないし…。」

Yukka
「下舘さんも言ってくれたように、私が路上ライヴをやると決めた理由も、お客さんとのつながりができるというのが一番大きいです。YouTubeなら一気に1,000人、2,000人という数でチャンネル登録してくれることもあるけど、路上ライヴでは普段ライヴに行かない人も興味を持って立ち止まってくれたり、ひとりひとりの顔が見れるし、“心に刺さった”と言ってくれる人もいて。そこから広がっていくのが、私の理想なんです。」

下舘
「私もSNSでの発信に力を入れているけど、熱量がなかなか伝わらないんですよ。生のライヴに勝るものはないのと同じですね。しかも、路上ライヴは通りすがりの人が自分の歌を聴いて立ち止まってくれる…これって本当にすごいことだと思うんです。それができないとアーティストとしても上に行けないし、ワンマンの成功も、CDを売ることも難しいから、そろそろ私もやろうという決断はしています。」

■コロナ禍だからって 言い訳はしたくない

千々和
「ワンマンまで刻々と時間が迫ってきているわけで…。今後どう活動していくのかもおうかがいしたいです。」

Yukka
「5月に予定していたワンマンを7月に延期開催した時に、チケットを買ってくれていた人が20人くらい来られなかったんです。チケットを買ってくれた時から時間が経って状況が変わったり、緊急事態宣言が発令されたことで来れなくなった人もいると思うんですよ。それは残念だし、悔しいことだけど、コロナ禍やからCDが売れへんとか、コロナ禍やから音楽を聴いてもらえないという言い訳はしたくなくて。これからも影響は受けるやろうけど、路上ライヴもやっていく上で、自分の中では結果を出すために頑張ろうと思っています。10月にやる横浜でのワンマンライヴは、まずチケット100枚の完売を目標にしていて、路上ライヴでも“100枚まであと○枚”と出しながら歌ってるんです。そのために毎月10日間は関東に来て路上ライヴをやっているし、できることは全部やって、ワンマンの当日もいいパフォーマンスをして、成功させたいと思っています。」

千々和
「Yukkaさんは関東は初めてのワンマンライヴで、下舘さんは最大キャパという、おふたりとも未知の目標ですよね。」

石田
「どちらもあと数カ月しかないから“さぁ、どうする?”って感じやね。」

下舘
「でも、人は“さぁ、どうする?”っていう状況になったらすごく考えるんですよ。私はこれまでにお世話になったメディアさんの力を借りたり、いろいろやっていこうと思っています。私は生まれてからずっと貧乏なんですけど、貧乏って何かをするために知恵を使うし、その発想力が自分にはあると思っているから、ピンチはチャンスなんです! 今までやってきたことを思い出しながら知恵をフル活用して、こういう時でも“絶対にやってやるぞ!”って意気込みです。」

石田
「道が閉ざされたり、壁にぶち当たったからって諦めるんじゃなくて、“だったらこうしよう”と考えて、それでも進もうとする気持ちがあるかないかが大事よね。それだけの想いを音楽や歌に対して持っているということやし。」

千々和
「どんなにコロナ禍の影響を受けても屈せずに活動し続けるって、ものすごくエネルギーがいることだと思います。どんなワンマンライヴになるのか、何人が来てくれるのかっていう結果は最後に出ますが、それだけじゃなく、これだけがむしゃらに進み続けているアーティストがいるということはしっかり伝えていきたいです。」

下舘
「そうですよね。だから、まだ時期は分かりませんが、名古屋、大阪、札幌には遠征しようとも思っています。急になると思うけど、その時はYukkaちゃんに路上ライヴができる場所を教えてほしいです!」

Yukka
「もちろんです! 一緒に路上ライヴもやりましょう!」

【下舘夏希】

下舘夏希 弾き語りワンマン
『下舘夏希弾き語る -君は僕と息してる?』
[2022年]
1/26(水) 東京・渋谷CLUB QUATTRO

【Yukka】

『Yukka 2nd ONEMAN LIVE「STAGE2」』
8/25(水) 大阪・梅田ALWAYS
『Yukka 3rd ONEMAN LIVE「STAGE3」』
10/23(土) 神奈川・新横浜LiT

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当記事はOKMusicの提供記事です。

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