富野由悠季のゼロ年代ファンタジー『リーンの翼』に込められた挑戦

BS12 トゥエルビ金曜深夜のアニメ放送枠「アニメ26」にて、サンライズのリアルロボットアニメが続々と放送中、7月30日から3週連続で『リーンの翼』がスタートする。『聖戦士ダンバイン』から始まった富野由悠季監督の ”バイストン・ウェル サーガ” の中でも特殊な立ち位置である本作の魅力を探っていこう。
▲本作のメインキャラ、エイサップ・鈴木(左)とリュクス。

『リーンの翼』は、1983~1986年に発表された富野監督の同名小説をベースにしている。小説は太平洋戦争末期、特攻兵器・桜花のパイロット迫水真次郎がB-29に特攻を図った時、海と大地の狭間に存在する異世界バイストン・ウェルに召喚されるところから始まる。この時代のバイストン・ウェルにはオーラバトラーが存在せず、迫水は直心陰流の剣術と伝説の勇者の証「リーンの翼」を得て ”聖戦士” として活躍するという、正統派ヒロイック・ファンタジーであった。

その後も富野監督によって『ファウ・ファウ物語』(1986~1987年)、『オーラバトラー戦記』(1986~1992年)、『バイストン・ウェル物語 ガーゼィの翼』(1995~1997年)というバイストン・ウェルの世界を描く小説が発表され、『ガーゼィの翼』は1996~1997年にOVA化されている(全3話)。

2005年にアニメ化された本作は、タイトルこそ『リーンの翼』だが、いわゆる原作の忠実なアニメ化ではなく、小説版のパラレルワールド、ありえたかもしれない未来が描かれているのが特徴となっている。
舞台は、在日米軍基地がある現代の山口県岩国市。日本人の母とアメリカ人の父を持つハーフの青年、エイサップ・鈴木は、地上に現れた「リーンの翼の沓」を履いた少女・リュクスと出会う。彼女は自分の父であるホウジョウ王シンジロウ・サコミズの野望を止めるため、地上とバイスト・ウェルをつなぐ力を持つ沓を盗んだのだ。米軍・自衛隊を巻き込む騒乱が起こる中、エイサップはリュクスと共にバイストン・ウェルへと導かれる。そしてエイサップは最新型のオーラバトラー〈ナナジン〉に乗り込んだことをきっかけに、地上とバイストン・ウェルに跨がる、巨大な戦渦に飲み込まれていく――。
▲下級のフェラリオ・エレボス(左)がエイサップたちの案内役に。

>>>『リーンの翼』全6話の場面カットを見る(写真34点)

(C)サンライズ・バンダイビジュアル・バンダイチャンネル

小説版『リーンの翼』の主人公であった迫水は本作では敵役として登場。小説版とは別のルートを歩み、聖戦士としてその地位を固めながらも、妄執に囚われて暴君となった姿が描かれていく。太平洋戦争下で特攻兵の過去を持つ迫水はアメリカ・米軍を憎むメンタリティを持ち続けており、戦後60年を経てなお米軍の駐留を許す戦後日本の破壊を目指す争乱へと発展する。ロボットアニメでありながら、日米の国家関係や軍事・政治・国際問題などを織り込みながら太平洋戦争の意味などを問いかける、富野監督の「戦争と現代」への目線を強く感じさせる挑戦的な作品だと言えるだろう。
▲フガクによる地上侵攻作戦を推し進めるサコミズ(右)。

その一方で、オーラバトラーをはじめとしたオーラマシンの表現に関しても、『ダンバイン』よりさらに進化した表現が追求された。メカデザインは、アニメ・特撮作品で有機的なクリーチャーをデザインしてきた篠原保が担当。ホビーシーンで追求されたオーラバトラーの生物的再解釈を踏まえつつ、より昆虫的・生物的な意匠を取り入れたイメージのバージョンアップが図られている。CGなど新たな技術を取り入れたことで、その動きや戦闘描写、オーラ力などの表現演出も大きな見どころとなっている。
▲さらに一歩進んだオーラバトラーの描写・バトルシーンに注目。

なかかな語られる機会がないが、いまなお色褪せない富野由悠季ゼロ年代の野心に満ちた1作を、この機会にぜひ体感してみてほしい。

(C)サンライズ・バンダイビジュアル・バンダイチャンネル

当記事はアニメージュプラスの提供記事です。

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