虫に刺されて死なないために。アウトドアで要注意の虫リスト

日刊SPA!

  コロナ下で迎える二度目の夏休み。密を避けられるレジャーとしてアウトドアイベントを企画している人も多いのでは? 快適な設備を整えるキャンプ場なども増え、手軽&気軽に自然を満喫できるようになっているけど……油断しているとイタい(かゆい)目にあうことも。

そこで今回、国内外の森でフィールドワークを行うアリの研究者・村上貴弘氏に注意すべき虫とアウトドアでの注意点を教えてもらった。

村上氏はこれまで熱帯の森でパラポネラやヒアリ、キイロスズメバチなど、15種程度のアリやハチ、昆虫に刺されてきたほか、ダニに全身40か所を咬まれ高熱を発した経験をもつ。それについては著書『アリ語で寝言を言いました』に詳しいが……聞けば、我々の身近な林やあぜ道によくいる虫もかなり危険な存在でーー。(以下は村上氏による解説)

◆蚊――世界中で一番人間を殺している生きもの

日本では蚊に刺されるとかゆい、不愉快程度かもしれませんが、世界には怖い病気をもった蚊はたくさんいます。日本でもかつては蚊が媒介する日本脳炎は死に至る感染症として恐れられていましたし、2015年に東京・代々木公園での感染が確認されたデング熱もまた、蚊が原因でした。

東京オリンピック/パラリンピックの開催でCOVID-19のさらなる感染拡大が危惧されていますが、開催が決まったときに昆虫学者たちが考えたのは、世界中から訪れる人間と一緒にさまざま病気を持った蚊が入ってくるのではないかということでした。

好んで刺される人はいませんが、蚊には刺されないにこしたことはありません。

◆ブヨ(ブト・ブユ)――激しいかゆみに

我々のようなフィールドワークに出る人間が、かなり鬱陶しいと感じているのがブヨです。見た目はハエそっくりで油断してしまうからです。チクッと刺されると、多くの人に激しいアレルギー反応と炎症がでて腫れます。そして、とにかく猛烈にかゆい。

刺されたらすぐに流水にさらすと、多少は毒が抜けます。抗ヒスタミン系軟膏を塗っておくといいのですが携帯している人は少ないでしょう。あまりのかゆさにかきむしると患部がグジュグジュになってしまいます。皮膚科の受診をおすすめします。

◆マダニーー西日本を中心にダニ媒介感染症が流行中⁉︎

いま、大きな問題になっているのがマダニです。

とくに西日本エリアを中心に、ダニ媒介感染症――SFTS(重症熱性血小板減少症候群)の被害報告が続いています。熱が出て吐き気や腹痛、下痢に筋肉痛といった症状が出ます。

その致死率は10~30%程度で、2020年12月までに75人の死亡が報告されています。2021年6月22日には関東地方ではじめて千葉県の方が感染し、亡くなられています。関東でも十分気をつけていただきたい。

すべてのダニがSFTSのウイルスを持っているわけではありませんが、ウイルスの保有率はわかっていません。僕の研究センターでもPCR検査で調査を試みたことがあるのですが、小さすぎて検出限界以下になってしまい、正確なデータがとれないのです。

とにかく、咬まれないようにするしかありません。もし、深く咬まれたら絶対に自力で取ろうとしないでください。ウイルスはダニの体内に溜まっています。引き剥がそうとおなかをつまむと中身が逆流して、人間の体の中へ注入されてしまいます(もちろん、すべてのマダニにSFTSウイルスがいるわけではありません)。

厄介なのは、マダニはどこにでもいるということ。ほ乳類にくっついて増えるので、野生動物がいる林や人里近くの裏山や畑、おそらく都内のちょっとした公園にも生息しているでしょう。

一度咬まれるとしつこく、3~4日、ひどいときは1週間ぐらいくっついてることがあります。山に行った1週間後、足にグロテスクな赤黒い塊を見つけたら、血を吸って膨れたマダニだったなんてこともあります。

◆ツツガムシーー症状はコロナそっくり、ツツガムシ病

マダニと並んで、要注意なのがツツガムシです。病原体をもつツツガムシに咬まれるとツツガムシ病を発症します。いまでも、日本全国で年間500人程度が発症し、死者も出ている病気です。

僕自身はツツガムシに咬まれたことはないのですが、ダニより一回り小さいので、おそらく咬まれても気づかないのではないかと思います。

その症状は高熱や悪寒、頭痛や筋肉痛、発疹というものです。登山にでかけて数日後、突然高熱がでたら、今だったら間違いなく新型コロナの感染だと思ってしまうでしょう。

抗生剤を飲めば大丈夫ですが、かなり重症化することもあります。僕の先輩がツツガムシ病で倒れたことがあり、1ヶ月ほど入院していました。

◆ヒルーー流血の惨事のインパクトは大

ヒルは血を吸われるだけで、怖い病気を媒介することはありません。その意味では過度に気にする必要はありませんが、血を吸ってぶくぶくと膨れていくヒル、ダラダラと流れる血など、ビジュアルにインパクトがありショックは小さくありません。

ヒルに咬まれると血が止まらなくなるのは、口からヒルジンという血液を凝固させにくくする分泌液を出すからです。

口の先を皮膚の深いところに入れるので、あせって取ろうとすると、皮膚ごと剥がれてしまうことがあります。無理して剥がしてはいけません。塩水、酢、レモン汁、エタノールや虫除けスプレーをかけたり、ライターの火や線香の先をちょっと当てると、びっくりしてヒルのほうから離れていきます。

ヒルが離れれば、数時間で血は止まります。傷口は流水でよく洗ってヒルジンを流し切りましょう。かゆみが強い場合には病院で抗ヒスタミン剤を処方してもらうと良いでしょう。

◆スズメバチーーメンチ切られたら逃げろ!

スズメバチは人里と森の境界線のところに巣を作ります。甘いものに近寄ってきますので、キャンプ場などで甘いジュースを飲んでいると危険です。びっくりして払おうとして、逆に刺激して刺されるというケースが多いので十分気をつけください。

ハナバチやクマバチなどミツバチ系やアシナガバチなどは、ハチ自ら人間に攻撃を仕掛けることはほとんどありません。いたずらに騒がなければ大丈夫。ただ、スズメバチの場合、じっとしていて大丈夫な場合と、すぐにその場から離れるべき場合があります。

偵察(斥候)役のハチが来たときの様子で、巣からの距離がだいたいわかります。ブーンブーンと旋回しながら飛んでいるようでしたら、巣は遠いと考えられます。刺激せずにその場にじっと止まり、去っていくのを待ちましょう。

ただし、斥候役のハチが「こっちくんなよ」とばかりに、明らかにこちらにメンチを切り、おしりを向けて攻撃しようしたら、すぐそばに巣があります。できるだけゆっくりと、こっそり逃げましょう……といわれていますが無理です。慌てていいのでとにかく逃げてください。

僕もパナマで蜂の巣を崩してしまいキラービー(これは非常に攻撃的なミツバチです)に襲われたことがありますが、すべてを放り出し逃げました。荷物を取りに戻るときの徒労感はひとしおですが、刺されるより断然マシです。

◆アウトドアの虫対策で必要なこと

自然の中に入るときは長袖長ズボンが基本です。加えて、いまはよく効く虫除けスプレーがあるので、状況に合わせて使ってください。

数年前にディートという虫よけ成分が30%含まれているものが一般向けにも発売され、研究者の中では「ついにそこまで、踏み込んだか!」とちょっとした話題になりました。

僕がパナマで虫除けスプレーを使うときは、ディート80%のものを使っています。パッケージにドクロマークが描かれていて皮膚につくと焼けるような痛みがあります。もちろん30%はそこまで強くはありませんが、かなり高い忌避効果があります。

また、知り合いのフィールドワーカーはハッカオイルを使っています。自然由来の優しい成分で子どもも安心して使えます。長袖長ズボンのところに吹きかけておくと、虫が近寄ってこないようです。

そして、山や林に入ったとき、大きな木のそばに行ったとき、畑仕事をしたとき……体をチェックすることを習慣にしてください。我々のような研究者はフィールドから戻ったとき、必ず全身を確認します。一般の人が立ち入らない山深いところに入るためですが、毎回必ず何十個体のダニが洋服についているのを発見します。

◆豊かになった自然と気候変動と

僕が子どもの頃よりダニやヒルは数が増えています。学生時代(30年ほど前)は、フィールドワークに出てダニが体についているということはほとんどありませんでした。意外に思われるかもしれませんが、30年前より自然は豊かになっているのです。

また、地球温暖化の影響で日本の環境が変化している感覚は、僕だけでなくみなさんにもあるでしょう。さらにグローバル経済化の影響でヒアリなどの外来生物も入ってきていますので、厄介度合いは明らかに上がっているのです。

自然と親しむことはとてもいいことです。だからこそ、ここで紹介したようなリスクについては、基礎知識として覚えておいてほしいのです。かゆい、イタいといったイヤな思いをしなくて済むということだけではありません。

COVID-19だけでなく感染症の多くは、みんなの警戒心が薄れたときに流行が拡大するということを繰り返しています。意識をすることで、防げることはたくさんあるのです。

【村上貴弘(むらかみたかひろ)氏 プロフィール】

九州大学持続可能な社会のための決断科学センター准教授。

1971年、神奈川県生まれ。茨城大学理学部卒、北海道大学大学院地球環境科学研究科博士課程修了。博士(地球環境科学)。研究テーマは菌食アリの行動生態、社会性生物の社会進化など。NHK Eテレ「又吉直樹のヘウレーカ! 」ほかヒアリの生態についてなどメディア出演も多い。著書に『アリ語で寝言を言いました』、共著に『アリの社会 小さな虫の大きな知恵』など。

<文/鈴木靖子>

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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