AKURYO - 抵抗のダンスを楽しもう!アンチな人たちとも、フィジカルな接触が可能な言葉を選びたい

Rooftop

きっかけは、ECDさんへの報告
──ニューアルバム『黒いHoodie』発売おめでとうございます! 制作のタイミングはいつごろだったのでしょうか。

AKURYO:2020年にBandcampで『CLASS WAR』というアルバムを配信したんですけど、そのときに1曲あぶれた曲があったんです。それが、『黒いHoodie』の3曲目に入っている「Anthropocene」なんですけど、内容的にもボリューム的にもそぐわなかったので違うアルバムにコンパイルしようかなと思っていたんです。

──前作からの自然な流れだったんですね。

AKURYO:それで、また新しいアルバムを作ろうかなと取り掛かったのが、安倍晋三氏が総理を辞任した時でした。逃げるように辞めた安倍元首相には呆れて、改めて曲を書く気にはなれなかったんですけど、反独裁や反差別を言い続け安倍政権への抗議アクションに参加していたECDさんには、「安倍やめましたよ」って報告がてら1曲書こうかなって思ったんです。

──『黒いHoodie』のリリース文章に書かれていたフレーズ「どうして無力だと思いたがるのか。あるよ。ひとりにはひとり分。力が。」これはECDさんの言葉ですが、今すごく必要な言葉だったなと改めて思いました。

AKURYO:いやぁ、名言ですよね……。この言葉自体が頭の片隅にずっと残っていて、ふとしたときに思い出すんですよ。同じことを考えている人も多いみたいで、TLにもときどきこの言葉が流れてくるんですよ。ああ、いろんな人がこの言葉を支えにしているんだろうな、って。ECDさんの言葉ってストロングだから、そこに力をもらう人が多いんじゃないかなと思って引用をさせていただきました。影響力がデカい人だったんで、ECDさんが亡くなってから、「いつかは曲を書くんだろうな」って思ってはいたんですけど、すぐにはそんな気持ちにはなれなかったんです。でも、このタイミングかなって。僕はECDさんと付き合いがそれほど長いわけじゃないけれど、一緒にいろいろ動いてきたなかでエピソードがたくさんあって、1曲だけじゃ全然足りないですね(笑)。

──ECDさんとは、どこで出会われたんですか?

AKURYO:日本でラップをやっていれば誰でも名前を知っている大先輩ですし、「さんピンCAMP」のDVDが友達の家にあったり、音源を買って聴いたり、ライブも見に行っていてずっと知ってはいました。直接コンタクトをとったのは2009年です。当時、一緒に動いていたクルーの自主レーベルでアルバムを出したんですけど、その音源とリリースパーティーのインビテーションをECDさんのライブの日に渡しに行ったんです。僕が一方的に知っているだけで全くの初対面なのに、「ありがとう」って受け取ってくれて、リリースパーティーにも来てくれたんですよ!

──初対面だったのに会場に足を運んでくれたんですね。音源を聴いてきっとなにか通じるものを感じたのではと思います。

AKURYO:うわー! って思って超うれしくて! お礼を伝えて、そのときに初めてちゃんと話しをしました。僕がサウンドデモに呼ばれるようになったのは2012年くらいなんですけど、ECDさんは2011年の東日本大震災のあとから、素人の乱の反原発デモとかにスチャダラパーのSHINCOさんと一緒に出ていたりして。僕がNO NUKES MORE HEARTSっていう団体のデモに呼ばれたときに、DJとして野間(易通)さんが出ていたんですけど、野間さんとECDさんが繋がっていて僕とひきあわせてくれました。それで、ECDさんと一緒にサウンドカーに乗っていろんなサウンドデモをやるようになりました。

──わたしがAKURYOさんを知ったのは、おそらく「東京大行進」だったんですけど、目の前の風景やそのとき街を歩いている人へのリアルタイムの呼びかけをしているのがすごくかっこよくて、これはライブだなと思いました。サウンドカーに乗って矢面に立つことに抵抗はなかったんですか?

AKURYO:2009年に出したアルバムもなかなかの政権批判的な内容だったんですけど、僕のアティテュードはもともとそんな感じなので、サウンドカーに乗ることへの違和感はなかったです。ラップって即興のフリースタイルという手法があるんですけど、2009年くらいにラジカセを持って路上でフリースタイルをしていたので、サウンドデモでその状況に合わせて言葉を出していくのもそこに似ていました。フリースタイルってその人の地が出やすいので、普段から差別的な言動をしちゃうような人だとぽろっとその部分が出ちゃうと思うんです。だから、普段、自分が考えていることや行動の下地があった上でやれていることなのかなと思います。
クソッタレな世の中だけど、抵抗のダンスを踊ろう
──1曲目「黒いHoodie」で、"お前は日本人か?"って肩をつかまれたり、ヘイトデモのカウンターで警官から、"にいちゃん、色々大変だな"って言われたエピソードが入っていますが、自分自身も似た経験があるのでとてもリアルな風景でした。

AKURYO:色々大変だなって、「なに言ってるんだろ?」って思いますよね。差別発言をくりかえすヘイトデモはちゃんと止めてよって。"彼らが言うところの秩序"ってなんなんだろう。まぁ、組織で動いていると警官も機械的にはなりますよね。その場その場のコミュニケーションでどうにかなる問題じゃないけど、それはあまりにもだろって思うことが多すぎる。

──こういう出来事が起こったとき、「これは曲にしよう」って心のなかで思いますか?

AKURYO:その場というよりも、「こないだこんなことがあってさ」って友達に話しながら、「あ、これ曲にしよう!」って思うことが多いですね。ラップ自体が話し言葉でもあるし、会話から生まれることが多いかも。実は1バースめの"お前は日本人か?"の部分は、10年前くらいに友達と「Fuck The Police」をテーマにフリースタイルをやってたのもきっかけで。実体験からスラスラ言葉が出て来たので一曲作れるなって感触は得ました。

──えっ?! 今の時間軸だと思って聴いていました。そう思うと本当に社会ってなにも変わってないですね……。

AKURYO:そうなんですよ、変わってないんですよ! 衝撃ですよね。僕も書きながら、「これって10年くらい前のことだけど、今と状況変わってなくない?」って思って。ひきますよね(苦笑)。

──2曲目「不協和音」には気づきをもらいました。さすがに今は減りましたが、少し前は怒りの表明をすると下品だと言われたり、相手と同じ土俵に乗るのやめなよと言われることがあったので、"響き渡らせる不協和音"というリリックを聴いていたら、社会の不条理には不協和音を鳴らしていく行為自体に意味があるな、と。

AKURYO:ありがとうございます、これは民主主義やプロテスターへの応援歌として書いたんです。イントロに香港の活動家アグネス・チョウさんが釈放されたときの音声が入っているんですけど、アグネスさんが欅坂46『不協和音』を聴いて乗り切ったっていうことを言っていたんです。香港も大変なことになっているし、この曲を書いていたときはトランプ氏が大統領だったし世界中で民主主義がおびやかされていた。それは今もそうですけど、そのなかで象徴的なアグネスさんが不協和音っていうフレーズを出したので、それで1曲作ろうって思って書きました。

──3曲目「Anthropocene」は気候変動と格差社会についてのテーマではあると思うんですけど、これを聴いてAKURYOさんのサウンドカーでの姿を思い出しました。"爆音で踊り狂うANTIFA"という言葉がすごく印象的で。怒りの楽曲だけれど、"拳をあげる"とか"怒鳴り声"といったニュアンスではなくて"爆音で踊り狂う"っていうのがすごくいいなと思います。

AKURYO:僕自身、ダンスが好きなんですよね。スピーカーの前とかサウンドシステムの前とか、とにかく大きな音で踊るのが好きで、プロテスターの人やANTIFAの人たちにも、「こんなクソッタレな世の中だけど、大きな音で抵抗のダンスを楽しもうよ」って思う気持ちが常々あります。やっぱりサウンドデモとかレイヴって、映像で見ても最高なんですよ。ダンスはポジティブでもあるし、抵抗的なものでもあるし、素晴らしいものだなと思います。

──怒り続けると燃え尽きてしまいそうだなと思うところがあるので、こういう楽しみもありながら継続ができるやり方っていいですよね。

AKURYO:怒るのはカロリー使いますからね。「なんで怒んないの?」って言われても、その気持ちはわかるけど今はちょっとしんどいって思う場面って誰でもあると思うんですよ。今はSNSがあるから、声をあげなくても情報をシェアしていくっていうやり方もあるし。だから、怒れるときに怒れる人がブチ切れておこうって思っています!

──4曲目「続・東京2020」、"てんで機能不全のパブリック"ななかでまさに"俺達の命には無頓着"で、この歌詞のままの現実になってしまいました。

AKURYO:これはいちばん新しい曲ですね。本当はオリンピックについて曲を書く気はなかったんですけど、ジャケットを書いてくれた佐藤B咲くって普段が社会的なことや政治的なことを話す人ではないんですけど、「まじでこの状況でオリンピックやるのむかつく」ってラインを送ってきて、彼がこんなこと言うのめずらしいからそれで僕の気持ちに火がついて、1曲書いてみようかなって思ったんです。

──佐藤さんご自身からの反応はいかがでしたか?

AKURYO:「この曲がいちばんいい」って言ってました、作ってよかったです(笑)。

──まさにインタビューさせてもらっている今日、脳科学者の方がオリンピックに反対する声をあげる人を、"ノイジーマイノリティ"と表現していましたが、緊急事態宣言中のオリンピック開催やワクチン摂取の遅さ、命への配慮がどんどん鈍くなっていることに疑問をもつことがノイジーマイノリティと呼ばれるならば、不協和音を鳴らし続けたいですね。

AKURYO:ノイジーマイノリティって、ね……どういうつもりなんですかね。普通にイベントとしてオリンピックが好きな人もいるのはわかるけど、とてもじゃないけど今はそんな状況じゃないですよね。この楽曲製作時は、これからワクチン摂取が進んでいく雰囲気だったんですけど、実際ふたをあけたらワクチン全然足りてない! 僕の予想よりさらにひどい現実だった。ほんとうにお粗末だなと思います。

──5曲目「Exodus」では、"邪魔する奴らのケツは蹴っ飛ばす"と表現されていますが、スルーするでも置いていくでもなくて蹴飛ばすっていうところに、諦めていないぞいう熱を感じたのですが意図したところはありますか?

AKURYO:フィジカルな語感を意識的に使っていきたいと思っているんです。邪魔する奴らを置いていってスルーをするよりも、アンチな人たちともある程度はフィジカルな接触を匂わせる言葉を選びたいんですよ。音楽ってナマモノでラップは言葉だし、それを使えばアンチの人とも接触ができるかなって。あとは、コロナ禍でこういう状況だから、よりフィジカルなものを選びたい気持ちもありますね。僕はバンドが好きで、バンドへの憧れやリスペクトがずっとあるんですよ。だからせめて言葉だけでも、体感できる生々しいものにしたい。ひとりでやっているとサウンドは限界があるから、ラップでいかにバンドのようなフィジカルにもっていくか、って。たぶん、届けたい対象が自分の中で見えているのが大きいと思いますね。

──その対象のなかには、まだ声をあげる前の人も入っていますか。

AKURYO:入っています。思っていても声に出せない状況っていくらでもあると思うから、僕の音楽を聴いて一歩でも気持ちが前に進んでもらえたら嬉しいし、ラッパー冥利につきますね。
「女性の問題であれば男はなにもしないでいいと思ってる」に、背中を押された
──6曲目「わきまえない女たちへ」。これは、森(喜朗)氏の発言についてだと思うのですが、この楽曲を制作するのは覚悟もあったのではと思ったんです……というのも、ラップっていう世界には特に男性社会っぽいイメージがあって……。

AKURYO:あ、よくご存知ですね(苦笑)。この曲を出すのは怖かったですよ、女性が聴いたらどう思うんだろうって。そもそも2017年の#MeToo運動から僕自身の女性観や言動などを省みるようになりました。本や人から色々学んでいるところで森氏のわきまえない発言騒ぎが決定打になって、これは曲にしないとだめだって思いました。でも逆に、「しゃしゃり出やがって」って思わせてしまうかなって迷いもありました。ちょうどこのアルバムのリリース直前に映画『モキシー~私たちのムーブメント~』を見ていて、そのなかで学校の男性教師が女の子たちに、「女性の問題だから意見を言う気もない。君達を尊重し口は出さない」って言うシーンがあるんです。すると一人の女生徒に「女性の問題であれば男はなにもしないでいいと思ってる」って言われるんです。そこで、あっ! って気づいて、それでもう背中を押されましたね! ごもっともです……って。どうにか下支えになれないかなって、応援している人はここにもいますって気持ちを示したくて作りました。

──7曲目「聴コエマスカ」。"ちゃんと聴こえますかEとCとD"は手紙であり、ECDさんの背中を追うわたしたちの決意確認でもあるなと思いました。AKURYOさんにとってECDさんはどんな存在でしたか?

AKURYO:大先輩ではあるんですけど、話すとシンプルな人だし、いちミュージシャンとしてぶっ飛んでいるし、得体の知れない人でもあった感じもします。インタビューで話すと収まらないくらいの気持ちがありますね。

──いろんな人に、実際に行動を起こすきっかけをくれましたよね。

AKURYO:そうですよね、そこも尊敬するところでもありますし、とにかくでかい人物すぎて。僕から見たECDっていう人物像は、今後も曲を作って表現していきたいですね。あの人には言い残したことがまだまだあるんで、あっちで聴いてほしいです。

──声をあげてもあげても変わらない社会のなか、声をあげることに意味がないわけではないことは知っているけれど、いい加減諦めそうになる場面がこれからも多くの人の葛藤として出てくると思います。誰もが、「もうやめた!」と一抜けできてしまうなか、なぜずっと作品を作って声をあげ続けていられるのでしょうか。

AKURYO:今、それを聞かれて思い出したんですけど、このアルバムの制作期間ってブラック・ライブズ・マターのタイミングと重なっていたんです。それで、黒人の社会運動の歴史を見聞きしたんですけど、やっぱり歴史は長いしすごく過酷で、やっとここまで来たのにそれでもまだあんな事件が起こってしまう。あれだけ頑張っているのにまだこんな社会なんですよ、それでもまだ続けて抗議の声をあげ続ける。それって見習うべきだし、僕自身も勇気付けられたし、怒るべきときには怒らなくてはっていうのも教えられたし。不協和音のアウトロにインプレッションズの「People Get Ready」を入れてるのもリスペクトを込めてのものです。BLM運動の歴史って、経験と知識と行動の積み重ねなんだな、って気づきました。一発逆転なんてあるわけないから、行動や戦略も継承をしてずっとこれまで積み重ねて、さらにアップデートもして、すげえなこの人たちって。BLM運動のように特定のリーダーをおかずにSNSを使って各地で広げていくやり方は、日本では3.11以降、SNSデモとかで広まり始めている。そう思うと日本なんてまだ始まったばかりだなって、むしろこれからでしょって気持ちがありますね。変に焦らず、これから先の子どもたちや若い人へ道しるべになれるものを作っていけたらいいなと思います。

──生活と同じように積み重ねていくということですよね、そう思うと余計に、ECDさんのあの名言はこれからも響き続けるのだろうなと感じます。

AKURYO:そうなんですよ、そこに繋がっていくんですよね! ワクチン不足やオリンピック開催など納得いかない不条理なことがたくさんあるなかでも、変にヤケクソにならず、自分が培ってきた信念やスタイルやスキルを駆使して、それぞれが抗ったり生き抜いたりしていきたいです。

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photo:乱脈 at 大久保水族館

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