クルマで投資は可能か? 楽しく使って高く転売するプロが考えてみた

日刊SPA!

―[腕時計投資家・斉藤由貴生]―

◆クルマ投資を考える

腕時計投資家の斉藤由貴生です。私は普段、腕時計を「買って⇒使って⇒高く売る」ということを実践しているのですが、今回はそれをクルマでもできるのかということについて考えてみたいと思います。まず、“クルマ投資”が成立するためには、「今の相場よりも将来高くなるクルマがあるのか」ということが大前提として必要です。では、実際のところどうなのか。その答えは、YESとなります。

最近、GTRなど国産スポーツカーの値上がりが話題ですが、空冷世代のポルシェなどは数年前の段階から目立って上昇。値上がりする車種は、それなりにある状況です。また、私個人の経験としても「買った値段よりも高く売れたクルマ」が何台かあります。ということで、まずはじめに、これまで私が「買った値段よりも高く売れた」という車種を紹介したいと思います。

◆ホンダオデッセイ(初代)

これは、免許取り立てのときにタダでいただいたクルマ。そして、自分の元に来てから4年後に売却することができたのです。

その際の売却額は20万円。私の友人が買ってくれたのですが、「もとはタダで貰った」といっても、「20万円で買う」といってくれたため、その価格で譲ることとなりました。買った値段は0円ですから、『0⇒20万円』ということで、この場合の利益は20万円となります。

ただこれは、車種自体の相場上昇というよりは、「0円」でもらったクルマをたまたま売ることができたというラッキー事例だといえます。高く売れたといっても、このオデッセイは、所有期間中に3度、車検を取得。車検の際、タイミングベルトを交換するといった重整備も行っています。ですから、整備代等の維持費を考慮すると、20万円程度の利益では全を賄うことは全くできていません。

◆日産マーチカブリオレ(5MT)

次の「高く売れた」という事例は、日産マーチカブリオレ。このクルマは、総生産台数が3000台程度といわれている希少車で、中でもマニュアルミッション車は超希少。

私は2004年頃から、この5MTのマーチカブリオレが欲しいと思っていたのですが、なんと2006年、そんな貴重な5MTのマーチカブリオレをダダで引き取ってほしいという書き込みをネットの掲示板で発見。もちろん、即連絡しました。そして、私が最も早くメールしたため、無事入手することができたのです。

こちらもタダで貰ったクルマのため、何らかの整備はしなくてはならないだろうと思ったのですが、それほど重整備の必要はなく、難なく車検を取得。その後、壊れることもなく2年乗った後、ヤフオクで約8万円で売却することに成功しました。

買った値段は0円ですから、『0⇒約8万円』ということで、この際の利益は約8万円となります。

とはいえ、実はこのマーチカブリオレ、車両本体は0円だったものの、私の家からかなり遠い場所にあったため、ゲットする際に陸送費がかかっています。その他にも、車検代といった費用がかかっているため、それらを考慮すると8万円の利益では足りません。

オデッセイもマーチカブリオレも、「買った値段⇒売った値段」という観点では、プラスであるわけですが、「維持費」を考慮すると決してプラスではないのです。

◆日産レパードJフェリー(V8)

そして最後に、「買った値段⇒売った値段」がプラスとなったのがレパードJフェリーなのですが、このクルマは唯一「維持費」を考慮してもプラスとなっています。

私は、このレパードJフェリーを日産ディーラーから総額62万円で購入したのですが、その62万円には自動車税と車検代が含まれているのです。そして、私は約1年乗った後、このクルマを売却しました。その際の売却額は、約73万円。『62⇒73万円』ということで約11万円の利益となっています。

私がこのクルマを買ったのは4月でしたが、売却したのは3月。ですから、2年目の約8万8000円という自動車税を払うことなく売却できたため、11万円の利益はしっかり目に残っているわけです。また、整備費用という観点では、このレパードJフェリーには日産の1年保証が付いていたため、整備費用は全くかかっていません。とはいえ、故障もしなかったので、保証も使いませんでした。そのため、約15万円という利益のほとんどが残ったということになり、唯一「維持費」を考慮してもプラスになったクルマというわけです。

しかし、そうはいっても、このレパードJフェリーに発生した費用すべてを考慮すると「プラス」とはなりません。

◆維持費をどこまで考慮するか

例えば、自動車税や整備費用といったことの他の維持費として、任意保険や駐車場代がかかります。また、ガソリン代まで考慮するとさらにその「利益」は圧迫されることでしょう。

車両保険を付帯させない任意保険代ぐらいであれば、年3万円程度であるため、そこまで大きな負担とはならないでしょう。けれども、駐車場代までを考慮するとなると、例えば、都内の場合だと、おおよそ月2万円ぐらいが相場。そうなってくると、「維持費」を含んで「クルマに乗って利益を出す」ということを実現させるためには、クルマ本体が、「数百万円単位」といった値上がりを実現する必要が出てきます。

◆完全に「買った値段よりも高く売る」ためには何が必要?

では、そういった「維持費」を考慮した場合でも利益を出すということは可能なのか。これまでのクルマの値上がり事例をもとに考えてみたいと思います。

例えば、空冷ポルシェの場合、2006年頃の相場は200万円程度。それが現在では600万円以上といったところであるため、約15年で400万円程の値上がりとなったといえます。15年で400万円の上昇という場合、1年あたりの値上がりは約26万円となります。そうなると、単純に、1年の維持費を平均26万円以下にする必要があるわけです。

では、1年26万円以下という維持費で、ポルシェに乗ることができるのでしょうか。答えは、おそらく「いいえ」となります。

私の計算によると、1.5リッタークラスの普通車でも、乗れる状態(ナンバー装着+任意保険加入)という状態だけで、年間13万円ほどの維持費がかかっています。そうなると、先の26万円分の13万円はすでに「確定」であるわけですから、残りの13万円でポルシェの整備代等を賄わないといけません。

ポルシェの維持費として、年13万円程度の予算は可能なのかというと、おそらく難しいでしょう。もちろん、ガッツリ整備した翌年、翌々年といったタイミングで年26万円以下で済むということはあるでしょうが、15年間の平均維持費が年26万円以下ということを実現するのは「かなり難しい」ことだと思います。

ですから、「乗って⇒使って楽しんで⇒売る」という前提で、クルマ投資を成功させるということは、難易度がものすごく高いゲームだといえるのです。

◆乗らないのであれば利益を出せるかも

ただし、ナンバープレートをつけずに「ただ保管しておく」という観点では、利益を出す難易度はぐっと低くなるといえます。先のポルシェの事例をもとにすると、維持費が年26万円以下になればよいわけですが、ナンバープレートを付けない場合の維持費は「保管料」のみとなるのです。

ただ、その場合でも、年26万円以下にするためには、月2万円以下(26÷12=2.2)の駐車場を借りないといけません。また、長期保管するためには、ガレージといった良い保管環境が重要であるため、駐車場代は相場よりもやや高いということになります。

車庫を有り余るほど持っているという人の場合、「買う⇒保管⇒高く売る」ということを容易に実現できるかもしれませんが、一般人にはハードルが高いといえるでしょう。

また、クルマの場合、実際の仕入れ値と店舗の価格に乖離があるというケースもあります。もちろん、車種によっては実際の仕入れ値も高いという場合も少なくありませんが、注意しないと、単に“そのお店がたまたま高く売っているだけ”という場合もあるわけです。

そのため、その車種が本当に「高い」のか否かを調べる必要があるわけで、ある程度「業者オークション」の知識も必要になってくるでしょう。

◆結論「難易度は超高い」

ということで、「クルマ投資は成り立つのか?」ということを考えてみたわけですが、「買って⇒使って⇒高く売る」ということを実現させるのは、難易度が超高いということが分かりました。

また、「乗らない」という観点でも、『空いているガレージを持っている』という人でも無い限り、「買って⇒高く売る」ということは困難であります。

価格が高いものでも、実は「買った値段よりも同じか、高く売れる」ため、本当の消費額は「高くない」というものがあります。そういったことに該当するのは、不動産、腕時計、エルメスなどであるわけですが、金持ち視点では、それらは「買った値段=消費額」ではないため、意外に気軽に買うことができるわけです。

しかし、クルマの場合、買った値段よりも高く売るということを実現させるのは至難の業。

超金持ちという方であれば、自宅の有り余っている地下駐車スペースに、掘り出しもののフェラーリを何台も置いておくということができるかもしれませんが、一般的な住環境では、それは不可能です。つまり、「クルマ投資」は、クラスに1人いるぐらいの「普通な金持ち」では、困難な遊びだといえます。この趣味を実行できるのは、かなりな金持ち限定、ということになってしまうわけです。

また、不動産投資されている方の場合、所有物件の空き駐車場を活用するという手もあるでしょう。ただ、この場合でも、「クルマ投資」をするためには「不動産投資」をしていることが前提となってしまいます。

ですから、クルマの場合、買った値段よりも高く売るということを重視するよりも、年13万円程度の維持費(+駐車場代)は、絶対かかるという前提で、「買った値段と同じぐらいで売れる」ということを狙うのが良いと思うのです。<文/斉藤由貴生>

―[腕時計投資家・斉藤由貴生]―

【斉藤由貴生】

1986年生まれ。日本初の腕時計投資家として、「腕時計投資新聞」で執筆。母方の祖父はチャコット創業者、父は医者という裕福な家庭に生まれるが幼少期に両親が離婚。中学1年生の頃より、企業のホームページ作成業務を個人で請負い収入を得る。それを元手に高級腕時計を購入。その頃、買った値段より高く売る腕時計投資を考案し、時計の売買で資金を増やしていく。高校卒業後は就職、5年間の社会人経験を経てから筑波大学情報学群情報メディア創成学類に入学。お金を使わず贅沢する「ドケチ快適」のプロ。腕時計は買った値段より高く売却、ロールスロイスは実質10万円で購入。著書に『腕時計投資のすすめ』(イカロス出版)と『もう新品は買うな!』がある

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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