『特別展 ミイラ「永遠の命」を求めて』最終会場の大阪が開幕、42体ものミイラづくしの会場をレポート

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大阪・大阪南港ATC Galleryで『特別展 ミイラ「永遠の命」を求めて』が7月10日(土)から9月26日(日)まで開幕中だ。本展では南米、エジプト、ヨーロッパなど世界各地から42体ものミイラが集結。「ミイラを科学する展覧会」としては国内最大級で、最新調査と研究手法を駆使した研究成果を踏まえた展示だけでなく、ミイラの背景にある様々な国の文化や死生観、科学的に明らかになったミイラの実像やミイラに関わる人々の活動など、多岐に渡って紹介されている。今回はそんなミイラ尽くしの展示会場の模様や見どころの一部をご紹介したい。


『特別展 ミイラ「永遠の命」を求めて』 撮影=黒田奈保子
『特別展 ミイラ「永遠の命」を求めて』 撮影=黒田奈保子

エジプトだけじゃない!? 世界中にあるミイラに迫る!


「ミイラ」と聞いて想像するのはどんなものか。古代エジプトのピラミッドなどで発掘されたものや、包帯でぐるぐる巻きにされたゲームやアニメに登場しているような姿だろうか。そもそもミイラは「長期間原型を留めている死体」で、その成り立ちには2種類ある。ひとつは「自然ミイラ」で、特殊な自然環境や偶然によって出来たもの。もうひとつは防腐のための処置などが施された「人工ミイラ」だ。後者は死んだあとも地域社会の一員であると考えられたり、生贄や来世の復活のためだったりと目的も死生観も様々。現在では世界各地でミイラの学術研究が積極的に行われ、ミイラ作りの工程やその背景にある多様な文化が明らかになりつつある。

『特別展 ミイラ「永遠の命」を求めて』
『特別展 ミイラ「永遠の命」を求めて』

本展では、42体の世界各地のミイラをエリアごとに4章に分けて展示。まずは第1章「南北アメリカのミイラ」へ。と、その前にオススメしたいのが【音声ガイド】のレンタルだ。ナビゲートするのは俳優の大沢たかお。ゆったりとした穏やかなあの「イケボ」で、各展示のミイラやその文化や宗教などを案内してくれる。じっくりと見入ってしまうのは怖いかも……という人や、もっと詳しい説明が欲しい! という人にぜひオススメしたい。

【音声ガイド】を片手にようやく第1章「南北アメリカのミイラ」へ足をすすめる。南北アメリカには数多くのミイラが発見されていて、現存する世界最古の自然ミイラはアメリカ合衆国・ネバダ州の洞窟から発見された約1万年前のものだが、ここでまず展示されているミイラは「チンチョーロ文化のミイラ」、チリ北部海岸の砂漠にすむチンチョーロ族が作った人工ミイラだ。約7,000年前、世界最古の人工ミイラ文化として知られ、今回は約5,200年前のこどものミイラのレプリカが展示されている。X線画像で全身をくまなく映した映像も展示されていて、普段は観ることはできない内部まで詳しく知ることができる。

『特別展 ミイラ「永遠の命」を求めて』
『特別展 ミイラ「永遠の命」を求めて』

続いての展示はペルー北部の高地に位置するチャチャポヤス地方で発見された「チャチャポヤのミイラ・ジャングルのミイラ」。この地方ではインカ帝国からの征服を受ける以前から先祖の遺骨を布で包み、崖の岩棚に安置する風習があったという。様々な研究から、インカ帝国の支配後にミイラの作り方が変わったことがわかっているが、古代アンデス文明では文字が残っていないため、ミイラの背景にある思想や宗教的背景は未だ謎に包まれている部分が多い。それでも、展示されているミイラには頭部に生前の表情を思わせる刺繍が施されていて、「遺体を保存し、生きているように訪問して敬う」という先祖崇拝のひとつの在り方が存在していたことが理解することができる。

と、難しいことを書いてみたが「チャチャポヤのミイラ・ジャングルのミイラ」では他とは明らかに違ったビジュアルに注目してほしい。布で巻かれ、ヒモでぐるぐる巻きにされ、頭部にはヒモで表情が描かれている。その表情はポップで思わずじっと眺めてしまう。ミイラ=死体だとわかっているけれど、なぜだか魅せられてしまうのはやはりそれが同じ人間だからだろうか。ミイラを取り巻く環境や死生観の違い、永遠の命が伝えるものは何なのかじっと考え込んでしまう。

古代エジプト、ミイラ作りの進化に驚き!


『特別展 ミイラ「永遠の命」を求めて』
『特別展 ミイラ「永遠の命」を求めて』

第2章は「古代エジプトのミイラ」。ミイラ文化で最も有名なのがこのエリアだろう。古代エジプトでは長い年月をかけてミイラ文化が進化してきた。古代エジプトが統一される以前の先王朝時代には砂漠に遺体を屈曲させ、布に巻いた状態で埋葬。砂漠の乾燥によって、条件が良ければミイラに。その後、ピラミッドや太陽神殿が建設された古王国時代に内臓を摘出する画期的なミイラ作りの技術が開発された。樹脂で浸したリネン布で遺体の全身を覆い、頭部には生前の顔を模したマスク(ミイラマスク)を被せたのもこの頃だ。そこからさらにミイラ作りの技術は変化し、ミイラの仕上がりよりも表面の装飾などに力が注がれるように。

『特別展 ミイラ「永遠の命」を求めて』
『特別展 ミイラ「永遠の命」を求めて』

本章では、今なお鮮明に色を残すミイラマスクや棺、リネン布で覆われた子供のミイラなどのほか、副葬品なども展示。なかでも、「アミュレット」という副葬品はミイラを守るとされているお守りで、ガラスや石、金属など様々な材質で作られている。小指の先ほどの小さな石に丁寧に彫られ、デザインによってミイラのどこに配置するかも決まっているらしく、これが数千年も前に手作りされていたというから驚きだ。さらに、本章では人間のミイラ以外にネコやハヤブサといった動物のミイラも展示されている。家族として一緒に埋葬されたり神々への捧げものなど様々な意図で作られたらしいが、大好きなペットと一緒にミイラになるとは。古代エジプトの死者への想い、深すぎる……。

子供も大人も楽しめる展示内容に。夏休みの研究はミイラ!?




本展では、ミイラの展示だけでなく「まめ知識」的なパネルが随所に散りばめられている。「アンデスのミイラはどうしてみんな座っているの?」などの質問に、子供でもわかりやすい解説(しかも配置もやや低めに)がつけられている。本展は夏休み期間の開催なので、子供と一緒に展示を回れば、自由研究にも使えそうだ。しかもこのパネル、SNSで人気を集める脱力系四コマ漫画「おしゅしだよ」とのコラボ! まさかの「おしゅしだよ」がミイラゆかりのキャラクターになるとは……。「おしゅしだよ」ファンも必見だ!

『特別展 ミイラ「永遠の命」を求めて』
『特別展 ミイラ「永遠の命」を求めて』

さらに展示は第3章「ヨーロッパのミイラ」へ。ヨーロッパ各地でも多数のミイラが発見されているが、その多くは自然ミイラに分類される。様々な自然環境が反映してか、ミイラとなった原因も多様。なかでも、北ヨーロッパに点在する湿地では驚くべき保存状態のミイラが発見されている。これらは「湿地遺体(ボッグマン)」とよばれ、殺傷痕や絞殺痕が見られることが多く、生贄として捧げられたり、犯罪者として処刑されたりしたと考えられている。本展のメインイメージにも使われている「ウェーリンゲメン」は紀元前40~50年前のものとされる2体のミイラで、皮膚だけが残ったミイラだ。ほかにも、ヨーロッパでは人間の遺骨を納骨堂や納骨容器に保存することがあり、「彩色が施されたアンナの頭骨」のように頭骨に絵を施すこともあった。

『特別展 ミイラ「永遠の命」を求めて』
『特別展 ミイラ「永遠の命」を求めて』

本展に集まった42体のミイラ、これだけの数が一堂に会するのはとても貴重なことで、ミイラへの単なる好奇心だけだったものが、社会との繋がりや死生観など様々な文化や成り立ちを知ることができ、「怖いものみたさ」だった気分はどこへやら。

日本にもミイラがいる! しかも自らミイラになった!?


最後の第4章は「オセアニアと東アジアのミイラ」。オセアニアは太平洋に位置する大陸・島々の総称。その大部分が熱帯地域に属しているため、湿度や温度は概して非常に高い。そのため、ミイラの保存にとっては適した環境だとは言い難い。日本の気候も高温多湿、しかも土壌も酸性が強いため人骨まで溶けてしまうとか。それにも関わらず、日本でも数体の自然ミイラが発見されている。本展では「江戸時代の兄弟ミイラ」、「本草学者のミイラ」、「弘智法印 宥貞」の4体の日本のミイラを展示。

なかでも目をひいたのは、「本草学者のミイラ」は学問的な探求心から自らミイラとなった、唯一の日本人ミイラだ。肌が赤く黒ずんでいるのは死の直前に柿の種を大量に摂取したことから、種子のタンニンが影響しているという。後世の学問のためとはいえ、自らミイラになるとは……。しかもそれが日本人、こうやって本展で展示されることは彼の本望だったのか。日本人である自分たちの死生観まで揺さぶられてしまう。

『特別展 ミイラ「永遠の命」を求めて』
『特別展 ミイラ「永遠の命」を求めて』

本展の最後には「弘智法印 宥貞」なる即身仏が展示されている。即身仏とは、修業を積んだ高僧が疫病や飢饉に苦しむ人々を救おうと、死を前提にする大変な苦行を越えて入定(永遠の瞑想)に入り、体は現身のまま仏となること。今回展示されている即身仏はとても穏やかな表情をしていて、「ミイラ」と呼ぶよりも仏の名にふさわしい姿。展示の最後、きっと心を穏やかにしてくれるだろう。

『特別展 ミイラ「永遠の命」を求めて』
『特別展 ミイラ「永遠の命」を求めて』

『特別展 ミイラ「永遠の命」を求めて』の出口手前には本展限定のグッズなども販売中だ。「チャチャポヤのミイラ・ジャングルのミイラ」を模したクッションや人形はゆるキャラ感があって興味をそそられる。また、「おしゅしだよ」とミイラ展のコラボアイテムも必見だ。「ミイラピープル」はおすしピープルをそのままミイラに(ネタは干からびている!!)、「いししゅしゅし」はエジプトのイシス神が憑依しているし(言いにくい!)、癖になるアイテムばかり。会場限定の「ましゅく」なるマスクもオススメだ。

『特別展 ミイラ「永遠の命」を求めて』
『特別展 ミイラ「永遠の命」を求めて』

たっぷりとミイラを堪能したあとは、ぜひ入口横にある「ミイラの棺」で記念写真を。古代エジプトのミイラ気分を味わえる!?、「映え写真」が撮れるはず。

取材・文・撮影=黒田奈保子

当記事はSPICEの提供記事です。

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