2030年の「住まい」を考える6つのヒント

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Illustration: Angelica Alzona - Gizmodo US

家の中だけでなく街全体がホームになる、など。

2030年7月、ある土曜日の朝。カーテン越しにまぶしい太陽の光が入り目が覚める。新しい空調システムのおかげですっかり涼しい。そういえばひと昔前は古いエアコンをガンガン使っていたな。IHコンロで目玉焼きを作りながら、今夜は2階下に住む隣人家族と屋上バーベキューだと思い出した。何か買っておくものはあっただろうかと考えていたら、さわやかな小鳥のさえずりが聴こえてきた。昔は自動車の音ばかり聴こえていたのに、今は子供も外で思いっきり遊べるようになった。いろいろと振り返ってみると、時代は変わっていく...いや、変えていくものなんだなと実感している。

以上は今から9年後の日常を描いたフィクション(米Gizmodo Eartherライター作)ですが、要所要所に2030年の住まいを考える6つのヒントとなる要素が散りばめられています。しかもそれは最新テクノロジーが普及したSF映画のようなドラマティックな世界というよりも、至って"普通"だけど穏やかで何気ない日常のひとコマが描かれています。

2030年が実際にどんな時代になるのかはまだ誰にもわかりませんが、コロナ禍や気候変動を始め、今の社会が直面している課題に向き合った結果どんな暮らしを実現できるのか、米Gizmodo EartherライターIsaac Schultzが綴っています。

【1】冷暖房システムも次の時代へ


「観測史上新記録」というニュースを聞いても「またか」と思うようになってきた昨今。どうか未来の建物は(これ以上、気候変動に影響を与えない形で)室内温度をうまく快適に保てるようにしたいものです。約10年後の未来で私たちが使っているのは、今からは想像もできないような超最新テクノロジー…ではなく、今すでにあるシステムかもしれません。

現段階では、世界中で使われている多くの冷暖房システムが化石燃料に依存していて、これにより地球環境に有害な温室効果ガスの大量排出が懸念されています。そんな中、米National Apartment Associationは、「VRFシステム」と呼ばれる空調システムへの移行を推奨しています。

従来のエアコンは電源をオン/オフにするという2択(あるいは省エネモードの3択)でしたが、「VRFシステム」では熱を移動させる(生成するのではなく)ことで、ヒートポンプにより温/冷いずれかの必要な空気を送り出します。モジュラー式で、特に新築アパートメントで簡単に設置しやすいとか。また「VRFシステム」のヒートポンプには、空気の質を改善できるという一面もあることがわかっているとか。

もともとは温暖な地域でよく使われてきたシステムですが、改良を遂げた最近では北欧の国々でもそのポテンシャルを発揮。先月アメリカ北西部で記録された熱波を踏まえると、これまではエアコンが不要だった寒冷な地域でも、こうしたシステムが必要とされる可能性がありそうです。

【2】もっとグリーンに囲まれた暮らしはできるのか?


屋根の色が暗いと、ヒートアイランド現象を進行させる要因になります。屋上緑化にはさまざまな利点があります。屋根に日陰を作り、最大2.5度温度を下げてくれたり、人々が集う憩いの場になったりするはず。屋上デッキはもはや高級住宅のものだけではありません。アウトドア空間として楽しんだり、密を避けながらソーシャルな付き合いをする場としても活躍するはずです。

【3】化石燃料は(ガスストーブも)卒業!


家の中にある環境問題に悪影響を与えるもののひとつがガスストーブ。気候変動の原因となる排気ガスを排出し続けることになるので注意が必要です。また、二酸化窒素、一酸化炭素、ホルムアルデヒドなどの汚染物質により室内の空気を悪化させるという一面も。子供のぜんそくのリスクを高めたり、呼吸器系だけでなく神経系の問題につながることもあります。

カリフォルニア州など、「ガス禁止」条例を制定する動きがある一方で、同業界や一部の保守派からはこうした禁止令に対抗する動きも。実際には、新しい建物にガス供給を禁止するだけでは十分ではなく、電気やIHに移行していく必要性が高まっています。

【4】クリーンな住まいにするということ


コロナ禍を機に、世界中で衛生観念が再認識されました。有害なエアロゾル(汚染物質、病原性物質)の心配があろうとなかろうと、未来の住(+労働)環境を考える上で新鮮な空気を取り入れることは重要だといえそうです。たとえば、住空間の延長線上にアウトドア空間を増やしたり、非効率で健康に悪影響を与え得るような古い家電製品は手放したりする必要があります。

また、covid-19は空気感染することが明らかになっていますが、次なる新種のウイルスが同様とは限りません。いずれにせよ、コロナ禍で始まった除菌や清掃の習慣は今後とも続くと考えられ、アパートメントや新しい建物において非接触型のシステムが重宝される可能性は高そうです。

【5】目指すは住宅の低コスト化!


現在、全米でどれくらいの人々がホームレス生活を強いられているか正確に把握することは難しいですが、都市が抱える問題の縮図ともいえるニューヨークでは、今年4月時点で5万人以上の市民が同市運営のシェルターで生活していたことがわかりました。一方で、富裕層向けの高級不動産の売り上げは伸びているといいます。

「低所得者向けに手頃な価格の住宅を用意するなど、国を挙げて問題に取り組まない限り、未来はそう明るくないかもしれません。過密状態であることには今も未来も変わらないでしょう」と、都市プランナーのNicholas Bloom氏は言います。

NMHC、NAAが示すデータによれば、アメリカの住宅需要を満たすには2030年までに32万8千戸もの新築アパートメントが必要になるとか。ポジティブな言葉に言い換えると、"より良いものを作る"チャンスがこれだけ多くあるということになります。ただし、アパートメントの建設には木材などの資源が必要となります。「パンデミック前から大変ではありましたが、さらにコストが上昇し、今は資材も手に入りづらい状況です」と現状を明かすのは、NMHCのリサーチVPであるCaitlin Sugrue Walter氏。

全米で新築アパートメントの建設は行われていますが、本当に住宅を必要とする人たちに行き渡る必要があります。「Green New Deal for Public Housing」では、現在の公営住宅のアップグレードや、カーボンニュートラルへの移行を検討していたり、「Homes For All Act」では手頃で効率的な賃貸住宅の建設のさらなる推進、「The Affordable Housing Credit Improvement Act」でも手頃な住宅を用意することを目指す法案が提案されています。高級住宅は十分あり、富裕層には数多くの選択肢があることになります。こうした状況はデベロッパー次第な部分もありますが、人々ができることは(声を上げ続ける以外に)限られていて、おそらく政府による抜本的な取り組みが必須となりそうです。

【6】今ある自動車空間は、未来の生活空間


2030年にはどんなものに囲まれて生活しているか、どのように空間を活用しているか想像してみましょう。これからは家の中だけでなく街全体がホームと思えるような街づくりが鍵となるかもしれません。

アメリカ社会は20世紀中盤から車を中心に街を形成してきました。今の時代はもちろん当時から少しずつ変化してきて、コロナ禍を機に、富裕層は人口密度が高い地域から離れ、富裕層以外の人たちも家賃の安い郊外に引っ越そうとする人たちが増えてきました。それがボストンであろうとヒューストンであろうと、このような場合に環境面・渋滞面から自動車だけに頼るのは理想的ではなく、街は車以外の交通手段についても検討する必要がありそうです。ヒューストンにあるライス大学の最新の研究データによると、気候変動への意識は増大していること、さらに街が直面している最大の課題のひとつが渋滞であることが明らかになっています。

これまでの社会が作ってきた自動車と街の関係性は、未来に向けて少しずつ変えることができます。公共交通機関への投資に加えて、車以外の選択肢(自転車、スクーター、電気自転車など)といった個人利用のインフラへの投資も間違いなく重要。自転車用レーンを道路に設けることも脱炭素につながります。

バルセロナの「スーパーブロック」と呼ばれるエリアでは、車の乗り入れ区域や走行スピードを再定義。一部を公園にしたり、小さなサッカーフィールドを作ったり、ピクニックテーブルを置いたり、緑を増やしたり…土地の使い方を見直すことで、生活空間を街全体に広げる計画が施行されています。

アメリカではコロナ禍が始まる前にシアトルで同じような計画が検討されていて、国民のほぼ半数がワクチン接種を完了した今では、ボストン、ソルトレイクシティー、ミネアポリスなどでいわゆる歩行者天国のような試みがたまに行われているとか。ニューヨークでも歩行者中心のストリートを定着させたといいます。「スーパーブロック」のようなアプローチは今後もっと世界中で増えていくのかもしれませんね。

当記事はギズモード・ジャパンの提供記事です。

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