酒類提供が再開しても喜べない飲食店、“近隣の店の目”が怖い

日刊SPA!

 沖縄を除く9都道府県で緊急事態宣言が解除され、全国の繁華街に人が戻りつつある。市民は長らく続いた自粛生活からようやく解放された気分なのだろうか。これまで飲食店は、さまざまな要請などに対応しながら苦戦を強いられてきたが、客が増えても素直に喜べないという人たちもいる。

◆客足は増えたが、マスクを外して大騒ぎ

「オーナーはすごく嬉しそうでしたよ。宣言明けの営業日には、ビールのタダ券まで常連さんに配る始末だったんです」

東京都は「まん延防止等重点措置」に移行、酒類の提供も再開された。ラーメン店の従業員・富永康子さん(仮名・30代)は、コロナ禍になってからというもの、出勤数は以前の半分程度になってしまい、生活的にもかなり困窮していた。

やっと通常営業に近い形で店をオープンすることができた。これで少しはまともな生活ができると喜んでいたが、そう甘くはなかったという。

「やってくるお客さんが多すぎるんです。常に満席で、4~5人の団体のお客さんも、久々にみんなで食べられると、マスクを外して大騒ぎ」(富永さん)

すでにワクチン接種を済ませている高齢の母親と同居中の富永さん。万一のことがあったら怖い、ということで、オーナーにシフトを減らしてもらうようお願いすることも考えたというが……。

「店が苦しいなかで、オーナーはようやくお客さんが戻ってきたことを涙を流して喜んでいました。そんな状況で、水を差すようなことは言えなくて」(同)

◆19時を過ぎても酒のオーダーが入る

神奈川県では、営業時間短縮の要請は以前と変わらず20時まで、19時までは「1組あたり4人以内」「滞在時間は90分以内」などの条件で酒類の提供が認められた。県内の居酒屋経営・幸島孝明さん(仮名・40代)も同様の悩みを打ち明ける。

「酒類提供が再開しましたが、まん延防止措置で本当は19時までしか出せないはずなのに、19時を過ぎてもばんばんオーダーが入るので、私たちも出しています。おかしいとは思いましたが、“近隣の店の目”もありますから……」(幸島さん)

“近隣の店の目”とは、どういうことなのか。

◆“近隣の店の目”が怖い

幸島さんも高齢の両親や妻、子どもたちと生活しているため、できるだけ感染対策を行って営業を続けている。

しかし、じつは近隣の飲食店のほとんどがまん延防止等重点措置を無視した営業スタイルを取っているため、自分の店だけが神奈川県の方針を守っていると「お前の店はコロナが怖いのか」と思われしまい、からかわれることもあるという。

幸島さんは「注意などできる雰囲気にない」と声を潜める。怖くてもやるしかない、と半ば諦めているのだとか。

◆タクシーで窓を開けると「ばい菌扱いか!」

酔客が増えれば、コロナ禍で閑古鳥に泣かされていたタクシー会社も潤うはずだが、当の運転手からは悲痛な声も聞こえてくる。東京都内のタクシー運転手・原田瑞恵さん(仮名・50代)が訴える。

「お客さんが拾えるからと繁華街に行くと、酔ったお客さんしかいません。タクシーに乗り込んできて、マスク無しで会話されるし、車内でお酒も飲まれる。念のため窓を開けると“ばい菌扱いか!”と怒鳴られたこともあります。お客さんが戻ったことは嬉しいですが、それ以上に感染への恐怖が大きくなりました」(原田さん)

確かに、緊急事態宣言は解除されたものの、まん延防止等重点措置は続いており、感染力の強い変異株の懸念もある。ここにきて酒類の提供自粛や、緊急事態宣言に言及する閣僚も出始めているが、さらに疲弊している人たちもいるのだ。

<取材・文/森原ドンタコス>

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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