『閃光のハサウェイ』公開も盛り上がらず…『ガンダム』の敷居が高すぎる理由

まいじつ

『閃光のハサウェイ』公開も盛り上がらず…『ガンダム』の敷居が高すぎる理由

『閃光のハサウェイ』公開も盛り上がらず…『ガンダム』の敷居が高すぎる理由 (C)PIXTA

『機動戦士ガンダム』の放送開始から40年以上が経ち、一大コンテンツとなった『ガンダム』シリーズ。6月11日には、延長に延長を重ねた劇場アニメ『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』がついに公開された。それによってファンコミュニティはかつてないほどの盛り上がりを見せているが、その熱は外部に全く伝わっていないようだ。

「ガンダム」オタクと一般人による論争


「閃光のハサウェイ」は富野由悠季監督の同名小説をアニメーション化した作品。現在公開されているのは3部作のうち1作目で、監督は『虐殺器官』などで知られる村瀬修功が務めている。興行収入は公開2週目の時点で10億円を突破し、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』以来33年ぶりとなる快挙を成し遂げたという。

久しぶりに「ガンダム」シリーズの新作が話題になっているということで、興味を抱く人も多いよう。しかしそうした人々が口をそろえて言うのは、「敷居が高すぎる」という意見。ネット上では《ガンダムは嫌な意味で敷居が高い》《ガンダム民が楽しそうだけど全く何言うてるか分からない。履修するには作品数も多いし敷居が高いイメージなんよな》《あまりにも作品数が多いせいで敷居が高いし、ファンは知識で殴ってくるし、完全に閉じてるコンテンツだと思う》などと不満の声が散見される。

他方で、この機会に新規層を増やそうと目論むファンからは《ガンダム自体の敷居は高くないと思う、ただ面倒くさい人が多い》《ガンダム敷居高くないよ…? とりあえずVガンダム見よう?》《エクバいいよ! スパロボした人なら絶対にハマれる。難しくもない》といった反論が。しかしその行為自体が外部の人間には“キツイ”ものと映ってしまうようだ。

日本の2大オタク向けコンテンツとして肩を並べる「エヴァンゲリオン」シリーズは、新作の『シン・エヴァンゲリオン劇場版』によってブームを巻き起こしている最中。なぜ「ガンダム」はカジュアルなオタクに「敷居が高い」と敬遠され続け、差が広がってしまったのだろうか…。

「ガンダム」シリーズの新規ファンが増えにくい理由


まず考えられるのは、単純に「作品数が多すぎる」ということ。ナンバリングタイトルになっているわけでもないので、どの作品から見ればいいのか分かりにくいのもつらいところだ。また、「ガンダム」ファンは何かと「初代ガンダム」を勧めがちだが、美麗な作画に慣れた今の消費者からすると「作画のせいで見る気がしない」という意見もある。

2点目は、「関連作品が一般人の目に触れにくい」ということ。「ガンダム」はアニメ以外にも数多くの漫画が発表されているが、ほとんどが一般誌ではなくファン向けに発行されている『ガンダムエース』での連載。『週刊ビッグコミックスピリッツ』の『機動戦士ガンダム バンディエラ』や、『ビッグコミックスペリオール』の『機動戦士ガンダム サンダーボルト 外伝』などの例外はあるものの、それらの作品も「ガンダム」ファン内で話題になることが多い。狭いコミュニティの中で、コアなファンが作品を支えているのが現状だと言えるだろう。

さらに極めつけは、ファンの民度という問題だ。「ガンダム」をモチーフにしたゲームは民度が低いことで知られており、とくに『機動戦士ガンダム エクストリームバーサス』は悪名高い。プレイヤー同士の“煽り行為”が横行しており、ゲームセンターでのトラブルも多発するため「ガンダム動物園」という蔑称が広まってしまったほど。とてもではないが、新規ファンがはじめて触れるコンテンツとして勧められるものではない。

考えれば考えるほど絶望的な状況だが、希望を捨てるのはまだ早い。長い歴史がある分、「ガンダム入門」として薦められる作品も中にはあるのだ。たとえば2015年からOVAとして制作されたアニメ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』は初心者にうってつけ。宇宙世紀ガンダムシリーズの中で時系列が最初にあたる物語なので、他の作品に触れていなくても簡単に内容を理解できるだろう。また数年前に制作された作品であるため、古さを感じさせない作画クオリティになっているところもポイントだ。

“閉鎖的なコンテンツ”となりつつある「ガンダム」シリーズ。悪評だけでなく優れた作品が世間に広まり、新規ファンが増えていくことを期待したい。

文=大上賢一

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