犬は生まれてからすぐ人間と親しみ始める

Photo: Andrew Couts via Gizmodo US|米Gizmodoのアイドル犬・Lucioくん。元介助犬候補でした

この写真にキューーーンときた人、もしやこんな経験もお持ちでは?

ふとしたときに、最愛のワンコと心が通じてるなって思ったこと。または、自分では気づいていなかった感情の浮き沈みに犬がいち早く反応して、その気持ちに寄り添ってくれたこと。

犬は、おそらく地球上のほかのどの動物よりも人間のボディーランゲージを理解したり、ジェスチャーに反応するのに長けています。しかしながら、犬がどうやってこのような能力を獲得しているかはまだはっきりとわかっていません。

遺伝なのか、学習なのか


「犬が生まれてからすぐ人間と親しみ始めるのは、人間が犬を飼い慣らしてきた歴史の中で、人間を理解できる能力を持った個体が繰り返し選択されてきたことによる遺伝的要素によるものかもしれません」とアリゾナ大学の犬の認知機能研究所でポスドク研究員を務めるブレイさん(Emily Bray)。

「あるいは、犬と人間がこれほどまでの至近距離で生活を共にするなかで、犬が生涯を通して蓄積していく体験に基づいて習得していく能力なのかもしれません」
本研究の筆頭著者、Emily Brayさん
Photo: University of Arizona via Gizmodo US

答えを見つけるために、ブレイさんは介助犬見習いのワンちゃんたちを研究するプロジェクトに携わっています。そして、プロジェクトの一環として行なわれたある実験で、生後8週間の仔犬たちが特別な訓練を受けずともすでに人間とのコミュニケーション能力を持っていることを明らかにしました。しかも、どうやら仔犬の社会認知能力には遺伝が大きく携わっているらしいことがわかってきたのです。

教えられなくてもわかってるよ


ブレイさんらが『Current Biology』誌上で発表した研究論文は、犬の社会的認知能力に見られる個体差の大半は遺伝によって説明できることを証明した初めてのケースです。

実験はカリフォルニアのNPO法人『Canine Companions(ケーナイン・コンパニオン)』で育てられている375頭の介助犬候補を対象としました。これらの仔犬たちは、いずれ介助犬になるための長期的な訓練を受けるにあたって、当然のことながら人間との一対一の交流を多く重ねていきます。しかし、生後8週間の時点では一緒に生まれた兄弟たちと過ごすのが主で、まだ人間とは限られた機会にしか交流しません。そんな状況や、介助犬候補たちの遺伝情報(またはペディグリー)がはっきりわかることなどから、研究者たちにとっては理想的な被験者だったのです。
実験の協力者たち。キューーーーーン!!
Photo: Courtesy of Emily Bray/University of Arizona via Gizmodo US

さて、仔犬たちには人間をどのぐらい理解できるのかを調べるために、いくつかのテストを受けてもらいました。たとえば、まずはおやつを密封などしてニオイがわからないようにした上で、どこかへ隠します。そして仔犬の目を見ながら「ほら、ワンちゃん、見て!」と言い、おやつのありかを指差す、といった具合です。無事おやつを探り当てられたら合格。または、人間とどれぐらいアイコンタクトを取れるかなどのテストも行なわれたそうです。

結果、生後8週間でも最初にテストしたときからすでに人間の意図を理解し、隠された食べ物のありかを探し当てた仔犬たちがほとんどでした。全体として、指差しの意図を理解できる能力の個体差は、遺伝情報によって説明できるものが40%以上にのぼったそうです。また、あやすような声で話しかけながら仔犬の目をじっと見つめると、その眼差しをしっかり返してきてくれるワンちゃんがほとんどでした。

このことから、人間とのコミュニーケーション能力には遺伝情報が大きく関与していることがわかりました。ブレイさんは、もしイヌの先祖であるオオカミにもこのような遺伝的な違いがあったなら、社会認知能力に長けた個体が選択されやすかったであろう可能性にも言及しています。

人間の最良の友


犬と人間の共存の歴史は何万年間にも及びます。

正確な長さにはまだ議論の余地がありますが、およそ1万4000年前から4万年前にまでさかのぼるとも言われています。その長い歴史の中で、犬は人間とのパートナーシップにそぐうよう、進化してきました。一方で、ここ数百年間は人間が積極的に犬のブリーディングを行なってきており、特定の見ため・性格・あるいは能力(狩猟など)を持つ犬を生み出すと同時に犬にとって不利益をもたらす場合もありました。

今回ブレイさんたちが行なった研究からは、このような歴史のなかで犬の社会認知能力も相続されてきた可能性が濃厚となりました。次のステップは、犬の社会認知能力に携わる遺伝子を特定することだとブレイさんは話しています。もし人間とのコミュニケーション能力に長けていることを示す遺伝子マーカーを特定できれば、もしかしたら将来的にどの犬、またはどの犬種が介助犬に適しているかを判断する要素ともなり得ます。

遺伝子は、犬の行動に影響している数多の要素のうちのひとつでしかありません(もちろん人間もね)。ですから今後の課題としては、遺伝子以外の要素ーたとえば生まれ育った環境などーが犬の社会認知能力にどう影響するのかも調べていくそうです。

Reference: Current Biology

当記事はギズモード・ジャパンの提供記事です。

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