祝!一周年 オンライン・トークライブ『紀尾井町家話』幸四郎&愛之助ゲスト、第三十九夜直前、尾上松緑インタビュー

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続く自粛生活。せっかくの観劇帰りも食事や飲み会にも行けない、仲間と自由にお喋りできない日々は味気ない……そんな潤いを求める皆様にオススメしたいのが、歌舞伎俳優の尾上松緑が席亭となりお客様をおもてなしするトークイベント、イープラスのライブ・ストリーミング・サービス「Streaming+(ストリーミングプラス)」で配信中の『紀尾井町家話』だ。イキの合った仲間たちが集う“オンライン飲み”ならではのぶっちゃけトーク、濃密な話が聞けるとコアな歌舞伎ファンの中で根強い人気企画が、まもなく1周年を迎える。イキのいい若手から熟練のベテラン、時にはミュージカル俳優やミュージシャンも参加し、私生活に趣味の話、真剣な芸談が繰り広げられる特別な時間。夜8時、パソコンの前にお酒とおつまみを用意してアクセスすれば、舞台上では見られない、彼らの意外な素顔に触れられるかも?

お席亭の松緑にご登場いただき、この一年を振り返りつつ、今後の新たな展開についても語ってもらった。

ーー昨年6月にスタートした『紀尾井町家話』、1周年おめでとうございます!

当初はとりあえず1カ月、3回は試してみましょう……という感じのトライアルでスタートした企画でした。こうして1年継続でき、ゲストで参加くださった皆さん、松竹の制作サイド、そしてご視聴し、応援くださる皆様に改めてお礼を申し上げる次第です。僕は話をするのも好きですし、人の話を聞くことも好きなので、とても楽しくやらせていただいています。

ーー一周年記念の『紀尾井町家話』第三十九夜は、お二人とも二度目のご出演、松本幸四郎さんと片岡愛之助さんです。昨年末と2月にご登場された市川猿之助さん回も大変に面白く、やはり、松緑さんとの同世代トークは盛り上がりますね……お酒もすすみそうです!

話す内容はいつも通り行き当たりばったりと言いますか(笑)、お二人とは数々の舞台でご一緒しておりますし、若い頃から食事や飲みに行ったり、長い付き合いの仲間なので、前回同様ほぼ打ち合わせなしのぶっつけ本番で、話題には事欠かないと思います。もしかしたら、幸四郎さん、愛之助さんは言って欲しくないようなことも、お酒の力を借りてぽろっと喋ってしまうかもしれません。
7月の歌舞伎座で上演される『あんまと泥棒』泥棒権太郎=尾上松緑 /(C)松竹
7月の歌舞伎座で上演される『あんまと泥棒』泥棒権太郎=尾上松緑 /(C)松竹

ーー1年間付いてきたヘビーリスナーとして、心に残る瞬間を振り返りたいと思います。視聴者の皆様それぞれに私の/俺の「家話」があると思いますが、独断と偏見の「紀尾井町家話 私的BEST5」を発表してもよろしいでしょうか……?

アハハ、どうぞどうぞ。

ーーまず5位は、第三十五夜、尾上菊伸さんがご披露された「外郎売」の言い立てです。なんだかフラのある面白い方だな~とノンビリ見ていたら、突然の大挑戦が始まり、思わず画面の前でお酒のコップを置いて拝聴しました。「家話」は、立廻りや花四天や捕手などでご活躍され、舞台を盛り立てる縁の下の力持ち、色々な御一門のお弟子さんたちも登場するのが魅力ですね。

彼は昨年4月に名題披露の予定だったのが、コロナのせいで公演がなくなってしまったんですよね。日本俳優協会・伝統歌舞伎保存会でやっている「歌舞伎ましょう」というYouTube企画に僕の言い立ての稽古映像が上がっているのですが、昨春「状況的に稽古には伺えませんが、この映像を見て覚えますので、リモートで見ていただけないでしょうか」と彼から連絡が入ったんです。何度も録画した動画が送られ、その都度「発音が違うよ」「ここは早いよ」なんてアドバイスをした経緯もありましたし、お酒も入って、皆様にご披露したいという気持ちになったんでしょう。ただ、アドバイスをし続けて半年以上は経っておりますので、直したはずのところが元に戻っていたり、絶好調な時期から5割引きぐらいの出来でしたね(笑)!

ーーお客様の前での初披露、さぞ緊張されたことと思います(笑)。第4位は、自由奔放な市川猿弥さんが最初にご登場された第十夜。飛ばしに飛ばしまくり、ノリにノったトーク、ファンの間では「神回」「レジェンド回」として語り草に。その後も第二十夜、三十夜と節目ごとにご登場されていますね。

あの夜はあまりに強烈で「ああ、今回で終わるな」と思う瞬間もあったのですが(笑)、ご寛容なお客様のおかげで、ここまで継続できました。彼だけではなく、「ここまで言っちゃって大丈夫かな?」とハラハラすることはあるんですよ。でもあの経験のおかげで、ちょっとした緊急事態にも慣れたものですし、むしろ、どんどん広げて喋ってくれる猿弥くんが来てくれると、僕自身はとても楽なんです。ただ第四十夜は、彼が今、歌舞伎座の第三部『日蓮』に出ているので、『家話』への出演はありません。常々言ってきていることなのですが、配信企画は続けていますが、私たち役者は舞台が第一ですので。

ーー第四十夜は“松緑一門会”と題した企画が発表されましたね。ご一門の皆様だからこそ知る“松緑さんの素顔エピソード”が飛び出る予感がし、こちらも楽しみです。第3位は、さまざまな型や演出、伝説的な先輩俳優の思い出など、ベテランの方から伺える貴重な芸談の数々です。中村時蔵さん、中村雀右衛門さん、中村扇雀さん……ざっとゲストでいらした数人のお名前を挙げただけでも、豪華な顔ぶれですね。

本当に予想外の出来事なのですが、先輩方の耳にも『家話』の評判が届いていて「面白いことやってるんだって? 出してよ」なんて言ってくださることがあるんです。これはありがたいことですね。先輩をお迎えすると、僕自身は緊張で酔えませんけれど(笑)。

ーーみなさまご自宅から参加なので、ご自身でつくられた焼き物を見せてくださったり、お部屋に掛かっている絵や写真のエピソードを教えてくださったり。こんな贅沢な瞬間も『家話』ならではです。

オンラインだからこその楽しみですよね。可愛いペットが画面に登場したり、かっこいい舞台姿とはまた違った、お兄さん方のチャーミングなお顔を見ていただけるのは通常の対面トークショーではなかなかできないことです。
「仕事でうまくいなかったり、腹が立つことがあっても、家に帰って犬を抱いて愚痴を言っていればそれで解消できる。僕の人生に欠かせない子たちですね」と尾上松緑が語る愛犬たち。(写真左)から紅煉、まめ蔵、まる子。お腹の上にいるのは最近やってきた末っ子のミ―
「仕事でうまくいなかったり、腹が立つことがあっても、家に帰って犬を抱いて愚痴を言っていればそれで解消できる。僕の人生に欠かせない子たちですね」と尾上松緑が語る愛犬たち。(写真左)から紅煉、まめ蔵、まる子。お腹の上にいるのは最近やってきた末っ子のミ―

ーー第2位は、今年の2月5日、松緑さんのお誕生日に重なった『家話』です。お仲間から届いた心のこもったプレゼントを教えてくださったりと、これまた視聴者のみなさまとグッと距離が近くなる特別な配信でした。

通常なら仲間と集まって飲んで祝えるのですが、こんな状況でもオンラインでもみんなの顔を見ながら誕生日を迎える機会をいただいて……電波の私物化ですよね(笑)。

ーー坂東彦三郎さんの御子息、まだ小学生の亀三郎さんからのカードに「松緑さん、『蘭平物狂』の繁蔵がやりたいです」とあったお話、キュンとしました。

彼がまだ一緒にお酒が飲めない年齢なのが残念です(笑)。子役さんたちは大人よりも敏感に、舞台に出られないもどかしさを感じていると思うんです。彼らがどれだけ芝居がしたいか、その強い気持ちが伝わるといいなと思って。『家話』では何度か『蘭平物狂』の話題が出ていますが、「もういっぺん蘭平を……」なんて言われると、もう引退だと思っていたような演目でも、もう1、2度はやっておこうかな? なんて思えたり、ここでの会話が未来のモチベーションにもなっています。

ーーおお、松緑さんの蘭平、首を長くして待ちます! ……さて、輝く(?)第1位は、5月、緊急事態宣言発令で歌舞伎座の初日が延期となり、急遽決まった緊急企画として開催された、『紀尾井町夜話特別編の特別編「~アシスタント家話~」』です。「またか」という国へのガッカリ感で演劇ファンが気落ちした時期に、あれはグッとくる嬉しい企画でした! どういった経緯で決まったのでしょうか。

あの企画を立ち上げた根底にあったのは、“腹立たしさ”です。歌舞伎だけではなく、現代演劇、スポーツ、美術館、映画館、全てのエンターテインメントがワリをくう事態に、行き場のない怒りを感じていました。結果的に12日から公演はスタートできましたけれど、もしかしたら5月の興行全部がなくなるかもしれないという状況下で、お上から見ると社会の末端のような僕らでも、何かできることを世の中に示したかった。「初日が開けられなくなりました」という電話を松竹さんからいただいた直後に『家話』のグループラインに「やろう」と連絡を入れ、そこから急ピッチで関係者のみなさんにご相談し……中村松江さん、坂東亀蔵さん、中村梅枝さん、坂東新悟さん、山崎咲十郎さんといった初期から支えてくれている仲間が同じ思いで乗っかってくれました。賛同してくれた制作スタッフにも感謝しています。準備期間は1週間もなかったですから。
尾上松緑 /(C)松竹
尾上松緑 /(C)松竹

ーー最後に、今後の『家話』の展開についても教えてください。

世の中の状況も刻々と変化していますし、「家話」も変化/進化していきたいと感じています。僕は「裏方」という言い方はあまり好きではないのですが、床山さん、衣裳さん、小道具さんなど、舞台を支えてくださる人たちにもご登場いただきたいですね。感染症の状況がおさまり、ひとつの場所に集まれるようになれば、久々に仲間達と行きつけだったバーに集合して配信……なんてことができたらいいですけれど。

何よりも、ご視聴くださっている皆様がこの配信の主役です。皆さんの存在なしには成立しません。楽しい企画を考えたいと思いますので、今後とも、お付き合いのほどをよろしくお願いいたします。

なお、紀尾井町夜話特別編『紀尾井町家話』第三十九夜は、席亭は尾上松緑、ゲストに松本幸四郎、片岡愛之助、アシスタントに中村松江を迎え、6月19日(土)20時より配信される。

取材・文=川添史子

当記事はSPICEの提供記事です。

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