ゲームプログラミングソフトを発売した任天堂。原点は「ファミリーベーシック」

日刊SPA!

―[絶対夢中★ゲーム&アプリ週報]―

6月11日に任天堂からNintendo Switch向けタイトル『ナビつき! つくってわかるはじめてゲームプログラミング』が発売されました。「任天堂の開発室から生まれたプログラミングソフト」をキャッチコピーにした、誰でもゲームプログラミングの考え方が学べるタイトルです。

◆オリジナルゲームを作って遊ぶ!

初心者でもナビに従えば簡単にゲームが作れ、自作ゲームをオンライン上に公開して他プレイヤーに遊んでもらうこともできます。

『スーパーマリオメーカー』もそうでしたが、世界中の人がアイデアと工夫に満ちたオリジナルゲームを公開することで、それをプレイするゲーム実況動画の人気が上がり、ソフト自体もじわじわヒットする……そんな可能性を秘めています。

通常のタイトルとは毛色が異なる「教育ソフト」の性質を持った本作ですが、その狙いは大きくふたつあると思われます。

◆プログラミング教育とゲーム機

まずひとつは2020年に必修化されたプログラミング教育に合わせての取り組み。公式サイトには「本作は学校教育に対応した製品ではなく、独自のゲームプログラミング体験によって、楽しみながらプログラミング的思考に触れられるソフトです」と書かれていますが、高まるプログラミング教育熱を受けて企画されたのは間違いないでしょう。

プログラミング教育においては米マサチューセッツ工科大学メディア・ラボが無料で公開しているプログラムソフト『Scratch(スクラッチ)』が教育現場では代表的な存在です。この『Scratch』はPCやタブレットで手軽に利用することができます。

1983年にファミコンが発売されて以降、子供たちが最初に触れる“コンピュータ”はゲーム機が主にその位置を占めていましたが、現在はタブレット(スマホ)が主流となりつつあります。動画もゲームも勉強も、タブレットひとつで完結します。

あとでも触れますが、ファミコンの周辺機器「ファミリーベーシック」を発売していた任天堂としては、“プログラミングを学べる機器”の役割を、ゲーム機が担いたいという想いがあるでしょう。

◆80年代はゲームプログラミング全盛時代

もうひとつの狙いは、“ゲームを作る”という楽しみの復権。ダンボールキットとJoy-Conを組み合わせて遊ぶ『Nintendo Labo』(2018年)にも、簡単なプログラミングができる機能が搭載されていました。

ファミコンが発売された1980年代は、個人のゲームプログラミングは特殊な趣味ではありませんでした。投稿プログラムが多数掲載された月刊誌「マイコンBASICマガジン」が部数を伸ばし、プログラミングコンテストも複数開催されていました。

もともと『ドラゴンクエスト』の堀井雄二さんも、エニックスが1982年に主催した第1回ゲーム・ホビープログラムコンテストに自作ゲーム『ラブマッチテニス』が入選したのが、ゲームクリエイターに進むきっかけ(ちなみに、のちにチュンソフトを設立する中村光一さんは『ドアドア』で入選。優勝者は『森田将棋』でおなじみの森田和郎さん)。才能とセンスあふれる個人が“ゲーム”を生み出し、それが認められる時代だったのです。

◆ルーツは「ファミリーベーシック」!?

しかし、ゲームが産業として発展し、内容も進化・複雑化した現在、個人でゲームを制作するという発想そのものが失われつつあります。こうなると未来のクリエイターは育ちにくくなる。現状への危機感も任天堂にはあるのではないでしょうか。

振り返れば、1984年に発売された「ファミリーベーシック」は、ファミコンに専用キーボードを接続し、当時初心者向けのプログラム言語として浸透していた「BASIC」でのゲーム制作ができるのが売りでした(任天堂、シャープ、ハドソンの共同開発)。

子供のための安価な家庭用コンピュータという意味合いもありました。結果的にはMSXなどの他のホビーパソコンと比べて、ゲーム制作の自由度が低かった点がネックのひとつとなり、大ヒットには至りませんでしたが、「ファミリーベーシック」でプログラミングに目覚めた小学生も多かったという話はよく聞きます。

この「ファミリーベーシック」をルーツととらえると、今回の『ナビつき! つくってわかるはじめてゲームプログラミング』は、ある意味任天堂らしい一本といえるでしょう。

<文/卯月 鮎>

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【卯月鮎】

ゲーム雑誌・アニメ雑誌の編集を経て独立。ゲーム紹介やコラム、書評を中心にフリーで活動している。雑誌連載をまとめた著作『はじめてのファミコン~なつかしゲーム子ども実験室~』(マイクロマガジン社)はゲーム実況の先駆けという声も

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