アメリカの警察ではハイテクな投げ縄の使用が広まっている

210609BolaWrap
Photo: Scott Olson (Getty Images)

要は相手を動けなくすればいいので。

武力行使による死亡者数を減らそうと、全米各地の警察はテイザー銃で感電させたり、銃で負傷させたりせずとも被疑者を取り押さえられる、ハイテクな投げ縄に投資しています。



つい最近Motherboardで取り上げられたように、遠隔拘束デバイスBolaWrapはテイザー銃によく似ていて、まるでジェームズ・ボンド映画に出てくるガジェットのように機能します。火薬の力によって約2.5メートルの「ケブラー製テザー」が勢いよく放たれ、空を切って容疑者を拘束するという仕組みです。

約3~8メートルの距離で使えると言われているので「リモート手錠」とも呼ばれ、“従順でない”容疑者への使用を意図している模様。ミズーリ州ウェスト・プレーンズの警察署用ユーザーマニュアルには、このデバイスが表向きはどう使われるはずなのか詳しく記載されています。

誰も死なせずに解決するためのツール


安全技術のメーカーWrap Technologiesが開発したBolaWrapは、「デスカレーション(実力行使にならないよう被疑者を落ち着かせる行為)」のためのツール、そしてメンタルヘルスのトラブルや認知障害、自殺念慮などの問題を示しているように見える人を、警官が拘束できる手段として販売されています。Wrap社のCEOを務めるTom Smith氏は最近、同社の企業理念は「警察官が無事に帰宅」して「容疑者が無事に家に帰れる」よう「対立を安全に終わらせるためにテクノロジーを使う」ことだと語っていました。

この製品がその意図どおりに使われる可能性は果たしてどのくらいなのか? そして火薬で発射する拘束具を発砲するのは、メンタルヘルス上の危機に陥っている誰かを扱う最善の手段と言えるのでしょうか。

シアトル警察がテスト運用開始


シアトルでは警察署が同デバイスの「実地試験」を行うパイロット計画にゴーサインを出したばかりで、シアトル市議会議員で同議会の治安と福祉サービス委員会のLisa Herbold委員長はこの製品を命を救う手段だと評しています。「状況の緩和と悲惨な結果を減らすことに役立つBolaWrapのポテンシャルを非常に心強く思う」と語っていたとか。



このパイロット計画の運用が開始されるなか、Wrap社はシアトルに近いワシントン州マウントレイクテラスで起きた事件でBolaWrapを使った時の動画を公開。

動画には「メンタルの危機」に陥っていると言われている容疑者を、警察官が同社いわく「彼を負傷させることなく保護」できるBolaWrapを使って拘束する様子が収められています。最初から最後まで見てみると、テザーは男性の足首に放たれていて、彼が正面からコンクリートに倒れ込むやいなや警官が背中を押さえつけているのですが…“無傷”とは相対的な意味だったんでしょうね。

Motherboardは、ニューヨーク州バッファローで黒人トランスジェンダー女性が「(彼女が)メンタル危機に陥っているように見受けられた」地元の警官によってBolaWrapで撃たれた件に言及。その当時、地元の活動家らは警察が「巻き付けられた」女性に対して思いやりがなく、「メンタルヘルスの専門家がいたにもかかわらず、女性を安心させたり慰めたり」する人は誰もいなかったと苦情を申し立てています。しかしながら警察は、このツールは仕事をしたまでだと主張しています。

警察のウケはいいけど...


抗議行動やいわゆる市民的不服従がかかわる事件においてBolaWrapがどのように使われるだろうかと想像すると特に不安になります。同社のサイトには使用例の1つとして「暴動の制圧」と記載されているので、警官は必要と感じればデモ参加者を『猿の惑星』でのチャールトン・ヘストンのように扱える可能性が暗示されているのです。

命を救う効果的なツールであろうと、警官が人を脅えさせる別の手段であろうと、警察署は喜んでBolaWrapを購入しています。Wrap社は「46の州を代表するアメリカ合衆国全域の230の警察機関」が現在「BolaWrapを携帯している」と主張。昨年の暮れに同社はオハイオ州、インディアナ州、テキサス州とミシガン州を含む全米中の法執行機関からの大量の新規注文を発表しています。そしてロサンゼルスの警察署は先日、「警官とコミュニティの安全性の維持を手助けるさらなる状況緩和のツール」を求めてBolaWrapのパイロットプログラムをさらに1年延長すると発表したばかり。

何とも不穏な流れです。

Source: Motherboard, Wrap(1, 2,), West Plains Police Department, YouTube(1, 2,), GlobeNewswire(1, 2, 3,), Twitter, MailChimp, Audacy,

当記事はギズモード・ジャパンの提供記事です。

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