FBI内通者最恐。匿名チャットアプリ「An0m」のおとり捜査で世界の反社800余名が一斉摘発

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Image: AFP via CBS News

捜査の目をかいくぐる暗号化スマホがまさかのトラップ。資産隠しになんとかコイン使ってる皆さまも、こ~れは自信が揺らぎますね!

FBIが内通者に暗号化チャットアプリ「An0m」を供出させ、これを搭載したスマホを世界中の犯罪組織にバラ撒き、悪だくみをこっそり傍受するおとり捜査を2018年から展開。世界中の警察と連携しながら800余名の一斉摘発に成功しました。

An0mって何?


捜査の全容は米司法省が7日(月曜)に公開した宣誓供述書で読めます(Gizmodoも犯罪捜査研究の専門家Seamus Hughesさんからいち早く入手)。それによると、An0m(ANOMとも)は表向きプライベート&セキュアなチャットアプリだけど、裏ではバックドアが仕込まれていて、FBIに通信内容が丸見えになる仕様となっていました。

これを実装したスマホは普通のスマホとはまったく違って、使える機能は連絡用のチャットだけ。しかもチャットアプリは見た目、計算機。計算機アプリを開いてパスワードを入れると、エンド・ツー・エンドの暗号化通信でメッセージや写真が送れるんです。まさに反社向け特別仕様。

一斉摘発と同時にAn0mのポータルサイトは閉鎖となりましたが、現物はこんな感じ。
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「受け渡しは海。先導ボートが去ったら連絡してブツを投げる算段だ。受け子できるか?いくらなら頼める?」「ああ、20%でどうだ」といった生々しいやりとりが交わされている。体調が悪いときには「COVIDでなければいいな」と仲間を気遣う一面もうかがえる。
Screenshot: Lucas Ropek - Gizmodo US

An0mは口コミで評判となり、3年で12,000台が売れに売れ、100カ国以上にまたがる300以上の犯罪組織の手に渡りました。捜査官がAn0mで傍受したメッセージは2700万件余り、写真は45万枚超。それをもとにイタリアンマフィア、暴走族「Outlaw Motorcycle Gangs」、麻薬密売組織など、300もの国際犯罪組織の違法取引の動きと密売ルートの解明と相成ったというわけです。

3年におよぶ地道な国際合同捜査「トロイの盾」


おとり捜査は国際合同捜査「Trojan Shield(トロイの盾)」の一環で行なわれたもので、FBIの指揮のもと豪警察(AFP)、ユーロポール、犯罪現場の各国警察も捜査に協力しました。FBIと内通者は共同で「マスターキー」を開発し、特にAFPの連携を得ながら第三国を迂回させて、メッセージの暗号化を解読して読みまくっていたみたいですよ。

未然に防いだ犯罪は「殺人、大量の麻薬密売、銃器密売」(AFP)など広範に及びます。An0m専用ポータルは一斉摘発と同時に閉鎖になりました。犯罪組織がダークウェブに流れるなか、暗号化通信の闇に未曽有の大鉈が振るわれた形です。

内部協力者の人物像


気になる内部協力者の人物像ですが、法廷資料には「FBIはまず最初に暗号化通信業界の製品開発に関わるハイレベルな犯罪組織構成員を味方につけることでAn0mプラットフォームをハイジャックした」とあります。

FBIの内通者になったのは2018年、カナダのPhantom Secure社にFBIの捜査が入って、暗号化スマホをメキシコの麻薬カルテルなどの犯罪組織に専ら販売している実態が明らかになった直後のこと。Phantom Secureのスマホが使えなくなって、反社が連絡手段に困っている今がチャンス!と考えたFBIが、「Phantom SecureとSky Global devicesの両社のスマホを国際犯罪組織(TCO:Transnational Crime Organizations)に販売し、暗号化強化デバイスの新製品開発に巨額の投資を行なったこともある」元ディストリビューターに捜査に協力しないかと懲役減刑の司法取引を持ち掛けたのです。

ちょうど「”次世代”暗号化通信プロダクトの開発に関わって」いたこの人物は取引に応じ、FBIの内通者(CHS:Confidential Human Source)となって以降は「”An0m”と称するこの次世代スマホを捜査に提供」し、さらに「それまで付き合いのあった暗号化通信端末ディストリビューター網(すべてTCO[国際犯罪組織]とずぶずぶのディストリビューター)にこれを配布することにも同意」したのだといいます。ちなみにFBIから支払われた捜査協力の謝礼は12万ドル(約1300万円)
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Screenshot: Lucas Ropek - Gizmodo US

押収した証拠物件を見ると、捜査の執念もさることながら、国際犯罪組織のハイテクっぷりにも舌を巻きますよね。捜査では「別々のブランドの暗号化スマホを巧みに使い分けて、犯行と証拠を分散化している実態」も浮き彫りになりました。たとえば麻薬密輸の金銭授受も、段階ごとに別々の端末を振り分けるといったことが行われていて、なかにはドラッグの輸送にはAnomを使うけど、違法取引隠ぺい工作にはCiphr or Skyを使うといった事例もあったそうです。

暗号化プラットフォームの摘発が続く一方、暗号化が身近になるにつれ悪用も増加しています。先ごろ捜査で解体となったSky Global社もCEOが暗号化技術を国際麻薬カルテルに供与していた疑いが持たれていますし、その競合で去年ガサ入れの入った暗号化プラットフォームEncroChatも犯罪組織に悪用されていた疑いで検察と警察が捜査中。闇組織と暗号化サービスは切っても切れない縁にあるようです…。

FBIの狙いとは?


ツナ缶やパイナップルをくり抜いてコカインを忍ばせた写真も盛大にシェアされた今回のトロイの盾オペレーション。FBIが目指したものは何だったのか? 宣誓供述書には「闇社会全体の自信を揺らがせることにある」とあります。作戦大成功。

当記事はギズモード・ジャパンの提供記事です。

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