3年間のシリーズに幕!『キラっとプリ☆チャン』スタッフ座談会

キッズアニメと初めてがっつり向きあった3年間
『キラッとプリ☆チャン』スタッフ座談会
博史池畠(監督)×川瀬まさお(助監督)×満田一(キャラクターデザイン)

『キラッとプリ☆チャン』が5月30日の放送で、約3年のシリーズに幕を下ろした。プリ☆チャン初心者だった幼なじみのみらい&えもが、同級生のりんかから動画配信テクのサポートを受けてスタートした「ミラクル☆キラッツ」。やがて、りんかも加わり、3人は人気のプリ☆チャンアイドルへと成長。配信ライブを通して、様々な人たちとの友情を育んできた。そんなシリーズのラストは、キラッツが地球を飛び出し、なんと月面(!)に新設されたプリズムストーンの支店にロケットで向かうというシーンで締めくくられた。

本作の主要スタッフ、監督の博史池畠さん、助監督の川瀬まさおさん、キャラクターデザインの満田一さんが、シリーズを振り返っての思いを語ってくれた。

>>>『キラッとプリ☆チャン』場面カットを見る(写真21点)

3年間というのは、不得手なものが得意になるくらいの期間

──『プリ☆チャン』を3年間続けてきて、いかがでしたか?

川瀬 自分としては、キッズ向け作品って初めてで。今まで携わってきた中ではダントツに視聴者数の多い作品になったし、やっていて心が浄化される気分もありました(笑)。コアなアニメファン以外の方にも観てもらえるということで、フラットな気持ちでいられたし、自分が子どもだった頃の気持ちを思い出しながら、優しい作品作りを心掛けていました。観ていた人にもそこを感じてもらえていたなら嬉しいです。

満田 3年間あっという間でしたね。最初はどうなるんだろうって……。

──「どうなるんだろう」というのは、ストーリー的なことですか?

満田 「最後までやりきれるんだろうか?」という個人的な不安感ですね。自分はこのシリーズではお話作りについては絡まずに、絵作りに専念していたので。前作の『プリパラ』シリーズを観ていて思ったのが、明らかに衣装の作画が大変そうでしょ。しかもキャラクター数もめちゃめちゃたくさんで。『プリ☆チャン』も最初こそ、みらいとえもの二人だけに近い感じでしたが、案の定どんどん増えていって……かなり苦しいことに(笑)。

──『プリパラ』もそうでしたが、『プリ☆チャン』も一度レギュラーキャラになったら退場しない形でしたからね(笑)。

満田 そうなんですよ(笑)。それと、宣伝用とかの版権イラストではポーズの制限もあって。のちのちグッズ化することも前提にしていたので。

──たとえば、缶バッジの丸いトリミングにうまくはまるようにとか?

満田 そういうことです。だから顔回りに手をもってきたりとか。

——ポーズのバリエーションが尽きてしまいそうですね。

満田 なので、ポーズに逃げることなく、純粋に顔の造作やプロポーションで勝負しなくちゃいけないのが、最初はすごく怖かったというか。でもそれが得意になるくらいまで鍛えられました。3年もやりましたからね(笑)。おかげで今はもう、そういう描き方で勝負できるくらい得意になりました。とはいえ、やっていて楽しかったですけどね。

──キャラを描く上で全体的な苦労というのは?

満田 僕も子ども向けは初めてだったので、「観ている子たちが何をかわいいと思ってくれるのか?」は考えました。それと、まつ毛一本、髪の毛先の跳ね方一つでキャラの感じが変わってくるんだなぁというのは、この作品を通してすごく感じました。

川瀬 毛先と言えば、最初の頃にタカラトミーアーツの人から「小さい女の子の憧れは、くるんとした髪の毛なんです」と言われましたよね。

満田 ああ、言われた! その時は「本当かなぁ?」なんて思っていましたけど(笑)。ウェーブやカールのない完全なストレートヘアの女の子が『プリ☆チャン』にいないのは、そのためです。それから、シンソフィアさんの原案デザインからも「ここがチャームポイントなんだな」というのが分かるので、そこを活かすようにしていました。そういう「観察力」みたいなものが『プリ☆チャン』をやったことで、えらく身に付いたというか。原案デザインから活かすべきポイントを探っているうちに、そういうスキルをもらった気がします。今後の仕事にもそれは強みになると、自分でも感じています。
(C)T-ARTS / syn Sophia / テレビ東京 / PCH3製作委員会

3年間のシリーズはいつもの12倍の長さ!

──池畠さんは、この3年間はいかがでしたか?

池畠 僕は二人と違って、長かった感がありますね。ようやく最後までたどり着けたなっていう。長かった楽しかった日々ももう終わってしまったんだなって。そういう寂しさがあります。『プリ☆チャン』と並行して1クールもののアニメもやっていたんですけど、1クールものって本当に一瞬で終わるんですよ。アフレコは3ヵ月かけてやっているはずなんですけど……「始まったばかりなのに、もう終わっちゃうの!?」みたいな。『プリ☆チャン』は4クール×3年でしたから、いつもの12倍の長さなわけで(笑)。

川瀬 放送期間は3年ほどでしたけど、準備期間を含めると3年半ですもんね。

池畠 ここまで長いプロジェクトには関わったことがなくて、それまでは長くて2クールものでしたから。それに僕自身、キッズ向け作品に立ち上げから監督として携わるのは初めてだったんです。なので最初は「最後までできたらいいな」とは思っていたのですが、無事ゴールテープを切れてよかったなという気持ちですね。

──「1年経つごとに、マラソンのゴールがまた1年遠くなる」みたいな感覚だったのですか?

池畠 いえ、最初から3年想定ではありました。もちろん、アクシデントの可能性もあるので確定ではなかったですけど。

満田 「最低でも2年間はやります」という話でしたよね?

川瀬 あれ? 僕は「1年で終わるかもしれない」って聞いていましたよ。だから、毎年延長できるのかドキドキしていたんですけど(笑)。

満田 1年目の最後には、3年目はあると聞きましたよ。

川瀬 え、そうだったんですか? 僕は2年目後半のED「Brand New Girls」の絵コンテは、「これでシリーズが終わるかもしれない!」って気持ちで描いていましたよ(笑)。

池畠 確か1年目の後半くらいに、3年間のシリーズ全体のロードマップのようなものを、タカラトミーアーツさんからもらいました。「このタイミングで『アイドルタイムプリパラ』のゆい&らぁらが登場します」とか。だから早くからこの二人の再登場は決まっていたんですよね。

歴代シリーズのキャラクターをどうなじませるか

──らぁらとゆいだけでなく、1年目ではあいら、2年目はなるなど、歴代の「プリティーシリーズ」のキャラが登場するのも楽しみの一つでした。『プリ☆チャン』の世界になじませる際の苦労はあったのですか?

池畠 あいらとなるはそれほど苦労はなかったんですけど、ゆいとらぁらをどうなじませるかは大変でしたよね。特にゆいはキャラが濃いので、お話になかなかなじんでくれない。まぁ、なじまないまま投入してみようという感じではあったんですけど。

満田 ゆいが一番ぶっ飛んでいますからね(笑)。

池畠 らぁらは、彼女単体で扱う分にはいい子なので、ちょっとアレンジすればいけますけど、ゆいとの関係性を考えた時にどうしたらうまくいくのかなと。それで「ゆいのマスコットにして、成長しておなじみの姿になる」という形に収めたんです。

満田 絵柄的には、あいらが一番難航しましたよね。『プリティーリズム・オーロラドリーム』の時のあいらの髪型が、『プリ☆チャン』のゲーム筐体のヘアパーツになくて。

──ゲーム内のCGキャラで再現できないということですね。

満田 そうなんです。なので、アニメもゲームに合わせてアレンジしてほしいと要望がありました。でも、僕はオリジナルの絵を大事にしたかったので試行錯誤があったんですけど、なる以降はそういうことはなかったです。やっぱり元の作品のファンをがっかりさせるのだけは嫌だなぁと思っていました。

川瀬 それは自分のワガママで言ってるわけじゃないですもんね。

満田 よりファンが喜ぶほうを自分は選択したかったんですけど、ゲーム側にもどうしようもない事情がありますからね。

川瀬 アニメサイドとゲームサイドでうまく折り合いをつけた感じですよね。

満田 ただし、『プリパラ』のキャラは瞳孔がないので、キャラの視線が定まらないのが、自分としてはなかなか大変で。

川瀬 あれは難しいですよね。

満田 なので、そこについてはハイライトの描き方を少しだけ変えさせてもらいました。
(C)T-ARTS / syn Sophia / テレビ東京 / PCH3製作委員会

やっぱり子どもたちに変なものは見せたくない!

──アニメオリジナルのストーリーについての苦労は?

池畠 同世代の他の監督さんに比べると、僕はアニメオリジナル作品をやっているほうなので、そこでの産みの苦しみみたいなものはありませんでした。とはいえ、原作ものと比べると、1回の脚本会議の時間はとんでもなく長かったですけどね。確か十数時間やっている時もありました。昼頃から始まって夜遅くまで。ただ、キッズアニメなので、やっぱり子どもたちに変なものは見せたくないわけです。自分の中での「キッズアニメのライン」をきちんと引きたいという気持ちはありました。でも「どこで線引きしたらいいのか?」は、最初は探り探りだったんですよ。だから最初のほうは、そのラインを越えないように、とにかく気をつけてやっていました。それがだんだん話が進むにしたがって、「ここまでは大丈夫」というのが分かってきました。

川瀬 最初、「この作品におけるリアリティライン」というのはかなり気にしていましたよね。

満田 そこからすると、3年間でだいぶ変わっているような。2年目は、だいあのドラマを通して、すごく人間の感情に触れていたと思うんですよ。1年目の時はそういうのはやらなかったので、「池畠さん、ちょっと考え方が変わったんだなぁ」って思っていました。

池畠 ああ、一種のライブ感覚で作ったところがあるせいかな。自分の中の基準はありつつも、思いついたものを「面白そうだからやっちゃおう」みたいなことが……たとえばVTuberとかの流行りものもちょっと入れてみようとか。そのせいかもしれませんね。

──流行りものというのは、小さい子たちにも受けそうなものということでしょうか。

池畠 ええ。僕は42歳なんですけど、そのアイデアを得るために、いろいろと小さい子が好きそうなもの、興味のありそうなものを調べないといけないぞ! って意識していました。そういう意味でのプレッシャーは大きかったです。

川瀬 タカラトミーアーツの人が言っていましたもんね。「観ている子たちの憧れになるような、作品とキャラクターにしてください」って(笑)。

池畠 意外とオジサンが若者向けだと思っているものが、実はもはや若者向けではなくて自分より少し年下のオジサン向けでしかない、みたいなこともあったり(笑)。

満田 指ハートなんかも、今はもう古いらしいですからね。

池畠 流行語も、1年目で「エモい」を入れたんですけど。

──でも「エモい」は、それなりに定着したのでギリギリ大丈夫では?

池畠 そうですね。僕も今は「ここはもう少しエモい感じに」とか、普通に使うようになりましたから。でももう「新しさ」はないじゃないですか。それくらい、若い世代というか小さい子たちの間で何が流行っているのか? というのは、今まで以上にすごく気にして作っていました。たとえばタピオカミルクティーが流行ったら、即座に「これだ!」って本編に出してみたりとか。そういう意味ですごく勉強になったし、アニメファン向け作品だけをやっていたら身に付かないような勘も得られた気がします。その中で、結構好きなようにやらせてもらえたのでとっても満足していますし、自分の作品としても間違いなく代表作として名前を挙げられるものにもなりました。このシリーズの監督をやらせてもらえて、すごくありがたかったです。やっぱりキッズアニメって楽しいな! って思える3年間でした。
(C)T-ARTS / syn Sophia / テレビ東京 / PCH3製作委員会

当記事はアニメージュプラスの提供記事です。

あなたにおすすめ

ランキング

ランキングをもっとよむ

注目ニュース

注目記事をもっとよむ

あなたにおすすめ