「コロナ禍で仕事がすべてなくなった」レースクイーンが見出した活路

日刊SPA!

 モータースポーツに欠かせない「レースクイーン」。白熱するサーキットでのレースに華を添え、立ち振る舞う様子は憧れの“アイコン”的存在とも言える。しかし2020年に襲った新型コロナの影響で、モータースポーツの祭典はことごとく中止に追いやられる。まさにそこを主戦場にしていたレースクイーンの多くは、ライブ配信アプリを使ったライバー活動に取り組むようになり、生き残りをかけて必死だ。

レースクイーンやモデルを中心に活動する新谷桐子さん(27歳)もその一人。今回はコロナ禍を乗り越えるために取り組んでいることや、レースクイーンにかける想いについて新谷さんに聞いた。

◆ルーティン作業が苦手でイベントコンパニオンの世界へ

新谷さんは国内最高峰のレースといわれる「Super GT」でレースクイーンを務めている。国内外から多くのレースファンが駆けつけるモータースポーツの祭典でいわば“レースの花形”として活躍してきたわけだ。

そんな新谷さんだが、レースクイーンを始めたきっかけは何なのか。

「高校時代にアルバイトでスーパーのレジ打ちやテレアポの仕事をやっていたのですが、ずっと同じことを繰り返すルーティン作業が苦手で……。どうしても、長く続かなかったのですよ。そこでイベント系のお仕事を探すようになりました。イベントは短期間のお仕事なので色々な場所に行けるし、様々な境遇の人とも出会えるのでとても楽しかった。

そのうち、イベントコンパニオンの事務所に入ることになり、社長からレースクイーンのオーディションを紹介されたことが、そもそものきっかけになりますね」

◆大学時代は週末フル稼働。テキーラガールの仕事もこなす

大学進学後も平日は学業に専念しつつ、土日は展示会や発表会などのイベントコンパニオンに精を出した新谷さん。

レースクイーンという仕事を知ったことでオーディションにも挑戦するようになり、最初につかんだのはオートバイレース「鈴鹿8時間耐久ロードレース(鈴鹿8耐)」のレースクイーンだったそうだ。

さらに、レースクイーン以外にテキーラブランド「クエルボ」を売るクエルボガールの仕事もこなしていたという。

「大学生だった当時は、東京や大阪でメジャーだったクエルボを名古屋でも広めるという動きがあって、名古屋の初代クエルボガールを務めさせてもらったんです。他の案件に比べて拘束時間が短く、かつ報酬も良かったので、興味を持って最初は求人応募しましたね。

お酒はあまり飲まないタイプで、クエルボ自体も知らなかったんですが……。でも、『せっかく楽しく仕事するなら飲めるようになろう』とテキーラを飲む練習をしました。おかげで今ではお酒好きになったんですよ(笑)」

◆一度は社会人になるも、すぐに方向転換。一躍GTのレースクイーンへ

イベントコンパニオンという華々しい仕事を経験してきた新谷さんは、大学卒業を機に一度きっぱりイベントコンパニオンから離れ、一般事務の仕事をするために上京。

地道に働く道を選んだ理由について「組織に属しての社会経験を積もうと思って就職した」と新谷さんは言う。

「制作会社の事務の仕事をこなしていて、初めの方は良かったんですが、途中で窮屈さを感じてしまって……。ルーティンワークは自分の性格に合わないと改めて思うようになり、半年で辞める事になってしまいました。

そこで、名古屋の友人に『東京で優良なイベントコンパニオンの事務所教えて』と連絡し、紹介してもらった事務所に所属しました。そして東京を拠点に、イベントコンパニオンとして再び働くようになったんですよ」

こうして華やかな世界へと舞い戻ったわけだが、東京でイベントコンパニオンの活動を始めた際にもっとも驚いたのは「レースクイーンの中にも色々種類があること」だそうだ。

「レースクイーンといっても、こんなにたくさんの仕事があるのかと、東京に来てから知ったんですよ。転機になったのはやはり『SUPER GT』のオーディションに受かったこと。モータースポーツのなかで一番盛り上がるレースなので、レースクイーンにもひときわ注目が集まるんです。

また、『GTでレースクイーンを務めている』という肩書きを持っているだけで書類選考時に優遇されることも多く、コンパニオンの案件も通りやすくなる。収入に関しても波はもちろんありますが、一般的な20代女性OLがもらえる額以上にもらっていた時期もありますね」

モータースポーツの世界で注目の的として熱い視線が注がれるレースクイーンだが、やっていく上で苦労はなかったのか。

「レースクイーンはチームや企業の『広告塔』なので、常に笑顔で明るい雰囲気を作らないといけないんです。レースクイーンを務めるチームによって異なるものの、だいたいが長丁場なので、気を抜けないですよね(笑)。絶対に暗い顔したりネガティブな雰囲気は出せないので。

ただ、レースクイーンをやっていることで、ファンがついたりSNSでフォロワーが増えたりするので、とてもやりがいのある仕事だと思っています」

◆コロナ禍で全く仕事がない…。行き着いたのはライバーの道

しかし昨年、突如として世界中を襲ったコロナ禍により、多くのレースやイベントの中止が余儀なくされた。コンパニオンやレースクイーンは仕事柄、イベント自体がなくなってしまえば、活動できなくなってしまう。

新谷さんは「コロナ禍で仕事が全くなくなってしまった……」と深刻さを語った。

「仕事自体がないので、稼ぐことができない状況が続きました。幸い貯蓄はしていたので、貯金を切り崩しながら生活していましたね。正直最初は『どうせ2~3ヶ月くらいで流行は収まるだろう』と考えていたんですが、全然収束する気配もなく、いよいよこれはまずいぞと。

レースクイーン仲間の友達とも情報交換し、お互いどうしようと言いながらも、必死に乗り越えるためのアイデアを考えていたところ、友達が『17LIVE(イチナナ)でライブ配信を始める』と聞いたんです。

それで、応援するつもりでその友達のライブ配信を見にいって驚きました。オーディエンス(ライブ配信視聴者)からのリアクションや、“ギフト”という課金アイテムの応酬がもうすごかったんですよ(編注※無料のギフトもある)。

なんか盛り上がってるなと思い、後で友達に聞いたら『ライバーで月に200万円くらい稼ぐ人もいるんだよ』と言われたんです。これは夢のある仕事だとその時に感じましたね。そして自分もライブ配信をやってみようと思い、17LIVEに登録しました」

◆新人ライバーの登竜門で頭角を現し、月収130万をもらったことも

レースクイーンから一転、ライバーとしての活動を始めた新谷さんだが、ファンサービスの仕方やオーディエンスに向けて何を話せばいいかなど、全く知識がないところからスタートだったという。

「最初は自分のことを知ってもらうために、レースクイーンのことや趣味の話などをしていたんですが、途中で飽きちゃうんですね。他のライバーさんの配信も参考にしながら、自分のやり方を試行錯誤していきました。

そんななかで意識するようになったのは『オーディエンス同士が居心地のいい空間』を作ること。誰が配信のルームに入ってきても、温かく迎えられるような雰囲気を心がけています。また、初見のオーディエンスにターゲットを置き、積極的にコメントしやすいような質問でコミュニケーションをとる。楽しい空間と思ってもらえれば、一見さんで終わることなく常連になってくれるんです」

ライバーとして手応えをつかんだのは、17LIVEが行う新人ライバー向けのイベント『新人ライバーの進撃(以下、進撃)』に出たときだったそう。

新人ライバーの登竜門として知られ、激戦が繰り広げられるなか、新谷さんは他のライバーに負けじと健闘を見せた。

「17LIVEの配信イベントって様々な種類があり、自分の好きなものに参加できる。ただ、イベントの期間は配信に集中しないといけないので、注目度を上げるために皆必死になるんですよ。私が参戦した進撃は新人向けのイベントで『ここで結果を出せばライバーとしての階段を登れる』と思い、頑張りました。

結果としては、とあるオーディエンスの方が、たくさん応援をしてくれたことも功を奏して13位にランクインしたんです。この時の月収は130万くらいでしたが、これは今でも一番の最高額ですね」

◆いつかは引き際があるレースクイーン。ライバーは今後も生きる術になりうる

今年はSUPER GTの開催も決定し、レースクイーンとしての現場も戻ってきたため、ライバー活動は「ファンとの交流目的で時間がある時に配信している」と話す新谷さん。

とはいえ、花形として人前に立つレースクイーンはいつまでも続けられない仕事だと悟っているとのこと。現在27歳、いずれは引き際も考えなくてはならない年齢が訪れるなか、新谷さんは最後にライバーとしての今後の展望をこう述べた。

「自分って夢がないタイプというか……。その都度楽しいことや興味あることをやってきたんです。レースクイーンもそのひとつでしたが、この先年齢を考えるといずれは区切りをつけないときがやってくると思っている。

一方で、ライブ配信は頑張った分だけ報酬になるというか、すごい可能性を秘めているじゃないですか。なので今年は、17LIVEのライブ配信イベントの中でも上位ランクイン者が雑誌やランウェイを飾れる大きめのイベントに挑戦してみたいなと思います。どこまでやれるかはわかりませんが、本気で挑んでみて、自分の活動が広げられたら嬉しいですね」

<取材・文・撮影/古田島大介>

【古田島大介】

1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている

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