6/20に生配信が決定! 中村勘九郎が語る、信州・まつもと大歌舞伎2021『夏祭浪花鑑』

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Bunkamuraシアターコクーンで2021年5月30日(日)まで上演されていた『夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)』が、2021年6月17日(木)に、長野県松本市のまつもと市民芸術館で開幕する。

2008年の平成中村座の公演を皮切りに始まった信州・まつもと大歌舞伎は今年で7回目を迎える。毎回熱烈な市民サポーターが公演を支え、街全体が盛り上がることで話題を呼ぶが、今回、コロナ禍という状況も踏まえ、6月20日(日)15:00に生配信上演が決定。コクーン歌舞伎を見逃した人も、松本にいけないという人も楽しめるようになった。

出演する中村勘九郎に、生配信することや、信州・まつもと大歌舞伎にかける思いをオンライン取材会で聞いた。

後ろ向きだった配信。観客の声に後押されて「コロナが晴れてもやりたい」

中村勘九郎  /(C)松竹
中村勘九郎  /(C)松竹

ーー生配信上演決定に伴い、まずは一言お願いします!

必ずやりたかったことが実現できて、本当に良かったと思います。やはり緊急事態宣言を受けまして、(コクーン歌舞伎が)6月6日から11日の公演が中止になってしまって。その間にチケットをお求めになられた方も大変多くて、その方々にお届けしたいという気持ちがずっとありました。

おかげさまで幕が開き、好評をいただきまして、評判を聞いて行きたいけど、やはり東京は遠慮するというお声が全国から多かったので、その方々にお届けするのは、配信が一番だと思いまして。お話しをさせていただいたところ、こうやって、かなったことがとてもうれしいですね。


ーー松本から伝えたい部分を教えていただけますか?
 
コクーンでもできたらよかったんですけど、松本でチケットをお求めの方も多いので、そんなに早く生配信してしまうと、生配信でいいやと来てくれなくなったら困るから(笑)。

松本は、今のところ予定では100%観客を入れる予定にはなっております。100%の観客席をご覧になったり、感じられたりする機会は1、2年間なかったと思います。その雰囲気を味わって欲しいですね。また、やはりコクーンの箱の大きさと、まつもとの箱の大きさでは違うので、松本に行って稽古をし直します。コクーンを観た方でも、また細かい演出や雰囲気が変わっていると感じられるのではないでしょうか。


ーーコクーンと松本とでは、演出はかなり変えるのでしょうか?

大きな変わりはないと思います。変わると言っても、間口の問題や切穴の場所とか、すごく細かいところです。

ーー東京に行くのは、なかなか難しいというお声があったと。勘九郎さんのところにも声は届いているのですか?

届いています。もちろん一般のお客様だけでなく、知人・友人から、行きたいなというお声は届いています。配信は、去年の7月に最初にやらせていただいたんですけど、僕は後ろ向きだったんですね。演劇というのは、生の舞台をご覧いただくことが一番ですし、無理やり配信をやる必要はないのかなと思っていたんですけど、コメント欄やお客様の反応が「待っていました」というか、「やってくれてありがとう」という声をたくさんいただいて。

配信というのは、このコロナが晴れても続けていきたいと思うことのひとつです。上演中での舞台での配信は初めてなので、その気というか、役者から出ている独特の気がお届けできたら良いなと思いますね。


ーー5月6日から11日までは緊急事態宣言を受けて、公演を中止しました。その時のお気持ちは?

恐怖でした、本当に恐怖でした。去年の3月のことが頭をよぎりましたね。明治座で大変大きな作品を我々兄弟でやる予定だったんですが、緊急事態宣言が出るか出ないかの時で……。毎日、芝居ができるのかできないかという状況の中で、稽古をしていたんです。そういう本当に辛かった時期があったので、それが頭によぎりましたね。

ーー今回、カメラワークでも演出でも、配信ならではの勘九郎さんのアイディアは取り入れたのですか?

配信ならではで取り入れることは、配信オンリーのところでやらなきゃいけない。僕も色々考えたんですけど、今回、その日に観にきてくれているお客様もいるので、ね。それをやってしまうと、なんか違うじゃないですか。

配信だけの時には、本当にいろいろ技術を駆使していいと思いますよ。僕も、いろいろなアーティストの方の配信ライブ……嵐のコンサートも見ました。彼らのコンサートはあの時できる最高技術をやっていらっしゃったりしたので、これからも夢は広がると思います。パルテノン神殿の前で『白浪五人男』とかね、夢がある。旅行もなかなかできない状況の中、そういうのをお届けできたらいいなと思いますね。


ーーいろいろなアイドルやアーティストのコンサートや舞台の配信を見て、勉強されたのですか?

勉強じゃないです。ただの趣味ですから。あまり勉強のためと言って、芝居とか音楽とかを見ると、違う脳味噌で入ってきちゃうので。それは楽しんで、これもいいな、これもいいなと楽しんでいます。

街ぐるみでカンパニーを迎えてくれる、信州・まつもと大歌舞伎

(左より)中村勘九郎、笹野高史  /(C)松竹
(左より)中村勘九郎、笹野高史  /(C)松竹

ーー信州・まつもと大歌舞伎は08年から始まって、最初の演目も『夏祭浪花鑑』でした。第一回と同じ演目をまたお届けできることに関してはどういう思いでいらっしゃいますか?

『夏祭浪花鑑』という作品はコクーン歌舞伎で上演されて、96年に初演が行われたんですけど、串田(和美)さんが最初に演出した作品です。『東海道四谷怪談』はアドバイザーという形だったそうなので、この『夏祭浪花鑑』から演出に携わったというすごく記念すべき作品でもありますし、国内外で上演された作品でありますので、それを全国の皆様にお届けできるのは、とても嬉しいですね。

ーー長三郎さん(勘九郎の次男)は松本の舞台に立つのは初めてですよね。

初めてですね。

ーーどんなことを感じて欲しいなと思っていらっしゃいますか?

松本はとにかく市民サポーターというか、松本市の方々が本当に尽力というか協力をしてくださって、街ぐるみで応援してくれている。一種のお祭りのような感じで、カンパニーを迎えてくれる土地なので、今は感じることができないんですけど、人と人との空気感、サポートしてくれているありがたさを感じてくれたら嬉しいなと思いますね。

ーー勘九郎さんご自身は5年ぶりですよね。松本にはいきたいと思っていました?

もちろん、もちろん。自分がスーパースターになったと勘違いさせてくれるから(笑)。街歩いていても、車を止めて、車中から手を振ってくれたり……東京じゃありえないですよ(笑)

ーー松本で楽しみにされていることは?

松本の方たちが打ち上げに蕎麦パーティーを開いてくれるんですね。それが本当に美味しくて。もちもちのお蕎麦。みんなとお話しするのは楽しかったですけど、今回は絶対にできないですし、してはいけないと思っているので。でも、僕たちが楽しむのではなく、まつもと歌舞伎を観にくれる人たちが楽しんでくれればいいなと思います。
中村勘九郎  /(C)松竹
中村勘九郎  /(C)松竹

ーー2011年に博多座で勘三郎さんの代役で団七をやられています。急な代役でしたし、3.11の地震があったり、お子様が生まれたり、いろいろと不安な気持ちを抱えながらの舞台だったと思いますが、当時と比べて、今はどう違いますか?

おっしゃった通り、急な代役ということもありましたし、その博多座の公演が新幹線の開通のお祝いだったんですね。みなさんが父を待っていたところで、出られなくなって。

代役でなくても結構、大変だったんですよ。5日前に三谷(幸喜)さんの三人芝居の『ろくでなし啄木』が終わったばっかりで、結構出突っ張りで、ボロボロだったところに夜中稽古が入って。そして、地震があって。今芝居していて、自分たちはやっていていいものかという自問自答をしながらの日々。体力的にもきつく、あまり記憶にない公演だったんですけども。

今は、一から稽古もみんなで直して、演出もコロナ禍に合わせた変更がありますが、準備期間もたっぷりありましたし、全然違いますね。心も体も。


ーー団七という役を深めたという手応えは感じられますか?

10年前もそうだったんですが、台本を開いたこともないぐらい、父をずっと見ていたので。団七という役は父を通してですけども、とても好きな役で、必ずやりたい役のひとつでした。メンバーも一新したので、今回のこのカンパニーの『夏祭浪花鑑』の団七はつかめたという気がします。

配信を通じて、歌舞伎に少しでも興味を持ってくだされば

(左より)中村勘九郎、中村長三郎、中村七之助  /(C)松竹
(左より)中村勘九郎、中村長三郎、中村七之助  /(C)松竹

ーーコクーン歌舞伎は歌舞伎の新たな魅力を見せてきました。積み重ねてきたものがあるのではないですか?

そうですね。原作を読み直してお届けするという作業をずっとしているんですけど、やはり、お声が多いのは「セリフは分かりやすくしているんですか?」とか「すごくわかりやすかったです!」という声をいただくんですけどね、全くセリフをいじってないんです。

やっぱり見てくださるお客様の先入観や場所で変わっていくものなのかなと思いますね。特に父なんですが、コクーンでやるから、演技や芝居を変えることを絶対にしなかった人なので。歌舞伎座でやるのと同じ気持ちで、僕たちも肝に命じてやっている。その点が面白いなと思います。お客様の中で変換されていくんだろうなと思いますね。


ーーコクーンでは、若い女性が多いなという印象がありましたが。

彼ら彼女たちが歌舞伎座や大きい劇場にも足を運んでくれたら。カンパニーも僕たちだけではないですし、役者もいっぱいいますし、いま見ておきたい作品が、コロナ禍でお客様から求められているものを大先輩の方たちが表現しているので、見に行かない手はないです。いろんなものを見て欲しいなと思いますね。

ーー改めて、このコロナ禍で広がった配信については、どういうお気持ちで見ていらっしゃるのですか?

僕は劇場が好きなのですが、まぁ配信は、自由に見られるのがやっぱり一番良いなと思います。集中してみて欲しい作品だとか、空気だとかというのは劇場でしか味わえないんですけど、歌舞伎ってそもそもご飯食べながら、酒飲みながら、あるいは外出ちゃってもいい。それが、小屋の魅力というか、あり方だったのかなとも思います。

ーー最後にどんな人に配信を見て欲しいか、教えてください!

配信でいいのは、1枚を買えば、ご家族全員で見られるじゃないですか。好きでよく見にきてくださっている奥様の歌舞伎を、旦那さん、お子さんも含め、みんなで家族の人たちが共有してみてくださったら一番いいなと思いますね。

ちらっと見てみて、つまらなかったら、テレビを見ても良いんだし(笑)。今まで歌舞伎に触れてこなかった方たちがちょっとでも興味を持って見てくだされば、うれしく思いますね。20日まで緊急事態宣言が延長されているので、やっぱりね、少しでも外に出ないようにというか、家で見てくだされば良いなと思います。


取材・文=五月女菜穂

当記事はSPICEの提供記事です。

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