
6月1日、東京都立川市のホテル室内にて、派遣型風俗店で働いていた女性が、全身およそ70カ所を刃物で刺され死亡、店の従業員の男性も腹部を刺され重傷を負う事件が発生。容疑者として逮捕されたのは、19歳の“少年”だった。
この凄惨な事件については、報道の在り方を問う声も多く上がっている。
■殺人未遂で19歳の少年逮捕

報道によると、1日午後3時45分頃、立川市曙町のホテル室内にて、少年とトラブルになった女性が全身を刃物で刺され死亡し、女性から電話で助けを求められた従業員の男性も、ホテルの廊下で腹部を刺され重傷を負った。
その後、男性への殺人未遂容疑で逮捕された、あきる野市に住む職業不詳の19歳少年は、警察の取り調べに対し「人を殺す動画を見て刺激を受け、無理心中を撮影しようとしたら女性に断られた」「風俗業の人間はいなくていいと思った」などと供述しているという。
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この事件について、一部の報道機関が被害者の職業と実名を併せて報道した一方で、19歳の容疑者は少年法により匿名とされたことが、物議を醸している。
インターネット上には、「19歳少年はまだ20年生きてないという理由だけで守られて、被害者は何も悪くないのに殺され実名報道されるの本当に狂ってる」「肉体も、社会的にも2度殺害されてるようなモノ」「実名報道されない年齢の人間が、なんで女は買える権利だけあるのか教えてほしい」など、怒りの声が噴出している状況だ。
■実名報道と少年法の問題に弁護士は…

今回の実名報道と少年法の問題について、レイ法律事務所の近藤敬弁護士は、「実名報道について、唯一法的な規制として存在するのが少年法61条になります。年齢が20歳未満の被疑者については、原則として実名報道が避けられることになっています」。
ところが、「被害者については何ら法規制がないので、今回も被害者の女性が実名報道される一方で被疑者の19歳少年が実名報道されていないという扱いになっています」と解説。
■判断は報道機関に委ねられている
そもそも「実名報道をするか否かに明確な基準はなく、各報道機関による判断」。
近藤弁護士によると、「『社会的に関心が高い』と報道機関が判断した事件に関して、実名報道がなされることが多い傾向にあり、報道機関としては、重大事件については『より実態に迫った真実性の強い記事』を提供するほうが、国民の知る権利に利すると考えている傾向があり、それを実現するために実名報道を行なっていると考えられます」という。
最近では、「いわゆる『京アニ事件』の被害者について、実名報道するか否かで各報道機関の判断が分かれた」ことも記憶に新しい。
また、少年法61条に違反した場合でも「罰則がない」ため、過去には「20歳未満の被疑者であっても、あえて実名報道をした報道機関もあった」という。
■今後は18~19歳は実名報道も可能に
そんな少年法についても、「今国会において、18歳と19歳を『特定少年』と位置づけ、事件を起こして起訴されれば、実名報道も可能になるという少年法の法改正が成立しました(2022年4月1日施行予定)」。
近藤弁護士も、「今後は、今回のようなケースでも起訴後においては、被疑者の19歳少年の実名報道がなされるようになるかもしれません」と話す。
■支援団体が要望書を提出
また、被害者の女性の実名報道については、性風俗業に従事する人を支援する団体「SWASH(Sex Work and Sexual Health)」が、2日に警察やメディア関係者に向けて、性風俗で働く人の実名は原則非公開とするよう求める要望書を提出。
過去にも実名報道に起因した誹謗中傷などの人権侵害が起こってきたとして、プライバシー保護の徹底を求めている。
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