熊田曜子さんのDV被害報道にモヤッとした人に知ってほしい、5つの「二次加害」【臨床心理士が解説】

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タレントの熊田曜子さんが、夫からDV被害を受け離婚手続きを始めたと発表しました。カウンセラーとして数千人のDV被害者から話を聞いてきた経験から、DVに多い誤解と、被害者を更に傷つける二次加害について解説します。

多くのメディアが反応したDV被害の発表

5月31日、タレントの熊田曜子(39)さんが所属事務所を通じ、夫からDV被害を受け離婚手続きを始めたと発表しました。

“コロナ禍で皆さまが大変な思いをされている時に私のプライベートなことでお騒がせして大変申し訳ございません。

報道されております通り、令和3年5月18日の深夜、私が夫から暴行を受けたこと、身の危険を感じた私が警察に連絡したこと、駆けつけて下さった警察官に夫が逮捕されたこと、私がこの件について被害届を提出したことなどはすべて事実です。

夫からの暴力行為は今回が初めてではなく、夫が帰宅する時間が近づくと恐怖を感じるようになってしまっており、そのような状態でこれ以上婚姻生活を継続することは難しいと判断し、所属事務所や弁護士さんと協議を重ねた上で夫と離婚することを決意し弁護士さんに離婚手続きを委任することとなりました。

子ども達と4人で一緒に頑張って生活をしていきますので、温かく見守っていただければと思います。

2021年5月31日 熊田曜子”

発表の後も、憶測を含む様々な報道が出ていますが、その中には熊田さんへの「二次加害」になると懸念されるものも少なくありません。

カウンセラーとして数千人のDV被害者から話を聞いてきた経験から、DVに多い誤解と、被害者を更に傷つけ追いつめる二次加害について解説します。

1:「酷い暴力を振るわれてはいないのに、大げさだ」

熊田さんは顔を平手打ちされたり、身体を蹴られたりしたそうです。傷害容疑ではなく暴行容疑だったので、怪我はなかったものと推測されますが、グラビアの仕事をしている熊田さんにとって、顔と身体は「商売道具」でもあります。

人としての尊厳と、職業人としての誇りを傷つけられるに十分な暴力だったことは間違いないでしょう。自分の仕事について、理解も尊重もされていないと、悲しい気持ちになったのではないでしょうか。

DVに多い誤解のひとつに「DV=身体的な暴力」というものがあります。しかし、身体的な暴力がなくても、暴言や無視、長時間の説教といった「精神的DV」は、被害者の自尊心を蝕み、追いつめていきます。

DVとは、恐怖によって作られた、対等ではない関係性のことを指します。「夫が帰宅する時間が近づくと恐怖を感じる」というのはDV被害者に典型的な症状です。多くの場合、身体的な暴力は、支配・コントロールの最終手段として使われます。

熊田さんによると今回が初めての暴力ではなかったとのことですが、相手を恐怖で支配するには、一度の暴力で十分です。「また殴られるかもしれない」という恐怖から、被害者は加害者の顔色をうかがうようになります。そうして、支配関係ができあがってしまうのです。

2:「えん罪ではないか。双方から話を聞くべきだ」

本当にDVなのかを判断するには、双方から話を聞かないとわからないと言う人がいます。

確かに、何らかの利益(子どもの親権など)を得るためのでっち上げがないとは言い切れません。しかし、覚えておいてほしいのは「加害者も被害者も暴力を矮小化する」ということです。

加害者は、自分の暴力が相手に与える影響を小さく見積もります。また、「自分を怒らせた相手が悪い」と被害者のせいにして自分の暴力を正当化しているので、悪いことをしたという意識さえない場合も少なくありません。相手を傷つけたうしろめたさがある場合も、自分の加害を実際より小さく報告します。

被害者も、自分が受けた暴力を「たいした暴力ではない」と思っていることが少なくありません。

DV相談に訪れる多くの被害者が「こんなことで相談していいのか迷ったのですが」「これってDVなんでしょうか」と相談を始めます。詳しく聞いていくと「鼓膜が破れたことがあるくらいです」とか「肋骨が折れて入院したことはあります」といった話が出てくることもザラ。しかし「私が悪かったので仕方がないんです」と夫をかばいます。

怒鳴られたり「お前はバカだ」と貶められたりすることで自尊心がズタズタになり、日常的に繰り返される暴力が、自分に対する不当な攻撃だと気づけなくなっているのです。

自分の傷つきを意識できないほどに「言いくるめられてきた」被害者と、巧みに支配し続けてきた加害者。どちらの話が上手でしょう? 「被害者の話の方が実態に近い」というのは支援者の常識です。

3:「子どもの父親を犯罪者にするのか」

配偶者や恋人から、命の危険を感じるほどの暴力を受けたことがある女性は、20人に1人という統計結果があります。しかし、多くの女性が警察に相談することをためらいます。

警察沙汰になることでの近所の目や、加害者からの報復をおそれるといった理由のほかに、子どもの父親を警察に引き渡すことに抵抗を感じるからです。

夫のDVについて相談した義理の両親や友人から「子どもの父親を犯罪者にするのか」と、警察への通報を止められる被害者も少なくありません。

しかし、多くの人は「前科」と「前歴」を混同しています。犯罪者というのは、刑事裁判によって有罪判決を受け「前科」がついた人のことをいいます。逮捕により「前歴」はつきますが、それだけなら犯罪者にはなりません。

通報したことを逆恨みされ暴力が酷くなるのではないかと被害者は恐れますが、DV加害者は「外面がよく腰の低い、自分に自信のない人」がほとんどなので、警察の介入が暴力の抑止力になることは多いようです。自宅に戻るのが危険な場合は、警察に保護してもらうこともできます。

自分や子どもが危険に晒された時、頼みの綱は、24時間すぐに駆けつけてくれる警察です。ためらわず110番通報してほしいと思います。

また、子どもの前でのDVは「面前DV」という児童虐待にあたります。子どもの成長に著しい負の影響を与えるからです。つまり、「子どもの父親を犯罪者にするのか」というのは、子どもよりも加害者を守るべきだと言っているのと同じです。

DVは、自分を最も愛してほしい相手からの暴力なので、心にも大きなダメージを残します。通報の基準は「その暴力が他人から振るわれたものなら通報するかどうか」です。家族だから我慢すべきという考えは間違っています。

4:「家の恥をさらすべきではない」

熊田さんは以前、ご自身のインスタグラムで、夫の仕打ちによる傷つきを吐露していました。

「朝起きて一番にする家事が(夫に)一口も食べてもらえなかったご飯の処理」というコメントとともに、手間暇かけて作ったと思われる料理の写真に大きなバツ印を書いた痛ましい投稿に、多くの人が心配の声を寄せました。

家族のことをSNSに上げる行為を不快に感じる人もいます。「夫にも立場がある」と擁護する声も聞かれます。

しかし、投稿ボタンを押した時の熊田さんの気持ちを考えると胸が締め付けられる思いです。有名人ですから話題になることもわかっていたでしょう。夫から愛されていない、大切にされていない、そのように受け止められることも。それでもなお、吐き出さずにはいられなかった。

家の恥を晒してはいけない。多くの女性たちが、自分の被害よりも夫の立場を優先し、誰にも言えず、悲しみを飲み込んできました。そして、その我慢は「家庭の密室化」を強め、DVはエスカレートしていきます。

熊田さんのインスタは、私には「S.O.S.」に見えました。そして、「おかしいよ」「DVじゃない?」といった多くのコメントが、今回、熊田さんに、通報する勇気を与えたようにも思います。

5:「不倫していたなら、殴られても仕方がない」

熊田さんが不倫していたのを夫が問いただして口論になったという不倫疑惑報道も流れています。

しかし、もし実際に熊田さんが不倫していたとしても、だから何なのでしょう。

どんな理由があろうと、暴力は加害者に100%の責任があります。不貞行為は離婚の理由になり慰謝料も請求できますが、暴力を正当化する理由にはなりません。

「妻が〇〇だから、殴られても仕方がない」と、被害者の落ち度を責め、加害者を擁護する発言は、不倫に限らず、色々なバリエーションがあります。「買い物依存症だから」「家事をしないから」「夫の言うとおりにしないから」などなど。

長く暴力を受け続けた被害者が、追いつめられ、何かに救いを求めることを私は責められません。暴力被害によって抑うつ状態になり、家事や育児が十分にできなくなるのも無理はありません。

たとえば、妻からのDV被害に長年耐えてきた夫が別の女性と恋愛関係になり、そのことで妻に殴る蹴るの暴行を加えられ、夫が身の危険を感じて警察に通報した場合、どのように感じるでしょうか。夫に同情しないでしょうか。通報は当然なことだと思わないでしょうか。

男女を逆にした時に感じ方に差が生じる時は、「女のくせに」や「妻なのだから」というフィルターがかかっているものです。

たとえ「妻が子どもを虐待」していたとしても、その妻を殴ることは正当化できません。暴力を暴力で止めるのは、更なるエスカレートを生むだけです。暴力を止めるのは、第三者の目であり、理性です。

参考情報:平成30年3月内閣府男女共同参画局/男女間における暴力に関する調査報告書
(文:福田 由紀子(臨床心理士/メンタルケア・子育てガイド))

当記事はAll Aboutの提供記事です。

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