諭吉佳作/men Z世代を象徴する輝く才能、ピカピカの新曲集『からだポータブル』と過去のコラボ曲中心の『放るアソート』2枚のEPから紐解くインタビュー

SPICE

Z世代を象徴する輝く才能が、ついにフィジカルCDリリースという形で広く世に知られる時がやって来た。2003年生まれ、諭吉佳作/men、17歳。ピカピカの新曲でまとめた『からだポータブル』と、過去のコラボ曲を中心に収録した『放るアソート』の2枚のEPは、ポップスの常道やジャンル感をぶち破る、爽快でミステリアスでハイセンスな諭吉佳作/menの音楽性のすべてをぎゅっと濃縮。『からだポータブル』には脚本家・坂元裕二の『坂元裕二 朗読劇2021』主題歌「はなしかたのなか」が、『放るアソート』では根本凪(でんぱ組.inc)とのコラボ新曲も収録されるなど、キャッチーな楽曲がずらりと揃った。記念すべきメジャーレーベル初CDリリースインタビュー、ゆるく楽しくふんわりと味わってほしい。


――いよいよCDデビューということで。環境の変化はありました?

特に何かが変わったということはないですね。ずっとCDを出したいと思っていて、やっと整ったという感じです。

――聴かせてもらって、シンプルに音質のクオリティが上がったり、いろんな人が関わってきているおかげかなとも思いますがどうですか?

単純に時間が経ったので、そもそも作っている時期が全然違うんですよ。今までサウンドクラウドに上げている曲は、中学の時とかに作った曲なので。それと比べたら、自分の年月の問題も大きいと思いますし、もちろん人の手が加わったこともありますし、そういう変化はありますね。

――“いい音”になってると思います。今回、新曲のみのアルバム『からだポータブル』と、過去のコラボ曲を中心にまとめた『放るアソート』と、2枚同時リリース。どーんと来ましたね。

出していなかった時間が長かったので、今までためていたものを一気に出して、インパクトのある感じになったらいいなという気持ちと、今までコラボを何曲かやらせていただいて、それが本当に素晴らしい経験だったし、好きな曲ばかりだから、自分事としてリリースしたい気持ちがもともとあって。それがこういう形でかなえられたということですね。


ジャズを知ってるからジャズになったというわけではなく、上澄みだけをもらって自分の曲に入れちゃったみたいな感じはあります。事故みたいな。


――今日は、『からだポータブル』をメインに聞いていきます。これは去年作っていた曲、という感じですか。

いつ作ったのか覚えていない曲もあるんですけど、4曲目「外B」に関してはめっちゃ昔で、それこそスマホで作っていた頃です。あとの曲はそこそこ新しいものもあれば、人前に出ていない時期に作りためていたものもあれば。作業が速いほうではないので、時期に差はあるかもしれないです。

――「外B」が一番昔で、一番新しい曲は?

一番新しいのは「くる」かな。たぶん。

――ああ。なるほど。

なるほどって感じですか?

――なんとなく。リズムの精密さが、最新という感じがするので。「外B」はもっと明るくはずむ、無邪気な感じがするというか。違う?

その明るさが、気持ち悪い感じかなと思ってます(笑)。不気味な明るさというか。

――確かに(笑)。時期によってかなり違うんですね。

そうですね。でも同じ時期に作っても違ったりするので、その時の気分によって違っちゃうのかもしれないですね。

――1曲目「ムーヴ」、今までになく生々しい音色で、マリンバが入ったり、リズム的にはジャズを感じました。

ああー。それは自覚的な部分もありつつ。

――前にお話しした時(※)に、“ジャンル感は自分ではわからない”と言っていましたが。(※2020年12月31日掲載インタビュー時)

そうですね。ジャズを知ってるからジャズになった、というわけではないので。ジャズの上澄みだけをもらって、自分の曲に入れちゃったみたいな感じはあります。事故みたいな。

――事故(笑)。6曲目「くる」も、ちょっとジャズっぽいリズムと音色。

そうですね。リズムの感じが。

――CDショップのバイヤーさんによっては、オルタナジャズのコーナーに置くかもしれない。どこに置かれたいですか。

どこに置かれたいですか(笑)。難しいですよね。それがそうだったからといって、ほかの曲もそうなのか?といったら違うので。曲によって雰囲気がばらばらなので、すごく電子音っぽいものもあれば、ちょっと生っぽいものもありつつ。

――メロディだけで言うと、「この星にされる」がメロディアスで大好きです。これだけ聴くと、R&Bのコーナーに置いてもいいかもしれないし。もともとリズムから作る人なんですよね?

あー、自分、何からやってるんですかね?

――知らないです(笑)。

まあ、リズムによるところは大きいというか、最初かどうかはわからないけど、リズムから自分の考えをまとめていってる感じはあります。リズムでイメージして行ってる感じはありますね。メロディに関しても、全体的に。


――どんなスローな曲でもはっきりしたリズムが入っているから、こだわりはあるんだろうなと感じます。このデビューEPに収録した8曲はどのようにして作っていたのですか?

いつもそうかもしれないですけど、自分事でありつつ、ちょっとどこかに行ってるというか。作った時のことを、すぐ忘れちゃうので、どんな気持ちでとか、どんな手順でとか、本当に覚えてないんです。1曲作ると毎回ゼロになって、“曲ってどうやって作るんだっけ?”ってなっちゃうので、細かいことは全然覚えてなくて。“こういう曲もあったね”みたいな感じが、すでに出てきちゃってますね。

――インタビュアー泣かせだ(笑)。良く言えば前向き。悪く言えば忘れっぽい。

そうです(笑)。逆に、半分ぐらい忘れているがゆえに、“これ、こんなポップな曲だったんだ”とか、客観的に聴けるようになっているところはありますね。“このメロディはこんなに抑揚があったんだ”とか、すでに思い始めてます。

――自分はインスタに上げた写真の、半年前のを見て、“こんなの上げたっけ?”と思ったりしますけど。

わかります(笑)。

――たとえば「ムーヴ」について、今思い出せることは?

えー、そうですね、でもそれこそ、ちょっとジャズっぽいことを自覚的に……ジャズが何たるかはわからないけど、自分の中の“ジャズっぽさ”をやろうとしていた記憶は多少あるんですけど。あと、ピアノやドラムはちょっと生っぽさがありつつ、電子系のドラムの音や、エレピの音を入れてみたり、ひとつのものに融合したかったのかもしれないですね。混ぜた感じは、あったかもしれない。ということは覚えてるんですけど、あんまり細かいことは覚えてなくて。でも歌詞は、普段はあんまりやらないんですけど、ある程度こういうことについて書こうと決めていて、それを言うほうが面白いのか、言わないほうが面白いのか、わからないですけど。

――どちらでも。

「ムーヴ」について覚えているのは、ちょっと、合唱曲について考えていたことですね。私は合唱曲が好きなんですけど、合唱曲って展開がすごくて、今はこの景色、今はこの景色、っていうふうに、完全に曲調が変わることがあるんですよね。そういうものをちょっと考えていたかもしれない。普通に街で流れているような曲が急に展開が変わったら、“えっ”と思うかもしれないけど、合唱曲を歌う、聴きに行く、そういう状況の中では何の違和感もなくて、“こんな静かな曲が急に激しくなったぞ”みたいな、そういうことを考えていた気がします。

――クラシックの交響曲が、そういう感じですよね。楽章ごとに展開が変わるのは。

ああ、そうですね。

――諭吉ちゃん、クラシックピアノをやっていたから、どこかに影響が残ってるのかもしれない?

ピアノ教室以外の場でも聴くことがあるような有名なクラシックの曲は、まったく弾いたことないので。ピアノからの影響があるかは、ちょっとわからないですね。

――自由奔放のようでいて、クラシックの楽曲のような、かっちりとした構成意識は、諭吉佳作/menの曲にはあるような気がしますけどね。少なくとも、A→B→サビの、ポップスの常道ではない。

ああ、それはそうですね。

――それは避けている、というわけでもない?

自然にしようとしていますね、いつも、流れるように。たとえば、最初にできたメロディがAメロで、次にできたメロディがBメロになるじゃないですか。流れとして。ただ、その次のCメロがサビになるかどうかは、Bがどんな印象かによるというか、サビに行きそうだなと思ったらサビにするし、逆にCを作ってみて、サビっぽいなと思ったらサビにするし。やってみた状態をどうとらえるか、みたいなことでもあるので、どう流れてきたかによって、次にどうなるかが決まるという感じです。

――ふむふむ。

もしかしたら、ギターで弾き語りとかしていたら、そうならないのかもしれない。自分がトラックを作って、Aメロを作って、歌詞もつけて、Bメロを作って、また同じことをして。ブロックごとに作っていくことが多いので、それも影響しているかもしれないです。

――ああ。なるほど。だから、良い意味で、何度聴いても展開を覚えられない。良い意味ですよ(笑)。だから何度も聴きたくなる。

ありがとうございます。

――ここでリフレインを作って、覚えやすくしようとか。そういう考え方ではないから、聴くたびにびっくりします。これ、どうやって作ったんだ?って。

変なタイミングで、さっき使ったメロディをもう一回使ったりしますね。

――そうそう。それは確かに、DTMで作る人の発想かもしれない。良い意味でへんてこりんなんですよね。良い意味ですよ(笑)。たとえば、ほかの曲のエンディングはパッと終わるのに、8曲目「撫で肩の…」だけなんでこんなにアウトロが長いんだろう?とか。謎が多い。

それも、それが一番自然だと思うからこういう形に落ち着きました。

――“自然”はキーワードですね。自分の中の、自然な流れを重視する。音楽理論やジャンル感よりも。

あ、自然と言うと、ちょっと語弊あるかもしれない。何て言うか、“これは、そういうものじゃん?”みたいな感じ。作っている過程で、完成形は未来だから、“そういうものじゃん”も何もないんですけど、“でも、決まってるじゃん”という感じ。ある意味、クセも入っているのかもしれない。考えた結果そうなっているというわけでもない。

――できてはいないけど、確かに見えている。面白いなあ。そして歌詞は、基本的には意味というよりは響きを重視すると、以前に言っていました。今回もそうですか。

基本的にはそうですね。「ムーヴ」とか、書きたいテーマがあった曲もありますけど、それは人に伝えたいというよりは、自分の中で達成できるかできないか、ゲームみたいな感じもありましたね。


人間二人について書いちゃったら、“ラブ”になることはありますよね。それが性愛のことなのかはわからないけど。


――「この星にされる」は、ラブソングに聴こえます。わたしとあなたの。

ああー。何ですかね。そうなんですかね(笑)。別にラブソングにしようとしなくても、人間二人について書いちゃったら、“ラブ”になることはありますよね。それが性愛のことなのかはわからないけど、何だってラブになるというか、ラブになっちゃうところはあります。抽象的にすればするほど。

――でも「この星にされる」はきゅんとしますよ。《クラス名簿》とか《テニスコート》とか、学生っぽいワードが出てくるから。すごく青春っぽい。

でも私、青春を全然味わってこなかった側の人間だから(笑)。そここそ、響きで言ってるんですよね。

――あ、そうなんだ。意外。

あと、クラス名簿の見た目が好き。クラス名簿は嫌いですけど。

――ちょっと何言ってるかわかりません(笑)。

文字が表で書いてあって、かわいいねという感じ。あと、人の名前が好きだから。

――たぶんもう何本かインタビューを受けていると思うけど、歌詞について“これはどういう意味ですか”とか、がんがん突っ込まれるでしょう。どう答えてるんですか。

いや、そんなでもないです。わりと“そういうもの”として受け止められている感じがします(笑)。

――こちらは、勝手に想像して楽しんでますけどね。2曲目「まま」に、《幼魚のままふざけているほうが正しいのに》というフレーズが出てくるけど、なんとなくセンチメンタルなものを感じたり。

そういうものを求めている部分はあります。自由に想像してくれてもいいし、何も想像してくれなくてもいいし、聴き流して“なんかいい感じですね”でもいいし。何でもいいんです。

――いろんな解釈を楽しめるほど、シュールで幅広い、時にハッとするようなボキャブラリーだと思います。アルバムのラスト、8曲目「撫で肩の…」の最後の一節が、《三十歳の誕生日が待ち遠しくて、もう》だったりして、すごく予言的だなあと思ったり。17歳が今から何言ってるんだろう? みたいな。

そこに関しては、本当にそう思ったから言ってます。三十歳になりたいんです。

――それは二十代を楽しんでからでいいと思うけど(笑)。

三十歳ぐらいが一番いいなあと思うんです。単純に、体力とかは落ちていくかもしれないですけど、肩書として、三十歳ぐらいが一番いいかなという気持ちはあります。なんとなく、雰囲気で。

――逆に、今の自分の若さについては何を思う?

あー、ただ、若いことは、利用できる場合もあるとは思います。でも、若くて、高校生だねーみたいな感じもどうだろう? と。

――高校生アーティスト! 的な。

悪いことではないですけどね。残りの人生が多いから。

――でも、早く年を取りたい気持ちもある。

そうですね。三十歳ぐらいの肩書が、しっくりくるような気がするんです。若さよりも。


――そしてもう1枚、『放るアソート』についてもひとこと。最初にも言いましたけど、コラボレーションの化学反応があちこちで起きていて、自分でも面白いんじゃないですか。

そうですね。自分が参加した度合いはバラバラなんですけど、人と作るのは面白いし、人によって作り方が全然違うから、いろんな人とやれてありがたいし、それを形にできて届けられるのはうれしいなと思います。

――こっちのアルバムには、A→B→サビっぽい構成の曲もあって、それも相方とのやりとりで出てきたものだと思うし、ポップな印象が強かったりします。

それこそ、根本凪さんとの曲「たべられる♡/たべられない?」は、自分が作ってはいるんですけど、根本凪さん側の世界に寄せさせてもらったというか、自分がそちら側にお邪魔させてもらったところもあって。ほかの方はけっこう、あちら主導だったりもしたので、あちらに寄った曲もあると思います。


ちやほやされたい一心で、すべてを頑張っています(笑)。


――そろそろ締めくくりますけど、前にお話しした時に、“二次創作の対象になりたい”という名言を発していまして。

名言ですか(笑)。

――名言ですよ。あらためて、そうなりたいですか。

なりたいです。たとえば私は、趣味で、自分が好きなアイドルの絵を描くのが好きなんですけど、そういう時って、参考にしている画像をずっと見ているわけじゃないですか。それってすごいことですよね。嫌いな人の似顔絵を描くとしたら、苦痛じゃないですか。

――そりゃそうです。

ずっと顔を見ているうちに、いろんなことを思い出して、最悪な気持ちになるじゃないですか(笑)。でも好きな人だったらずっと見ていられる、そういう対象になりたいですよね。好かれたいです。

――素晴らしい目標です。

ちやほやされたい一心で、すべてを頑張っています(笑)。

――何万枚売りたいとかとりも、よっぽど真実味がある。

かなり、自分のために音楽をやっているところが大きいので。今のところ、何かを伝えたいとかは全然思わなくて、自分が自分で作ったものを人が聴いて、何か考えてくれてもいいし、考えなくてもいいけど、ある程度好ましく思ってもらえて、楽し気な感じになっていただけたら、こっちも楽し気じゃないですか。ゲーム脳なんですかね?

――そうだと思いますよ。それは前から思ってましたけど、諭吉ちゃんはゲーム脳です。

だから、軽いんですよね。人生なのに、ゲームだと思っちゃうところはあるかもしれない。ゲームだと思えないくらい、深く重い詰めてるところもあるんですけど。“もう終わった…”と思ったりする時もあるんですけど。

――人生ゲームでいいと思います。そうじゃないとやっていけないところもあると思うし。たとえばこれから、“タイアップ曲作ってください”みたいな依頼がいっぱい来ると思うけど、ゲーム脳を働かせれば何でもクリアできていくと思います。自分のためにやりつつ、みんなも楽し気にしたい、みたいな感じで。

そうなんですかね(笑)。

――何やりたいですか、タイアップ。

ええー、そうだな。先日、朗読劇の音楽(坂元裕二朗読劇2021『忘れえぬ、忘れえぬ』『不帰の初恋、海老名SA』『カラシニコフ不倫海峡』)をやらせていただいて、見に行ってきたんですよ。感動しました。朗読劇そのものが素晴らしかったんですけど、そこに自分の曲が流れて、物語が締めくくられるのはヤバいなと。坂元裕二さんはもともと好きで、光栄だと思いながら作ったんですけど、実際に舞台で流れるのを聴いて、うわーってなって、気持ちいいし、うれしいし、光栄だし、良かったなと思いました。

――成功体験がすでに一つ。

朗読の内容に(曲を)寄せてみたり、今までやったことなかったですけど、それがすごく面白かったし、実際流れたら興奮するし。今後もやらせていただけたらいいですけど、じゃあ何を?というと、何ですかね。何でもやりたいですね。

――アニメでもゲームでも何でも。

やりたい気持ちは満々です。

――これをご覧のプロデューサーのみなさん、ぜひ諭吉佳作/menをご指名ください。

よろしくお願いします。

取材・文=宮本英夫 撮影=森好弘


当記事はSPICEの提供記事です。

あなたにおすすめ

ランキング

ランキングをもっとよむ

注目ニュース

注目記事をもっとよむ

あなたにおすすめ