柳楽優弥「田中泯さん演じる北斎の青年期を演じられて、僕はラッキーだな」<映画『HOKUSAI』対談インタビュー>

世界で“最も有名な日本人”でもある葛飾北斎。彼の知られざる生涯を描いた初の映画『HOKUSAI』が、新型コロナウイルス感染拡大による丸1年の公開延期を経て、2021年5月28日(金)、ついに全国公開となります。

代表作『冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏』が新パスポートや、2024年度から使用される千円札のデザインに採用されるなど、今なお愛され続ける世界的アーティスト・葛飾北斎。

その葛飾北斎を、新旧の名俳優である柳楽優弥さんと田中泯さんが時代を隔てて演じ分け、絵の本質を掴めず才能がくすぶっている若き北斎(柳楽優弥)と、有名になってからの老年期の北斎(田中泯)を見事に表現しています。

めるもでは映画公開を前に、そんなW北斎へツーショットインタビューをしてきました!

 

 

ーー超有名な実在の人物を演じるということで、意気込みやプレッシャーはありましたか?

柳楽優弥:葛飾北斎の作品は知っていましたが、人物像を意識したことがなかったので、最初はまったくわからない状態でした。特に、僕が演じた青年期はあまり情報が残されていないので、今回演じるにあたりこの映画ならではの北斎像を監督と一緒に作り上げていきました。演じていくうちに、だんだんとその人物像は、アーティスト然とした人なのだろうと思うようになりました。

田中泯:人は死んでしまうとその人がどうだったかというものは、本当に残らないものなんですよね。なので本当にわからなかったですね。(歴史的資料を)一生懸命引きずり出してきて台本ができていると思いますが、なるべく自分の空想の中で北斎を演じるということだろうと思いました。

 

ーーそれぞれが演じられた北斎を観た感想はいかがですか?

柳楽優弥:北斎は本当にこういう人だったのではないかと思うほど、泯さんが演じられた北斎には説得力がありました。僕は、その北斎の青年期を演じることができて、とてもラッキーだなと思いました(笑)。

田中泯:いやいや(笑)。(柳楽さんは)さぞかし難しかったと思いますよ。僕の年齢になってくると北斎と歳も近いので日々(近い)体験をしているわけですけど、同世代(の絵師)がうじゃうじゃ周りにいるわけじゃないですか。難しかったと思いますよ。

 

ーー作品を通して絵師としての情熱がすごく伝わりましたが、独自の表現を追求する北斎を演じるうえで目指したものは何ですか?

柳楽優弥:作品を観終わっての感想でもあるのですが、北斎という人物を演じてみて感じたことは、あの時代は表現者たちが幕府によって自由を奪われ、絵を描くことを制限されていましたが、創作意欲そのものを奪われる筋合いはないんですよね。北斎は、逆境に負けず、反骨精神みたいな気持ちが強い人。自分の信念を貫き通して、絵を描くことにひたむきに向き合ったからこそ長寿したのではないかと思います。

創作意欲というのは、みんな誰しもに存在する光みたいな部分だと思うので、そういう部分までもが時代に消される必要はないのではないか、大切に守らなければならない部分なのではないかと感じました。

 

田中泯:北斎は絵を描く対象を徹底的に変えた人だと思うんですね。おそらくそれまでは美人、花、そういう対象を描いて大衆の共感を得ていた。でも、共感を得られていたかどうかわからない波や無名の人の体などを描くようになり、そこに僕は前衛を感じます。

今だって流行ものを抜け出して、まったく視点の異なるものをやることは大変なことだと思います。ましてや江戸時代の数少ない人たちの中で、それぞれが有名に名をなしていくなかで、彼は方向を変えたわけですよね。それは才能以上の何かが北斎にあったに違いないと、僕は思う。そこは現代にも決定的に通じるものだと僕は思います。

 

ーー北斎のように反骨精神から何かが生まれることはありますか?

柳楽優弥:自由すぎてしまうと逆に不自由でもあるのかな。制限がある中でいかに自分らしく表現していくかが面白いと思います。

 

田中泯:僕らは自由と思われているけれども、今まさに不自由ですよね。制限というものをどう捉えるか、これも個人差があると思う。ワクチンの件にしても、今はおそらく行政区分もやっかいで、御代官みたいなものがいっぱいあるじゃないですか。そういう意味では制限は考えようで、人によっては巨大になっていくし、あるいは身近なことでも自分自身で制限していることもあるかもしれにない。

 

ーー北斎のように夢中になるもの、たとえば趣味などはありますか?

柳楽優弥:最近の趣味は釣りです。自粛期間中に、船舶免許一級を取り、ほかにも健康への意識が高まって、食養生の資格なども取りました。北斎が見たであろう富士山が望める相模湾あたりで釣りをしています。

 

田中泯:僕はないんです。“趣味”じゃなくて“本気”で百姓をしています。いま気候変動で植物は大変ではありますが、空いている時間でけっこう獲れますね。

 

ーー北斎の新たな魅力が見えてくる作品になりましたが、おふたりは作品から何を受け取りましたか?

柳楽優弥:何者にも屈しない反骨精神と、本当に絵を描くことが好きだからこそ、生涯満足することなく、常に向き合い続けることができるということ。そして、それが人生を豊かにすることではないかと感じました。そんな北斎の生き様はこの時代を生きる人たちにも共感していただけるテーマだと思います。

田中泯:改めて彼の仕事を見てみると、人々の営みを見ることが彼の表現に関係していると思いました。引っ越しを繰り返し、名前もどんどん変えてしまう。もしかしたら無名でいいとまで思っていたかもしれなくて、誰もが知っている有名性も壊していく。研究者の方がもっともっと、「すごいものをもたらした人だ」と言ってくれるといいですよね(笑)。

 

 

映画『HOKUSAI』は2021年5月28日(金)より公開。

キャスト:柳楽優弥、田中泯、阿部寛、永山瑛太、玉木宏、青木崇高、瀧本美織、津田寛治
監督:橋本一
企画・脚本:河原れん
配給:S・D・P
公式サイト:www.hokusai2020.com
(C)2020 HOKUSAI MOVIE

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  • takashi.tokita_tokyo
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  • 「映画生活(現ぴあ映画生活)」初代編集長を経てフリーに。映画とディズニー(主にパーク関連)をメインによく取材しているが、パリとクルーズが未体験なことはナイショです。また、ディズニー好きが集まって、あることないことを語り尽くす無害なポッドキャスト「田組fm」が、SpotifyやApple Podcastなどで配信中。

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