74歳でTikTokにハマった尾木ママ「私のコメント欄には炎上も悪口もないのよ」

日刊SPA!

 尾木ママ”こと教育評論家の尾木直樹氏(以下、尾木ママ)。テレビや書籍などのメディアで活躍する一方で、昨年からTikTok(@ogimama_official)を始め、10~30代を中心に人気を集めている。

◆人気TikTokerになっていた尾木ママ

「TikTokって、若い人たちが踊ったり歌ったりする広場のようなSNSだと思っていました。でも、始めたら全然違っていて。中高生だけじゃなくて、その親世代の方もたくさん使っているんですね」

現在ではほぼ毎日投稿を続け、フォロワー数は8万人を突破する人気アカウントに成長。来年75歳となる尾木ママは、なぜTikTokにハマったのか?

◆法政大学を離れて尾木ママに生まれた危機感

尾木ママがTikTokを始めた背景にあったのは最近、起きた大きな変化だった。

「44年間教員をやっていましたが、2017年に法政大学を定年退職した後は大学で教えることもなくなり、結果、学生たちとの接点が薄れていきました。子どもや若者の声の代弁者を自負する教育評論家なのに、子どもたちや若い人たちの悩みや本音、考えていることが肌感覚でつかめなくなってしまって。これにはかなりの危機感を持ちました」

こうした状況の中、「これは困った!」と周囲に話していたタイミングで誘われたのがTikTok。

「『とにかく若者の世界に入ってみたい!』と思って始めたんです。あれは2020年10月のことでした。ボク、歌ったり踊ったりはできないから(笑)、最初は得意な子育て相談から始めてみたんです」

◆TikTokは「本当にリアルな声が拾えるツール」

さまざまなテーマで投稿を続けていった尾木ママ。すると、次第に動画に反響が出てくることに。

「『賢い子どもを育てる尾木ママメソッド』というシリーズは再生数と『いいね』がともに多かったです。特にコメントを一つひとつ読んでいると、若いお母さんたちが書いているコメントがたくさんあって。みなさんボクのことを身近に感じてくれたのか、深刻なことから些細なことまでいろんなことを質問してくれます。それに答える形でまた動画を撮って……の繰り返しです」

もちろん、これまでも子どもの子育てや教育に頭を悩ませている親御さんたちからの相談に講演や著作の中で答えてきた尾木ママだが、TikTokではその質問のジャンルに大きな違いを感じているとのこと。

「とっても身近な話題が多いですね。寝ない、起きない、食べない、勉強しないといった話題から、動画で『”ママはこうしてください!”と言ってるけど、じゃあパパはどうしたらいいですか?』とか、こっちが想定していなかった素朴な質問もたくさん出てくるのがTikTokの面白さですね。その意味で本当にリアルな声が拾えるというか。よいツールに巡り会えたなと思っています」

◆炎上も悪口もない尾木ママのコメント欄

そんな尾木ママのTikTokには、“SNSにつきもの”と思われがちなあるものがほとんどない。

「『TikTokを始めた』というと、みんな心配してくれるんです。辛辣なコメントを書かれたり、傷つくようなことを言われたりするでしょうと。でも、僕のコメント欄にはそういう悪口コメントがほとんどないんですよ。これには法政の教え子たちもびっくりしていました。最近は、テレビでもSNSでも有名人が叩かれたり、炎上したりしているニュースを見かけるけど、今のところTikTokではそういうのが一切ないわね。尾木ママもけっこう頑張ってるな――と思ってもらえているなら嬉しい限りです」

◆TikTokを始めてわかった「世代間のギャップ」

これまでテレビに多く出演する機会が多かった尾木ママだが、TikTokを始めてわかったのは「世代間のギャップ」だったと振り返る。

「『尾木ママをTikTokで初めて知りました!』っていう人がけっこういたんですよ。これには驚きました。ボクが『尾木ママ』としてブレイクしたのが今から10年ほど前、62歳のときに突然、『尾木ママ』になってバラエティ番組に出るようになったんです。

そうですね、いまでいうフワちゃんみたいな人気かな?(笑)。『ホンマでっか!?TV』で明石家さんまさんに『尾木ママ』と命名してもらってから、あれよあれよという間にどんどん人気が出て、年間300本以上テレビに出演し、本を出したり、地方で講演会を開催すると6時間以上前から並ぶ人がいたり、本当に大フィーバーでした。

当時と比べると今はバラエティ番組に出る機会は減ったんですが、わりと知られているかなと思っていたんです。ところが今の子どもたちはテレビをあまり見ないし、年齢的に尾木ママがブレイクしていた頃も知らないんですよね。

TikTokで『尾木ママって昔、テレビにも出てたんだ』っていうコメントが来たときには、TikTokは子どもたちにとって、ボクらのテレビみたいな存在なのかなって思いました」

◆文化人こそ、TikTokをどんどん活用するべき

そこで尾木ママはテレビとTikTokは「相互補完的な関係」だと改めて気づくことになる。

「テレビに出ている有名人、特に文化人こそ、TikTokをどんどん活用すべきなんですよね。テレビに出ているからといって、子どもたちや若い人たちに知られているわけではない。

だから文化人が“若者向けのテレビ”としてTikTokを使うのは大いにありだと感じてます。最近はボクがテレビに出演すると、すぐにTikTokの方に『テレビ見ました!』とコメントや感想が入ってきます。さまざまなメディアを組み合わせることで、今という時代をより深く知り学ぶことができるようになりました。

リアルタイムでリアルな反応を掴めるというのは、視聴率頼りだったテレビ局やテレビに出演している人にとっては新鮮でもあるし、すごく魅力的なことじゃないでしょうか。最近はTikTok発信で流行する歌も増えてますしね」

◆ユーザー同士の情報交換の場としても機能

教育現場で起きていることに対しても意見を伝える場として“視聴者”と“情報源”の両方が満たせる存在であるTikTokは、いまの尾木ママにとって重要なツールになっているそう。

「コメント欄を見るだけで全国の教育現場の情報がつかめるんですよ。コロナ禍で修学旅行やさまざまな行事が中止や延期になっていますねと投げかけると、それに対しては『うちの息子の学校ではこうでした』『私の学校は県内でやりました』などとすぐコメントが集まります。

そのコメントを見て、情報を調べて『こういう方法を取っている学校もありますよ』と再度投稿すると、さらに他の地域の生徒さんや親御さん、教員の方が見てくれて『参考になりました!』『うちの学校も真似します!』とコメントが入る。

コメント欄の中でユーザー同士が情報交換をしたり、勝手に意見交換をしたりしている。尾木ママの掲示板はデータベースにもなるし、知恵袋にもなるんですよ(笑)」

◆現場感覚を毎日、アップデートできる

「ほかにはブラック校則の問題に対しても全国のいろんな学校の事例が集まってきます。コメント欄を見ると本当にひどいものが多いんですよ。たとえば、トイレに行くと欠席扱いにする学校があったり、いまだにツーブロック禁止の学校があったり。ツーブロック、かわいいのにね(笑)」

このように現場の声を365日集めていると、テレビで取材された際に「尾木ママは最先端の情報をなぜ知っているんですか?」と質問されることも多いのだそうです。

「それはTikTokで発信して、コメントを見ているからですよ。今の子どもたちや若者たち、そして保護者のリアルな声を知ることで現場感覚を毎日、アップデートできるから」

◆今、TikTokが受け入れられているワケ

TikTokがなぜ若い世代を中心に流行ってるのか。長年、数多くの子供たちに寄り添ってきた尾木ママの考えは明確だった。

「TikTokは簡単に自己表現できるからなんです。ダンスでも歌でも変顔でも子どもたちは自分を表現して世界に発信したい。

昔は学校や地域コミュニティがそうした役割を担っていたのですが、最近では学力向上を目指し文化祭や運動会などの学校行事がどんどん削減されています。また昨今のコロナ禍でさらにその機会が減りました。

いわばリアルで実施することが難しくなった合唱コンクール等の行事を機能的に代替しているのがTikTokなのかもしれません。子どもにとっては仲間たちとの居場所であると同時に、作品発表の場であり、自己表現の場なんです」

まさに大学からTikTokという“現場”に身を移し、当事者の声に耳を傾けてアウトプットする。その繰り返しこそが現在の尾木ママの鋭く、本質的なコメントを生んでいるようだ。

【尾木直樹(通称・尾木ママ)】

1947年滋賀県生まれ。中学、高校の国語教師を22年間務めた後、法政大学教授など22年間大学教育に携わる。臨床教育研究所「虹」所長として、教育・ 子育てに関する調査・研究、評論活動を続ける。『こわい顔じゃ伝わらないわよ 尾木ママの子育てアドバイス』(新日本出版社)など著書多数。TikTokアカウントは@ogimama_official

※TikTok公式noteインタビュー記事を再編集しました

<取材・文/日刊SPA!取材班>

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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