月収12万円のフリーターがシェアハウス経営に挑戦「家賃を払ってもらえない」

日刊SPA!

「シェアハウスを始める前は、もっと簡単にできると考えていたのですが……」

そう語るのは、3年前に会社を辞めて以来、フリーターとして生きてきた橋本さん(仮名・28歳)だ。Uber Eats配達員などの仕事で稼いだ月12万円ほどの収入で満足してしまい、ほぼ一日中寝ているだけの堕落した生活を送っていた。ただ、そんな彼にも転機が訪れる。

「アパートから契約満了で追い出される時期が来たんですよ。どうしようかと思っていたら、友人に『シェアハウスでもやって、自分も住めばいいじゃない』とアドバイスを受け、心機一転、自分でやろうと決心しました」

こうして数ヶ月前からシェアハウス経営を始めることになったが、“個性たっぷり”の住人たちのおかげで苦労の連続だという。

◆フリーターが一念発起、シェアハウスを経営してみたら…

初期投資も高くなかったことから「自分でもできるかな」と思った橋本さん。「助けてくれる人がいた」おかげで東京23区内に物件を借りられたという。

実際に筆者が訪れてみると、そこはもともと町工場だったらしい。作業用の大きなコンセントがあり、部屋の壁には換気扇が付いている。建物自体はかなり古いが室内はよく清掃されていた。合計二部屋で、二段ベッドが5台。10人が住めるようになっているようだ。

シャワールームが取り付けられ、トイレにはウォシュレットが備わっている。台所や冷蔵庫、鍵が付いたロッカーもある。橋本さんが言う。

「空き家になったこの物件をゲストハウス経営しようと思った人が、オリンピック需要を狙って買い上げたのですが、コロナ禍で頓挫して手放したようです。

そのおかげで安く借りることができました。ベッドとシャワーが最初からあったし、初期費用としてはロッカーが高かったくらいですかね」

◆「ワケあり」っぽい人にターゲットを絞った

彼が経営するシェアハウスは駅から徒歩10分程度、都心部にも出やすく、建物は古いが、管理費など込みで家賃は月2万5000円と格安。

「共同部屋ですが、この安さだし募集をかければ、すぐに住人は集まると思っていました」

しかし、ここからが大変だった。

日本語学校に張り紙を貼らせてもらい、ホームページもつくった。Twitterで「お金を配ります」という怪しいツイートに「いいね!」をつけまくっている人や、借金でクビが回らなくなっている人を見つけてはDM(ダイレクトメール)を送った。

普通に社会生活を送っているような人には、共同部屋で家賃が安すぎるという点で敬遠されてしまうので、要するに「ワケあり」っぽい人にターゲットを絞ったのだ。

「TwitterのDMでやりとりできる人はまともなんですが、募集サイト経由で応募してくる人が、とにかく面倒な人が多いですね。けっこう疲れてきました……」

◆住人がやってきた

「最初にやってきたのが、お笑い養成所に入学したという20代の青年です。少し変わり者ですが、いい奴で気に入りました」

幸先の良いスタートだったのだが、それから2人目が決まらない。住人が1人のままでは赤字だ。

橋本さんは格安ネットカフェのナイトパックが始まる17時前に店前に立ち、店に入っていこうとする何人ものホームレス風の人にビラを配って説明したという。

「ナイトパックは1000円ですよね? 毎日使えば月3万円。狭い椅子で毎日寝ないといけないし、シャワーも付いてないですよね? うちにくれば2万5000円でベッドがあるし、シャワーも使い放題、自炊もできますよ? って声をかけました」

すると数日後、携帯に公衆電話から連絡があった。橋本さんから説明を受けた田中さん(70代・仮名)という男性からだった。彼は、ある理由からネットカフェ難民に転落。収入は年金頼みだったが、電話があったその日から入居することになった。

3人目は20代の家出青年。両親が異常で「家族とは縁を切りたい」と家を飛び出したという。母親が多額の借金を抱えており、なんと、息子の彼にまで融資を受けさせていた。そのため、携帯電話を契約できないほどに信用を落としていたのだ。彼はまじめで好青年なのだが、携帯さえも契約できない状態。住民票の問題もある。

橋本さんとその仲間たちは、実家の所在地の役所まで車で連れていき、いろいろな手続きを手伝ってあげたという。これ以上の詳細は不都合が生じるので書けないのだが、現在は携帯電話も契約できたようで、アルバイトも始めたようだ。

◆家賃を払ってもらえない

「地方から出てきた北(仮名・30代)という男性には少し困っていて……。もともと向こうで働いていたようですが、コロナで仕事がなくなりリストラされたみたいで。東京までのバス賃もなかったみたいで貸してあげて、新宿のバスターミナルまで迎えにいきました。当然、食費も持っていないので、お米を支給してあげたんですよ。ただ、家賃を全然払ってくれなくて……」

普通はこのような状況になれば、働こうとするはずだが……。

「それが、働く意欲がまったくないんですよ。仕事を探している様子もない。自分の服をどこかで売って、タバコを買ってきているんです。ワケわからないし、いくら催促しても反応が薄くて」

橋本さんはUber Eats配達員の仕事を紹介し、自転車も貸してあげた。そして、「とにかく働いて家賃と貸している分を返してくれ。そうしないと〇〇日までに出て行ってもらいます」と強く警告したが、朝はダラダラと過ごす。まわりから促され、ようやく重い腰を上げて出かける。

帰宅は21時。10時間ぐらい働いているはずなのだが、5000円も稼げていない。

彼の行動を探ってみると、途中4時間ぐらいは仕事をしないでどこかに行っているようだった。

配達員としての報酬が振り込まれてすぐに少しでも返金してくれればいいものを、なぜか、そうせずに寿司を買って帰ってきて呑気に食べているのだとか。

客観的に見れば、手間がかかる問題児ばかりだが、橋本さんの表情は比較的明るい。

「最近、連絡してくる人が急に増えたんですよ。数人の若い女性からもあって、入居してくれそうです。いろいろ大変ですが、これからいい流れになりそうです」

<取材・文・撮影/今永ショウ>

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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