まじめな親が毒親化するとき…「子育ては完璧をめざさないで」

女子SPA!

 体罰、暴言、過干渉……子どもを自分の思い通りに支配しようとする毒親。ふつうの親でも、忙しさやプレッシャーで余裕をなくして、子供を追い詰めてしまうことはある。あなたは「自分は毒親ではない」と確信をもって言い切れますか?

日本社会が抱える子育ての問題について、幼い子どもを育てる小説家の樋口毅宏氏と、エッセイストの犬山紙子氏がリモート対談した。

◆子育てに比べると、仕事は楽だった

犬山:息子さんは、確か今年で5歳ですよね?

樋口:はい。犬山さんの娘さんは4歳で。ウチはおむつも取れて、前よりは楽になったのですが、犬山さんのところはどうですか?

犬山:そうですね。まだ大変な部分もありますが、小さい子特有の“命の危険”でヒヤヒヤするような不安は減ったかもしれません。

樋口:わかります! 赤ん坊の頃は、窓に近づかれるだけでもゾッとしました……。

犬山:自ら死ににいってるのか!?って思いますよね。

樋口:もうね、僕は今まで、“この世で一番大変なのは小説を書くこと”だと思っていたんですけど、子育てに比べれば楽(笑)。

犬山:私も同じ感想でした(笑)。あと、子どもを育てていると、今まで見えていなかった世間の厳しさも感じるようになりました。

樋口:子どもが騒ぐと、舌打ちされたりね。男親の僕でもされるんだから、ひとりで子どもを連れている女性はもっと大変でしょう。

犬山:はい。子連れに冷たいなあ、と感じたことは何度かあります。育児に対する理解度が高い人と、低い人の差が本当に激しい印象。

◆親になったらプライベートな時間を捨てろ?

樋口:やっぱり虐待するような親でなくとも、余裕がないと子どもを追い詰めてしまうことってあると思う。

犬山:まず親にプライベートな時間がないのもよくないですよね。

樋口:そう。僕の場合、夫婦二人でライブに行くとなると、ヘルパーさんにお金を払ってようやくです。それも年に1回あるかないか。

犬山:ウチもそんな感じです。しかも恐ろしいことに、お母さんと赤ちゃんは24時間一緒じゃないといけないという価値観を押しつける人もいる。少しでも自分の時間が欲しいと言うと、母性がないだの、子どもがかわいそうだの……。

樋口:女性が自分のパートナーをどんなに好きだとしても、一日に数時間は別々の時間が欲しいのは当たり前。それを口に出していいのに、対象が「夫」から「赤ん坊」に変わると、「母親のくせに」って怒る人がいるんですよ。マザコンの母性信仰!

犬山:親になったら自分の時間は捨てろみたいな考えね。でも、親だってプライベートは絶対に大切。それがなくなって心が死んじゃったら、子どもに笑顔で接するのも難しくなると思うんです。

◆周囲の視線が子育てのプレッシャーに

樋口:僕自身も、追い詰められてて「あの対応はまずかったな」と反省することは多々あります。

犬山:私は、外出中にナーバスになることが多いですね。家の中なら娘がギャン泣きしても「落ち着くまで泣かせよう」という対応ができるんですけど、外ではなかなかできず、適切な対応が難しい。

樋口:家の中では好きなだけ泣かせて、しばらくすると子どもも気が済んでおとなしくなることがわかっているのに、外だと「あの親は子どもを放置している」と思われてできない。

犬山:私に対する視線だけでなく、子どもに“騒がしい子”というレッテルが貼られるかも、と不安になって不必要にきつく怒ってしまったことがある。そういうときは本当に反省して娘に謝ります!

樋口:はああ。僕も子どもについ声を荒らげてしまった後は、自分を責めていつまでも引きずりまくります……。

◆周りに頼ったり迷惑をかけてもいい

犬山:外出時の私のように、周囲の反応を気にして、必要以上に子育てにプレッシャーを感じる人は多いかもしれませんね。日本は自己責任論の社会だから「他人に迷惑をかけてはダメ」と言われて育てられるけど、実際には誰しもが人に迷惑をかけずにいるのはムリ、かけられないのもムリで。

樋口:本来なら周囲にSOSを出すべきだし、行政に頼れるのに、日本人は善くも悪くも真面目すぎますよね。

犬山:周りの偏見もありますよね。ただ、自分に置き換えてみると、人に頼れない気持ちもすごくわかります。

樋口:そういえば、僕も息子がしゃべりだすのが遅くて悩んでいた時期は、素直に頼れなかったかも。人生でいちばん悩んだし、初めて心療内科に通ったほど。SOSを出す発想に至らないんですよね。

犬山:それは辛い……。家庭で片方の親に家事・育児の比重が傾いている場合は、パートナーが孤立していないか、真剣にヒアリングしてほしいですね。

樋口:子育てに対する社会の無理解や自己責任論でプレッシャーを感じている親も多いはず。そこに孤立が加わると、ストレスの矛先が子どもに向きやすくなる。そうならないためにも、悪しき完璧主義に陥らないようにしないと。

僕も料理とか手を抜けるところは抜いてます!お互いほどほどに頑張りましょう。子育ての評価は親でも他者でもなく、子どもが最大のクライアントだから。

犬山:完璧じゃなくて良いというメッセージが大切ですよね。そして、親が追い詰められないように、子供の権利が守られるように社会全体の環境を整える方向に目を向けていくことが必要ですね。

【小説家 樋口毅宏さん】

’71年、東京都生まれ。出版社で編集を担当し、’09年に『さらば雑司ヶ谷』で小説家デビュー。小説を執筆する傍ら、弁護士の妻を支えて家事と育児に奮闘する日々を綴った『おっぱいがほしい! 男の子育て日記』も話題に

【エッセイスト 犬山紙子さん】

’81年、大阪府生まれ。大学を卒業後、仙台の出版社でファッション誌の編集を担当。’11年『負け美女』でデビュー、その後雑誌やテレビなどで幅広く活躍中。近著に『すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある』

<取材・文/週刊SPA!編集部 撮影/工藤玲久>

当記事は女子SPA!の提供記事です。

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