ミュージカル『ジェイミー』出演の森崎ウィン・髙橋颯・安蘭けいにインタビュー「ミュージカルは夢を与えてくれるモノなんです!」

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ドラァグクイーンに憧れる16歳のジェイミーが決意したのは、高校卒業のプロムに“自分らしい”装いで出席することだった──。イギリスBBC放送のドキュメンタリー番組をベースに誕生したミュージカル『ジェイミー』は、ひとりのティーンのポジティブな行動が巻き起こすたくさんのハッピーと、家族、友人、社会との間で育まれる様々な愛の形の物語だ。その日本初演で主人公のジェイミーを演じる森崎ウィン髙橋颯、そしてジェイミーの母親・マーガレットを演じる安蘭けいが、本格的な稽古を前に“家族会議”。劇中同様の暖かな空気の中、作品に寄せる思いを語り合ってくれた。

──まずは本作へのファーストインプレッションからお聞かせください。

安蘭:私は「本当に明るい作品だなぁ~」って思いました。テーマが少し暗かったり重かったりするミュージカルも多い中、これはとてもポップで、主役が若者だし、すごくエネルギーをもらえるような楽しいミュージカル。見終わったとき「あ~、楽しかったなぁ」って思えるのが素敵ですよね。もちろんその中には私たち登場人物の様々な葛藤もあるんだけど……ね。

髙橋:はい(笑)。僕もこの作品からとてもハッピーな気持ちをもらっていますし、稽古場でもそういうムードはふんだんに渦巻いていくんだろうなって、今から強く予感してます。

森崎:(頷く)。

安蘭:マーガレットもだけど、とにかくジェイミーがポジティブ。ネガティブな人がポジティブに成長していくっていうありがちなお話じゃなくて、ポジティブな人がさらにポジティブに生きていくぞってお話なのがいい。

森崎:確かに。だからこそジェイミーがふと見せる影の部分が際立つと、より明るい物語にできるので……そこは演じる上での大事なポイントですよね。あ、自分でちょっとハードルを上げてしまった(笑)。

左から 髙橋颯、安蘭けい、森崎ウィン
左から 髙橋颯、安蘭けい、森崎ウィン

髙橋:序盤、ジェイミーがママに誕生日プレゼントの真っ赤なハイヒールをもらい、「Wall in My Head」を歌ってロウソクの灯を消すんですけど……僕が観た映像資料ではそこでちょっと暗い表情をするんです。それがすごく印象的で。すごく幸せなはずの瞬間に見せたジェイミーの本質というか。それはこれから彼を演じていく上でも大きなヒントになるなって、僕も感じています。でもジェイミーは基本的にはとても天真爛漫で我が道を行く人で──割と自己中(笑)。

森崎・安蘭:(笑)。

髙橋:友達のプリティと一緒にいても自分のことばっかり話してるし。僕も自分のことばっかり話しちゃうところがあるので、そこは共通点なんですけど(笑)、だからこそジェイミーになるにはちゃんとコントールして「人の言うことも聞かないとダメだ」って姿勢を身につけないとですね。

森崎:ジェイミーの登場場面、彼はみんなの中にいるのにひとり妄想の世界に入っちゃってて……わかんないですけど、そういう妄想癖がある人って、特にジェイミーは小さい頃すでになんかもうひとつ壁みたいなモノを越えていて、だからこそ自分にとって楽しい妄想をしながら明るく居られてるのかなって思うんです。そんなジェイミーが妄想をいよいよ現実に変えていく瞬間、新たな壁を超えていく16歳のジェイミーの生き様がこの物語。「僕はそこに行く」と決めているからこその見えない「壁」。それをお芝居でちゃんと具現化していかないと。ディーンに向かって「自分はゲイなんだ」っていうシーンとか、僕、結構好きで。強がっているけれど、本当のこともどんどん言ってしまう。そういうジェイミーのポジティブな強さの裏にある陰みたいなところをどう伝えていくか、どう創っていくかはすごく楽しみでもありますし、ちょっと手強い部分でもあるのかなって今は感じています。
チラシビジュアル(提供:ホリプロ)
チラシビジュアル(提供:ホリプロ)

──ジェイミーは嘘をつかない、正直な子ですよね。そこはお母様であるマーガレットの育て方がよかったのでは?

安蘭:はい。そうですね!

森崎・髙橋:(笑)。

安蘭:例えば、「ホントの僕はこうなんだ。こうありたい」って言われたら、「それはダメよ」って反対してしまったり戸惑うお母さんもいると思うんです。でも彼女は「OK~っ!」「この赤い靴で表に出て行きなさい」って、もう理解がありすぎるくらいの親。もちろん、劇中で描かれてはいないけれど多分最初はめちゃくちゃびっくりして親友のレイのところに飛んで行って相談してたと思うし、でもそのレイもまた素敵な考えの女性でしょ? 周りにいる人たちがホントに明るい未来しか見てないっていうか、どんな思考でそういう風になっていったんだろうって思うくらい、みんなが常に明るく前向きなんですよ。ジェイミーが人目をはばからずに「僕はドラァグクイーンになりたいんだ!」って自分の意思を表明できるのも、ある意味いい環境ですよね。

──労働者階級の人々のへこたれない強さ、タフな生き様を感じます。ジェイミーの宣言を聞いてもあからさまに攻撃してくるような人はほとんどいない。むしろみんな「自分のことで忙しいから」って言ってるくらいで。

安蘭:そうですね。そういう環境の中で明るく生きて……いかざるを得なかったのかもしれないけれど、とにかくポジティブで明るく暮らすマーガレットの血は、ジェイミーにもしっかり受け継がれていますよね。マーガレットは、ジェイミーが生まれたとき全てをジェイミーに捧げようと決めたんじゃないかな。そして「この子がやりたいと思ったことは絶対に全部支えてあげよう」って思ったはず。ジェイミーが自分で「僕はこう」と言ったときから全面的に味方をして、後押しすらしてあげられる強さを持っていますよね。

左から 髙橋颯、安蘭けい、森崎ウィン
左から 髙橋颯、安蘭けい、森崎ウィン

──母と子の絆を感じさせる素敵なシーンもたくさんあります。ジェイミーはママのこと、どう見ているんでしょう?

髙橋:ママは……うーん、でもそれだけ愛してくれてるんだと思うと、もっと大事にしなきゃなぁって、今、思いました。多分ジェイミーはまだ子どもでそこまでちゃんとママのことを考えてはいないだろうし……。実際自分も「お母さんは絶対」というか、例えばお母さんと他の人との関係とか、今まで想像したこともなかったので。

安蘭:子どもからしたらお母さんが自分のことを見てくれてるのって、当たり前だもんね。

──日常的過ぎて、いちいち「お母さんありがとう」なんて、あまり思わないですよね。

髙橋:そうなんです。

安蘭:そしてお母さんのほうも子どもを愛していることに対してなんの見返りを求めたりもしない。それくらい無償であり、無償であることは特別じゃないんですよね。

森崎:あー、確かにお母さんの愛情が「特別」だとは日常の中で思ったことないですね。ジェイミーもなにかするときの理由づけにお母さんがあったことはない……けど、学校のことや思ったことは、全部マーガレットに言ってるんですよね。多分、ジェイミーが幼い頃からお母さんとお父さんとの関係がうまく行かなかった分、自然と母と子の関係は深まっていったのかもしれない。もしお父さんとお母さんが仲良い状態でお父さんがジェイミーの思いに反対したら、お母さんも同じように反対していたのかも、なんてことまで想像しちゃいますけどね。

──ではWジェイミー、お互いの印象は?

髙橋:今日も撮影で結構接近する瞬間があったんですが、ウィンさんはこう……すごくチャーミングだなぁって思いました。スウィートで、バニラな──

森崎:ええーっ!?

髙橋:(笑)。そういう甘い魅力も感じさせてくれる方だなって、改めて思って。

森崎:アハハッ(爆笑)。颯くんはねぇ、僕はなんかすごい秘めてるモノを感じてます。謎めいてる。ふんわりしているようですけどそれが爆発した瞬間を見るのがこの先の楽しみでもあるし、ちょっと怖くもある(笑)。魅力、めちゃくちゃ溜め込んでるでしょ?

髙橋:え、そうなのかなぁ。

森崎:うん。それがジェイミーを通してどんだけ出てきちゃうのかと思うと……かなり面白いことになりそうですし、そこがとっても楽しみです。
左から 髙橋颯、安蘭けい、森崎ウィン
左から 髙橋颯、安蘭けい、森崎ウィン

──そして、お二人共に昨年ミュージカルの世界に踏み出したばかり。ミュージカルという舞台表現についてはどんな思いを抱いているのでしょう。

髙橋:僕はこれが『デスノート THE MUSICAL』に続いて2作目なんですけど、ミュージカルってすごくパワーがあって、すごく大きくて、そもそもやる側も器が大きくないとできないモノなんだって実感していて……自分に自信がないと大きい声も出ないし……

森崎:と言いつつ、颯くんは本番になると出ちゃうタイプでしょ? 「ウオォォォーー!」って。

髙橋・安蘭:(笑)。

森崎:まだまだこんなもんじゃないよね。

髙橋:あ、えっと……はい。勇気、ありがとうございます!

森崎:おおっ!

安蘭:「プレッシャー」と感じるんじゃなく、「勇気」と感じられる。髙橋くんのこのフレッシュさ、ホントにすごくいいと思うな。

髙橋:(照)。お芝居もまだまだ……ひとつひとつのシーン、その場面での気持ちみたいなところを丁寧に紐解いて、役同士の関係も考えながら一個一個築いて築いて……ってやっていかなくちゃって、自分の中には焦りもあります。みなさんから、たくさん学ばせてもらいたいです。

森崎:僕はもともとナマモノのステージが好きで、自分でライブでも歌っていますし、それはもっとやっていきたいなって思ってる。もちろん、ミュージカルのステージに立てることも純粋に嬉しいですね。

安蘭:ミュージカルは何回目?

森崎:最初は『ウエスト・サイド・ストーリー』に出させていただいて、今回が2回目です。だからもう、なんて言ったらいいんだろう……そう、とにかく楽しみ! 俳優として経験を積むことで慣れて来ること、自分なりにできることってあると思うんですけど、今はそういうのも全部取っ払ってすべてに対して純粋に新鮮に反応していけたらいいなって。ミュージカルに「素直」でいたいです。

左から 髙橋颯、安蘭けい、森崎ウィン
左から 髙橋颯、安蘭けい、森崎ウィン

──安蘭さんは今年30周年のコンサートも開催するなど、大きな節目を迎えられています。ミュージカルや舞台と向き合う自分について、改めて湧いている思いなどもあるのでは?

安蘭:まず……気づいたらいつの間にか大人の組に入ってた。座組を見渡して「あれ? 私上の世代のほうだわ」って──あ、私もね、若い頃もあったのよ?

髙橋:はい!

森崎:もちろん!

安蘭:(笑)。だから今はちゃんと作品を支えていかなくちゃいけないし、主役とはまた違った立ち位置で真ん中を盛り立てながら自分もちゃんと輝いてっていうスタンスでいることをね、こうした作品に出ることでまた改めて感じているところです。特に母親役をやると当然子どもたちを見守ってあげなきゃいけないわけだけど、そこはもう役も普段も関係なく自然とそういう気持ちになりますよね。また、稽古場から感じているその気持ち、その関係は舞台上でもちゃんと役に反映されていくからいいことばかりなんだけど、「あー、いつの間にかここまで来ちゃったんだなぁ」とは思ってる。

森崎・髙橋:(頷く)。

安蘭:ミュージカルに対しては、私は中学生の頃からミュージカルをやりたいと思ってこの道に進んで……と考えたとき、あの頃の自分が憧れていたミュージカルと今のミュージカルって、なんか全然違う気がして。でもそれは多分私が色々経験してきたから感じている「違う」であって、ミュージカル自体は変わってないんですよね。お客様にとって「夢を与えてもらえるモノだ」っていう、その部分は決して変わらない。ただ現実を知っている私には、「夢のミュージカル」だけじゃなくなってるってこと(笑)。でも二人にはまだまだ可能性があるし、いくらでも夢が見られる世界だからそれはホントに羨ましいし、そういう若い人たちの姿を見ることで自分も夢見る疑似体験ができるのは、ある意味お得なのかもしれません。

──何度でも「その感覚」に触れられる喜びは大きいですよね。

安蘭:そこはやっぱりこの仕事をやっているからこその素晴らしい体験だなぁって思ってます。今回もこのふたりが作品を通してどこまでいけちゃうんだろう!?ってところを目の当たりにできるから、楽しみだな~……って、思いっきりプレッシャーかけちゃお(笑)。

森崎・髙橋:(爆笑)。

ジェイミー ビジュアル(提供:ホリプロ)
ジェイミー ビジュアル(提供:ホリプロ)

──そこはもうジェイミーのポジティブパワーで前進あるのみ!

髙橋:そうですね。僕の初ミュージカルでは共演の横田栄司さんにほんっっっとにずっと見ていただいて……まさに舞台の全部を教えていただきました。思い返すとあの稽古場での僕は生まれたての子鹿か?というくらいヨロヨロとやっと立ってたような状態で(笑)、うまくセリフが回らないし、歌と芝居の切り替えもままならないし、一回できてもすぐまたできなくなってしまうし。でも横田さんがいてくれてたくさんアドバイスをくださったから、なんとか無理矢理にでもやれるようになれた、本番の舞台に立てたなって。

──スパルタだった?

髙橋:ダメなところはド直球で指摘してくれましたね。そこに蜷川(幸雄)さんの影というか、僕は本でしか蜷川さんにお会いしていないんですが、蜷川さんから横田さんへと受け継がれてきた演劇の血のようなモノが感じられ、ものすごいパッションでうわぁ~っと掻き立てられるようなパワーもいただきました。その経験を大事にして今度は一人であのパッションを実践していきたいし、今回も周りはもう学ぶことしかない方々ばかり。謙虚に居たい、です!

森崎:僕は……そう、自分は実年齢的にはジェイミーと彼を取り巻く大人たちとのちょうど中間、なんです。子どもでもなくお父さんでもなく、人生もまだまだこれからいろいろ決まっていく時期。その中でジェイミーを演じるために大事なのは、いかに自分のプライドを捨てられるかだなって思ってて。「経験を積んだことで滲み出てくるなにか」で勝負していくにはまだ早いし、でもまったく表現の経験がないわけでもないし、さらには中途半端に「こうだ」ってやれることを決めつけちゃってる自分もいたりする。だからここではいかに素直になれるか、いかに自分が纏っている変な鎧を捨ててカンパニーに溶け込んでいけるかが僕にとっての勝負どころなんじゃないかな。シンプルに目の前のことに向き合うのが大事ですね。ちょっと考えすぎちゃうクセがあるので、まずは素直に素直に。

安蘭:私、ジェイミーの「好き」に向かって真っしぐらになるところ、森崎くんにもちょっと感じるな。

森崎:あ、結構そういうところありますね。「見つけた」と思ったら「うおーっ」てなって、たまにウザがれる(笑)。

髙橋:それ、ジェイミー、ジェイミー。

安蘭:うん、似てる似てる(笑)。

森崎:ハハッ(笑)。
左から 髙橋颯、安蘭けい、森崎ウィン
左から 髙橋颯、安蘭けい、森崎ウィン

──そして今みなさんが醸し出しているこのフレンドリーな空気にも、すでにジェイミーとマーガレット親子の愛のコンビネーションを感じます。本番のステージが待ち遠しいですね。

安蘭:『ジェイミー』は本当に楽しい作品になると思うし、観劇後に「観てよかったね」とか「パワーもらったね」「勇気もらったね」「自分は自分でいいよね」って思えるようなメッセージがすごくたくさん詰まったミュージカルだから、それをしっかりと受け止めてもらえるよう、みんなで一丸となっていいミュージカルを作りたいなと思っています。上演時の状況はまだわかりませんけれど、どうであれ私たちは万全に感染対策をして、みなさまのお越しをお待ちしております。お互いに気をつけながら舞台を楽しみましょう。マーガレットパワー、お届けいたします!

森崎:パワ~っ!

髙橋:届け~~!

森崎:ミュージカルは夢を与えるモノだって安蘭さんの言葉、僕も本当にそうだなぁと思うし、僕自身もずっとミュージカルやエンタメから夢をもらってきました。なので今度は夢を与える人間としてこの作品を……おそらく稽古では苦しい思いもしながら作品創りをしていくんだと思いますけど、それを乗り越えた先に作品が完成した明るい未来があって、劇場で全公演を走り抜けられることを信じています。是非劇場へお越しいただき、ミュージカル『ジェイミー』を明日への糧にしていただければと思います。

髙橋:こうしてお話を聞かせていただいていても本当に学ぶことが多いので、おふたりとの貴重な時間、本当にありがとうございましたという気持ち。そしてみなさん、この記事を読んでくださってありがとうございます。

森崎:あ、いいねそれ。

安蘭:うん、素敵。

髙橋:(照)。僕は帰ったら今日のこの時間を思い返しつつ、「He’s My Boy」を聞き返したいな。

安蘭:『ジェイミー』のミュージカルナンバーね。

森崎:マーガレットの歌です。

髙橋:はい! ジェイミーとマーガレット、劇場でお待ちしております。

森崎・安蘭:待ってます!(笑顔)。
左から 髙橋颯、安蘭けい、森崎ウィン
左から 髙橋颯、安蘭けい、森崎ウィン

取材=横澤由香 撮影=iwa

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