ジャンプ作家への労いも…『ONE PIECE』の扉絵に隠されたメッセージ5選

まいじつ



『ONE PIECE』98巻(尾田栄一郎/集英社)

大人気漫画『ONE PIECE』といえば、尋常ではない書き込みの量でお馴染み。また本編もさることながら、各話の冒頭に置かれた「扉絵」にはさまざまなメッセージが隠されている。そこで今回は、作者・尾田栄一郎の想いがこもった扉絵を5つピックアップしてみた。

ジャンプ作家同士の交流を描いた扉絵も!


<その1>第766話…戦友への熱いメッセージ!
まず取り上げたいのは、『週刊少年ジャンプ』2014年50号に掲載された第766話『スマイル』の扉絵。扉絵の中には、同号で最終回を迎えた岸本斉史の『NARUTO -ナルト-』に対するメッセージが込められている。

この扉絵は、ナミ、ルフィ、チョッパーが食事しているシーンを切り取った1枚。各キャラの頭文字である「ナ」「ル」「ト」に加えて、壁に並んだ居酒屋メニューの頭文字をとると、「ナルトおつかれさんでした」のメッセージが浮かび上がる。他にもタイトルロゴのNARUTO風アレンジや、各所にナルト模様が書き込まれており、見れば見るほど発見がある扉絵だ。

尾田と岸本は、2人とも1974年生まれ。デビューした時期も近く、共に「ジャンプ」を支えてきた戦友のような間柄だ。そのため、尾田も「NARUTO -ナルト-」の最終回に抱く想いは強かったのだろう。

<その2>第846話…M・Sさんって誰? 一風変わった扉絵
「ジャンプ」2016年51号で島袋光年の『トリコ』が最終回を迎えた際にも、同じく労いのメッセージが。それが第846話『タマゴの警備』の扉絵だ。

尾田は扉絵において、読者からのリクエストに応えた絵を描くことがある。その際にはリクエスト主の名前も扉絵に載るのだが、第846話でリクエストを行ったのは尾田本人。「M・Sさんの好きなウサギの絵を描いてください」というお題に、尾田が自ら応えるという異例の扉絵になっている。

「M・Sさん」は「トリコ」作者の島袋光年のこと。また扉絵にはウサギ以外にも、しましま模様の豚、5羽の鳥、3と9の数字が描かれており、「しまぶー(しま豚) トリコ(鳥5) サンキュー(39)」のメッセージに見えてくる。

尾田と島袋もプライベートで長年の親交があり、漫画家デビューが決まった際はお互いに電話で報告し合ったほど。島袋の大ヒット作となった「トリコ」の完結は、尾田にとっても感慨深いものだったはずだ。

さまざまな仕掛けが詰まった扉絵たち


<その3>第839話…大先輩へ“クソお世話になりました”
「ONE PIECE」第839話は、秋本治の『こちら葛飾区亀有公園前派出所』が最終回を迎えた「ジャンプ」2016年42号に掲載。同号では全作品に〝両津勘吉の眉毛〟が出現するというお祭り企画が行われたのだが、「ONE PIECE」では扉絵に両津の眉毛が登場した。

扉絵は両津が載った巨大な手配書に、ルフィたちが眉毛を落書きしているという内容で、チョッパーやブルックが敬礼する姿も描かれている。また、手配書に書かれた数字は、両津の眉毛を「3」に見立てると「110(警察) 5963(ご苦労さん)」のメッセージに。

しかも第839話のタイトルは『クソお世話になりました』。扉絵でなくタイトルも含めて、40年にわたって連載が続いた「こち亀」へのメッセージになっていたのだろう。

<その4>第519話…「ドラゴンボール」への隠れたリスペクト
「ONE PIECE」の扉絵は、外枠は白一色が基本だ。だが第519話『王の資質』の扉絵は、他と違って外枠全体にスクリーントーンが貼ってある。

実はこの扉絵、尾田が尊敬する漫画家・鳥山明へのリスペクトを込めたもの。鳥山の代表作『ドラゴンボール』は519話で完結しているため、同じ話数である519話にスクリーントーンが貼られたのだ。尾田は「ONE PIECE」53巻の質問コーナーで、トーンを張った理由について「自分的な印をつけた」と語っている。

<その5>第233話…同志への追悼
第233話『世界最高権力』の扉絵は外枠全体が黒く塗りつぶされており、これまで紹介したものとは意味が大きく異なっている。

「ONE PIECE」25巻の作者コメントによると、尾田は「しんがぎんという、漫画仲間への追悼の意味で黒くぬった」とのこと。しんがぎんは1996年から「ジャンプ」で活躍した漫画家だが、2002年に29歳の若さで急逝した。尾田としんがぎんは共に、漫画家デビュー前に『るろうに剣心』の作者・和月伸宏のアシスタントをしていた間柄だったという…。

尾田は自身のことをあまり語らないタイプだが、扉絵を通してさまざまな想いが伝わってくる。ここで紹介したもの以外にも、意外なメッセージが隠された扉絵があるかもしれないので、「ジャンプ」を読む際には隅々までチェックしてみてほしい。

文=野木
写真=まいじつエンタ

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