テレワーク時代に住むべきはどこ?[シン郊外]という新天地

日刊SPA!

新型コロナによって働き方は激変。テレワークの普及はこれまでの価値観をひっくり返し、広い、書斎がある、自然と触れ合う住環境を重視するといった新しいニーズが高まっている。【シン郊外】の最先端を追った。

◆激変する住まいの価値観。勝ち組郊外の共通点とは?

2度目の解除からわずか1か月で発令された緊急事態宣言。テレワーク普及も勢いづくなか、長引くコロナ禍を見据え、郊外への引っ越しを検討する人が急増している。

この春、娘の私立中学合格を機に三田(港区)から中央林間(大和市)に移った大森武志さん(仮名・42歳)が語る。

「まず家賃が22万円から駐車場込みの9万円に下がったのは相当大きい。間取りは57㎡の2LDKから78㎡の3LDKになり、広々としているので夫婦ともにテレワークでも快適です。娘の通学だけ心配していましたが、始発駅なので確実に座れて特にストレスはないようで安心しました」

固定費が半分以下になるとは魅力的。だが、郊外ならどこでもいいわけではない。いわゆる郊外といえば、都心から25㎞の同心円周辺を指す。しかし、毎日の通勤がなければ多少遠くとも住みやすさを持つ「シン郊外」とでも呼ぶべき、注目の穴場は存在する。

◆賃貸の穴場はどこ?

賃貸と分譲について、それぞれスペシャリストに聞いた。賃貸未来研究所所長の宗健氏は、

「郊外は教育環境にかなり違いがあるため、子育ての有無によって選択肢は変わってきます。その点、マリンスタジアムの印象が強い海浜幕張周辺はグッドデザイン賞を受賞した綺麗な街並みと教育レベルの高さにも定評がある」

と推奨する。海浜幕張自体に賃貸は少ないが、京成幕張、幕張の3駅で見れば掘り出し物件がある。

また郊外というと埼玉を検討しがちだが、いっそ茨城まで視野を広げるのも有効な手。

「つくばとの中継地点である守谷は、この30年で人口が倍増しています。大企業や研究所勤務のファミリー世帯も多く、教育水準が高い。まさにシン郊外と言えます」

先の大森さんが選んだ中央林間は、始発駅以外の魅力があるのか。

「シン郊外で選択肢が多いのは断然神奈川ですが、中でも田園都市線は終点の中央林間まで総じて住民の満足度が高い傾向にあります」

◆宗氏のおすすめ賃貸エリア

1位 海浜幕張(千葉県)

3LDKの家賃 12万円~

1K・1DKの家賃 6.5万円~

海浜幕張、京成幕張、幕張駅の3駅が利用可能で幕張から秋葉原までは直通で約46分。海が近く、近隣にはイオンモールと三井アウトレットパークなどショッピングモールも充実。人気上昇が始まっている千葉の湾岸エリアでも特に注目だ

2位 守谷(茨城県)

3LDKの家賃 12.3万円~

1K・1DKの家賃 5.8万円~

茨城県ながら、堂々の2位にランクインした守谷はつくばエクスプレスを使うと秋葉原までなんと35分。家賃は一見高く見えるが、3LDKだと80㎡超えも豊富に揃い、ことファミリーには無視できない選択肢になるだろう。実は極めて優秀なシン郊外なのである

3位 中央林間(神奈川県)

3LDKの家賃 10.3万円~

1K・1DKの家賃 3.4万円~

田園都市線の終着地である中央林間は、なんといっても始発駅であることが魅力。「コロナ前から1本待てば席に座れないことはなく、コロナ禍では待たずとも座れる」とは住民の弁。小田急線も使えるため新宿駅へのアクセスも良好。神奈川県央エリアでは要注目だ

◆3000万円台から購入可。シン郊外の分譲マンション

分譲はどうか。「街とマンションのトレンド情報局」を運営する不動産コンサルタントの岡本郁雄氏は、シン郊外の利点をこう語る。

「従来の郊外でいえば、浦和やセンター北などの新築マンションが好調ですが、3LDKの広さを求めるとどうしても6000万~7000万円台になります。その点、シン郊外であれば新築でも3000万円台から購入可能な物件がある。特に海老名は、在宅勤務に最適な環境を整えたマンションも登場するなど、人気エリアへと急速に変貌しています」

新築でも旧郊外の半値とは驚きだ。これが中古となればさらに選択肢は増えてくる。

「ここ20年、官民学が連携し他に類を見ないほどのスケールで開発が進んだ柏の葉キャンパスは、注目に値します。新しい街ゆえに、中古と言っても築浅の物件でミストサウナや床暖房など、設備が充実している80㎡台の3LDKが4000万円台で購入できます」

賃貸では茨城に取って代わられた埼玉だが、狙い目なのは東武東上線沿線。東京メトロ副都心線に直通しているため、新宿、渋谷にも乗り換えなしでアクセス可能だ。

「築20年程度まで条件を広げれば、70㎡以上の物件が3000万円台で十分選べます」

通勤から解放された今、自然豊かかつ開発の進んだシン郊外こそ、QOL向上の鍵となるはずだ。

◆岡本氏のおすすめ分譲エリア

1位 海老名(神奈川県)

3LDKの分譲価格 2500万円~

1LDKの分譲価格 1500万円~

小田急線、相鉄線、JR相模線の3路線が交差するターミナル駅。新宿までは小田急ないし相鉄でもアクセス可能で、ともに1時間程度。ビナウォークのある東側から、ららぽーと開業の西側へ開発が拡大。3000万円台で新築の購入も可能

2位 柏の葉キャンパス(千葉県)

3LDKの分譲価格 3500万円~

1LDKの分譲価格 1500万円~

シン郊外で注目される、つくばエクスプレス沿線から2駅目のノミネート。駅前にららぽーとがあり、買い物は至便。マンションが林立しており、選択肢が豊富。東大の柏キャンパスがあり、分譲もさることながら、単身者向け物件は賃貸需要も根強そう

3位 ふじみ野(埼玉県)

3LDKの分譲価格 2500万円~

1LDKの分譲価格 1500万円~

東武東上線で池袋まで直通32分。埼玉といえば大宮、浦和に人気が集中しがちだが、ポテンシャルの高いシン郊外の街としてまだそこまで認知されておらず、狙い目と言えるかも。荒川を挟んで4㎞ほどで埼玉新都心にもアクセスでき、利便性の高さはピカイチ

◆自治体から補助金まででる? テレワークの最新事情

今でこそ全国的にテレワークが推進されているが、10年前からこうした土壌を下支えしてきたトップランナーがいる。5万人以上のテレワーカーを抱え、行政や企業にテレワーク導入支援を行っているイマクリエだ。代表の鈴木信吾氏が語る。

「どこに住んでいても働ける新しい働き方を創造するため、まずは主軸であるコールセンター事業を完全在宅化に切り替えました。子育てで離職を余儀なくされた女性を中心に首都圏在住が3割、海外を含む地方在住が7割というバランスです。首都圏では海老名、船橋、つくばといったシン郊外在住者も目立ちます。今後はさらに増えていくのではないでしょうか」

テレワーク化の波は一般企業はもとより、行政にも及んでいる。多くの自治体も続々と本腰を入れつつあるのが、今なのだ。

「テレワークとは無縁だと思われていた地方自治体も、意識が変わってきています。なぜなら、テレワーカーや企業に安価な住宅や研修施設、サテライトオフィスを提供することで人や企業を誘致することが、地元を活性化することに直結しているからです。例えば、福岡県直方市は、大胆なDX推進プランと手厚い補助金制度を掲げ、驚くことにこの半年で3社の誘致に成功しています」

◆住環境とともに今後のライフプランを見直す時期

現在補助金といえばコロナ関連のものに目が行きがちだが、実はテレワークをすることで、「移住支援金」として企業だけでなく個人にも補助金が支給されている。

「シン郊外もいいですが、さらにもう一歩足を延ばし、テレワーク支援が厚い地方自治体に住んでしまうのも、アリだと思います。直方市以外にも、移住に積極的な自治体は数多くありますが、僕は長野県小諸市や滋賀県彦根市も魅力的だなと感じました」

と、鈴木氏は力説する。今後、コロナ禍が収まっていくとしても、テレワークが後退することはありえない。一度、住環境とともに今後のライフプランを見直す時期だ。

【麗澤大学客員教授・宗 健氏】

リクルートフォレントインシュア社長、リクルート住まい研究所所長を経て、’18年7月大東建託賃貸未来研究所所長に就任

【不動産コンサルタント・岡本郁雄氏】

ファイナンシャルプランナー、中小企業診断士。住まい選びに役立つwebサイト「街とマンションのトレンド情報局」を運営

【イマクリエ代表取締役・鈴木信吾氏】

’02年青山学院大学卒。大手住宅、大手自動車部品メーカー、コンサルティング会社を経て’07年に起業。’16年に現職に就任

<取材・文/仲田舞衣 桜井カズキ 図版/ミューズグラフィック>

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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