コロナ在宅で家の中は地獄絵図。ストレス爆増でもう逃げ出したい/コロナ禍の日本

日刊SPA!

 3度目の緊急事態宣言、まん延防止等重点措置も発令され自粛が続く日本。これまで取材してきた新型コロナの影響が直撃し困ってる人々を今一度振り返りたいと思う。2020年4月22日公開記事を再掲載、昨年4月7日の緊急事態宣言が発令されてから2週間後、家に閉じ込められた家族たちは、その負担やストレスに悲鳴を上げていた。

◆コロナ在宅で家庭崩壊

自宅の中には居場所がなく、外出をすれば感染の危機がつきまとう。家族との不和に悩まされていた人からすれば、この状況はまさに地獄同然だ。

「親からの暴言暴力に耐えられない。早く学校に逃げさせてくれ」

長期間の休校を余儀なくされた長縄夏奈さん(仮名・17歳)は、苦しい胸中を吐露した。

「小学生の弟がやんちゃを繰り返したことで親がキャパオーバー。『存在がウザい』と怒声を浴びせてきたり、弟たちへの暴力を目の当たりにしたりと精神的に疲弊してしまいます」

“学校”という逃げ場を失った今、彼女のストレスは限界を迎えている。

「休校を延長してほしい気持ちもわかるけど、正直もう家にいることが限界です」

また、以前から夫婦仲に亀裂が入っていたという佐久間健二さん(仮名・37歳)は、在宅勤務により妻との関係がさらに悪化した。

「私の在宅勤務が始まって数日後、妻から『しばらく子供と2人きりにしてくれる? 夜の10時まで入ってこないで』と言われ、8時間ほど自分の部屋に閉じ込められました。一緒に食卓につくことも許されず、気が狂いそうです」

◆精神病の妻のケアで夫の疲弊が極致に

数年前、家族との不和が原因で、社交不安障害とうつ病を患うまで追い込まれた遠藤弘樹さん(仮名・40歳)は実家で暮らしているが、離婚して実家に帰ってきた30代前半の妹とその息子に休校によって家を占拠された。

「妹は、一度キレると手を出せなくなる性格。妹の振る舞いや甥が立てる激しい物音にノイローゼ状態になっていましたが、甥が学校に行っている時間だけが心を落ち着かせられる瞬間でした」

派遣社員として働いている遠藤さん。甥のいない平日に休みを取るなどして心を休ませていたが、甥の突然の休校で絶望感に襲われたという。

「甥が何かを壊す音で冷や汗が噴き出し、動悸や息切れに悩まされています。経済力があれば家を出たいですが、心身の不調からまともに働くこともできず、どんどん悪化していくばかりです」

一方、家庭内に精神障害者がいる家族もまた、介護のストレスから悲鳴を上げている。

「漠然とした不安を感じやすい境界性パーソナリティ障害を患っている妻は、今回のコロナ騒動でさらに不安が倍増しています。私がアルコール消毒液を開封しただけで『無駄に使うな!』と激昂したり、死にたいと騒いだりと、世話をするこちらとしてはたまりません」

3児の父にして、数十年もの間境界性パーソナリティ障害の妻と連れ添ってきたという奥田冬彦さん(仮名・50歳)。育児の負担や感染への不安で暴れる妻とともに家に閉じ込められ、本気で離婚を考えるまで追い込まれている。

「高校生の長男、中学生の次男と三男それぞれが別の学校に通っており、休校期間や登校時間も異なるので妻は気が休まらない状態です。その状況が不安に拍車をかけているのか、マスクが買えなかっただけで『この薬局に並んだお前のせいだ』と不満が大爆発。妻との生活はもう地獄です」

◆コロナが蝕む心。円満な家庭にも陰が

今回の騒動を受け“心の保健所”も対応に追われている。全国心理業連合会(以下、全心連)代表の浮世満理子氏は、厚生労働省(以下、厚労省)のオンラインでのカウンセリングを実施。3月18日から31日までの間に、全心連に寄せられた相談は600件を超えた。

「緊急事態時には心の病や家庭内のトラブルが増える傾向にあるのですが、今回はさまざまな要因が絡み合い、かなり深刻な状況です。狭い住宅に家族とずっといなければならないという環境的要因、感染の不安からくる心理的要因、さらに休業に追い込まれ、収入が不安定だという経済的要因。この3つの要因が精神疾患の悪化や家庭内のトラブルを引き起こしていると考えられます」

不安や精神疾患の悪化から、子供に対して暴力的に接してしまう親も少なくない。

「精神疾患を患っていた母親が、外に遊びに行った子供に対して頭から消毒液をかけるなど、暴力的な対処を行う例も見られます。行きすぎた不安やストレスから、DVにまで発展する可能性は十分あるのではないでしょうか」

◆家庭内のトラブルは家だけの問題ではない

同じく厚労省委託のコロナ相談にもかかわる香山リカ氏は、今まで問題を抱えていなかった一般家庭に対しても警鐘を鳴らす。

「現在はもともと心療内科に通院していた人が来院することが多いですが、今後は一般家庭でもトラブルが発生することが予測されます。今まで仕事や学校で見えなかった家族の一面や、怠惰な生活態度などがすべて見えてしまうことによって、家族仲は悪化するでしょう」

10代のための相談窓口「Mex(ミークス)」を運営する認定NPO法人3keys代表・森山誉恵氏は「家庭内だけでなく、社会の仕組みそのものを変えなければ問題の解決には繋がらない」との見解を示す。

「児童虐待を含め、家庭のトラブルは親の負担やストレスが根本的な原因となっています。今回も休業要請で収入が不安定になることや、在宅勤務や休校で子育ての負担が増大したことが、虐待やDVなどの引き金となると考えられます。助成金の支給や、親をサポートする機関の設置など、社会レベルでのケアを行わなければ、根本的な問題解決にはならないのでは」

Mexではオンライン相談態勢の整備、相談窓口の認知拡大などに努めている。多くの人の心を蝕む「コロナ在宅」。コロナ騒動が終息するより先に、心が崩壊してしまわないことを願うばかりだ。

◆相次ぐ休校措置で混乱する教育現場

在宅勤務や休校等で家庭への負担が増大している一方、休校を施行している教育機関もまた、生徒の安全を確保するための対応に追われている。

「私の学校では、緊急事態宣言が出た今でも職場に出勤し、今後の教育方針を会議で話し合っています。成績のつけ方、学習範囲をどう終わらせるか、修学旅行などの年間行事をいつ、どのように行うか、来年度の入試はどうするのかなど、未確定のことについて常時話し合っているような状況です。しかし国や自治体の方針が決まっていないので、毎回結論が出ないまま終わってしまいます」

2月の後半から緊急事態宣言が発令されるまで、刻一刻と変わる状況に対応を余儀なくされていた中学校教師の谷山健一さん(仮名・43歳)。毎回学校に出勤し職員会議を繰り返すも、自治体の方針変更に振り回され、無駄な労力となることが何度もあったと話す。

「国の方針、自治体の指示がころころ変わること、そして急に指示を出されることが教員を混乱させています。また、指示を待てない教師が、方針が決まる前に教科書を家庭に配達するための準備を進めてしまい、自治体の方針で会場配布を行うことになったこともありました。対応を焦るあまり二度手間になってしまうことがたびたび起きている状態です」

また、休校の長期化により、オンライン授業に切り替える学校も増加傾向にある。しかし動画配信サービスへのなじみのなさや、慣れない授業体制によって、教育現場はさらに混乱状態。小学校教師の安斉隆さん(仮名・50歳)は「出席の取り方やどの配信サービスを使うべきかなどがわからず、なかなか導入できていないのが現状です」と困惑している。

コロナ騒動を契機に、いまだかつてない対応を求められる教育機関。混乱はまだまだ続きそうだ。

【浮世満理子氏】

メンタルトレーナーとして「心の専門家養成スクール」を開設。厚生労働省「新型コロナウイルス感染症関連SNS心の相談」相談員を務め、ストレスケアを行う

【香山リカ氏】

精神科医としての臨床のかたわら、厚生労働省が設ける窓口をはじめ、コロナ関連の心の相談も担当。「相談が殺到し、窓口はパンク状態」だと語る

【森山誉恵氏】

10代のための相談窓口を提供するWebサービス「Mex(ミークス)」を運営。虐待やセクシュアリティの悩みなど、子供のメンタルケアに力を注ぐ

<取材・文/筒井あやこ イラスト/テラムラリョウ>

※2020年4月22日公開記事を再掲載。専門家の分析は取材時の状況です

―[コロナ禍の日本]―

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

あなたにおすすめ

ランキング

ランキングをもっとよむ

注目ニュース

注目記事をもっとよむ

あなたにおすすめ