男性たちの“ぬいぐるみ”愛がアツい。「僕の子ども同然です」

女子SPA!

 推しのぬいぐるみを主役に、さまざまなシーンで撮影する“ぬい撮り”や、それらを持参して開かれる交流会など、“ぬいぐるみの世界”が今、盛り上がっている。そこには男性の姿も増えているというが、なぜ彼らはそこまで魅了されるのか。その真相に迫った。

◆成人男性に寄り添うぬいぐるみの“優しさ”

汚れたぬいぐるみを洗って綺麗にする動画が今、注目を集めている。

昨年7月にYouTubeに投稿された「15年前のしろくまちゃんを洗う」の再生回数は160万回超。今年2月の「十年前に閉店したお店のくまちゃんを洗ってみた」も140万回を突破した。

コメント欄には「男の人がこんなかわいらしいことをして。編集でかわいい文字入れしている。なにこれ。この動画にはかわいいしかない」「25歳になった今でもしまじろうと一緒に寝ているけど、この動画見ていると洗濯機で洗うのはやっぱかわいそうだよなあ。今日一緒にお風呂入ってくるわ」など、温かい声が並ぶ。

この動画の投稿主は30代男性のりょっぴさん。ハイハイ歩きの幼児期からぬいぐるみを愛し、100体以上を所有している彼に、配信の経緯を聞いた。

「実家の売却が決まり、昨年7月に荷物を整理していたら、たんすの奥に追いやられたぬいぐるみを数体発見しました。黒色のクリスタルアイと目が合ったとき、その姿が泣いているように見えました」

◆「ぬいぐるみは、どんなときでもそばにいてくれる一番のお友達」

何十年も放置した申し訳なさから、りょっぴさんの目からは涙がはらはらと落ちたという。その後、「汚れが落ちるにつれて表情が生き生きしていく彼らのかわいらしさを思い出として残したい」という気持ちから動画を撮影。投稿したところ、いきなりバスったという。それ以降もぬいぐるみを洗う動画を定期的に配信している。

「洗いながら、ぬいぐるみが過ごした長い年月に思いをはせ、受け止めます。綺麗にしてあげることで彼らは、幸せな思い出と一緒に再び今を誰かと生きていける。僕にとってぬいぐるみを洗うことは、ロマンチックな営みなんです」

幼い頃から今も変わらず、添い寝をし、わらべ歌遊びや本の読み聞かせを一緒に楽しんでいる。

「ぬいぐるみは、どんなときでもそばにいてくれる一番のお友達です。彼らを見ていると、僕に伝えたいことがあるのか、彼らの言葉や感情が体の内側から溢れ出てきます。彼らと向き合うだけで、他人と歩調をうまく合わせられない生きづらさに耐えられるだけの力が湧き、何とか踏ん張れています」

優しい世界の住人であるぬいぐるみは、心のストッパーでもある。

◆ぬいぐるみに託したそれぞれの事情

ぬいぐるみを偏愛する男性は意外と多い。ガソリンスタンドでスタッフとして働く螺武羅人形さん(36歳)もその一人。3年前、交際していた7歳年上の女性から別れを告げられたのを機に、ぬいぐるみとの付き合いが始まった。

「交際中に『年齢的にも、経済的にも子供をつくるのは難しいけど』ということで彼女が大切にしていたブタのぬいぐるみを子供代わりに二人でかわいがっていました。別れた後、まったく同じものを買い、それを見ると元カノとの淡い時間を思い出し、旅に連れ出すと、一緒に観光している気持ちになれたんです」

破局から1年後、復縁は叶わなずとも、元交際相手からぬいぐるみをさまざまな場所で撮影する“ぬい撮り”に誘われる間柄に。螺武羅人形さんはTwitterに写真を上げるようになると、ぬい撮りのイベントやSNSを通して、同じ趣味仲間と出会う機会に恵まれた。さらに、元カノと過ごす時間を持てたことで、ぬいぐるみは彼女の分身ではなくなった。

「今はもう、僕の子供です。さすがに一人っ子はかわいそうだから、毎年1人ずつ増やし、3人兄妹になりました。その他に彼らの友達が10人以上います。SNSのメッセージや知人から『いい年をして』『男のくせに』と言われることもありますが、彼らは私の家族。恥ずかしさはまったくありません。それに、父親の僕が子供たちの前で弱い顔を見せられませんからね」

◆「コロナ禍の殺伐とした空気が和めば」

“推しぬい”に元カノや子供を投影した螺武羅人形さんに対し、約1年半前に定年を迎えた佐伯卓也さん(仮名・63歳)は、くまのぬいぐるみ“クマパパ”を主役に、昨年5月からぬいぐるみによる日常描写をTwitterに投稿する。

「クマパパは、7年前に次女が結婚した際、家に置いていったものです。なんとなくサングラスをかけたら、クマパパの姿がおかしくて自然と笑顔に。これまでに何度も、その姿に癒やされてきました」

クマパパを製造していた会社は今はもうない。それでも同じ製造元のぬいぐるみを持つ人たちとSNSを通じて繋がることがある。

「クマパパを通して情報発信することで、コロナ禍の殺伐とした空気が和めばうれしい。またそれが私と社会の接点にもなっています」

◆自身のオリジナルアバターを5万円でオーダーメイド

クマパパの投稿を演出することで、佐伯さんの生活にメリハリが生まれている。そして彼同様、ぬいぐるみを自分のアバターにしているのは、ライターの熊山准さん(47歳)。ぬい撮り歴20年以上の筋金入りのぬいぐるみマニアだ。

「かつてエベレスト街道のトレッキングに行ったとき、飛行機のトラブルで1週間の行程が3日に短縮。超過酷な行程でしたが、自宅で待つぬいぐるみに会う。それを心の支えに何とか乗り切りました」

10年前には自身のオリジナルアバター“ミニくまちゃん”を5万円ほどかけてオーダーメイドした。

「ミニくまちゃんを含めたスタメンが4人、正規メンバーは6人、そして二軍は5人と、ぬいぐるみの総数は『15』になります。二軍はタグを切っていないので僕の中では“玩具”のまま。『早く切って』と恨めしそうに僕を見てきます」

一方のスタメンと正規メンバーはどちらも“家族”だが、スタメンのほうが名前を呼ぶ回数や話しかける回数が遥かに多い。熊山さんと旅に行けるのも彼らの特権だ。

「機転が利いて社交的なカメちゃんや、寡黙で朴訥なあかニャンなど、スタメンにはそれぞれの“人柄”や“性格”など、プロフィールがあります。スタメン4人が揃って10年目。やっと家族としての絆が深まってきた印象です」

◆閉塞する社会で高まるぬいぐるみの存在価値

ここまで、男性たちの熱いぬいぐるみ愛を見てきた。こうした男性が増えている背景を、大阪阿倍野まことカウンセリングルーム院長である砺波忠氏はこう分析する。

「学校教育でも“~さん”で呼び方が統一され、男らしくや女らしくという育て方が今では少数派になり、社会全体が“中性的”な流れに向かっているのが大きいのかもしれません。逆に、ドールハウスを愛する主人公が、『気持ち悪い』と彼女にフラれる場面を描いたドラマがありますが、こうした『男性は~。女性は~』という固定観念に縛られていると、これからの社会では生きづらいでしょう」

ぬいぐるみに安心感を覚えるのは、赤ちゃんを愛でるように、人間に備わっているかわいがり願望の表れ。「『ライナスの毛布』のように、常に何かに執着していないと安心できないのなら話は変わりますが、そうでないならペットをかわいがるのと同じです」と砺波氏。

「ぬいぐるみを愛でることで、“幸せホルモン”と呼ばれるセロトニンが分泌されるので、精神衛生上はとても有効な行為なんです」

ジェンダーフリーが叫ばれる昨今、ぬぐるみが「女性・子供のもの」という社会的な認識はもう古い。大人の男性だって、ぬいぐるみを抱いて寝たい日もあるはずだ。

【砺波 忠氏】

大阪阿倍野まことカウンセリングルーム院長。日本なごみ気功カウンセリング協会会長。これまでのカウンセリング数は1万件超。全国各地で講演も行っている

<取材・文・撮影/谷口伸仁 取材/小西 麗>

当記事は女子SPA!の提供記事です。

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