「日本人は早期発見病にかかっている」正しい健康診断との向き合い方

日刊SPA!

 健康診断を会社に義務づけられ、人間ドックも定期的に受けろと言われ、保険会社のCMに不安をかきたてられ。人生100年、長生きしたいならまず検査と、何かとプレッシャーがかかる現代社会。しかし、その検査は本当に必要なのか? 今、各メディアが取り上げるこの問題を医師たちに直撃すると、意外な実態が語られた!

◆健康寿命を延ばす「正しい健診との向き合い方」

会社に所属していれば、健康診断や人間ドックを半ば強制的に受けさせられる人は多い。しかし、「過度の検査は推奨しない」というのが海外の常識だとしたら? 医療経済ジャーナリストの室井一辰氏はこう解説する。

「日本の医師会では『大腸がん検診や肺がんの検診は、40歳以上なら毎年』『胃がん検診は50歳以上なら2年に1回』と推奨しています。対して海外では、検査ごとに年齢の上限を設けている。また日本と違い、具体的な症状がない人はむやみに検査を受けるなというのが基本的なスタンスです」

「では、私たちはどのように健康診断を活用すればいいのか?」という問題がある。日本ではまだ少ない家庭医療専門の武蔵国分寺公園クリニック・名郷直樹医師は、まず現状の問題点をこう指摘する。

「今の日本の健康診断は効果がはっきりしない『対策型健診』といって、個別のニーズを反映しない制度になっています。そのため、大量の健診結果を診断することになり、データで一律に処理できる『検査値』ばかりにシフトするという悪循環に陥っています。

ですが、例えばコレステロール値に多少の異常があったとしても、その数値単独で健康状態を把握できるものではない。現在の体調や血縁者の病歴などを含めた総合的な判断が必要なのです」

とうきょうスカイツリー駅前内科・金子医師も、「健診医療機関は、アルバイトの研修医や問題のある“はぐれ医者”がほとんど。工場のベルトコンベヤーのように単純作業で検査値を処理しているだけです」と語る。だからこそ、健診結果にC判定(要経過観察)やD判定(要医療・精査)があっても、名郷医師は「数値だけに踊らされてはいけない」と続ける。

「医療機関の中には健診で異常値があるからと、すぐ外来に回して患者を増やそうとするところもある。ですが、先述したように大切なのは個々の数値よりも総合的な判断なので、今の健診では簡略化されがちな“問診”こそ重要なのです。

具体的には、『血圧』『LDLコレステロール』『空腹時の血糖値』が基準値を少し超えるくらいなら、個々の数字にこだわるより、自分自身の生活に合った総合的なアドバイスを受けることのほうが重要となります」

大量の受診者がいる健康診断では、医師の問診に充てられる時間はごくわずか。ムダな検査や過剰な医療のリスクを防ぐためには、健診結果を信頼できる医師に見てもらう、つまり健診段階でのセカンドオピニオンが有効だ。その上で、さらに精密な検査を受けるべきか判断しても遅くはない。

◆がんの早期発見は、余命を延ばすとは限らない

一方、「人間ドックやがん検診を定期的に受けてさえいれば安心」と考える人も多い。これに対し、新潟大学名誉教授・岡田医師は「がんの早期発見が余命を延ばすとは一概には言えない」と語る。

「例えば、大腸がんや胃がんの進行は非常にゆるやかで、早期発見したからといって、それで命拾いしたとは限りません。逆に、早期発見してしまったことによる過剰な医療で余命が縮まる可能性もある。数年前、アメリカで亡くなった人の死因を統計学者が分析すると、1位の心臓病、2位のがんに次ぐ3位が『過剰医療』であるとの研究結果も発表されました」

▼米国の主な死因

アメリカの政府機関によって発表された衝撃的な統計。訴訟大国アメリカでは、医療訴訟も大きな社会問題となっている

心臓病 61万4348人

がん 59万1699人

過剰医療・医療ミス 25万1454人

呼吸器疾患 14万7101人

事故 13万6053人

出典:ワシントンポストに発表された研究結果より編集部で作成

◆日本人は早期発見病にかかっている

名郷医師も「日本人は早期発見病にかかっている」と指摘。

「早期発見が余命を延ばすという確実なエビデンスがあるのは、大腸がん、子宮がん、乳がんなど、限られています。それ以外のがんは、早期発見、早期治療が余命を延ばすとは限りません。早期がんの一部には、放置していれば消えてしまうケースもある。さらに、早期に見つかれば見つかるほど、偽陽性のリスク、検査や検査結果を待つ間のストレス、コストなど、過剰な診断によるデメリットが上回り、早期発見の効果を打ち消してしまう可能性があります」

金子医師も、高額な検査を受ける必要はないと断言。

「内視鏡や肺がんリスクの高い人のCT、女性のがん検診などは受けておくべきですが、それ以上の検査を具体的な症状がないうちに受診する必要は特にありません」

予防医療が叫ばれる今、検査の結果に一喜一憂するよりも、正しく向き合うことこそ重要なのだ。

◆<検診の活用法5か条>

①ひとつの数値だけで、不健康とは判断できない

②基準値を超えても精密検査の前に相談

③健診結果にもセカンドオピニオンを

④がんの早期発見は、メリットだけではない

⑤精密検査は内視鏡など有効性の高いものを

【医師・名郷直樹氏】

僻地診療所医療に12年間従事し、’11年に武蔵国分寺公園クリニックを開院。著書に『医療の現実、教えますから広めてください!!』(ライフサイエンス出版)など

【医師・金子俊之氏】

とうきょうスカイツリー駅前内科院長。日本リウマチ学会専門医・指導医。著書に『医者が教える「ヤブ医者」の見分け方』(ゴマブックス)など

【医師・岡田正彦氏】

新潟大学名誉教授。医療法人専務理事かつ介護老人保健施設長。専門は、予防医療学、長寿科学。著書に『医者に聞けない検査値のホント』(大和書房)など

取材・文/週刊SPA!編集部

―[健康診断の真実]―

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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