「ドライバーに対する世間の印象を変えたい」運送業界の当たり前を変えた革命児がこの先に見据えるもの




サファリやドット、ジュラシックのトラックのアートラッピング・・・目をひくデザインの理由は、外見の華やかさだけではありませんでした。

物流業界の当たり前を変える、誠輪物流・野坊戸社長の革新的な取り組みやその思いを聞きました。



――まず、誠輪物流の事業内容などから教えてください。

野坊戸社長(以下野坊戸)ちょっと前段になるんですが、マスコットキャラクターを作ってたんです。ホームページにトラック載せてもつまらないし、あまり見られないので。インパクトのあるキャラクターを作って、全部イチからテーマパークみたいにしたくてトッドくんやかわいいキャラクターがいっぱい走ってるみたいなホームページにリニューアルをしました。手と足は大きくしたほうがパワーがあって見えるからそのほうがいいかなとか色々検討した結果、こういう風になりました。

普段トラックのHPとか見られますか?

――おっしゃる通りで、子供は電車とかには手をふりますよね。でもトラックはあんなに走ってるのに手をふることはないです。

野坊戸:見た人の記憶に残るものや笑顔になるものにしたいから、そこにフォーカスしているんです。どんなトラックが走ってるかなんて覚えていないじゃないですか。いろんなトラックが走ってたほうが面白いっていうのと、運送会社だとトラックを揃えるのが一般的だと思うんですけど、揃える必要もないかなと思ってそういうものを変えたんです。

―ある意味業界の慣習からの脱却ということでしょうか?

野坊戸 今までの当たり前を違う観点から見て変えたらこういう結果になりました。



――いつくらいからはじめましたか?

野坊戸 ここ2年くらいかな。最初軽貨物から始めて、どれも同じだと面白くないな、水玉柄にしたら可愛いかな、と思って検索したら水玉柄のトラックがなかったんですよね。

――ラッキードットっていうのはトラックに名前をつけているんですか?

野坊戸 最初水玉でこれをみたら幸せになれるっていうところから始まって、日本語よりも横文字のほうがかっこいいよねっていう話になって、ラッキードットって名前に決まりました。

小さい子供もおじいちゃんおばあちゃんも水玉柄はわかるから、そこにフォーカスしたほうが面白いと思いまして。風水的にも金運アップとかいいイメージがあり、企業カラーがグリーンなので、それに準じて緑色のドットになりました。隠れミッキーならぬ隠れ誠輪(のロゴ)もあるんですよ。遊び心として。

キャビンから始めて、最後は思いっきり(笑)。アートラッピングって外注するとすごく高いんですよ。だからデザインは私がやっていますし、車検も通ります。真似されないように商標登録にいったらラッピングはできるけど意匠登録になるとのことだったので、それならもっと露出して周知したほうが早いと思って女性と子供をターゲットにしました。

――社長にデザインのセンスがあったっていうのがよかったですよね。

野坊戸 ラッピング屋さん泣かせですよね。コストも抑えられるので。実はジュラシック誠輪としてトリケラトプスも完成してます。というのも、あるお店でトリケラトプスの商品があってこれだって直感で感じて。



――子供は恐竜好きですからね。サファリ誠輪は今何台あるんですか。

野坊戸 今5台ですが、次はアクア誠輪にしようと思ったのですが、クジラもサンマもあまり変わらないのでジュラシック誠輪にしています。今も見かけた人達が珍しいから「こういうの見たんだ!」って写真を撮ってくれています。

――インスタ映えですね。

野坊戸 今度、数台続けて街中を走ろうと思って。きっと誰か載せてくれますよね。なんなら自分ででも(笑)

――前からあるものを塗り替えるのではなく、増やしていくってことですか。

野坊戸 そうそう。ラッキードットはすでに9台あるので、小型のトラックでアライグマやうさぎ等、そういうものにしてもいいかなと思ってます。最終的に面白いトラックは誠輪物流ってところまで持っていけたら。これはブランド力を上げるっていうことが狙いなので。私があげたツイッターを他のドライバーさんも広めてくれています。

―ドライバーさんの反応も良さそうですよね。

野坊戸 本人が乗りたいっていったトラックに乗ってもらっています。注目されているから事故も減るし、ドライバーってかっこいいっていう認識からドライバー不足を解消できればと思っています。

――抵抗勢力みたいなのはないですか。

野坊戸 賛否両論ありますよね。でも人とかぶるのが嫌で劇的に変えたわけではなく、ただシートを貼るだけなので。次を楽しみにしてほしいし、社員も楽しみにしていてくれています。徐々に社風も学校みたいになっていて、グループ活動とかしています。1年に1回クラス替えをして、組織とかにこだわらず、型にはめずに活動しています。

――グループ活動って具体的にどんな活動をされているんですか。

野坊戸 現場の主任が8人いて、その下に8~10人の仲間をつけて、班ごとに名前をつけてもらったんですよ。トラックは1人1台乗っているので、現場に行くと繋がりがないんですよね。だからグループを作ってグループ毎の活動をして組織に属してることを理解するきっかけにしました。グループ活動の日を決めてその日は安全の点検とか、委員会みたいなイメージでそれぞれのグループで目標を決めてやって、お昼はみんなでご飯を食べて会話のきっかけを作る。午後はリクリエーション兼美化活動としてペンキ塗ったりとか、小屋を建てたりすると人間性を見てもらえるのでコミュニケーションツールの1つとして考えています。

コロナで活動ができなくなったので、グループに1冊ノートを渡して交換日記を書いてもらったのと、グループ毎に向日葵を育てるコンテストを行い、優勝チームには賞金を出しました。

――会社としても見栄えがいいですよね。

野坊戸 植物を育てられない人は人を育てられないと思っています。ちなみに2021年はじゃがいもを植えています。会社に戻ってきて、少しでも会社にいて会話のきっかけを作らないと仲間だけど全く会わない人もいるんです。

――社長が就任されて会社がガラッと変わったと思うんですけど、皆さんよく納得されましたね。



野坊戸 2年間はベースを変えなかったんですけど、そこから少しずつ変えながらいかにベストに近づけるかってところです。リーダーには3種類あって、「先頭をきって右向け右な絶対的な人と」、「一歩下がって後ろから全体を見ている人」、「みんなと一緒にやる人」がいるんですけど、私は一緒にやる人でありたいなと。あなたの会社なんだからみんなで決めたほうがいいよねって。

――その変わる過程で、ちょっとついていけないなってやめた人はいないんですか。

野坊戸 いないです。先代の社長とは話したことがないっていう人もいたんですけど、現場に近いようにしたのが大きかったのかもしれないですね。上が言ってることが違って伝わっていたら全く意味がないので、直接言える環境を作っています。そのために、組織も横並びにして、課を作って役割を与え、何をするかは自分たちで決める。社長がルールを作るからみんなは自分たちで考えてプレーして、そういうやり方で組織を作っていってます。

運送屋=輩みたいなイメージあるじゃないですか。なんでトラックはかっこよくないんだろう。そのイメージがついちゃってるから、まずは埼玉県から地域密着型で始めて、そのイメージを変えていきたいです。

トラックの中ってコックピットみたいになってるのですが、みなさん知らないんですよね。それを発信してる会社がないんです。トラックと鉄道と飛行機を比べたら、トラックはなんでかっこ悪いイメージなんだろうなって疑問だったので、ドライバーはかっこいいんだってこと、そこは声を大きくして言いたい。生活のインフラを第一線で支えているのに煙たがられてるっていうのが理解できないから発信しなきゃいけない。少子高齢化が進んだ時に、女性が輝いていたり、子供が父親を見てかっこいいっていうのを作ってあげたいと思っています。

――取り組みで社内の変化はありましたか。

野坊戸 社内の雰囲気は明るくなったと思います。会社を第二のホームと思ってほしい。特に男性は人生の半分以上を仕事に費やしているからワクワク感をもって働いてもらうのが狙いです。

――荷物を運んでお金をもらう、からチームで活動して会社のために何ができるかとか役割ができるわけですよね。

野坊戸 誠輪物流で働いている、すごいねって感覚を作りたい。仕事はあるのに人手が足りないから、かっこいいってことでモチベーションを上げてもらって憧れる職業にしていきたいという想いがあります。今コックピットも西海岸風とかスター・ウォーズ風とかオリジナルティに変えたらどうだろうって考えています。

みんなトラックを1日10台以上は見てるから、記憶に残るものにしたい。手を振ってくれるようになるきっかけがあると思って、それを考えた時に一番に目に入るのがキャビンでした。

トラックドライバーになろうって思っても大型免許を取るまでに10年くらいかかるんですよ。だから若い人がなりたいと思ってもなるまでに時間がかかってしまうんです。

制服も自分で選んでコーディネートできるように準備しています。そうじゃないと飽きちゃうから(笑)。作業着の悪いイメージをオシャレなイメージに変えたいですね。

――年齢層はどれくらいですか。

野坊戸 大体40、50代ですね。高いです。職人さんと同じでベテランのほうが現場のことをわかっている人が多いんですよね。グループ活動をして自分がどこに所属しているかっていう認識を持ってもらって定着率を上げたいし、キャリアアップしたい人はできるから、良い組織づくりができると思います。

男性はラスボス(社長)が私なので大変だと思います(笑)。でも女性の考え方があるってことを知ることができるのは強みだと思います。

――学校については具体的に見えているんですか?

野坊戸 自衛隊の定年退職が54、5歳なので今後もっと働ける人がいる。しかも運送に必要なカリキュラムを全て持っているんですよね。若い人が教習所に通わないのはお金がない、興味がないっていう理由なので、教習所とローンを組んでもらって、教習所代は毎月会社が負担する奨学金みたいな形にして、免許を取りながら、そしてノウハウを教えてもらいながら、卒業と同時にプロドライバーになれる仕組みを作ったら面白いと思っています。

パイロットや鉄道の運転手なんかもそうじゃないですか。でもトラックはないのおかしいですよね。トラックドライバーの学校ってないでしょ。就職先が決まってて、ノウハウを教えてくれたら親御さんも安心できる。そういうのを作りたい。そのために発信をして、ゆくゆくは全国的に学校を作ることが夢なんです。

定年で自衛隊の引退を迎える方は喜んできてくれる。先生として第二の人生を歩める新しい再就職先の1つになればと思ってもらえれば。

――業界的にドライバー不足っていう認識はあるんですか。

野坊戸 あります。どこも足りてなくて協力しあってるんですよ。でも団塊世代の方は昔ながらの考え方があってやろうと思ってもすぐにできないから、うちがモデルケースになって全体のドライバー不足を解消できればいいなと思っています。免許についても助成金が使えるようにしたい。そんな協会を作れたら面白いですよね。

――実際物流って重要なインフラですよね。行政とかの問題ですよね。職親(しょくしん)についてもお聞きしたいです。

野坊戸 仕事の全ての責任は自分が取ろうと思っている。それは代表の仕事だから。面倒を見るだけじゃなくて、全てのことに責任を持ちながら親である以上どんどん次(の社員)を育てないといけない、その責任が私にはあると思っています。この業界はみんな人手不足に困っていて引き抜きなども実際にありますが、それよりも育てたほうがいいと考えて方向転換しているところです。

――営業の引き抜きはよくありますね。業界に限らず営業は他業界からも引き抜かれます。即戦力になりますしね。

――先代が会社を継がせたかったんですよね?

野坊戸 父は私に継がせたかったけど、私は絶対に嫌だった。運送に対していいイメージがなかったので。元々派遣業の代表をやっていたし、会社を継ぐのは順風満帆じゃなかったので。でもそれを乗り越えたから何があっても大丈夫っていう自信に繋がってます。グループ活動もうまくいったけど5年後、10年後はまた状況が変わっていると思うので楽しみにしています。出る杭は打たれるから叩けないくらいまで、走れるところまで走りたい。

――社長にとってドライバーのかっこいい部分ってどこですか。

野坊戸 運転している姿はめちゃめちゃかっこいいですよね。大きいトラックを運転してるってすごいし、災害ボランティアとかなにかあったら第一線で活躍してる。

――事業としてはやっていないんですよね?

野坊戸 ボランティアでやっています。力仕事とかすごく喜ばれますし、荷物を運ぶのもドライバーが一番早い。

ドライブインステージを作ったり、地域の活性化になるイベントを作りたいと考えています。運送会社のできる幅を拡げたいです。イルミネーションとか。「トラックパーク」のテーマパークも構想中です。

――荷物を運ぶ以外の分野に参入したいと?

野坊戸 ドライバーと触れ合うきっかけを作って、ドライバーが増えたらいいですよね。ドライバーの疑似体験ができる機会があったら絶対いいと思う。

――女性のドライバーはいますか。

野坊戸 います。ライオンに乗っています。

――今っぽいですよね。

野坊戸 物流業界のイメージを変えてやっていきたいです。

――先のことになりますけど、自動運転とかそういうことへの考えってありますか。

野坊戸 ITがどれだけ普及しても人が物を運ぶってことは絶対になくならないと思ってて。そこを強みにしたいなと。これから運送会社も生き残りがかかっているから同じことをやっていても生き残れないから運送以外のことに着手すること、定着率を上げること、新人が入ってくる環境を作ることを大事に考えています。リスクヘッジをして倒産ラッシュに備えて勝ち残りたいですね。

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