<ライブレポート>斉藤由貴にしか生み出せない独創性と時代を超えた普遍性を持つ楽曲の魅力を表現した贅沢なステージ

Billboard JAPAN



歌手デビュー35周年を迎え、今年2月にセルフカバーアルバム『水響曲』をリリースした斉藤由貴が3月28日(日)、ビルボードライブ横浜で「斉藤由貴 Billboard Live Tour "水響曲" featuring 武部聡志」の横浜公演を開催した。

『水響曲』のリリースを記念したこの公演には、アルバムのプロデュースを手がけた武部聡志が参加。ピアノ、弦カルテットによるシックな演奏とともに、「卒業」「青空のかけら」「悲しみよこんにちは」などの代表曲を披露した。

武部が奏でるクラシカルな旋律、心地よいストリングスの調べとともに、紺色のワンピースに身を包んだ斉藤由貴がステージに登場。軽やかなイントロ、そして、<ごめんね今までだまってて本当は彼がいたことを>というフレーズが聴こえてきた瞬間、会場全体が彼女の色に染め上げられる。最初の楽曲は「AXIA~かなしいことり~」。ステージの上をゆっくりと歩き、一つ一つのフレーズを手渡すように歌う。最後のサビでは、客席に背を向けて歌い、振り向きざまに視線を送る“演出”も。まるで演劇を見ているようなパフォーマンスに思わず引き込まれる。

「斉藤由貴 Billboard Live Tour "水響曲" featuring 武部聡志“さん”にお越し下り、ありがとうございます」「横浜は地元なものですから、リラックスした気分と、前回の3月6日のビルボード大阪のライブからだいぶ間があいてしまったので、正直いうと緊張しております」「35周年ということで、『水響曲』というアルバムを出しました。今回は『水響曲』のアレンジでお届けします」というMCに続いて、「初戀」「情熱」とデビュー年(85年)のヒット曲を披露。どちらも作詞を松本隆、作曲を筒美京平が手がけた楽曲だが、ピアノ、弦楽器、歌による洗練されたアレンジにより、原曲の奥深さをたっぷりと堪能できた。初めて本当に人を好きになった瞬間を鮮やかに描いた「初戀」、そして、決して好きになってはいけない人への気持ちを綴った「情熱」。リリースから35周年経ってもまったく色褪せることのない名曲を、豊かな表現力――瑞々しさと包容力を同時に感じさせるようなーーをたたえたボーカルによって味わえる、まさに至福の時間がそこにあった。

ライブ中盤では、斎藤、武部によるトークも。武部はデビュー曲「卒業」から11作目のシングル「ORACION--」までの編曲を担当した、いわば“歌手・斉藤由貴”の生みの親。
武部「『初戀』『情熱』は“松本隆、筒美京平”による作品。楽曲のクオリティ、詞の世界観もそうだけど、10代のアイドルに書いた曲とは思えないよね」
斉藤「特に『情熱』はそうですよね。実は『情熱』は、私の最初の映画の『雪の断章―情熱―』の主題歌として作られたんです」
武部「そうか。あの時代、80年代中盤のアイドルはすごい忙しかったよね」
斉藤「それを言ったら、いまの武部さんの忙しさも尋常じゃないですよ。武部さん、昨日まで苗場にいたんですよ。苗場、横浜、終わったらまた苗場って、大丈夫ですか?(笑)」
という気の置けない会話からは、二人の深い絆が伝わってきた。

武部がインスト曲を披露し(この日は映画「コクリコ坂から」より「夜明け」を演奏)、白いドレスに着替えた斉藤が再びステージに登場、ここからライブは後半へ。重厚なストリングスに導かれ、<私悲しい女の子ですか>というフレーズが真っ直ぐに伝わってきた「白い炎」(ドラマ「スケバン刑事」主題歌)、華やかなピアノ、伸びやかなメロディが共鳴した「青空のかけら」、そして、観客の手拍子とともに、切なさと愛らしさを込めた歌詞が響き渡った「悲しみよこんにちは」。中心にあるのはもちろん、斉藤由貴の歌だ。楽曲に込められた情景、物語を生き生きと描き出す彼女の歌は、まさに絶品。デビューから35年が経った現在もなお、歌手・斉藤由貴の世界はさらに広がり続けているーーそのことをはっきりと実感することができた。

本編最後は「卒業」。「とても引っ込み思案で、人付き合いの下手な女の子が、なぜか歌を歌ったり、お芝居をする世界に飛び込むことになって。ちょうど高校を卒業する直前でした」と卒業式当日のエピソードを語り、「この一瞬を死ぬまで忘れないと思うこと。そんなことを積み重ねながら、いま此処まで来ています」という言葉とともに歌われた「卒業」には、彼女自身の強い思いが刻まれていた。

アンコールで「MAY」を歌い、ライブは終了。この日のライブのなかで彼女は、「私はアイドル歌手出身ですけど、既定路線ではなく、“この子が歌って、素敵になる曲”をピュアに作っていただいた感覚があります」と語った。彼女にしか生み出せない圧倒的な独創性、そして、時代を超えた普遍性を兼ね備えた楽曲の魅力をゆったりと堪能できる、豊かで贅沢なステージだった。

Text by 森朋之
Photo by Masanori Naruse

◎公演情報
【斉藤由貴
~Billboard Live Tour "水響曲" featuring 武部聡志~】

ビルボードライブ大阪
2021年3月6日(土)※終了

ビルボードライブ横浜
2021年3月28日(日)※終了

ビルボードライブ東京
2021年4月2日(金)※終了

【<追加公演>斉藤由貴
~Billboard Live Tour "水響曲" featuring 武部聡志~】
2021年4月25日(日)
1stステージ 開場14:00 開演15:00
2ndステージ 開場17:00 開演18:00

http://www.billboard-live.com/

当記事はBillboard JAPANの提供記事です。

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