昔は経営者もヤクザもSクラス! ベンツのフラッグシップの今

日刊SPA!

―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―

◆究極のセダン! 不動の王者! ベンツSクラスが、フルモデルチェンジ

クルマを運転していて、後ろからが迫ってきたら道を譲って先に行ってもらい、前にいたらいつも以上に車間距離をとる……。そんなただならぬ気配を感じるクルマがベンツSクラスなんですが、究極のセダンも世界的なSUVブームに押され気味。セダン最後の砦としてSクラスには、ずっと不動の王者であり続けることを期待しています!

永福ランプ(清水草一)=文 Text by Shimizu Souichi

池之平昌信(流し撮り職人)=写真 Photographs by Ikenohira Masanobu

◆昔はベンツと言えばこれだった!

ド庶民のみなさんこんにちは。あなたは「ベンツ」と聞いて、どんな形のクルマを思い浮かべますか? たぶん、次の3つのうちのどれかではないかと思います。

「おっきくて怖い4ドアセダン」

「真四角なジープみたいなヤツ」

「でっかくてオラオラなSUV」

昔は、ベンツと言えば誰もが「おっきくて怖い4ドアセダン」、つまりSクラスを連想したものです。その威圧感はすさまじく、「Sクラスでうっかり追突したら、当てられたほうが『スイマセン!』って謝って逃げた」という実話もありました。

◆経営者もヤクザもSクラス

また、経営者もヤクザもエラくなると、ほぼ全員がSクラスに乗ったので、本当に世の中わかりやすかったです。

その後、多くの芸能人が「真四角なジープみたいなヤツ」=Gクラスに乗り換え、現在は「でっかくてオラオラなSUV」=GL系が激しくシェアを伸ばしています。日本の政財界では、トヨタの最高級オラオラミニバン・アルファードへの乗り換えが進んでいるため、以前に比べると、Sクラスの存在感は大幅に低下しました。

◆オラオラの頂点 Sクラス

しかし、カーマニアは保守的なので、オラオラの頂点と言えば、やっぱりSクラスという頭があります。Sクラスはメルセデス・ベンツブランドの頂点であり、「最善か無か」というメルセデスの哲学をもっとも強く体現するモデル。それは単に威圧的というだけでなく、世界一安全かつ快適でしかも速く、最先端のエコ技術も積極的に取り入れる不動の王者だったのです。

たとえば8年前に登場した先代Sクラスの「マジックボディコントロール」は、カメラで15m先の路面の凹凸を検知し、それをサスペンションが待ち構えて吸収するため、文字通り魔法のじゅうたんのようなフラットな乗り心地を実現していました。

◆ディーゼルハイブリッドはウルトラ静かで十分速い

一方では「S300h」というディーゼルハイブリッドモデルもありました。高速巡行なら軽くリッター20㎞以上走って、ウルトラ静かで十分速い。私は「いつかコレをド中古で買ってオラオラと節約を両立させたる!」と誓いました。

その後ディーゼルエンジンは3リッター直6に変更されましたが、これがまたガソリンエンジンよりも滑らかで力強く、「究極の内燃機関だ!」とすら思ったものです。

◆フルモデルチェンジしたが…

そのSクラスがフルモデルチェンジしたと聞けば、カーマニアとしては、「今度はどんな究極を見せてくれるのか?」と期待が高まるというものです。試乗したのは、先代から引き継がれた3リッター直6ディーゼルモデル「S400d」です。

あ、あり?

乗り心地は特によくなってないし、とろけるように回ったディーゼルエンジンも、排ガス対策を強化したのか、いまひとつパッとしない。見た目も微妙に王者の風格が足りないような気がする……。

スイッチ類は大幅に減って、流行りの大型タッチパネルディスプレイや、音声で操作する形になったけど、これがもう何がなんだかわかんない! ハイテクすぎてARナビは起動できず、ドライバーの生体認証にも失敗。オッサンが使いこなすには合宿訓練が必要だ。

◆ラブホ的オシャレ間接照明の進化

一番ステキだったのは、「アンビエントコントローラー」、つまり室内のラブホ的オシャレ間接照明の進化でしょうか。以前から紫やピンクなどあらゆる色に変えられたけど、新型はさらに凄まじい七色変化。危険な状況になると赤く点滅したりもするらしい。ヘッドライトにも青いLEDがたくさん埋め込まれたし、テールランプのクリスタルも凝っている。新型Sクラス最大のウリは光モノかな?

乗り味の進化はもうムリだしムダ! ってことで、ハイテク系や見た目のキラキラ感に軸足を移し、ユーザーの若返りを図ったのでしょうか。間もなくEVのSクラスたる「EQS」も発表されるので、いずれベンツのフラッグシップはそっちに移るのかも。なぜか無念。

◆【結論!】

クラウンまでもが、次期型はSUV化されそうな今日。セダンが元気なのは世界中でドイツ車だけ! だったんだけど、やっぱり時代の波には逆らえないのか。Sクラスが主役の座から降りる日も近いのかもしれません。

―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―

【清水草一】

1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中。清水草一.com

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

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