皆川猿時、荒川良々、細川徹に聞く、最新作の“学園モノ”『3年B組皆川先生~2.5時幻目』の笑いとは?

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個性を誇る大人計画の役者陣の中でも、ひときわ強烈に輝く唯一無二のキャラクターの二人、皆川猿時荒川良々。彼らと、作・演出の細川徹が組み、徹底して笑いを追求する新作舞台が三年ぶりに登場! この顔合わせで2016年、2018年に上演された『あぶない刑事にヨロシク』シリーズはタイトル通り“刑事モノ”だったわけだが、今回はなんと“学園モノ”に挑戦するという。新作『3年B組皆川先生~2.5時幻目~』は、果たしてどんな笑いに満ちた舞台になりそうなのか、三人に語ってもらった。

――皆川さんと荒川さんの顔合わせを細川さんの作・演出でということでは、前作『さらば!あぶない刑事にヨロシク』(2018年)に引き続き、になりますが。今回は毛色を変えて“学園モノ”に挑戦しようと思われた経緯とは。

細川:“あぶデカ”は二本やればもう充分だろう、ということでね(笑)。ただ、劇団という形ではないのですがもう一度前回と同じメンツで、違うことをやってみたいなあと思ったんです。それぞれの、違う魅力が出せたら楽しいだろうから。だけど、こうして改めてチラシのビジュアル写真を見たら、もっと違う人を入れても良かったな、まるで前回と同じ人しか出ていないなと思いました。

荒川:でも、このビジュアル写真、本田兄妹のお兄ちゃん(本田ひでゆき)だけが急にイメージが変わっちゃってますよね。違う人が出ているような感じがする。

細川:ヒゲがついてるから。「今、ヒゲがあるんですけど、どうしますか」って事前に連絡はもらったんですけどね。

皆川:なんで、ヒゲがあるんですか。

細川:なんなんですかね、なにかのキャラ作りなのかな。

細川徹
細川徹

――制作スタッフの方によると「何かの作品でヒゲを伸ばさなければいけなかったんだけれど、そのあと剃る理由がなかったのでそのままになっている」とのことですが。

細川:うーん、だけど本番で剃るとしても一回しか剃れないですもんね。ちょっと迷ってるんです、ヒゲは邪魔だなと思うんですよ。前作でもそうだったんですけど、早出(明弘)くんとかお兄ちゃんには劇中でいろいろな役をやってもらっているんで、脚本を書いている時にも、そういえばお兄ちゃんにはヒゲがあるんだっけ、と思ったりして。

――なるほど、ヒゲがあると女性の役とかが。

細川:難しいですよね。学生役でも不良か?ってことになっちゃう。そもそも今回“学園モノ”でというのは、大人計画の社長の長坂さんの提案なんです。前回の時も「皆川くんと荒川くんで『あぶない刑事』をやらない?」って話からのスタートでしたし。それで今回も「次は学園モノ、どう?」って言われたわけなんですが。でも学園モノってなんだかすごく大変そうじゃないですか。自分ひとりで考えていたら絶対やらなかったでしょうね。

皆川:イヤイヤなんですか?(笑)

細川:いえ、新鮮だなあと思っているんですよ。

荒川:ま、言われたからやろうかってことでしょ。

細川:言われたことを楽しむためには、どうすればいいんだろうと考えていく感じですかね。

皆川:えらいと思う(笑)。

――皆川さん、荒川さんはこの座組で舞台をやる面白さについて、どういう思いがありますか。

荒川:またやるんだな~って思いました。僕は、イヤイヤやっているわけじゃないです(笑)。

皆川:またやれるということは、評判がいいってことでしょ?

細川:だと思います。あんまり他にないタイプのお芝居ですし。とはいえ、たとえば何かの賞をあげようとかそういうことにはならないんですよ(笑)。ただ、観ているその時間だけは楽しいけれども。

荒川:確かに、そうですね。観終わって何か心に残るとかそういうことはない(笑)。
荒川良々
荒川良々

細川:心には何も残らないですから。出演者のみなさんはそれぞれ、ちゃんとした芝居をやられている技術と能力がある方々ばかりなんですけどね。そのみなさんの能力を必要としないようなことを、あえてやってもらっています。だけどそれも、技術があるからこそできることなんですけど。

――物語としては、どういうものになりそうですか。

細川:あらすじがあるにはあるんですが(あらすじ:元2・5次元俳優の夢破れて、今、焼き鳥屋の皆川が返すあてのない借金を稼ぐために夢の山学園3年B組の担任になる。しかし、3年B組の生徒は、学級委員の荒川を始め、問題児ばかり…)、だいたいいつも台本を書いたら稽古場で読んでもらって、そこから変えていくんです。だから今回も、このあらすじがどんどん変わっていくんだろうなと思っています。僕としては、とにかくどうでもいいことをなるべくやりたくて。ただ面白いかどうかということだけにこだわって作っていくので、稽古でも雑談をしたり、みんなからアイデアをもらったりして、いろいろと足しながら作っていく感じです。

――今回のチラシのビジュアルのテーマは。

細川:これは“2.5時幻目”ということで、いわゆる2.5次元の芝居っぽいイメージです。この人たちがふだんあまりやらない方向性を、と思って。とりあえず2.5の芝居をやってみようかと。

荒川:劇中で、2.5次元風の芝居をやるんですよね。

細川:そう、劇中のどこかで。その部分だけ面白ければなんとかなるなってことですよ(笑)。それで2.5っぽいチラシにしようと思ったんです。



皆川:細川さんはちゃんと観劇したことあるんですか、2.5次元。

細川:ないんですよ。

荒川:刀のやつとかも?

細川:刀のやつも観ていないです。ああ、でもそういえば『弱虫ペダル』は観ました。

皆川:あ、そう。

荒川:でもそれ(観劇)って結構、前の話じゃない。

細川:ただ、雰囲気でなんとなく作ろうと思っています(笑)。僕が楽しんでることが伝われば、楽しく見えるんじゃないかと思うので。

荒川:僕も、観たことはないですね。

皆川:このチラシもね、なんか2.5次元の作品のチラシを参考にしながら撮影させていただきました。どんな作品だったか忘れちゃいましたけど。

――お手本があったんですね。

皆川:「顔の角度が違いますよ、これですから」って(笑)。なんだろう。なんとも言えない気持ちになりました。

細川:おかげで、“っぽく”、できましたよね(笑)。

――お二人は学園モノということに関しては。

荒川:僕は『3年B組金八先生』しか思い浮かばないですね。あとはドリフのコントで教室が舞台になっていたことがあったな、とか。あとは『はいすくーる落書』を思い出したくらい。

細川:相当、昔で止まってますね(笑)。

皆川:あれ? 『おじいさん先生』は?

荒川:あっ、そうだった、『おじいさん先生』に僕、生徒役で出てました、すいません(笑)。

皆川:『おじいさん先生』は細川さんの脚本でしたからね。とても面白かったから、今回もまた細川さんなら面白いものにしてくれるだろうなって単純に思いました。
皆川猿時
皆川猿時

荒川:そうですね。だけど、この時期に客いじりとか、少しくらいなら大丈夫ですかね。

細川:なかなか、そこは難しいよなと思ってはいるんですけど。そこを、なんとかする方法を考えないと……って、なぜそこまで大事にしようとしているのか自分でもわからないけど(笑)。

荒川:だって「お客さんはみんな俺たちの生徒だ!」みたいな感じじゃないですか。

細川:そういうやつはやりたい(笑)。

――そういうアイデアも、稽古で少しずつ考えていく感じでしょうか。

細川:どこまでならドキッとしないかというラインを探っていくことになりそうですね。前作は三年前か。あれから、ずいぶん世間の厳しさの程度が変わってきているから。ビンタをするにしても、愛のあるビンタならいいのかなとか。

皆川:愛あるビンタなら大丈夫なんだ(笑)。まあ、でもなんかね、ここでやらないってのも……。

細川:違う気がするから、なるべくやるってことで。ただ嫌な気持ちにはさせないようにして。あと毎回あるのがキスシーン、まあこれは本当は入れなくても別にいいんだろうけど(笑)。どうしたらやれるかなっていうことは一応考えます。

――とりあえずは、やる方向で(笑)。

細川:サランラップがあれば大丈夫かな、とか。ただ、そこまでしてやりたいのか?っていう(笑)。

皆川:ハハハ、確かに。

細川:だから前回とは、いろいろと作り方は変わる気がしています。あまり無邪気に作れないわけだけど、なるべく無邪気に作りたいです。

左から 荒川良々、皆川猿時、細川徹
左から 荒川良々、皆川猿時、細川徹

――今回、清宮レイさんをキャスティングした狙いとは。

細川:お馴染みのメンツだけでは、学生らしい人がいないので。ひとり強烈に学生らしい人を入れようということで、だったら優等生っぽい子がいいなと思ったんです。清宮さんは、卒業式に生徒代表で挨拶したりした経験がある人なんですって。

荒川:ほう。

皆川:あら。

細川:それも、英語で。

荒川:ええー。劇中で、とかじゃなくて実際に?

皆川:それは、すごいなあ。

細川:他のみなさんは、きっとそんな経験ない人ばかりでしょうし(笑)。ただバランスがちょっとね、あまりにもおじさんとおばさんだけだから。

荒川:上川(周作)がちょっと若いけど、あとは。

細川:若いって言っても、他と比べて若いだけだからなあ。彼女にとってこういうタイプの芝居は、今後やれる機会もそうそうないでしょうし、いい経験にはなりますよ、絶対。でも、やっぱりご両親とも相談したんですかね。前回の舞台を確認しながら家族会議で。

荒川:ああ、資料映像とかで観て?

細川:「こんなビンタはレイにはやらないだろう?」とか。

皆川:「でも、愛のあるビンタなら大丈夫だろう?」とか(笑)。

細川:何がNGかは、今は特に言われていないですけど。常識の範疇でやらないだろうと思われているかもしれない。まあ実際、常識の範疇で考えますけどね。どこまでやれるかは、稽古をしながら相談しますよ。
細川徹
細川徹

荒川:だけどやっぱり、稽古場はかなり明るくなるんじゃないですか。やっぱり池津(祥子)さんひとりだけではね(笑)。いや、もちろんそれでもいいんだけど。

皆川:池津さんはもうね、同志っていうか、なんだろう、いい意味でおじさんと一緒みたいなもんだから(笑)。

荒川:そうだね、大きく分ければその部類に入ってますよ。

細川:大きく分けたらそっちなんだ(笑)。とにかく学園ドラマの雰囲気を出せるのは、清宮さんしかいないんで。負担は大きいかもしれません。「ナントカ先生!」ってセリフで言ってもらって、ようやく学園ドラマに見えてくるんだから。清宮さんだけがドラマの空気を作れるわけなので、僕としてはそこに大きく期待しています。

――お二人は生徒役も先生役も両方演じることになるんでしょうか。

細川:いや、たぶん皆川さんと荒川くんは一役だけです。やっぱり大変なので、何役も頼めないです(笑)。だって組んで舞台をやるたびに毎回、皆川さんは熱を出したり、何かが起きるもんで。前回は肉離れでしたね。

皆川:そうなんですよ。

荒川:しかも別に演出で走れとか言われていないのに、ひとりで走るから。

皆川:でもさあ、なんだろう、そうやってどこかに負荷をかけないと、成立できないんじゃないかって思っちゃうわけ。だってさあ、あまりにもバカすぎるでしょ、細川さんのって(笑)。だから誰にも何も言われていないのにすげー走っちゃったりするんです。

荒川:つい、がんばっちゃったんですね、机の周りをグルグル走り回ったりして。

皆川:それで肉離れしちゃった。そういうの、もうやめようと思って。50歳になったから。

荒川:でも稽古が始まるとやっちゃうんでしょ。

皆川:ダメなんだよねえ。

荒川:頭では若いと思っていても、もう身体のほうがね。子供の運動会でリレーに出るお父さんと一緒ですよ。走れると思ってたのに、思い切り見事なコケ方をする時ってあるじゃないですか。

皆川:だから今回は、あまりがんばり過ぎないようにしたいなと思っています(笑)。
皆川猿時
皆川猿時

細川:まあ、他ではやらない感じのこと、普通の人間はやらないだろうってことばかりだから、ちょっと気持ちをアゲておかないとやれないんでしょう。

荒川:いやあ、でも久しぶりに細川さんの芝居に出ることは、改めて楽しみですよ。

皆川:やっぱり、お客さんの盛り上がり方が全然違いますしね。あれは細川さんの作品じゃないと経験できないから。ほんと、お客さんがいないと成立しない芝居なんですよ。

荒川:そうそう、稽古場で通し稽古をやっても、どうしても虚無感みたいなものが。

細川:笑い声がないから。

荒川:これ何やってるんだろう、これでいいのかなって。

皆川:そうそう、怖いんだよね。

細川:お客さんの前でやらないと、いろいろわからないですよね。

皆川:そうなんです。で、うれしいことにお客さんがよく笑ってくれるんです。すごいなあと思って。

細川:完全に、お客さんを笑わせる目的だけで作っているから。それ以外の野心とかはまるでないんで。

荒川:お客さんの心に残そうとか、まったく思ってないですから(笑)。

――コロナ禍だから、今こそあえてさらにバカバカしくやろうってこともあるんでしょうか。

細川:それはちょっとあるかもしれません。だってこの1年間ずっと、窮屈な気持ちだったから。窮屈じゃない作品がいいなというのはあります。なるべく制限を感じない、スカッと笑えるものにしたい。難しいですけどね。

皆川:笑いは、特に難しいですよね。

細川:でも笑いが起きると、その分ものすごく沁みるんですよ。今回はきっと、そういうものにはなる気がします。

――お客さんが笑いをこらえるのが苦しいくらいのものに。

細川:できれば、こらえる間さえ与えないでパーンと笑わせてしまいたいですね。我慢できるやつじゃなくて、我慢できないやつでいきたい。だってもうずっと、我慢ばかりして生活していますから。マスクしているんだし、笑うくらいはいいでしょう。

――お客さんもみんな、笑いたいと思っているはずですよね。ところで、お二人はそうやって細川さんが作り出す笑いの、どういうところがお好きなんですか。

皆川:今言ったみたいに、もう笑うしかないみたいな感じになっちゃうところですかね。その場で起きている現象をただ笑うしかないみたいな。

荒川:頭であまり考えさせずに、見た目とか、そうやってパーンと入ってくる笑いなんですよ。そうか、これはあの伏線を回収しているんだな、みたいなのではなくて。単なる面白い動きとか、一生懸命やっていることの滑稽さとかが、たぶん一番面白いんだと思います。ですからお客さんは何も考えず、ただただ笑ってください(笑)。

荒川良々
荒川良々

細川:とにかくテレビで見られないことを確実にやっているということと、やっぱり舞台で、劇場でみんな一緒に笑うという気持ち良さをみなさん忘れていらっしゃるかもしれないですけど、もう最高に心地いいことなので。ぜひ本多劇場にいらして体験してください。

皆川:今回、実は清宮さんが出ることで息子と娘の同級生たちも観に来たがっているんですよ。そう考えると、若い年代のお客さんが増えるかもしれないよね。

細川:ああ、それはいいですねえ。

皆川:最近はだんだん、お客さんの年齢層も上がって来ちゃいまして。一緒に年を重ねてるっていうか(笑)。もちろん、ありがたいんですけど、若い人たちにも刺激を与えたいという気持ちもありまして、そんなわけで、今回ちょっと若いお客さんが増えたら面白いことになるぞって思っているんです。

荒川:僕ら、清宮さんのファンに怒られないかな(笑)。

細川:「うちの推しに、何やってくれてんの」って? いや、たぶん大丈夫です、清宮さんファンは、みなさん、優しく見てくれると思います(笑)。

荒川:そうですよね。僕もぜひ、若い人たちに観てもらいたいです。こんなおじさんたちが、みんなして何の意味もないことをここまで一生懸命やってるんだってところを見てほしい。

細川:演劇ってきっとマイナーで難しいものなんだろうと思い込んでいる人も、まだまだいっぱいいるでしょうから。「こういう演劇もあるんだ!」と、ぜひともこの機会に観て、知ってもらいたいです。
左から 荒川良々、皆川猿時、細川徹
左から 荒川良々、皆川猿時、細川徹

取材・文=田中里津子 撮影=ジョニー寺坂

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