AIに仕事を奪われる日は思った以上に近い。5Gで消える仕事とかあるの?

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Graphic: Elena Scotti, Photo: AP, Getty Images

5Gが広まる今。

車の遠隔操作、道路のIoT、AR試着ルームみたいな未来的な話より気になるのは、この目の前の仕事が残るかどうかではないでしょうかっ! 資料探しても見つかりづらいので、少し気合い入れて調べてみました。

倉庫&スーパーのピッキングロボの場合


テキサス寒波のとき「カーブサイドピックアップ」(ネットで頼んだ商品を店員さんがあらかじめ袋に詰めておき、客が店頭で引き取るサービス)で、店員さんが昼も夜もなく働いて感謝が雨あられだった人気スーパーH-E-Bにも自動化の波は押し寄せています。こないだスイスのSwisslogと提携が発表になって、ここが開発するAutoStoreというピッキングロボ(下)を袋詰め作業を行なうミニフルフィルメントセンター(MFC)で導入することが決まったのです。
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毎時1,000個の勢いで物を拾うSwisslog ItemPiQ。ブラックフライデーなんかのピークのお助けロボ
Photo: Swisslog

ロボといってもアームだけなので、人が動かすフォークリフトよりずっと省スペースなのがメリットです。注文の品物を拾って届けてくれるので、人間は箱や袋に詰めるだけ。ロボットは「病欠もありません」(PR動画。とほほ...)。

アスクルが人材不足解消のため、2016年に世界に先駆けて導入したピッキングロボットとそっくりですが、Swisslog営業コンサルティング部門VPのColman Rocheさん曰く、海外でもリーマンショック後は失業者が集まって採用がラクだったけど、景気が回復すると人手不足に逆戻り。こうしたアップダウンは大手チェーンと競合関係にある地方の中小スーパーも経験済みでありまして、コロナではもっと急激な変化を見越して、最初から人をワッと雇うよりロボットで急場をしのぐことを考える企業が増えてきたのだそうな。

こういうのが増えると能率が良くなって自由時間が増える半面、良くなりすぎて仕事にあぶれる不安がありますよね。

5Gでその辺りどうなるのか? どの仕事が残ってどの仕事が消えるのか?を聞いてみたら、回答は思った以上に複雑でした。今の倉庫管理システムはバーコードリーダーなんかを人が操作する前提でつくられているので、自己完結型の機械とはうまく連動しなくて、それをうまくやるにはもっと高速かつ高密度な情報転送が必要。ただ、倉庫管理システムはネットワーク上の情報転送と情報転送の間に長いアイドリング期間がある前提でてきているので、自動化すると情報転送が頻繁になって、人力想定のシステムでは情報ロスが起こりやすく、データパケットの衝突や着信エラーになってしまうとのこと。

この問題があるので、自動化は別のネットワークで進める格好になるし、それなら余計なトラフィックも入ってこなくて機械同士が自由に通信でき、コマンドがシーケンス抜きで届いたり未達に終わるリスクは減るんだそうな。5Gがこうした両タイプのトラフィックを同時に処理できるかは不明だし、仮にできたとして、それが自動化拡張につながるかは、まだなんとも言えないってな回答でした(ぜいぜい)。

自動化拡張をためらう倉庫があるのは導入事例のデータがないからなので、逆に普及が進んでデータが揃えばみんなワッと飛びつくことも考えられますよね(この種の通信は「マシーンタイプコミュニケーション(Machine-Type Communication)」と呼ばれ、5G国際標準を策定する第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)が掲げる5Gの3つの主な活用シーンにも入っていますが、その有効性実証の研究報告はやっと出回ってきた段階です)。

Amazonは倉庫を100%自動化するする言ってますが、専門家の見立てではまだ10年はかかりそうです。いずれにしても、5Gが倉庫の自動化の切り札になるとは限らないって理解でよさそうですね。

店員さんはどうなるの?


小売に目を転じると、高速・大容量・低遅延の5Gで躍進が期待できるのは、やっぱりAR試着ルームですよね。店員さんもカスタマーが好きそうなコーデやメイクをすぐ探せるし、返品アイテムを棚に戻す手間とかも減ることが期待されます。ただ、面倒な雑用が減るとともに、人とのふれあいまで減るのには一抹の寂しさも…。

8Kでラグのないストリーミングが普及すれば、遠隔から画面越しに対応するリモワが店頭にくるのは時間の問題です。ワイヤレスWANソリューションのCradlepoint社の人がDiginomicaのインタビューで語っていたのは、「その道のエキスパート」がコールセンターに集まって複数店舗かけもちで契約スタッフとして接客する未来で、店内各所にカメラ付きキオスクがあって、何か質問があればそこから受けてアドバイスするというものでした。これならエキスパート不在の地域でも人探しに苦労しなくて済みます。コストダウンになって、技術導入で競合ストアに差をつけることも可能だとインタビュー記事ではまとめていましたよ。

いかにも役員会ウケしそうなまとめ方だけど、店員さんにしてみればフロア勤務のささやかな楽しみが消えちゃいますよね…。適度に体を動かしたり、空いた時間に自分の用事を足したり、割と自由にできる職場の雰囲気が救いなのに、それさえも奪われて、席にずっと座りっぱなしでお客様に怒鳴られて、通話データを監視されて、少しでもヘマして成績が落ちるとクビになる不安との戦い。ああ…。

仕事が消えるX年


…とダラダラダラダラAIに負けないように、ひぃひぃ言いながら人力翻訳してたら、ギズの編集部屋で作曲AIアプリ「FIMMIGRM」が話題に。なんでもヒットソングの傾向を学んで8小節のオリジナルソングを自動生成してくれるアプリらしくて、著作権気にせず音源に使えるのはありがたいですよね。

すげーと思ったついでに思い出したのが、この無駄に時間ばかりかかってちっとも終わらない原稿のリンク先で読んで瞠目した2018年の未来予想のことです。オックスフォード、イエールなんかの研究者が機械学習のエキスパートに聞きまくってまとめた予想なんですが、AIが人間の職業能力を追い越すのは「翻訳2024年、高校レベルの論文2026年、トラック運転手2027年、店員2031年、ベストセラー本2049年、外科医2053年」ってあるんですよおおおお! まあ、翻訳はすでに追いつかれてる感ありますし、ヒット曲もすでに全部似た感じなのでゼッタイAI使ってるでしょって思うことある。でもでもベストセラー本まで寿命28年というのは衝撃ですわ。そこまで奪われたら人間何して生きりゃいいの? 「今年のノーベル文学賞はAIムラカミハルコ」とかなるの? え?

トラックの運転は消える?残る?どっち?


…はっ、すみません。ったく人間はこうやって気が散るからAIに負けるんですよね。くっそー。こんな原稿、機械翻訳にかければ5秒で終わるのに、下手に対抗心燃やしたばかりにいつまでも終われないじゃないか。どうしてくれる。さ、気を取り直して残りを訳しますよ~ええ、やりますとも。

未来予想のなかには、トラックの運送業そのものがリモワモデルになるというのもあるようです。そのモデルでは、トラックは走りっぱなしで、運転手さんがオフィスに出勤してシフトを交代しながら遠隔で操縦(運転)するのです。トラック転がしながら、夜は帰宅して家族と晩ご飯もできます。リモワの店員さんと同様、こちらも8K動画ストリーミングでトラックと運転手さんを結ぶ遅延ゼロ近い高速大容量通信の成せる業。

大型トレーラーから直接ドローンで荷物を届けちゃえば、倉庫の積み替え作業も必要なくなるという大胆予想もあります。こちらはクーラーボックスに車輪がついた地上版の出前ロボが、すでにサンフランシスコのStarship TechnologiesやバークレイのKiwi Campus(下)が実用化しているので、ない話でもなさそう。



こうした変化の多くはサブ6ではなくミリ波の5Gで実現できること。ミリ波5Gは遅延ゼロに近くて、爆速なのが利点ですが、基地局が密に必要なので普及は都市にどうしても偏ります。米国みたいに田舎が広い国はカバレッジの確保が課題ですし、波長が短くてビルを透過できないのも課題ですけどね。

もっと現実的で早期実現が予想される変化もあります。IoTセンサーによるエンジン不良検出、タイヤ圧と車両接近の監視、交通状況や迂回ルート案内、今のスマホのGPSより詳細なマッピングなどがそれ。運転の能率が上がって、事故やリスクを予見できるので安全性も高まりますね!


いろんな調査や企業の5GのPR資料を見てくると、昔から語られているシンギュラリティ(技術的特異点。テクノロジーの進化によって人工知能が人間の知能を超えること)の未来論と重なる部分が多いですよね。「飛ぶ矢は止まってる」のゼノンのパラドックスじゃないけど、時間が進んでも進んでも永久に到達しない未来みたいに感じてしまいます。実現するかどうかは通信会社、政府(地方/国)、5Gを使う企業次第です。「5G go slow cycle」と言われるように、ある日あるときを境に鶴のひと声で5Gに変わるのとは違って、5Gはだれのものでもなくて、使う人まかせ。普及には時間がかかるのですねーはいー。

労組幹部に意見を聞いてみた


そんなわけで、働く人にどんな影響があるかについてもまだはっきりとはわかりません。企業が働く人の声に耳を傾けて守ってくれるかどうか、政府がテクノロジーの規制に動くかどうかで決まりそうです。

参考までに、アメリカ労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)のChristian Sweeney副事務局長、AFL-CIO付属Technology InstituteのAmanda Ballantyneディレクターからいただいたメールの回答を以下にはっておきますね。

「技術改革が万人の利益になるとは思いますが、そのためにはまず働く人たちの利益を考えないと。

労働の質が変わるのか? 答えはYES。

それで暗い未来になるのか? 働く人に居場所が用意されていれば一巻の終わりになるとは言い切れません」

職が消える人たちを応援するのが組合の役目ですもんね。

「みんなで束になって交渉すれば物事は動きますし、働く人たちも解雇の事前通知や職業訓練の機会を交渉できます。技術導入についても意見を聞き入れてもらうことができます」

「公共政策にも、職業訓練の機会や、消える職種に代わるいい仕事を創出する戦略を織り込んでいかないと」

バイデンは組合に一定の理解を示している


アメリカは民主も共和も組合潰し40年の歴史を持つ国ですが、バイデン政権になってから少し雲行きが変わっています。アマゾンが労組結成を全力で妨害すると大統領からけん制が飛んできたし、労働者が組合を作る権利を守る法案(PRO: Protecting the Right to Organize Act of 2021)の下院通過をサイトで呼びかけてもいます(賛成225、反対206で下院は通過した)。この法案は企業による組合妨害行為を骨抜きにして、労働権を労働者の手に取り戻す法案。労使交渉でこうした変化に企業が呼応していけば、5Gの最悪のシナリオは回避できそうです。

まあ、人は食うに困れば盗みだってなんだって働くので治安が心配ですよね。現にシリコンバレーではホームレスが路上に溢れ返って、ビリオネア、ミリオネアもおちおち眠れない状況です。人間、寝るとこと食べるものがあればなんとかなるんだし、AIに仕事奪われても富の分配さえなんとかすれば、なんとかなるんじゃないかなあ…。

当記事はギズモード・ジャパンの提供記事です。

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