借金500万円男に裁判所からの「本気の手紙」。泥沼の借金バトルは“事件”に

日刊SPA!

―[負け犬の遠吠え]―

ギャンブル狂で無職。なのに、借金総額は500万円以上。

それでも働きたくない。働かずに得たカネで、借金を全部返したい……。

「マニラのカジノで破滅」したnoteが人気を博したTwitter上の有名人「犬」が、夢が終わった後も続いてしまう人生のなかで、力なく吠え続ける当連載は43回。

今回は、本気で催促されたお話です。

=====

◆ポストを見なければいい

並大抵の消費者金融やカードローン、年金や国民健康保険から目を逸らすには、ポストを見なければいい。多重債務者は過去と向き合わないことによって自分を守り、また、そういった相手に対して、

「いやいや、もうここには住んでいませんよ?」

という姿勢を取ることができる。武富士亡き後、借金と暴力は完全に切り離されたらしい。平和な時代に感謝しかない。

しかし、そんなかりそめの平穏を強引に突破してくる組織が完全になくなったわけではない。NHKと裁判所だ。彼らは普通の顔や手紙を装って、客人や郵便配達に紛れて突然現れる。玄関で気づいた時にはもう遅い。「テレビありますか?」、と。「特別送達郵便」は、視覚に入った時点で相手の間合いに入っている。

通常、手紙というものは送ったら相手が読んだかどうかはわからない。同様に、借金の電話も出なければ相手がその事実を認識しているかどうかがわからない。もしかしたら遠くに逃げてしまったかもしれないし、借金を苦に壊れてしまったかもしれない。だが、特別送達郵便は違う。「直接本人が受け取った通知」が相手に伝わる。

こちらが特別送達郵便を見てしまった時、特別送達郵便もまたこちらを見ているのだ。

◆かれこれ3回目

僕はもうかれこれ3回は特別送達郵便を受け取っている。全て簡易裁判所からで、レイクが原告のものが1回、オリエントコーポレーションが原告のものが2回だ。今回は以前書いた「支払い督促」の続きの話だ。

その日の昼は家にいた。ずっとスマッシュブラザーズをしていたと思う。現代の多重債務者は自称哲学者や文豪にはならず、漫然とゲームにハマる傾向にある。飲み代よりも安いし、簡単に脳のCPUを使い尽くして将来の不安や憂鬱が入る隙間を埋めてくれるからだ。人間らしく自分と向き合うことは、この歳にもなると体に障る。

パンツ一枚、シャツ一枚の格好でゲームをしていた。たまたま仕事がない時期だったので風呂にもしばらく入っていなかった。外出の目的が仕事だけになってしまった今、すでに借金で汚れきった体を洗う理由が無かった。

インターホンが鳴り、相手の用件も聞かずにズボンだけ履いてゲームのコントローラーを握ったまま玄関に向かった。インターネットで悪目立ちしている僕は、よくAmazonで他人からインスタント食品をもらう。パブロフの犬は、インターホンの音で物がもらえると思い込んで少し浮き足立つ。

◆特別送達郵便

玄関を開けたところにいたのは郵便局員だった。手には普通サイズの茶封筒。これまでもらった支払い督促の封筒は全部A4サイズだったので少しホッとする。封筒の大きさが罪の大きさだと思っていたのかもしれない。

「特別送達なのでサインお願いします。」

レイクもオリエントコーポレーションも50万円以上借りていたので、このサイズは10万円くらいだろうとタカを括っていた。切手のコレクションが目に入る。総額1,100円で5枚も貼ってある。直接持ってきた方がコストがかからないだろう、と毎回思う。きっとこの金額も請求される。借金の総額は現在430万円くらいなのでどうでも良かった。今までも、4,300円持っている時の1円を惜しいと思ったことはない。「塵も積もればなんとやら」みたいな言葉は、僕が最も嫌う言葉のうちの一つだ。直視したら失明してしまうかもしれない。

なんだ、プレゼントとかじゃないじゃん。と少しムカつきながら再びゲームを始める。オンライン対戦の調子は良かった。対戦相手のほとんどが借金を知らない中学生や高校生だ。彼らは親や先生から「こういう大人にならないように」と言われているであろう多重債務者にゲームで勝てない。気持ちが良かった。

◆電話でのやりとり

令和の優れたグラフィックに画面酔いしたので、休憩がてらにさっき受け取った特別送達郵便を開封する。支払督促に返事を書くのはもう慣れた。

「口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状」

スマッシュブラザーズよりも先に、裁判所から新キャラが現れた。

僕の名前の左側には「被告」と書いてあった。金を借りて返すのが遅れただけなのに「事件」と書いてあった。出頭の期日と時間はすでに決められていた。月曜の10時と書いてあった。流石に目が霞む。原告はオリエントコーポレーションだった。

「こりゃいかん」

声に出ていた気がする。

並大抵の手紙を無視し続けていた僕だが、本当にヤバい時だけはわかる。「この手紙だけは無視できねえ」とスタンドが囁いていた。

すぐに電話をした。手紙に書いてある裁判所の電話番号から、指定された内線番号にかけると担当裁判官が出た。

「すいません呼び出しもらっちゃったんですけど」

「ちょっと待ってくださいね、事件番号を教えてもらえますか?」

「(ハ)の第〇〇〇〇〇号です」

「はいはいはい、求償金請求の。もしかしてこの日は来れませんか?」

話が早い。あまりにも早すぎる。だけど、そりゃあそうだろう。多重債務者の多くは明日のために今日働いているのだ。たとえ被告だろうと予定くらい聞いてほしい。

「あのね、この日程はもう変えられないんですよ。」

いよいよ来るところまで来たな、と狭い部屋の天井を仰いだ。

◆出廷したくない

「出廷せずに済む方法はありますか?やっと見つけたアルバイトの日なんですが……」

本当だった。僕は資格も持っていないので、この原稿料と紹介のアルバイトくらいしか仕事がない。知り合いの紹介は命綱だ。僕は裁判よりも義理を取りたい。

「うーん、では期日の一週間前までに相手と話をつけてください。向こうも事件番号控えていると思うのでスムーズに話ができると思いますよ。」

三菱UFJが直接電話をしてきた時、利息も止めて月の返済も極々少額にする代わりにこれ以上滞納しないことを約束した。今回もどこかで相手が折れることを期待していたのかもしれない。だがオリエントコーポレーションは貸した金の50万円に加え、

・貸付金の利息    利率 年14%

・貸付金の遅延損害金 利率 年19.9%

・求償金の遅延損害金 利率 年14.6%

を請求してきている。全部足したらなんと48.5%、50万円が一年で約75万円になる。年間25万返すには月に少なくとも2万は返さなければならない。他の貸金業者への返済を考えると、今そんな大勝負に出るわけにはいかない。これからの交渉はすべて「二度と滞納しない」という前提の元で進めるからだ。

何かがおかしい。高すぎる。これでは金を返し切れないだろう。オリエントコーポレーション、みずほ銀行の後ろにいたから完全に信じ込んでしまっていたが、もしかすると……。

「この利率って違法なんじゃないですか?」

「いえ、被告はあなたですが……」

ふーん。

裁判所の人も普通にツッコミとかできるんだ。

あーあ。これからどうしよっかな。

―[負け犬の遠吠え]―

【犬】

フィリピンのカジノで1万円が700万円になった経験からカジノにドはまり。その後仕事を辞めて、全財産をかけてカジノに乗り込んだが、そこで大負け。全財産を失い借金まみれに。その後は職を転々としつつ、総額500万円にもなる借金を返す日々。Twitter、noteでカジノですべてを失った経験や、日々のギャンブル遊びについて情報を発信している。

Twitter→@slave_of_girls

note→ギャンブル依存症

Youtube→賭博狂の詩

当記事は日刊SPA!の提供記事です。

あなたにおすすめ

ランキング

ランキングをもっとよむ

注目ニュース

注目記事をもっとよむ

あなたにおすすめ